有価証券報告書-第160期(2022/04/01-2023/03/31)
戦略
当社グループ全事業における気候変動の影響について、2030年を想定し、IPCC(気候変動に関する政府間パネル)やIEA(国際エネルギー機関)などの専門機関が描くシナリオを参考に、分析を行いました。気候変動がもたらすリスクは、低炭素社会への移行に伴うリスク(移行リスク)と物理的な影響(物理的リスク)に分けられます。地球の平均気温上昇が産業革命前と比べて2℃以下または4℃上昇するシナリオを想定し、それぞれのリスクと機会について、影響度が高いと思われる項目を抽出しました。
2℃シナリオでは、炭素税の引き上げや化石エネルギーに関する規制が強化され、セメント製造及び自家発電設備において石炭を使用するほかに、他社石炭火力発電所から発生する石炭灰・石膏をセメント原料とする当社グループにとって、コスト増加が想定される一方で、石炭に代わる熱エネルギーとして廃プラスチックや木質バイオマス燃料の利用を高めることで、リサイクル処理収入による収益拡大と化石エネルギーの代替によるCO2排出量削減が期待できます。
また、CO2の排出削減を推進するためには、研究開発や設備投資によるコストの増加が予想されますが、同時に、技術力向上による新たな事業の創出、収益機会の獲得が期待できます。低炭素社会への移行に際し、ユーザー行動の変容が想定されますが、製造過程でCO2を発生するセメントを敬遠し需要が減少する可能性がある反面、アスファルト舗装よりもライフサイクルコストに優れ、気温上昇を抑える効果も有するコンクリート舗装の評価が高まり、セメント需要が増加する可能性もあります。廃棄物/副産物の発生量が減少することが想定され、廃棄物/副産物の調達に影響を及ぼす可能性がある一方で、廃棄物/副産物処理技術の向上に伴い受入れ可能な品目が拡大し、収益の増加が期待できます。またセメント産業はCO2を排出する産業としてステークホルダーの評価が下がり、資金調達難等が想定される反面、気候変動対策、廃棄物/副産物処理を推進することで企業評価を高めることが期待できます。
高機能品事業分野では、ライフスタイル、ワーキングスタイルの変革によるデータトラフィックの増大や脱化石エネルギーによる電力の増加に伴う需給逼迫リスクが増大することから、大容量、高速、省電力デバイスのニーズが高まり、光電子事業の光通信部品や新材料事業の半導体製造装置部品の需要増が期待できます。
4℃シナリオでは、気候変動を原因とする平均気温の上昇や自然災害の頻発・激甚化により、生産部門での労働力への影響や生産拠点やサプライチェーンの被害増加が生じ、コスト増加が見込まれる反面、国土強靭化に資するセメント関連製品や省人化工法等の需要増加が見込まれます。
当社グループ全事業における気候変動の影響について、2030年を想定し、IPCC(気候変動に関する政府間パネル)やIEA(国際エネルギー機関)などの専門機関が描くシナリオを参考に、分析を行いました。気候変動がもたらすリスクは、低炭素社会への移行に伴うリスク(移行リスク)と物理的な影響(物理的リスク)に分けられます。地球の平均気温上昇が産業革命前と比べて2℃以下または4℃上昇するシナリオを想定し、それぞれのリスクと機会について、影響度が高いと思われる項目を抽出しました。
| 分 類 | リスク | 機会 | ||
| 移行リスク | 政策 ・規制 | 炭素税の引き上げ、温室効果ガス排出や化石エネルギーに関する規制 | ・セメント産業はエネルギー多消費産業であるため、化石エネルギーの価格上昇によりエネルギーコストの増加が想定される。 ・保有する自家発電設備が、非効率石炭火力のフェードアウト対象となった場合、売電事業の縮小や喪失の可能性がある。発電設備の廃止により工場使用電力を小売電気事業者から購入した場合、電力コストの増加が想定される。 | ・従来より力を入れている石炭代替(廃プラスチック、バイオマス燃料)の更なる利用推進により、廃棄物収集事業における収益拡大が期待できる。 ・工場跡地等多数保有する遊休地を、再生可能エネルギー発電等の新規発電設備や植林に活用できる可能性があり,グリーン電力やグリーンカーボンにより気候変動問題対応から発想する、新たな事業の創出が期待できる。 |
| 技術 | 新技術の開発 | ・新技術の研究開発費やカーボンニュートラル実現のための設備投資増加による、コストの増加が予想される。 | ・CO2排出削減技術の向上に伴う収益獲得が期待できる。(炭酸塩鉱物化技術、人工光合成水素製造技術、アンモニア/水素利用技術) ・CO2有効利用技術の進歩とその活用により、大量のCO2の安定的固定化と新たな事業分野への拡大が期待できる。(メタン、メタノール、プラスチック素材) ・保有する未使用特許を新しい市場で活用できる可能性がある。 | |
| 市場 | ユーザー行動の変化 | ・混合セメントの使用量が増え、クリンカ生産量の減少が想定される。 ・炭素排出コストが低い国からの低価格セメントの流入、気候変動対策の進んだ国からの低炭素型セメントの普及が進み、セメントシェアを圧迫する可能性がある。 ・低炭素物流が求められることで物流コストが増加する可能性がある。 | ・従来より取り組んできた低炭素型セメント、低炭素型コンクリートのさらなる開発と普及促進により製品の差別化が進み、今後普及と成長が期待される低炭素型建設構造物への採用が進み、事業を拡大することができる。 ・ヒートアイランド現象低減効果、燃費向上効果、耐久性の観点でLCCに優れたコンクリート舗装が普及し、セメント需要が増加する可能性がある。 | |
| 分 類 | リスク | 機会 | ||
| 移行リスク | 市場 | リサイクル市場 | ・廃棄物/副産物(廃油類、廃プラスチック、石炭灰、排煙脱硫石膏等)の発生減少により、廃棄物の収集競争激化、品質悪化、処理費下落、価格高騰が想定される。 ・バイオマス燃料の調達競争が激化することで価格高騰が想定される。 | ・廃棄物/副産物処理の技術力向上に伴い受入可能な品目が増加し、廃棄物収集・利活用における収益が期待できる。 ・多様な廃棄物を収集、原燃料処理できる巨大な製造インフラを有していることから、廃棄物からの資源抽出・精製・販売などの新規事業分野の拡大が期待できる。 |
| 高機能品事業 | ・平均気温上昇に伴うライフスタイル、ワークスタイルの変革によるデータトラフィックの増大や脱化石エネルギー化による電力供給不足により、大容量、高速、省電力デバイスのニーズが高まり、光通信部品や半導体製造装置需要の増加が想定される。 | |||
| 評判 | ステークホルダーの評価の変化 | ・温室効果ガス排出企業への評価低下による資金調達難等が予想される。 | ・積極的な気候変動対策、CO2利活用に係る新規技術開発と新しいビジネスモデルの推進、廃棄物/副産物処理の貢献への評価上昇により、資金調達、社員採用で有利に働くことが期待できる。 | |
| 物理的リスク | 急性的 | 自然災害の頻発・ 激甚化 | ・大型台風・豪雨等の頻発により、生産拠点の被害やサプライチェーンが寸断され、操業への支障や復旧に要するコスト増加が想定される。 | ・国土強靭化に資するインフラ整備、構造物の維持・補強・補修などに伴うセメント関連製品の需要増加が見込まれる。 ・災害廃棄物処理の要請により、社会的役割を高めていくことができる。 |
| 慢性的 | 平均気温の上昇、慢性的な異常気象の発生 | ・気温上昇により生産現場における従業員の健康・安全面での労働力への悪影響が想定される。 ・海面上昇により、臨海拠点の高潮等浸水被害の可能性がある。 | ・より一層の工期短縮や施工効率化などの省人化工法の需要増加が見込まれる。 ・海洋製品の需要拡大、事業創出により新たな収益源を獲得できる可能性がある。 | |
2℃シナリオでは、炭素税の引き上げや化石エネルギーに関する規制が強化され、セメント製造及び自家発電設備において石炭を使用するほかに、他社石炭火力発電所から発生する石炭灰・石膏をセメント原料とする当社グループにとって、コスト増加が想定される一方で、石炭に代わる熱エネルギーとして廃プラスチックや木質バイオマス燃料の利用を高めることで、リサイクル処理収入による収益拡大と化石エネルギーの代替によるCO2排出量削減が期待できます。
また、CO2の排出削減を推進するためには、研究開発や設備投資によるコストの増加が予想されますが、同時に、技術力向上による新たな事業の創出、収益機会の獲得が期待できます。低炭素社会への移行に際し、ユーザー行動の変容が想定されますが、製造過程でCO2を発生するセメントを敬遠し需要が減少する可能性がある反面、アスファルト舗装よりもライフサイクルコストに優れ、気温上昇を抑える効果も有するコンクリート舗装の評価が高まり、セメント需要が増加する可能性もあります。廃棄物/副産物の発生量が減少することが想定され、廃棄物/副産物の調達に影響を及ぼす可能性がある一方で、廃棄物/副産物処理技術の向上に伴い受入れ可能な品目が拡大し、収益の増加が期待できます。またセメント産業はCO2を排出する産業としてステークホルダーの評価が下がり、資金調達難等が想定される反面、気候変動対策、廃棄物/副産物処理を推進することで企業評価を高めることが期待できます。
高機能品事業分野では、ライフスタイル、ワーキングスタイルの変革によるデータトラフィックの増大や脱化石エネルギーによる電力の増加に伴う需給逼迫リスクが増大することから、大容量、高速、省電力デバイスのニーズが高まり、光電子事業の光通信部品や新材料事業の半導体製造装置部品の需要増が期待できます。
4℃シナリオでは、気候変動を原因とする平均気温の上昇や自然災害の頻発・激甚化により、生産部門での労働力への影響や生産拠点やサプライチェーンの被害増加が生じ、コスト増加が見込まれる反面、国土強靭化に資するセメント関連製品や省人化工法等の需要増加が見込まれます。