有価証券報告書-第20期(平成29年4月1日-平成30年3月31日)

【提出】
2018/06/29 10:14
【資料】
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【項目】
130項目

対処すべき課題

文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
今後のわが国経済は、企業収益や雇用情勢が堅調に推移し、緩やかな回復基調が続くものと期待されます。世界経済についても拡大基調が続いているものの、米国の通商政策に伴う貿易摩擦の懸念や地政学的リスクなどから不確実性が強まっており、予断を許さない状況が続くものと思われます。
当社グループを取り巻く事業環境につきましては、主要事業である国内セメント事業において、2020年東京オリンピック・パラリンピック関連工事や都市部の再開発投資、災害対策などにより需要の回復が期待される一方、人手不足の深刻化や原材料価格の高騰などの影響が懸念されます。
また米国経済は、堅調な企業収益や雇用環境を背景に、個人消費や設備投資が回復基調を維持し、景気拡大が続くものと見込まれますが、政策運営の不透明感は強く、引き続き情勢を注視する必要があります。
このような情勢の中で、当社グループは、2020年代半ばをイメージした「ありたい姿・目指す方向性」を設定し、持続的成長へ向けた中長期的な方向性を明確にした上で、その第1ステップとして、2015年度から2017年度までの3年間にわたり「17中期経営計画」に取り組んでまいりました。2018年度からは、第2ステップとして、2020年度までの3年間を実行期間とする「20中期経営計画」を策定し、その実現に向けて精力的に取り組んでまいります。
(1) ありたい姿・目指す方向性
当社グループは、太平洋セメントグループ経営理念を念頭におきながら、2020年代半ばをイメージした「ありたい姿・目指す方向性」として、「グループの総合力を発揮し、環太平洋において社会に安全・安心を提供する企業集団を目指す」ことを掲げ、その実現に至るまでを3つのステップに分けて積極的に取り組んでおります。
(2) 20中期経営計画の位置付け
20中期経営計画は、2018年度から2020年度までの3年間を対象期間とし、「ありたい姿・目指す方向性」の実現に向けた第2ステップとして位置付けております。第1ステップである17中期経営計画で実行してきた事業戦略・財務戦略とその成果をベースに、残された課題に対する継続的な取り組みと新たな施策の確実な実行により、将来の持続的成長に向けた強固な事業基盤を構築し、次のステップへと着実につなげてまいります。
(3) 20中期経営計画の基本方針
20中期経営計画では、以下の基本方針に基づき、強固な事業基盤の構築に向けて取り組んでまいります。
①将来の事業環境の変化を先取りし、あらゆる角度からのイノベーションを図り、成長に向けて前進する企業集団を構築する。
②社会基盤産業として、国土強靭化への取り組みに向けて、高品質な製品の安定供給、ソリューションの提供及び先進的な技術開発を通じて安全・安心社会の構築に貢献する。
③徹底的なコスト削減による既存事業の収益基盤の強化と財務体質の更なる改善を進めるとともに、当社グループの持続的な成長に資する成長分野への投資を積極的に実行する。
(4) 経営目標
20中期経営計画では、以下のとおり経営目標を設定し、強靭な収益基盤を構築してまいります。
<2020年度目標>売上高営業利益率 9%以上
ROA(経常利益) 8%以上
(5) 事業戦略
①既存事業の収益基盤強化と成長戦略の策定・実行
徹底的なコスト削減やプロセス・イノベーションの推進等を通じて収益基盤を強化するとともに、新たな価値創造と差別化により競争優位を追求してまいります。更に、収益力の創出に向けた成長投資を実行し、着実に事業戦略の実現に取り組むことで、社会課題の解決に貢献してまいります。
<セメント(国内)>適正価格の早期実現を目指すとともに、徹底的なコスト削減を行い、収益力の強化に取り組みます。生産面・物流面における安定供給体制の強化・拡充により、国家的プロジェクト等への安定供給責任を果たします。更に、生産プロセスにおける新たな技術開発・施策を通じて、気候変動の緩和策への取り組みを積極的に行います。
<セメント(海外)>環太平洋において戦略的な事業領域の拡大を図るとともに、品質・技術・環境のブランドイメージを確立することにより、更なるプレゼンスの向上を実現します。進出地域におけるインフラ整備や資源循環型社会の構築、環境関連規制強化への対応など、様々な社会課題の解決に貢献します。
<資源>中長期を見据えた資源政策により持続的成長の礎を築き、盤石な資源安定供給体制を確立します。また、当社グループが保有する豊富な資源を最大限活用し、既存事業の収益拡大を図ります。更に、将来的な事業の育成に注力するとともに、海外資源事業の構築を目指します。
<環境事業>既存事業の収益力の最大化を図るとともに、先進的な技術開発による新たなビジネスモデルの構築を図ります。従来の静脈産業としての役割に加え、廃棄物や副産物から有用な資源を抽出して提供する新たな資源循環の役割を担うことで、更なる社会貢献に寄与します。
<建材・建築土木>事業環境の変化に順応し得る持続可能な事業基盤を確立し、既存事業の競争力と財務体質の強化を図ります。更に、成長領域での新たな収益源の開拓と既存事業のシナジー最大化に取り組みます。
<その他(個別企業群)>個別企業の収益力強化を図るとともに、当社グループとしてのシナジーが期待できる新たなビジネスモデルの構築を追求します。
②国家的プロジェクトへの対応
今後本格化が見込まれる福島県の復旧・復興への取り組みや、東京オリンピック・パラリンピック開催に向けた様々なインフラ整備、その他大型インフラプロジェクトなどの国家的プロジェクトに対し、当社グループの強みを最大限に活かし総力を結集して、高品質な製品の安定供給とソリューションの提供を着実に実行してまいります。
(6) 研究開発戦略
各事業部門を支える成長のエンジンとして、グループ全体の成長に資する研究開発に取り組んでまいります。また、社会基盤産業としての社会課題解決の一翼を担う研究開発に注力するとともに、国家的プロジェクトへの対応として、必要とされる技術を的確に開発し提供してまいります。
(7) 経営基盤の強靭化
17中期経営計画に引き続き、「CSR目標2025」で設定した目標の実現に向け、着実に取り組んでまいります。また、グローバル人材の確保・育成に取り組むとともに、働き方改革と健康経営の推進を通じて労働生産性の向上と快適な職場環境の構築に努めてまいります。更に、グループガバナンスの強化とコーポレートガバナンスの充実、選択と集中の継続、バリューチェーンの競争力強化などに取り組むことにより、経営基盤の強靭化を図ってまいります。