訂正有価証券報告書-第135期(2022/04/01-2023/03/31)

【提出】
2023/07/28 13:57
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【項目】
129項目

対処すべき課題

文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであり、その達成を保証するものではありません。
(1) 経営方針・経営戦略等
当社グループは2029年に創立100周年を迎えます。次の100年も社会から選ばれ続ける企業であるために、「2029年 住友理工グループVision」(2029V)および、3ヶ年の事業計画として「2025年 住友理工グループ中期経営計画」(2025P)を策定し、2023年5月30日に公表しました。
2029Vで定めている通り、当社グループは住友事業精神を根幹として、「素材の力を引き出し、社会の快適をモノづくりで支える」というパーパスのもと、コアコンピタンスである「高分子材料技術」「総合評価技術」を磨き続け、グループ内だけではなく、外部との共創による既存事業領域の深化と融合分野の事業探索によって、2029年のありたい姿「理工のチカラを起点に、社会課題の解決に向けてソリューションを提供し続ける、リーディングカンパニー」への変革を目指します。
2029年 住友理工グループVision
住友事業精神萬事入精・信用確実・不趨浮利
目指すべき企業像Global Excellent Manufacturing Company
存在意義
(パーパス)
素材の力を引き出し、社会の快適をモノづくりで支える
2029年のありたい姿理工のチカラを起点に、社会課題の解決に向けてソリューションを提供し続ける、リーディングカンパニー
ありたい姿実現に
向けた3つの方向性
とマテリアリティ
未来を開拓する人・仲間づくり個々の成長を促す、育成機会の提供と働きがい溢れる企業風土の醸成
社内外のパートナーシップによる共創の推進
柔軟かつ強固な組織づくり気候変動・自然資本に配慮した事業活動
環境変化に柔軟に対応できる経営基盤への変革
持続可能な社会に向けた価値づくり次世代モビリティ進化への対応と環境配慮型製品の提供
安全・快適の提供拡大に向けた技術の進化・融合
企業価値
(財務目標)
連結売上高7,000億円規模
ROIC(投下資本事業利益率※1)10%以上ROE(親会社所有者帰属持分利益率※2)10%以上
公益価値
(非財務目標)
※代表例
エンゲージメント経営理念やビジョンへの共感を高め、従業員と会社がお互いに選び・選ばれる、自律的な関係構築
ダイバーシティ&インクルージョン多様な人材が安心して働き、新たな価値を創造
コンプライアンスサプライチェーンを含めた、グループ・グローバルでの法令・企業倫理の遵守徹底
人材育成高い志を持ち、未来を切り拓く自律型人材の育成
地球環境保全CO2排出量削減(2018年度比) Scope1+2 -30%
Scope3 -15%

※1 投下資本事業利益率(ROIC)=事業利益/(純資産+有利子負債)
※2 親会社所有者帰属持分利益率(ROE)=親会社の所有者に帰属する当期利益/自己資本
2025Pについては、2029Vからのバックキャストによって、「未来を開拓する人・仲間づくり」「柔軟かつ強固な組織づくり」「持続可能な社会に向けた価値づくり」という、ありたい姿実現に向けた3つの方向性への取り組みを強化していきます。そして、「さらなる収益力向上と持続的成長に向けた経営基盤強化」のテーマのもと、目標達成に向けて取り組みます。
現在の事業セグメントを強化・伸長させるとともに、イノベーションや共創によるさらなる成長を目指すことで、2025年度の最終目標として、売上高6,200億円、事業利益280億円、ROIC8%以上、ROE8%以上、配当性向30%以上を掲げております。
2025年 住友理工グループ中期経営計画(2025P)
テーマさらなる収益力向上と持続的成長に向けた経営基盤強化
企業価値
(財務目標)
連結売上高6,200億円
事業利益280億円
ROIC(投下資本事業利益率)8%以上ROE(親会社所有者帰属持分利益率)8%以上
配当性向30%以上
投資額(3ヶ年累計)研究開発費 550億円
設備投資額 900億円
公益価値
(非財務目標)
※代表例
エンゲージメントグローバル幹部への理念教育および全従業員への理念・ビジョン周知活動推進
人材育成研修プログラムの拡充(3ヶ年累計)
・経営幹部研修 参加者 100人
・DX コア人材※3の育成 200人
・DX データ分析人材※4の育成 700人
地球環境保全CO2排出量削減(2018年度比) Scope1+2 -20%
廃棄物の削減(2022年度原単位比) -3%

※3 DXコア人材:自部門でIoT・AI活用の企画から実用導入に主導的に取り組む人材
※4 DXデータ分析人材:自部門でIoT・AI など専門的ITツールを業務に使用する人材
(2) 経営環境及び対処すべき課題
文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
当社グループを取り巻く環境は、サステナブルな社会実現に向けた世界的な潮流や「CASE」といった自動車業界の大変革に加え、足元では緊迫したウクライナ情勢の長期化、原燃料価格高騰、サプライチェーンの混乱といった影響により、先行きが依然不透明な中ではありますが、コロナ禍からの経済活動の回復基調は継続すると見ております。
このような中、当社グループは2029Vで定めたパーパスである「素材の力を引き出し、社会の快適をモノづくりで支える」に沿って、社会課題解決に貢献してまいります。また、2029Vのありたい姿実現に向けた方向性「未来を開拓する人・仲間づくり」「柔軟かつ強固な組織づくり」「持続可能な社会に向けた価値づくり」に合わせて、2025Pでは「さらなる収益力向上と持続的成長に向けた経営基盤強化」をテーマに、より具体的な活動方針に落とし込み、事業活動を進展させます。さらに、新製品の開発と市場開拓を急ぐ中で、親会社である住友電気工業株式会社との連携を強化し、これまで以上にシナジーを創出できるように進めてまいります。
[自動車用品部門]
自動車業界においては、技術革新の波が進行し、企業はこれらへの迅速な対応にとどまらず、カーボンニュートラルに象徴されるような社会課題解決への積極的な関与が求められています。
当社グループにおいては、創業以来培ってきたコアコンピタンス「高分子材料技術」「総合評価技術」をもとに、これからの自動車(モビリティ)に新たな価値を提供する製品の創出と開発を進めています。
現在、新商品開発センターが主体となって、CASEにおける「A:Autonomous(自動運転)」「E:Electric(電動化)」2領域の新製品開発に注力しています。
当社のコア技術より生まれた薄膜高断熱材「ファインシュライト®」は、電気自動車(EV)のネックとされる電費・航続距離問題・電池の安全性向上などといった、様々な課題解決に寄与すると考えています。
防振ゴム事業については、EV時代においても、モーターマウントやeAxleマウントといった製品へと進化し、日系自動車メーカーのみならず、海外自動車メーカーでの受注も進んでいます。自動車用ホース事業については、EV用の電池やモーターをはじめとする部品の熱マネジメントのニーズが高まっており、当社の流体搬送技術を生かした冷却系ホースなどの開発にも注力しています。また、各国の環境規制に対応した、ガソリン蒸散の低減に寄与する環境規制対応の燃料ホースやバイオ燃料用の燃料ホースなどは引き続き好調で、拡販を継続しています。
水素社会の実現に向けては、燃料電池自動車(FCV)向けの基幹部品を供給しており、トヨタ自動車株式会社の新型MIRAIにも当社製品が継続採用されています。
当社グループにおける、米州の業績低迷については、早急に対処すべき経営課題として認識しています。中でも米国拠点では、グローバル競争の激化や人手不足から生産性が低下してきました。ローカル人材の育成や工程改善によるロス低減に継続して取り組みつつ、米国拠点からメキシコへの生産移管なども含め、収益性の改善に着手しています。
依然として自動車生産動向が不透明な状況が続いていますが、これまで進めてきた体質強化の成果が表れ始めました。今後も間接費などの低減を継続するとともに、需要回復期にも対応できるよう、より一層最適な生産体制の構築に取り組んでまいります。
[一般産業用品部門・新規事業部門]
当社グループは、主力事業の「自動車(モビリティ)」分野に加えて、「インフラ・住環境」「エレクトロニクス」「ヘルスケア」といった、社会環境基盤の構築に不可欠な分野へも事業展開しています。
一般産業用品部門のうち、インフラ分野では、グローバルでの需要回復を背景に高圧ホースの売上が好調で、需要を見極めながらグローバル拡販を進めます。また、免震ゴムについても、東海圏での需要増に対応して製品を供給しており、高速道路の拡張や延長などに合わせて対応します。エレクトロニクス分野では、市場の成熟や働き方の変化による事務機器の需要変動に柔軟に対応することで、収益力を高められる体制への取り組みを実施します。
新規事業部門では、社会の要請に応えられるよう投資すべき重点事業分野を見極め、事業基盤の強化を図っていきます。特に、2029Vに沿って、当社グループの技術領域の融合を進め、他社との共創や新領域への挑戦をより一層強化し、新たな収益の柱となる事業を見出していきます。すでに、培養肉や再生医療といった分野への挑戦を、積極的に進めています。
「ファインシュライト」は、その高いレベルでの保温・保冷機能から、食品や医薬品などの定温輸送に活用されており、新事業展開に向けた協業先探索を継続していきます。また、ファインシュライトを工場設備に取り付けることで、熱効率が向上し省エネにつながったという実証結果も得られており、カーボンニュートラルを目指す社会ニーズにマッチし、採用が進んでいます。
これら以外にも、サーキュラーエコノミーへの取り組みとして、ランザテック社との協業も始まっています。製品を供給するだけではなく、廃棄物の回収・再利用といった循環型社会の実現を目指して、長期的な目線をもって取り組んでいます。
私たちはこれまで、モノづくり企業として90年以上にわたって培ってきたコアコンピタンスを軸に、住友事業精神が謳う「萬事入精(ばんじにっせい)」「信用確実」「不趨浮利(ふすうふり)」を忠実に守りながら、「安全・環境・コンプライアンス・品質(S.E.C.Q.)」の取り組みを積み重ねてきました。これからも世界中で必要とされる“Global Excellent Manufacturing Company”への成長を目指して、創立100周年に向け、着実な歩みを続けていきます。
株主の皆様におかれましては、今後とも一層のご理解とご支援を賜りますよう、お願い申し上げます。