有価証券報告書-第108期(2022/04/01-2023/03/31)

【提出】
2023/06/29 14:00
【資料】
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【項目】
149項目
② 戦略
日本の三ツ星ベルトグループを対象として、人的資本に関するリスクと機会を洗い出しました(表1)。
日本企業の経営において、労働人口の減少、従業員の高齢化は、各社共通した課題ですが、日本の三ツ星ベルトグループでは、これら以外に、女性従業員比率・女性管理職比率の低さ、従業員エンゲージメントを評価していないことが課題であると認識しています。特に従業員エンゲージメントの向上は事業活動の活性化に直結するものであり、その測定・監視・評価・改善は事業活動の中で重要な要素となります。また、これまで難しかった人事・総務施策の目標設定に活用することで、施策の有効性が明確になり、効率的な人事・総務活動につながると考えています。
a.リスクと機会
表1 三ツ星ベルトグループの人的資本経営におけるリスクと機会
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b.労働人口の減少とダイバーシティの確保
日本においては、労働人口減少への対応を進めることが今後の事業を継続していくための重要な課題であると認識しています。労働人口が減少する中、DXを推進して生産性改善と自動化を進め、事業拡大に伴う要員の増加をゼロ、あるいはマイナスにしなければなりません。2022年、DXの活用を確実に進めることを目的として、DX推進室を設置いたしました。また、人材開発室においては、「物流のIT化」、「AI(人工知能)活用」等の新規教育プログラムをスタートさせています。今後、具体化される様々な事業計画の中で、いつまでに、どのようなスキル・知識を持った人材が、何人必要か、を要員計画として明確にし、それに適応した人材教育、あるいは必要に応じて新規採用を実施してまいります。
一方、女性従業員及び女性管理職が少ない状況(2022年 三ツ星ベルト(本体)の女性従業員比率:8.4%、同 女性管理職比率:2.4%)は、当社のダイバーシティ&インクルージョン(多様性と包括性)における課題を明確に示しています。このような状況に対して、女性活躍を推進するために、積極的な女性の採用を行うとともに職場環境の整備を進め、女性に長く働いてもらい、管理職にもチャレンジしたくなる職場づくりを目指します。
既に、育児休暇制度、短時間勤務制度、単位時間ごとの有給休暇制度、フレックス勤務制度等、従業員一人ひとりの生活に合わせて勤務時間を調整する諸制度は導入済であり、新型コロナウイルスの感染拡大を契機に拡がった在宅勤務制度など、時間や場所にとらわれない新しい働き方推進の取り組みも進めているところです。今後、これら諸制度が女性に限らず、従業員一人ひとりの生活に合わせて有効に活用されるよう、目標を設定し普及活動を進めてまいります。さらには、現在、事業活動の活性化、従業員エンゲージメントの向上を目的として、「誰もが言いたいことを言える会社づくり」に、社長が先頭になって取り組んでおり、会社の雰囲気が変わりつつあります。これらの施策は、女性従業員比率・女性管理職比率の改善に最も有効に機能すると考えており、先に述べました従業員エンゲージメントを指標にして、活動を更に活性化させてまいります。
c.従業員の高齢化の対応
日本企業の経営において、従業員の高齢化は大きな問題です。現状では70歳までの雇用が当たり前になりつつあり、“経験”というメリットを活かしながら、“身体的な衰え”や“技術の陳腐化”というディメリットを打ち消す施策の導入が必要となります。さらに、少子化問題がなかなか改善されない現状においては、労働者の高齢化問題は持続的な課題として残存することが考えられます。高齢者層の従業員には“経験”に加えて、リスキリングによる新しい知識・スキルの習得が求められます。三ツ星ベルトグループでは、従業員の高齢化に対する取り組むべき課題として、「従業員の高齢化への対応」と「高齢者層従業員のリスキリング」をあげ、活動しています。
“従業員の高齢化”への対応として、まず考えなければならないのが健康の維持です。当社では、人間ドック、心臓ドック、脳ドック、生活習慣病健診等の健診サービス制度を導入しています。これらサービスが有効に機能するよう、産業医の意見を反映させながらその内容を改善してまいります。また、健康の維持に加えて、健康増進のための取り組みもまた重要です。先ずは“喫煙”と“肥満”に着目し、指標を明確にして活動してまいります。
高齢者のリスキリングについては、前述の通り、人材開発室と、新設しましたDX推進室が各事業部門・関係会社の人材育成を支援する形で進めてまいります。人材開発室とDX推進室は新しい教育プログラムの開発を行い、各事業部門・関係会社は、要員計画により必要とする人材に関する要求事項を明確にし、これを人材育成計画に展開して、人材開発室とDX推進室の支援を受け人材育成を実行します。
d.一人ひとりの能力開発
三ツ星ベルトグループでは、あらゆる職場で実施される新入社員教育、初期作業者教育が、従業員の能力開発の第一歩となります。その後、役割の変化に伴う階層別研修、職務内容に応じた専門研修、法令が定めるところの研修、自己啓発を支援する研修等、様々な能力開発プログラムを実行しています(下表参照)。また、QCサークル活動、GLOBAL GEMBA KAIZEN ACTIVITY、及びそれらの成果報告会も従業員の能力開発に大いに貢献しており、報告会において優秀な活動に付与される報償は活動の原動力の一つとなっています。これら能力開発プログラムは、スキルマトリックスをベースにして、部門、あるいは定められた組織で年度ごとに計画・実行され、有効性を評価したのち、次年度の活動に展開されています。
表) 能力開発プログラム一覧
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e.人権デューディリジェンス(以下:人権DD)
三ツ星ベルトグループは、当社の事業活動に係る全ての人の人権を尊重することが重要であると認識しており、特定したマテリアリティの1つに「人権と人格の尊重」を取り上げ、人権DDに取り組んでいます。「人権と人格の尊重」に係る課題は、マテリアリティの推進組織よりサステナビリティ推進委員会へ進捗状況が報告され、同委員会により、監視、指示、判断、評価されています。
・ 人権リスク
2023年1月、マテリアリティの推進組織であるワーキンググループ及びサステナビリティ推進委員会での議論により、当社のサプライチェーンを含む事業活動において、以下の人権リスクを特定しました。
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・ 取り組み状況
人権DDを推進するに際し、以下の取り組みを進めております。
ⅰ) グループ行動基準の改定(2022年11月)
ⅱ) サプライチェーンにおける人権リスク評価の実施(2022年12月)
ⅲ) 人権課題の特定(2023年1月)
ⅳ) 人権方針の策定(2023年1月)
ⅴ) 人権に係る従業員教育の実施(2023年3月)
当社グループ行動基準及び調達ガイドラインは、国際社会で認められた普遍的な価値観である国連グローバル・コンパクトが定める4分野(人権、労働、環境、腐敗防止)10原則に基づいたものとなっております。三ツ星ベルトグループでは、人権DDを継続的に推進するとともに、サプライチェーン全体での人権リスク改善に取り組んでまいります。
※ 行動基準、人権方針の全文は、当社ウェブサイトにてご確認いただけます。
f.エンゲージメント向上のための環境整備
三ツ星ベルトグループの経営理念「人を想い 地球を想う」は、個の尊重、ダイバーシティの尊重を謳っており、当社は性別や人種はもとより、生活環境や考え方を異にする全ての従業員が安全、安心に生産性を高め、充足感をもって働くことのできる職場づくりを目指しています。また、先述の“従業員エンゲージメント”を新たな指標に採用し、具体的な目標値を設定した上で2023年度から取組みを推進しています。
ⅰ) ダイバーシティ&インクルージョン(D&I)
◆ 女性活躍推進
2023年3月末時点の三ツ星ベルトの女性従業員比率は10.1%、女性管理職比率は2.4%、定期採用者に占める女性の比率は20%となっています。'21中期経営計画の見直しにおいて「人財戦略」を重要項目として取り上げ、「人財戦略の強化」をマテリアリティとしました。「女性管理職者数」をKPIとし、「ダイバーシティの推進」に取り組んでいます。また、女性社外取締役による女性従業員との1on1ミーティング等を実施し、女性従業員の意識改革にも取り組んでいます。確実に目標を達成し持続可能な企業づくりを進めます。
女性管理職比率
全体2022年度
女性管理職比率2.4%

男女間賃金格差
区分2022年度
全労働者72.1%
うち正規雇用労働者70.9%
うちパート・有期労働者37.0%
◆ お星さま研修
長期の育児休暇から復職する従業員は、業務内容だけでなく、職場の人間関係にも悩みを抱えているケースがあります。お星さま研修は、スムーズな職場復帰のため、メンタル面からもサポートしています。
◆ ドレスコードの自由化
D&I促進の一環として、当社ではオフィスでのドレスコードを変更し、スーツや制服以外の服装を選択できるようにしました。従業員一人ひとりの個性を活かし、新しく自由な発想や自律的な思考が生まれやすい職場環境を目指し、これからもこうした企業風土改革を進めてまいります。

ⅱ)ワーク・ライフバランスのある職場づくり
◆ 年次有給休暇制度
生活における様々な状況に対応して働き続けられるように、繰り越し日数も含め、最大で40日の年次有給休暇を取得することができます。取得しやすいように半日単位、時間単位の取得もできます
年次有給休暇取得率
2020年度2021年度2022年度
51.4%48.6%53.1%
◆ 特別休暇制度
年次有給休暇以外にも、結婚、出産、忌引、法要、転勤など、人生の節目に対応した有給休暇を取ることができます。メモリアル休暇は誕生日の前後1週間に取得することができます。また、勤続15年と勤続25年を迎えた際には、リフレッシュ休暇を付与するとともに旅行券も支給します

ⅲ)子育て・介護支援
◆ 育児休業制度、短時間勤務制度
育児休業は法律に則り、最長で子供が2歳になるまで取得ができます。育児休業からの職場復帰後は、労働時間を最大で2時間短縮できる短時間勤務の選択が可能です。短時間勤務は子供が小学校の始期に達するまで選択可能で、子供が3歳になるまでは賃金の減額もありません。また、所定外労働・深夜業の制限等の制度もあり育児に配慮しています
育児休業取得率
2020年度2021年度2022年度
男性5.0%10.0%26.5%
女性100%100%100%

当会計年度権利取得者中の取得率(継続者は含まない)
◆ お星さま制度
母子・父子家庭の従業員、障がいのある子供をもつ従業員の子育てを支援する目的で、毎月、支援金を支給しています
◆ 介護休業制度
介護休業は法律に則り最大93日まで取得することができます。また、所定外労働・深夜業の制限等の制度もあり介護に配慮しています