有価証券報告書-第162期(2024/04/01-2025/03/31)
戦略
<2030年時点において想定されているリスクと機会の財務インパクトの規模とその影響度分析>当社グループ全事業における気候変動の影響について、2030年を想定し、IPCC(気候変動に関する政府間パネル)やIEA(国際エネルギー機関)などの専門機関が描くシナリオを参考に、分析を行いました。気候変動がもたらすリスクは、低炭素社会への移行に伴うリスク(移行リスク)と物理的な影響(物理的リスク)に分けられます。地球の平均気温上昇が産業革命前と比べて1.5℃以下または4℃上昇するシナリオを想定してシナリオ分析を行い、それぞれのリスクと機会について、影響度が高いと思われる項目を抽出しました。
2030年時点において想定されているリスクと機会の財務インパクトの規模および影響度は、下記の通り評価しております。
1.5℃シナリオでは、炭素税の引き上げや化石エネルギーに関する規制が強化され、セメント製造及び自家発電設備において石炭を使用するほかに、他社石炭火力発電所から発生する石炭灰・石膏をセメント原料とする当社グループにとって、コスト増加が想定される一方で、石炭に代わる熱エネルギーとして廃プラスチックや木質バイオマスエネルギーの利用を高めることで、リサイクル処理収入による収益拡大と化石エネルギーの代替によるCO2排出量削減が期待できます。
また、CO2の排出削減を推進するためには、研究開発や設備投資によるコストの増加が予想されますが、同時に、技術力向上による新たな事業の創出、収益機会の獲得が期待できます。低炭素社会への移行に際し、ユーザー行動の変容が想定されますが、製造過程でCO2を発生するセメントを敬遠し需要が減少する可能性がある反面、アスファルト舗装よりもライフサイクルコストに優れ、気温上昇を抑える効果も有するコンクリート舗装の評価が高まり、セメント需要が増加する可能性もあります。
リサイクル市場では、廃棄物・副産物の発生量が減少することが想定され、廃棄物・副産物の調達に影響を及ぼす可能性がある一方で、廃棄物・副産物処理技術の向上に伴い受入れ可能な品目が拡大し、収益の増加が期待できます。
光電子、新材料事業分野では、ライフスタイル、ワーキングスタイルの変革によるデータトラフィックの増大や脱化石エネルギーによる電力の増加に伴う需給逼迫リスクが増大することから、大容量、高速、省電力デバイスのニーズが高まり、光電子事業の光通信部品や新材料事業の半導体製造装置部品の需要増が期待できます。
4℃シナリオの物理的リスクでは、気候変動を原因とする平均気温の上昇や自然災害の頻発・激甚化により、生産部門での労働力への影響や生産拠点やサプライチェーンの被害増加が生じ、コスト増加が見込まれる反面、国土強靭化に資するセメント関連製品や省人化工法等の需要増加が見込まれます。
<2050年カーボンニュートラルへのロードマップ(2050年CNに向けた11のステップ)>セメント産業におけるカーボンニュートラルの達成のためには、化石エネルギー起源CO2を可能な限り削減した上で、排出量の約6割を占める主原料の石灰石由来のプロセス起源CO2(注3)の削減が不可欠です。当社グループは2050年までに自社の技術革新・事業基盤の革新と共に、国内外のあらゆる削減方策を総動員して組み合わせる「削減ミックス」が重要と考えています。
当社グループが2050年カーボンニュートラルに向けて取り組む11のCO2削減施策を開発段階に応じて3段階に整理し、ロードマップとして策定しました。
(注3)プロセス起源CO2とは、セメントの主原料である石灰石の炭酸カルシウム(CaCO3)がセメントの必須
化合物である酸化カルシウム(CaO)に化学変化する過程で発生するCO2であります。

・表中の①、②、③、④、⑤:確実性の高い施策
確実性の高い施策として以下のような施策があり、既に取組を始めています。
①化石エネルギー・総エネルギー削減
エネルギー由来CO2の排出量削減に向けて、セメント工場での原料ミル最新鋭化などの省エネルギー・高効率
な設備導入を進めます。当社グループの化石エネルギー代替率は業界トップクラスであり、エネルギー原単位
についてもトップクラスの効率性を達成しています。
②バイオマス・廃棄物エネルギー利用
セメント工場で、リサイクル処理・受入設備の投資を行い、バイオマス・廃棄物エネルギー(廃プラスチッ
ク、廃タイヤ、廃油など)の利用を増やし、化石エネルギー代替を進めます。栃木工場と岐阜工場においては
2023年度で代替率60%を超えており、業界トップクラスに位置しています。
③電力削減・クリーン化
セメント工場で使用する電力は約80%を自家発電設備により供給していますが、バイオマス等非化石エネル
ギーの最大化を図ります。栃木工場のバイオマス発電所では、石炭レス発電を可能としています。またこの
バイオマス発電により、本社オフィス使用電力は実質カーボンニュートラルとなっています。更に、今後石炭
から非化石エネルギーへの転換も検討していきます。
④クリンカ比率低減によるセメント低炭素化
セメント中の少量混合成分の上限を5%から10%に上げて、クリンカ比率低減を図る為のJIS改正に向けて
業界を挙げて取り組んでいます。また高炉スラグの分量増加等、混合セメントの利用拡大を進めていきます。
⑤カルシウム(Ca)含有廃棄物原料化による脱炭酸削減
一般焼却灰、廃コンクリート、廃石膏ボード等のCa含有廃棄物を収集し、「CO2を排出しないCa原料」として
利用することで、天然石灰石の使用量を減らします。
・表中の⑥、⑦、⑧:技術開発中の施策
プロセス由来のCO2削減に関しては排ガスからCO2を回収して有効利用するCCUSが必須です。
⑥人工石灰石の製造・利用によるCCU(注4)
国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)のグリーンイノベーション基金での採択
事業「多様なカルシウム源を用いた炭酸塩化技術の確立」では、下記図のように、Ca含有廃棄物から酸化
カルシウム(CaO)を抽出し、セメント焼成で発生するCO2と再結合させる「CaとCO2のデュアル・リサイクル
技術」で人工石灰石(CaCO3)を生成するCCUを実現します。(2030年までに総事業費69億円の研究開発プロ
ジェクト)
本技術は、セメント工場が排出するCO2を「削減」するのみならず、人工石灰石中にCO2を「固定化」する
ことができます。今後国内の製造拠点で人工石灰石を量産し、建設産業はもちろん、様々な産業での用途に
販売していきます。
(注4)CCU…Carbon dioxide Capture and Utilization=二酸化炭素の分離回収と有効利用

⑦カーボンリサイクルセメント(CRC)の製造
上記⑥で製造した人工石灰石を使用したCRCを製造し、ゼネコンや二次製品メーカーに販売していきます。
2025年の大阪・関西万博においては、住友館の建築物や物品の一部に、当社のCRCが使用されています。
⑧CO2利用革新技術による新規事業
ネイチャーポジティブ企業としてセメント工場や発電所を最大限に利用する新規事業に取り組んでいます。
バイオマス発電所の排ガス中のCO2を農林業へ利用する取組や、藻場増殖礁を進化させ、急速に注目を集める
ブルーカーボンによるCO2固定も検討し、多様な新事業を創出し、次世代セメント産業の一つの姿を提案してい
きます。
・表中の⑨、⑩:調査検討中の施策
⑨アンモニア・水素・合成メタンの活用
2030年代後半の実用化を目指し、セメントキルンの燃焼に化石エネルギーとアンモニア・水素の混焼を
用いる焼成技術の開発の検討を進めます。また、セメント工場の排ガスからCO2を分離回収して製造した
合成メタンを燃料として活用する方法も研究していきます。
⑩CCS(注5)
CCUで有効利用できないCO2は地中に貯留(CCS)する必要がありますが、設備規模、コストなどにおいて
課題があります。現在各地で検討が進んでおり、国内法も整備され始めています。サプライチェーンの構築が
必要となる為、パートナーと協働検討を始めています。
(注5)CCS…Carbon dioxide Capture and Storage=二酸化炭素回収・貯留技術
・表中の⑪:オフセット
⑪コンクリート供用中のCO2吸収(国際的コンセンサス)
コンクリートやセメント製品はCO2を鉱物固定するCaなどが豊富に含まれ、大気中のCO2の鉱物固定源として
有望です。国際的にコンクリート構造物が供用期間中を通じて大気中のCO2を吸収・固定化する検討が進んで
います。当社は通常のセメントの2倍以上の大気中CO2吸収固定速度を持つNETs(注6)技術実装製品の開発・
試験施工に成功し、実用化の目途を付けました。今後は定量的な評価方法のコンセンサスを得ることで、CO2
排出量をオフセットする可能性を検討しています。
(注6)NETs…Negative Emission Technologies
=大気中のCO2を回収・吸収し,貯留・固定化することで大気中のCO2除去に資する技術
<2030年時点において想定されているリスクと機会の財務インパクトの規模とその影響度分析>当社グループ全事業における気候変動の影響について、2030年を想定し、IPCC(気候変動に関する政府間パネル)やIEA(国際エネルギー機関)などの専門機関が描くシナリオを参考に、分析を行いました。気候変動がもたらすリスクは、低炭素社会への移行に伴うリスク(移行リスク)と物理的な影響(物理的リスク)に分けられます。地球の平均気温上昇が産業革命前と比べて1.5℃以下または4℃上昇するシナリオを想定してシナリオ分析を行い、それぞれのリスクと機会について、影響度が高いと思われる項目を抽出しました。
2030年時点において想定されているリスクと機会の財務インパクトの規模および影響度は、下記の通り評価しております。
| 分 類 | リスク | 機会 | 1.5℃シナリオ | 4℃シナリオ | ||||
| ネガティブ | ポジ ティブ | ネガティブ | ポジ ティブ | |||||
| 移行リスク | 政策 ・規制 | ・炭素税の 引き上げ ・温室効果 ガス排出や 化石エネ ルギーに 関する規制 | ・化石エネルギーの価格 上昇によるコスト増加 ・保有自家発電設備が、 更なる非効率石炭火力 フェードアウト対象と なった場合の、売電 事業の縮小・喪失 ・工場使用電力を自家発電 から外部購入に切り替え た場合の電力コスト 増加 | ・石炭代替熱エネルギー (廃プラスチック・ バイオマス燃料)の 更なる利用促進による 廃棄物処理事業の収益 拡大 ・工場跡地等の遊休地を 再生可能エネルギー発電 や植林に活用することに より新たな発想で新規 事業を創出 | 大 | 中 | 中 | |
| 技術 | ・新技術の 開発 | ・新技術の研究開発費や CN実現のための設備投資 増加による、コスト増加 | ・CO2排出削減技術の向上 に伴う収益獲得 (炭酸塩鉱物化、 人工光合成水素製造、アンモニア・水素利用) ・CO2有効利用技術の進歩 と活用により、新規事業 を創出 (メタン、メタノール、 プラスチック素材) ・保有未使用特許を 新たな市場で活用 | 小 | 大 | 小 | ||
| 分 類 | リスク | 機会 | 1.5℃シナリオ | 4℃シナリオ | ||||
| ネガティブ | ポジ ティブ | ネガティブ | ポジ ティブ | |||||
| 移行リスク | 市場 | ・ユーザー 行動の変化 | ・混合セメント使用量増加 によるクリンカ生産量 減少 ・炭素排出コストが低い国 からの低価格セメントの 国内への流入 ・海外低炭素型セメントの 国内における普及による セメントシェア圧迫 ・低炭素物流の志向による 物流コスト増加 | ・低炭素型セメント、 低炭素型コンクリートの 更なる開発と普及促進による製品差別化に 伴い、低炭素型建設 構造物への採用が進む ことで事業が拡大 ・ヒートアイランド現象 低減効果、燃費向上 効果、耐久性の観点で LCAに優れたコンクリー ト舗装の普及拡大に より、セメント需要が 増加 | 大 | 小 | ||
| ・リサイ クル市場 | ・廃棄物、副産物の発生 減少による収集競争の 激化に伴う ①廃棄物の品質悪化、 処理費低下 ②副産物の品質悪化、 価格高騰 ・バイオマスエネルギーの 調達競争激化による 価格高騰 | ・廃棄物、副産物利用技術 の進歩による受入品目の 増加 ・多様な廃棄物を収集、 前処理可能な設備を 活用した、廃棄物からの 資源抽出、精製、販売等 の新規事業分野の拡大 | 小 | 小 | ||||
| ・光電子、 新材料事業 | ― | ・気温上昇に伴う生活様式 やワークスタイルの変化 に起因するデータ通信量 増加により、省力デバイ ス需要が高まり、光通信 部品や半導体製造装置 部品の需要増加 | 中 | 中 | ||||
| 分 類 | リスク | 機会 | 1.5℃シナリオ | 4℃シナリオ | ||||
| ネガティブ | ポジ ティブ | ネガティブ | ポジ ティブ | |||||
| 移行リスク | 評判 | ・ステーク ホルダーの 評価の変化 | ・温室効果ガス排出企業への評価低下による資金調達難等 | ・下記により企業評価が 向上し、資金調達や 社員採用に有利に働く ①積極的な気候変動対策 ②CO2利活用分野の 新規技術開発 ③新規事業推進 ④廃棄物、副産物処理の 貢献 | 中 | 小 | ||
| 物理的リスク | 急性的 | ・自然災害 の頻発、激甚化 | ・大型台風、豪雨等頻発に よる生産拠点、サプライ チェーン寸断による 支障、復旧コスト増加 | ・国土強靭化による インフラ整備、構築物の 補修、補強等に伴う セメント関連製品の 需要増加 ・災害廃棄物処理による 社会的価値の向上 | 中 | 大 | 大 | 小 |
| 慢性的 | ・平均気温 の上昇、慢性的な 異常気象 の発生 | ・気温上昇による現場 従業員の健康、安全面 での労働力への悪影響 ・海面上昇を起因とする 高潮による臨海拠点の 浸水被害 | ・省人化(工期短縮、 施工効率化)工法の 需要増加 ・海洋製品の需要拡大、 事業創出による新規 収益源の獲得 | 大 | 小 | |||
1.5℃シナリオでは、炭素税の引き上げや化石エネルギーに関する規制が強化され、セメント製造及び自家発電設備において石炭を使用するほかに、他社石炭火力発電所から発生する石炭灰・石膏をセメント原料とする当社グループにとって、コスト増加が想定される一方で、石炭に代わる熱エネルギーとして廃プラスチックや木質バイオマスエネルギーの利用を高めることで、リサイクル処理収入による収益拡大と化石エネルギーの代替によるCO2排出量削減が期待できます。
また、CO2の排出削減を推進するためには、研究開発や設備投資によるコストの増加が予想されますが、同時に、技術力向上による新たな事業の創出、収益機会の獲得が期待できます。低炭素社会への移行に際し、ユーザー行動の変容が想定されますが、製造過程でCO2を発生するセメントを敬遠し需要が減少する可能性がある反面、アスファルト舗装よりもライフサイクルコストに優れ、気温上昇を抑える効果も有するコンクリート舗装の評価が高まり、セメント需要が増加する可能性もあります。
リサイクル市場では、廃棄物・副産物の発生量が減少することが想定され、廃棄物・副産物の調達に影響を及ぼす可能性がある一方で、廃棄物・副産物処理技術の向上に伴い受入れ可能な品目が拡大し、収益の増加が期待できます。
光電子、新材料事業分野では、ライフスタイル、ワーキングスタイルの変革によるデータトラフィックの増大や脱化石エネルギーによる電力の増加に伴う需給逼迫リスクが増大することから、大容量、高速、省電力デバイスのニーズが高まり、光電子事業の光通信部品や新材料事業の半導体製造装置部品の需要増が期待できます。
4℃シナリオの物理的リスクでは、気候変動を原因とする平均気温の上昇や自然災害の頻発・激甚化により、生産部門での労働力への影響や生産拠点やサプライチェーンの被害増加が生じ、コスト増加が見込まれる反面、国土強靭化に資するセメント関連製品や省人化工法等の需要増加が見込まれます。
<2050年カーボンニュートラルへのロードマップ(2050年CNに向けた11のステップ)>セメント産業におけるカーボンニュートラルの達成のためには、化石エネルギー起源CO2を可能な限り削減した上で、排出量の約6割を占める主原料の石灰石由来のプロセス起源CO2(注3)の削減が不可欠です。当社グループは2050年までに自社の技術革新・事業基盤の革新と共に、国内外のあらゆる削減方策を総動員して組み合わせる「削減ミックス」が重要と考えています。
当社グループが2050年カーボンニュートラルに向けて取り組む11のCO2削減施策を開発段階に応じて3段階に整理し、ロードマップとして策定しました。
(注3)プロセス起源CO2とは、セメントの主原料である石灰石の炭酸カルシウム(CaCO3)がセメントの必須
化合物である酸化カルシウム(CaO)に化学変化する過程で発生するCO2であります。

・表中の①、②、③、④、⑤:確実性の高い施策
確実性の高い施策として以下のような施策があり、既に取組を始めています。
①化石エネルギー・総エネルギー削減
エネルギー由来CO2の排出量削減に向けて、セメント工場での原料ミル最新鋭化などの省エネルギー・高効率
な設備導入を進めます。当社グループの化石エネルギー代替率は業界トップクラスであり、エネルギー原単位
についてもトップクラスの効率性を達成しています。
②バイオマス・廃棄物エネルギー利用
セメント工場で、リサイクル処理・受入設備の投資を行い、バイオマス・廃棄物エネルギー(廃プラスチッ
ク、廃タイヤ、廃油など)の利用を増やし、化石エネルギー代替を進めます。栃木工場と岐阜工場においては
2023年度で代替率60%を超えており、業界トップクラスに位置しています。
③電力削減・クリーン化
セメント工場で使用する電力は約80%を自家発電設備により供給していますが、バイオマス等非化石エネル
ギーの最大化を図ります。栃木工場のバイオマス発電所では、石炭レス発電を可能としています。またこの
バイオマス発電により、本社オフィス使用電力は実質カーボンニュートラルとなっています。更に、今後石炭
から非化石エネルギーへの転換も検討していきます。
④クリンカ比率低減によるセメント低炭素化
セメント中の少量混合成分の上限を5%から10%に上げて、クリンカ比率低減を図る為のJIS改正に向けて
業界を挙げて取り組んでいます。また高炉スラグの分量増加等、混合セメントの利用拡大を進めていきます。
⑤カルシウム(Ca)含有廃棄物原料化による脱炭酸削減
一般焼却灰、廃コンクリート、廃石膏ボード等のCa含有廃棄物を収集し、「CO2を排出しないCa原料」として
利用することで、天然石灰石の使用量を減らします。
・表中の⑥、⑦、⑧:技術開発中の施策
プロセス由来のCO2削減に関しては排ガスからCO2を回収して有効利用するCCUSが必須です。
⑥人工石灰石の製造・利用によるCCU(注4)
国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)のグリーンイノベーション基金での採択
事業「多様なカルシウム源を用いた炭酸塩化技術の確立」では、下記図のように、Ca含有廃棄物から酸化
カルシウム(CaO)を抽出し、セメント焼成で発生するCO2と再結合させる「CaとCO2のデュアル・リサイクル
技術」で人工石灰石(CaCO3)を生成するCCUを実現します。(2030年までに総事業費69億円の研究開発プロ
ジェクト)
本技術は、セメント工場が排出するCO2を「削減」するのみならず、人工石灰石中にCO2を「固定化」する
ことができます。今後国内の製造拠点で人工石灰石を量産し、建設産業はもちろん、様々な産業での用途に
販売していきます。
(注4)CCU…Carbon dioxide Capture and Utilization=二酸化炭素の分離回収と有効利用

⑦カーボンリサイクルセメント(CRC)の製造
上記⑥で製造した人工石灰石を使用したCRCを製造し、ゼネコンや二次製品メーカーに販売していきます。
2025年の大阪・関西万博においては、住友館の建築物や物品の一部に、当社のCRCが使用されています。
⑧CO2利用革新技術による新規事業
ネイチャーポジティブ企業としてセメント工場や発電所を最大限に利用する新規事業に取り組んでいます。
バイオマス発電所の排ガス中のCO2を農林業へ利用する取組や、藻場増殖礁を進化させ、急速に注目を集める
ブルーカーボンによるCO2固定も検討し、多様な新事業を創出し、次世代セメント産業の一つの姿を提案してい
きます。
・表中の⑨、⑩:調査検討中の施策
⑨アンモニア・水素・合成メタンの活用
2030年代後半の実用化を目指し、セメントキルンの燃焼に化石エネルギーとアンモニア・水素の混焼を
用いる焼成技術の開発の検討を進めます。また、セメント工場の排ガスからCO2を分離回収して製造した
合成メタンを燃料として活用する方法も研究していきます。
⑩CCS(注5)
CCUで有効利用できないCO2は地中に貯留(CCS)する必要がありますが、設備規模、コストなどにおいて
課題があります。現在各地で検討が進んでおり、国内法も整備され始めています。サプライチェーンの構築が
必要となる為、パートナーと協働検討を始めています。
(注5)CCS…Carbon dioxide Capture and Storage=二酸化炭素回収・貯留技術
・表中の⑪:オフセット
⑪コンクリート供用中のCO2吸収(国際的コンセンサス)
コンクリートやセメント製品はCO2を鉱物固定するCaなどが豊富に含まれ、大気中のCO2の鉱物固定源として
有望です。国際的にコンクリート構造物が供用期間中を通じて大気中のCO2を吸収・固定化する検討が進んで
います。当社は通常のセメントの2倍以上の大気中CO2吸収固定速度を持つNETs(注6)技術実装製品の開発・
試験施工に成功し、実用化の目途を付けました。今後は定量的な評価方法のコンセンサスを得ることで、CO2
排出量をオフセットする可能性を検討しています。
(注6)NETs…Negative Emission Technologies
=大気中のCO2を回収・吸収し,貯留・固定化することで大気中のCO2除去に資する技術