有価証券報告書-第66期(平成31年4月1日-令和2年3月31日)
文中の将来に関する事項は、当社が当連結会計年度末現在において判断したものです。
(1)経営の基本方針
当社は、「全従業員の物心両面の幸福を追求すると同時に、人類、社会の進歩発展に貢献すること」という経営理念の追求のため、「人間として何が正しいか」を判断基準とした企業哲学である「京セラフィロソフィ」と、独自の経営管理システムである「アメーバ経営」の実践を通して、持続的な売上拡大と高い収益性の実現を目指しています。
(2)目標とする経営指標
当社は、高成長・高収益企業の実現に向けて、売上高及び税引前利益の持続的な2桁成長を目指します。
(3)中長期的な経営戦略
当社はグループ内に有している様々な経営資源の連携により、総合力を最大限に発揮し、高成長・高収益企業の実現を目指しています。特に「情報通信」、「自動車関連」、「環境・エネルギー」、「医療・ヘルスケア」を重点市場と捉え、M&Aの推進や研究開発の強化に努めるとともに、生産性倍増への取り組みを進めています。
a. M&Aの推進

上記M&Aの実施により、新たに約2,000億円規模の売上増加となりました。今後、この売上拡大を利益の向上に結び付けることが重要課題と考えています。
現在、M&Aにより取得した各事業と既存事業とのシナジーを早急に実現するため、事業戦略、販売・管理体制、システム連携等の経営統合(PMI:Post-Merger Integration)に取り組んでいます。これにより、一層の売上拡大及び採算改善を進め、利益成長への本格貢献を図ります。
b. 研究開発の強化
新製品開発・新事業創造に向けて研究開発体制を再編しました。
前連結会計年度には、研究開発部門とマーケティング部門との連携を進めるとともに、重点テーマ別に組織を横断した開発体制を構築しました。また、当連結会計年度には、技術者の集約及び社外との協業推進に向けて、新たに「みなとみらいリサーチセンター」を設立しました。これらの取り組みにより、ソニー㈱とライオン㈱との協業で、子供用歯ブラシ「Possi」を開発しました。
今後も自社開発にとどまらず、オープンイノベーションの推進により、「人類、社会の進歩発展に貢献する」新製品及びサービスの創出に努めます。
c. 生産性倍増に向けた取り組み
当社は、グループをあげて生産性倍増に取り組んでいます。
製造部門においては、モデル事業部門によるAI(人工知能)やロボットの活用による自動化等の効果を検証し、他部門・他拠点への展開を進めています。また、間接部門においては、デジタル化の推進による働き方改革に取り組み、業務効率の向上を図るとともに、サービス価値の最大化に努めます。
新型コロナウイルス感染症が拡大する中、製造部門、間接部門ともに、省人化や在宅勤務等への迅速な対応が求められましたが、これらの取り組みにより、順調に対処することができています。今後も引き続き、生産性倍増に向けた活動を推進してまいります。
d. 持続的成長に向けて
新型コロナウイルス感染症の拡大により、当社も各国政府の方針や行動計画に基づき生産を停止する等、事業活動に大きな影響を受けました。今後も様々な要因による事業環境の変化が想定されますが、当社は、今回の新型コロナウイルス感染症への対応を今後の経営に活かし、事業基盤の強化に努めます。
また、デジタル改革による価値創造が産業社会の潮流となる中、当社は新たな成長領域で積極的に事業を展開し、成長のスピードアップを図ります。これに向けて、以下の3点を進めます。
・当社のコア技術であるセラミック等の素材技術から部品、デバイス・機器、システム・サービスまでの多岐にわたる
経営資源の一層の活用
・成長事業への積極投資及び研究開発の強化
・グループを挙げたデジタル化の推進
(4)優先的に対処すべき事業上の課題
a. 新型コロナウイルス感染症への対応
当社は、お客様、お取引先様、従業員並びにご家族の健康維持を最優先に、感染予防・感染拡大の防止に努めています。具体的には、お客様の要求に応えるための生産を優先する一方、不急の生産の停止や在宅勤務等を実施しています。また、子女が通う学校の臨時休校に伴い、通勤や在宅勤務が困難な社員へ特別休暇を付与する等の措置を講じています。
b. 成長市場への積極展開
5GやADAS、IoT、ヘルスケア等の分野は、今後ますますの普及・発展が見込まれます。これらの分野に向けて当社は、グループ内シナジーの追求及び、M&Aを含む外部協業を進め、既存事業の拡大を図るとともに、新事業の創出に努めます。
具体的には、5G基地局用部品、センサーカメラ等のADAS関連製品のラインアップの拡充や、ドキュメント関連の課題を解決するドキュメントソリューションサービスの強化、メディカル事業の海外展開等に取り組みます。
また、これらの製品の生産能力拡大に向けた設備投資や、新製品創出に向けた研究開発投資を積極的に進めます。
c. 新たな事業領域の開拓
当社は、社会課題の解決に向けて、既存事業で培った技術等を基に、外部との協業を通じ、新たな事業領域の開拓を図ります。
スマートエナジー事業(注)においては、再生可能エネルギーの普及や自家発電・自家消費需要への対応に向けた、高品質・低コストの機器・システム販売及びサービス事業の拡大に努めます。
また、交通の安全性や利便性の改善を実現するモビリティ事業の拡大を図ります。センシングデバイス等のADAS関連の部品と通信機器等を連携させ、次世代交通システムの構築に取り組みます。
d. 経営基盤の強化
当社は、デジタル化の推進により、グループの経営基盤の強化を進めます。製造現場への協働型ロボットの導入による生産性の向上に加え、AIを活用した品質管理や顧客要求への対応強化に努めます。2020年4月には、これらの取り組みのさらなる強化と管理部門の業務改善に向けて、デジタル化の推進を担う専門部門を新設しました。
これらの取り組みによる働き方改革及び、デジタル技術を活用した生産・販売・物流管理の強化により、持続可能な企業運営に努めます。
(注)2020年4月1日付で、ソーラーエネルギー事業の名称をスマートエナジー事業へ変更しました。
(5)経営環境
当連結会計年度においては、新型コロナウイルス感染症の拡大により、一部の販売網及び調達並びに供給において遅延等が生じました。今後の影響は不透明であり懸念されますが、事業への影響を最小限にとどめられるよう、対策の立案・実施に努めます。
a.販売網
当社の製品やサービスは、当社営業員やグループの販売会社、または第三者である販売代理店を通じて世界各国で供給されています。当社は主要販売拠点に営業員や技術担当者等を配置し、顧客や販売代理店等に技術サポートや販売支援を行っています。このような多様な販売網を通じて当社製品の売上拡大が図られるとともに、優れた顧客サービスを提供
できるものと考えています。
産業・自動車用部品セグメントにおいては、半導体産業をはじめとする各種産業機械市場や自動車関連市場向けに、直接販売に加え、販売代理店等を通じて部品、デバイス、機器等の幅広い製品を世界各国へ販売しています。また、近年当社グループに加わった電動工具事業等では、小売店やインターネット等による販売も行っています。
半導体関連部品セグメントでは、主に国内外のデバイスや部品、機器メーカーへ直接販売を行っています。
電子デバイスセグメントについては、国内外のデバイスや機器メーカーへ直接販売を行うとともに、代理店販売も積極的に活用しています。
コミュニケーションセグメントの携帯端末事業においては、日本及び米国の通信キャリア向けにスマートフォンや携帯電話を供給しています。通信モジュール事業では、自動車部品メーカーに対して車載用通信モジュールを供給するとともに、IoTによる業務改革やサービス向上を検討されている企業ユーザーやシステムインテグレーターに対して、IoTモジュールを提案しています。
情報通信サービス事業については、一般企業や公共機関等向けにICT事業や経営コンサルティング事業を、国内に加え中国等に展開するとともに、通信キャリアや無線機器ベンダー、太陽光発電事業者向けにエンジニアリング事業を、主要市場である国内に加え、マレーシアやミャンマー等にて展開しています。
ドキュメントソリューションセグメントでは、長寿命で低ランニングコストを実現する自社ブランドのプリンターや複合機をはじめ、ドキュメント関連の経営課題を解決するドキュメントソリューションサービスを、37の販売会社から140か国以上に広がる地域で、主に代理店を経由して提供しています。なお、グローバルに対応が必要な大口案件については、主に直接販売で対応しています。
生活・環境セグメントのソーラーエネルギー事業においては、太陽光発電システムを直接販売のほか、販売子会社や代理店等を通じて国内外で販売しています。また、蓄電システムやエネルギーマネジメントシステムについては、国内の代理店やフランチャイズ店、ハウスメーカー経由で販売しています。エネルギーサービス事業は、協業先との合弁会社等を通じて展開しています。
医療機器事業では、主に販売代理店を通じて人工関節や人工骨、人工歯根等を病院や歯科医院へ販売しています。
宝飾応用商品関連事業については、直営店や一般小売店に加え、インターネットを通じて宝飾品やセラミックナイフ等の応用商品を販売しています。
なお、国内向け取引は円で、海外向け取引は様々な通貨で取引が行われますが、主な取引通貨は米ドルとユーロです。
b.原材料調達及び供給状況
当社は、事業活動を行う上で、様々な原材料や部材を購入しています。当連結会計年度においては、生産計画に見合った原材料や部材の調達が可能となりました。
当社の部品事業で使用する主な原材料には、アルミナやジルコニア、窒化珪素、シリコン粒子、ニッケル粉、エポキシ樹脂、タングステン等があります。また、機器・システム事業においては、基幹部品であるチップセットや液晶ディスプレイ等が主な仕入れ部材です。なお、当社は素材からシステム、サービスに至るまで多岐にわたる製品を展開していることから、各事業で使用する部材や部品の一部はグループ内で調達しており、内製部品の中には、部品や機器の差別化に寄与する部品も含まれます。
当社は、原材料や部材の調達においては複数社からの購買を基本方針としており、安定的かつ適正価格での調達に努めています。ただし、顧客による使用原材料の指定がある場合や、製品品質を維持するために必要な場合等、例外的に供給業者を限定する場合があります。
これらの原材料や部材の購入価格は、需給状況や、原料や燃料の高騰等の影響、並びに、海外供給業者より外貨建てで購入する場合には為替レートの状況等により変動します。当社は多岐にわたる事業を有していることから、原材料や部材の調達に関してはグループ内の連携により価格交渉力の向上を図るとともに、原価低減等の内部改善により、各事業で原材料や部材の価格上昇を吸収するよう努めています。
当社は、サプライヤーと積極的なコミュニケーションをはかり、相互信頼に基づくパートナーシップの構築に注力しており、サプライヤーセミナーや懇親会を通じ、当社の調達活動への理解促進に努めています。
また、人権・労働、環境保護などの社会的責任を果たしていくため、サプライヤーと一体となり、CSR活動の推進に取り組んでいます。災害発生時の速やかな事業復旧・継続に関するBCP(Business Continuity Plan、事業継続計画)策定など、サプライチェーン全体で取り組まなければならないCSR課題に適切に対応するため、「京セラサプライチェーンCSR調達ガイドライン」を定め、本ガイドラインに基づきサプライヤーのCSR活動に関する取り組み状況の調査を行っています。詳細は、当社ホームページ(https://www.kyocera.co.jp/ecology/supplier.html)をご参照ください。
c.競合他社との競争優位性
当社は、さらなる事業強化に向けてグループ内シナジーの一層の追求を図るとともに、生産性の向上に向けてAIやロボットの活用を促進しています。また、M&Aや協業等、外部経営資源の積極的な活用により、競争力の強化に努めています。各事業における強みは次のとおりです。
(a)産業・自動車用部品
当社は、創業以来、ファインセラミック材料及び製品の開発により新市場の開拓に努めています。現在では情報通信市場や、半導体を含む産業機械市場等の幅広い市場向けに製品を供給しています。新市場開拓の過程で培ってきたセラミック材料技術や製品デザイン力等のノウハウの蓄積が、顧客要求への対応を可能にする生産技術力に繋がっています。加えて、高い生産能力を有していることが競合他社との差別化要因であり、これによりグローバルサプライヤーとしての地位を確立しています。
自動車用部品においては、ファインセラミック技術を活用したパワートレイン向け部品で高シェアの製品を有しています。また、自動車の安全性向上のために搭載が増加している車載カメラについては、他社との協業も含めた新製品や新技術開発により、シェアの拡大を図っています。
液晶ディスプレイでは、中小型サイズに特化し、車載用及び産業用を中心に展開しています。また、医療用等の信頼性が求められる分野での新製品開発を通じ、一層の競争力の強化と事業拡大に努めています。
機械工具事業においては、総合工具メーカーとして事業の拡大に努めています。主に自動車関連市場での金属加工に使用されている切削工具事業については世界的に多くの競合会社がありますが、当社は高い材料技術をベースに顧客の生産性向上に寄与する多種多様な工作機械用切削工具を供給しています。また、自動車産業に加え、航空機やエネルギー市場等の幅広い市場への製品展開を進めています。空圧・電動工具事業においては、積極的なM&Aにより製品ラインアップの拡充や販売網の強化に取り組んでいます。
(b)半導体関連部品
セラミック材料部品事業では、ファインセラミックに関する高度な開発力及び生産技術力、並びに供給能力を有しており、世界市場においてマーケットリーダーの地位を確立しています。競合会社は主に国内メーカーですが、当社の有する優れた経営資源を活用し、デジタルコンシューマ機器、車載、光通信、医療、IoT関連市場等に向けて幅広くセラミック材料部品の用途拡大を図っています。また、拡大する市場ニーズへの対応として積極的な増産体制を構築しており、高シェアの維持、向上に努めています。
有機パッケージ及び多層ボード事業においては、国内及びアジアメーカーが主な競合会社です。当社は、優れた電気特性や高い信頼性が求められるサーバーやルーターといった通信インフラ向けに使用されるハイエンドのフリップチップパッケージや高多層ボードといった製品において主要サプライヤーの一社となっています。さらに、電装化が進む車載ADAS市場に対して、これまで培ってきた設計技術等の技術力を活かした新製品の開発を進め、事業競争力の強化を図っています。
(c)電子デバイス
当社は、各種コンデンサや水晶部品、コネクタ、サーマルプリントヘッド及びインクジェットプリントヘッド、パワー半導体、各種センサーや無線通信用アンテナ等の幅広い製品を開発・製造しており、これらの充実した製品ラインアップにより、グローバルに多様な用途へ展開しています。
スマートフォン向けコンデンサや水晶部品、コネクタでは、小型・高機能等のニーズを捉えた最先端分野への製品展開に注力することで、主にハイエンドのスマートフォン向けでは主要サプライヤーの一社となっています。引き続き、セラミックコンデンサは5G向け等の需要増が見込まれることから、新製品投入及び生産能力の拡大を図り、シェア拡大に努めています。また、当社の子会社であるAVX Corporationは、タンタルコンデンサ市場において一般産業、自動車、通信インフラ等の幅広い分野へ展開する当業界のリーダーであると同時に、研究開発や積極的なM&Aにより、製品ラインアップ及び事業領域、並びにシェアの拡大を図っています。
また、バーコードラベル印字等に使用されるサーマルプリントヘッドや、捺染印刷等の産業向けで使用されるインクジェットプリントヘッドにおいて当社は高いシェアを有しており、積極的な新製品の投入や用途拡大により、さらなるシェアの向上に努めています。
(d)コミュニケーション
通信機器事業においては、主に国内向けにスマートフォンやフィーチャーフォンを供給しています。主な競合会社は米国、アジア、並びに国内携帯電話メーカーです。当社は、防水・高耐久等の差別化を図った製品や、シニア向け簡単ケータイから高機能スマートフォン等多種の製品展開により、多様なユーザーニーズに対応しています。
通信モジュール事業においては、通信技術の応用展開により、車載やIoT向けに事業領域の拡大を図っています。当社はこれまで培ってきた国内の大手キャリアとの関係を活かし、他社に先駆けて製品投入ができており、この点がさらなる技術の高度化への対応に向けた強みとなっています。
情報通信サービス事業は主に国内で事業を展開しています。アプリケーションソフトウェアやセキュリティソフト等を展開するICT事業では、AI、IoTの普及に伴うユーザーのニーズに対応した製品の開発、供給を図っています。また、IoT社会での無線通信ネットワークとしてニーズが高まっているLPWA(Low Power Wide Area、低消費電力広域ネットワーク)ネットワーク「Sigfox」を日本で唯一展開できる事業者としてライセンスを獲得したことで、国内LPWA通信サービス分野では主要な一社となっています。
(e)ドキュメントソリューション
当レポーティングセグメントでは、プリンターや複合機、商業用インクジェットプリンターの製造・販売、及びドキュメントソリューションサービスをグローバルに展開しており、競合は主に日本や米国の大手ドキュメント機器会社です。
当社は、自社開発の長寿命感光体ドラムの搭載や低消費電力システムにより、環境に配慮し、かつ低ランニングコストで差別化を実現した製品を提供しています。また、高画質かつ省エネルギーを追求したトナーの開発にも継続的に取り組んでおり、付加価値の向上に努めています。さらに、高速機から低速機まで幅広く製品ラインアップを拡充し、様々な顧客ニーズへの対応を進めています。同時に、基幹部品やトナーコンテナ等の製造ラインの自動化を行い、生産効率を良くすることでコスト競争力を高めています。
新たに事業参入した商業用インクジェット事業では、高画質、高生産・高耐久を実現すると同時に、多品種大量印刷ニーズにも対応でき、印刷コストを低減する経済性に優れた製品の開発に取り組んでいます。
また、ドキュメントソリューション事業の拡大により一層の競争力の向上を図っています。モバイル機器とクラウド環境の連携等、お客様のニーズに対応した様々なアプリケーションソフトウェアを効果的に活用し、顧客ごとに最適なドキュメント環境を提供することでビジネスチャンスの拡大を進めています。また、積極的なM&AによりECM事業等を手掛ける企業を加えたことで、ドキュメントソリューション事業の顧客への提供価値を一層高めています。
(f)生活・環境
ソーラーエネルギー事業においては、太陽電池のパネルの製造から太陽光発電システムの販売を行っています。多くの競合会社が存在し、価格競争は厳しさを増しているものの、業界の先駆者として40年以上にわたる事業活動から蓄積した技術により、高い変換効率と長期信頼性を実現した製品が当社の強みとなっています。さらに、システム設計、施工・メンテナンスまで提供することで、公共・産業用市場で国内トップクラスの導入実績を有しています。当社は、今後の拡大が見込まれる自家消費需要を捉えるため、グループの経営資源やノウハウに加え、外部との協業を活用し、蓄電池やEMS(Energy Management System)等の開発強化、次世代エネルギーマネジメントに関する実証実験への参画等により、エネルギーソリューション事業の展開を積極的に進めています。当期においては世界初となるクレイ型リチウムイオン蓄電池の開発・製造に成功し、低コストで安全性の高い製品の量産に今後取り組む予定です。また、長期間にわたるアフターサービスやメンテナンスの提供を可能とする強固な財務基盤を有している点も当社の優位性となっています。
医療機器事業では、人工関節や脊椎インプラント、人工歯根が主要製品です。主に国内市場で展開しており、国内メーカーとしてはトップクラスの競争力を有しています。製品の長寿命化を実現する表面処理技術や抗菌性を高める技術を付与した製品の展開により、競争力の一層の強化に努めています。また、M&Aを通じた米国市場への展開により、事業規模のさらなる拡大を図っています。
d.主要市場の動向
当社は、「情報通信」「自動車関連」「環境・エネルギー」「医療・ヘルスケア」の4つを重点市場と捉えています。
「情報通信」については、5Gが市場のけん引役になると考えています。2019年には、セラミックコンデンサ等の5G基地局向け製品の需要の伸びが見られました。2020年は、一層のインフラ整備に向けた基地局関連製品の需要増に加え、5G対応スマートフォンの市場投入開始による端末関連製品の需要増が見込まれますが、新型コロナウイルス感染症の影響による生産減や販売減少等も予想されることから、今後の需要は不透明な状況です。このような状況にあるものの、高速・大容量・低遅延・多接続を可能にする5Gサービスを自営網で活用する動きがあります。これに伴い、ローカル5Gの構築に向けたシステム・サービス事業の拡大が見込まれます。
「自動車関連」については、2020年の自動車販売台数は低調に推移するものと予想しています。自動運転や安全性の向上等、運転者の負担軽減に貢献するADASや、環境性向上等のニーズは引き続き高まるものの、新型コロナウイルス感染症の影響による生産停止や販売減少による影響が懸念されます。これに伴い、当社が展開するカメラモジュールや通信モジュール、各種電子部品、LEDヘッドライト用部品等の需要への影響を想定しています。
「環境・エネルギー」については、当社ソーラーエネルギー事業の主要市場である国内市場の需要喚起は、電力固定価格買取制度から再生可能エネルギーの自家消費へシフトしていくものと予想しています。当社はこの新たな需要を収益に結びつけるため、ソーラーパネルに加え、世界初となるクレイ型リチウムイオン蓄電池やSOFC(Solid Oxide Fuel Cell、家庭用固体酸化物形燃料電池)、EMS等の拡販に努めます。また、再生可能エネルギーを軸にした効率的なエネルギー利用に向けて、バーチャルパワープラント(VPP)や地域エネルギーマネジメントシステム等のインフラ構築の動きもみられ、今後、機器だけでなく、各種システムやサービスまで含めたニーズの拡大が予想されます。
「医療・ヘルスケア」における当社主要製品は人工関節製品です。高齢化社会に向けて、これらの需要は今後さらに高まるものと予想しています。当社は、国内の人工関節市場では国内メーカーでシェアNO.1であり、医療関係者より高い信頼を得ています。これらの強みを活かし、今後はマーケットボリュームの大きい海外市場への展開を進めます。さらに、再生医療やモバイルヘルスケア関連の需要も見込まれることから、当社は、外部機関とも連携し、各種プロジェクトへの参画や、新規事業の創造に取り組んでいます。
(1)経営の基本方針
当社は、「全従業員の物心両面の幸福を追求すると同時に、人類、社会の進歩発展に貢献すること」という経営理念の追求のため、「人間として何が正しいか」を判断基準とした企業哲学である「京セラフィロソフィ」と、独自の経営管理システムである「アメーバ経営」の実践を通して、持続的な売上拡大と高い収益性の実現を目指しています。
(2)目標とする経営指標
当社は、高成長・高収益企業の実現に向けて、売上高及び税引前利益の持続的な2桁成長を目指します。
(3)中長期的な経営戦略
当社はグループ内に有している様々な経営資源の連携により、総合力を最大限に発揮し、高成長・高収益企業の実現を目指しています。特に「情報通信」、「自動車関連」、「環境・エネルギー」、「医療・ヘルスケア」を重点市場と捉え、M&Aの推進や研究開発の強化に努めるとともに、生産性倍増への取り組みを進めています。
a. M&Aの推進

上記M&Aの実施により、新たに約2,000億円規模の売上増加となりました。今後、この売上拡大を利益の向上に結び付けることが重要課題と考えています。
現在、M&Aにより取得した各事業と既存事業とのシナジーを早急に実現するため、事業戦略、販売・管理体制、システム連携等の経営統合(PMI:Post-Merger Integration)に取り組んでいます。これにより、一層の売上拡大及び採算改善を進め、利益成長への本格貢献を図ります。
b. 研究開発の強化
新製品開発・新事業創造に向けて研究開発体制を再編しました。前連結会計年度には、研究開発部門とマーケティング部門との連携を進めるとともに、重点テーマ別に組織を横断した開発体制を構築しました。また、当連結会計年度には、技術者の集約及び社外との協業推進に向けて、新たに「みなとみらいリサーチセンター」を設立しました。これらの取り組みにより、ソニー㈱とライオン㈱との協業で、子供用歯ブラシ「Possi」を開発しました。
今後も自社開発にとどまらず、オープンイノベーションの推進により、「人類、社会の進歩発展に貢献する」新製品及びサービスの創出に努めます。
c. 生産性倍増に向けた取り組み
当社は、グループをあげて生産性倍増に取り組んでいます。製造部門においては、モデル事業部門によるAI(人工知能)やロボットの活用による自動化等の効果を検証し、他部門・他拠点への展開を進めています。また、間接部門においては、デジタル化の推進による働き方改革に取り組み、業務効率の向上を図るとともに、サービス価値の最大化に努めます。
新型コロナウイルス感染症が拡大する中、製造部門、間接部門ともに、省人化や在宅勤務等への迅速な対応が求められましたが、これらの取り組みにより、順調に対処することができています。今後も引き続き、生産性倍増に向けた活動を推進してまいります。
d. 持続的成長に向けて
新型コロナウイルス感染症の拡大により、当社も各国政府の方針や行動計画に基づき生産を停止する等、事業活動に大きな影響を受けました。今後も様々な要因による事業環境の変化が想定されますが、当社は、今回の新型コロナウイルス感染症への対応を今後の経営に活かし、事業基盤の強化に努めます。
また、デジタル改革による価値創造が産業社会の潮流となる中、当社は新たな成長領域で積極的に事業を展開し、成長のスピードアップを図ります。これに向けて、以下の3点を進めます。
・当社のコア技術であるセラミック等の素材技術から部品、デバイス・機器、システム・サービスまでの多岐にわたる
経営資源の一層の活用
・成長事業への積極投資及び研究開発の強化
・グループを挙げたデジタル化の推進
(4)優先的に対処すべき事業上の課題
a. 新型コロナウイルス感染症への対応
当社は、お客様、お取引先様、従業員並びにご家族の健康維持を最優先に、感染予防・感染拡大の防止に努めています。具体的には、お客様の要求に応えるための生産を優先する一方、不急の生産の停止や在宅勤務等を実施しています。また、子女が通う学校の臨時休校に伴い、通勤や在宅勤務が困難な社員へ特別休暇を付与する等の措置を講じています。
b. 成長市場への積極展開
5GやADAS、IoT、ヘルスケア等の分野は、今後ますますの普及・発展が見込まれます。これらの分野に向けて当社は、グループ内シナジーの追求及び、M&Aを含む外部協業を進め、既存事業の拡大を図るとともに、新事業の創出に努めます。
具体的には、5G基地局用部品、センサーカメラ等のADAS関連製品のラインアップの拡充や、ドキュメント関連の課題を解決するドキュメントソリューションサービスの強化、メディカル事業の海外展開等に取り組みます。
また、これらの製品の生産能力拡大に向けた設備投資や、新製品創出に向けた研究開発投資を積極的に進めます。
c. 新たな事業領域の開拓
当社は、社会課題の解決に向けて、既存事業で培った技術等を基に、外部との協業を通じ、新たな事業領域の開拓を図ります。
スマートエナジー事業(注)においては、再生可能エネルギーの普及や自家発電・自家消費需要への対応に向けた、高品質・低コストの機器・システム販売及びサービス事業の拡大に努めます。
また、交通の安全性や利便性の改善を実現するモビリティ事業の拡大を図ります。センシングデバイス等のADAS関連の部品と通信機器等を連携させ、次世代交通システムの構築に取り組みます。
d. 経営基盤の強化
当社は、デジタル化の推進により、グループの経営基盤の強化を進めます。製造現場への協働型ロボットの導入による生産性の向上に加え、AIを活用した品質管理や顧客要求への対応強化に努めます。2020年4月には、これらの取り組みのさらなる強化と管理部門の業務改善に向けて、デジタル化の推進を担う専門部門を新設しました。
これらの取り組みによる働き方改革及び、デジタル技術を活用した生産・販売・物流管理の強化により、持続可能な企業運営に努めます。
(注)2020年4月1日付で、ソーラーエネルギー事業の名称をスマートエナジー事業へ変更しました。
(5)経営環境
当連結会計年度においては、新型コロナウイルス感染症の拡大により、一部の販売網及び調達並びに供給において遅延等が生じました。今後の影響は不透明であり懸念されますが、事業への影響を最小限にとどめられるよう、対策の立案・実施に努めます。
a.販売網
当社の製品やサービスは、当社営業員やグループの販売会社、または第三者である販売代理店を通じて世界各国で供給されています。当社は主要販売拠点に営業員や技術担当者等を配置し、顧客や販売代理店等に技術サポートや販売支援を行っています。このような多様な販売網を通じて当社製品の売上拡大が図られるとともに、優れた顧客サービスを提供
できるものと考えています。
産業・自動車用部品セグメントにおいては、半導体産業をはじめとする各種産業機械市場や自動車関連市場向けに、直接販売に加え、販売代理店等を通じて部品、デバイス、機器等の幅広い製品を世界各国へ販売しています。また、近年当社グループに加わった電動工具事業等では、小売店やインターネット等による販売も行っています。
半導体関連部品セグメントでは、主に国内外のデバイスや部品、機器メーカーへ直接販売を行っています。
電子デバイスセグメントについては、国内外のデバイスや機器メーカーへ直接販売を行うとともに、代理店販売も積極的に活用しています。
コミュニケーションセグメントの携帯端末事業においては、日本及び米国の通信キャリア向けにスマートフォンや携帯電話を供給しています。通信モジュール事業では、自動車部品メーカーに対して車載用通信モジュールを供給するとともに、IoTによる業務改革やサービス向上を検討されている企業ユーザーやシステムインテグレーターに対して、IoTモジュールを提案しています。
情報通信サービス事業については、一般企業や公共機関等向けにICT事業や経営コンサルティング事業を、国内に加え中国等に展開するとともに、通信キャリアや無線機器ベンダー、太陽光発電事業者向けにエンジニアリング事業を、主要市場である国内に加え、マレーシアやミャンマー等にて展開しています。
ドキュメントソリューションセグメントでは、長寿命で低ランニングコストを実現する自社ブランドのプリンターや複合機をはじめ、ドキュメント関連の経営課題を解決するドキュメントソリューションサービスを、37の販売会社から140か国以上に広がる地域で、主に代理店を経由して提供しています。なお、グローバルに対応が必要な大口案件については、主に直接販売で対応しています。
生活・環境セグメントのソーラーエネルギー事業においては、太陽光発電システムを直接販売のほか、販売子会社や代理店等を通じて国内外で販売しています。また、蓄電システムやエネルギーマネジメントシステムについては、国内の代理店やフランチャイズ店、ハウスメーカー経由で販売しています。エネルギーサービス事業は、協業先との合弁会社等を通じて展開しています。
医療機器事業では、主に販売代理店を通じて人工関節や人工骨、人工歯根等を病院や歯科医院へ販売しています。
宝飾応用商品関連事業については、直営店や一般小売店に加え、インターネットを通じて宝飾品やセラミックナイフ等の応用商品を販売しています。
なお、国内向け取引は円で、海外向け取引は様々な通貨で取引が行われますが、主な取引通貨は米ドルとユーロです。
b.原材料調達及び供給状況
当社は、事業活動を行う上で、様々な原材料や部材を購入しています。当連結会計年度においては、生産計画に見合った原材料や部材の調達が可能となりました。
当社の部品事業で使用する主な原材料には、アルミナやジルコニア、窒化珪素、シリコン粒子、ニッケル粉、エポキシ樹脂、タングステン等があります。また、機器・システム事業においては、基幹部品であるチップセットや液晶ディスプレイ等が主な仕入れ部材です。なお、当社は素材からシステム、サービスに至るまで多岐にわたる製品を展開していることから、各事業で使用する部材や部品の一部はグループ内で調達しており、内製部品の中には、部品や機器の差別化に寄与する部品も含まれます。
当社は、原材料や部材の調達においては複数社からの購買を基本方針としており、安定的かつ適正価格での調達に努めています。ただし、顧客による使用原材料の指定がある場合や、製品品質を維持するために必要な場合等、例外的に供給業者を限定する場合があります。
これらの原材料や部材の購入価格は、需給状況や、原料や燃料の高騰等の影響、並びに、海外供給業者より外貨建てで購入する場合には為替レートの状況等により変動します。当社は多岐にわたる事業を有していることから、原材料や部材の調達に関してはグループ内の連携により価格交渉力の向上を図るとともに、原価低減等の内部改善により、各事業で原材料や部材の価格上昇を吸収するよう努めています。
当社は、サプライヤーと積極的なコミュニケーションをはかり、相互信頼に基づくパートナーシップの構築に注力しており、サプライヤーセミナーや懇親会を通じ、当社の調達活動への理解促進に努めています。
また、人権・労働、環境保護などの社会的責任を果たしていくため、サプライヤーと一体となり、CSR活動の推進に取り組んでいます。災害発生時の速やかな事業復旧・継続に関するBCP(Business Continuity Plan、事業継続計画)策定など、サプライチェーン全体で取り組まなければならないCSR課題に適切に対応するため、「京セラサプライチェーンCSR調達ガイドライン」を定め、本ガイドラインに基づきサプライヤーのCSR活動に関する取り組み状況の調査を行っています。詳細は、当社ホームページ(https://www.kyocera.co.jp/ecology/supplier.html)をご参照ください。
c.競合他社との競争優位性
当社は、さらなる事業強化に向けてグループ内シナジーの一層の追求を図るとともに、生産性の向上に向けてAIやロボットの活用を促進しています。また、M&Aや協業等、外部経営資源の積極的な活用により、競争力の強化に努めています。各事業における強みは次のとおりです。
(a)産業・自動車用部品
当社は、創業以来、ファインセラミック材料及び製品の開発により新市場の開拓に努めています。現在では情報通信市場や、半導体を含む産業機械市場等の幅広い市場向けに製品を供給しています。新市場開拓の過程で培ってきたセラミック材料技術や製品デザイン力等のノウハウの蓄積が、顧客要求への対応を可能にする生産技術力に繋がっています。加えて、高い生産能力を有していることが競合他社との差別化要因であり、これによりグローバルサプライヤーとしての地位を確立しています。
自動車用部品においては、ファインセラミック技術を活用したパワートレイン向け部品で高シェアの製品を有しています。また、自動車の安全性向上のために搭載が増加している車載カメラについては、他社との協業も含めた新製品や新技術開発により、シェアの拡大を図っています。
液晶ディスプレイでは、中小型サイズに特化し、車載用及び産業用を中心に展開しています。また、医療用等の信頼性が求められる分野での新製品開発を通じ、一層の競争力の強化と事業拡大に努めています。
機械工具事業においては、総合工具メーカーとして事業の拡大に努めています。主に自動車関連市場での金属加工に使用されている切削工具事業については世界的に多くの競合会社がありますが、当社は高い材料技術をベースに顧客の生産性向上に寄与する多種多様な工作機械用切削工具を供給しています。また、自動車産業に加え、航空機やエネルギー市場等の幅広い市場への製品展開を進めています。空圧・電動工具事業においては、積極的なM&Aにより製品ラインアップの拡充や販売網の強化に取り組んでいます。
(b)半導体関連部品
セラミック材料部品事業では、ファインセラミックに関する高度な開発力及び生産技術力、並びに供給能力を有しており、世界市場においてマーケットリーダーの地位を確立しています。競合会社は主に国内メーカーですが、当社の有する優れた経営資源を活用し、デジタルコンシューマ機器、車載、光通信、医療、IoT関連市場等に向けて幅広くセラミック材料部品の用途拡大を図っています。また、拡大する市場ニーズへの対応として積極的な増産体制を構築しており、高シェアの維持、向上に努めています。
有機パッケージ及び多層ボード事業においては、国内及びアジアメーカーが主な競合会社です。当社は、優れた電気特性や高い信頼性が求められるサーバーやルーターといった通信インフラ向けに使用されるハイエンドのフリップチップパッケージや高多層ボードといった製品において主要サプライヤーの一社となっています。さらに、電装化が進む車載ADAS市場に対して、これまで培ってきた設計技術等の技術力を活かした新製品の開発を進め、事業競争力の強化を図っています。
(c)電子デバイス
当社は、各種コンデンサや水晶部品、コネクタ、サーマルプリントヘッド及びインクジェットプリントヘッド、パワー半導体、各種センサーや無線通信用アンテナ等の幅広い製品を開発・製造しており、これらの充実した製品ラインアップにより、グローバルに多様な用途へ展開しています。
スマートフォン向けコンデンサや水晶部品、コネクタでは、小型・高機能等のニーズを捉えた最先端分野への製品展開に注力することで、主にハイエンドのスマートフォン向けでは主要サプライヤーの一社となっています。引き続き、セラミックコンデンサは5G向け等の需要増が見込まれることから、新製品投入及び生産能力の拡大を図り、シェア拡大に努めています。また、当社の子会社であるAVX Corporationは、タンタルコンデンサ市場において一般産業、自動車、通信インフラ等の幅広い分野へ展開する当業界のリーダーであると同時に、研究開発や積極的なM&Aにより、製品ラインアップ及び事業領域、並びにシェアの拡大を図っています。
また、バーコードラベル印字等に使用されるサーマルプリントヘッドや、捺染印刷等の産業向けで使用されるインクジェットプリントヘッドにおいて当社は高いシェアを有しており、積極的な新製品の投入や用途拡大により、さらなるシェアの向上に努めています。
(d)コミュニケーション
通信機器事業においては、主に国内向けにスマートフォンやフィーチャーフォンを供給しています。主な競合会社は米国、アジア、並びに国内携帯電話メーカーです。当社は、防水・高耐久等の差別化を図った製品や、シニア向け簡単ケータイから高機能スマートフォン等多種の製品展開により、多様なユーザーニーズに対応しています。
通信モジュール事業においては、通信技術の応用展開により、車載やIoT向けに事業領域の拡大を図っています。当社はこれまで培ってきた国内の大手キャリアとの関係を活かし、他社に先駆けて製品投入ができており、この点がさらなる技術の高度化への対応に向けた強みとなっています。
情報通信サービス事業は主に国内で事業を展開しています。アプリケーションソフトウェアやセキュリティソフト等を展開するICT事業では、AI、IoTの普及に伴うユーザーのニーズに対応した製品の開発、供給を図っています。また、IoT社会での無線通信ネットワークとしてニーズが高まっているLPWA(Low Power Wide Area、低消費電力広域ネットワーク)ネットワーク「Sigfox」を日本で唯一展開できる事業者としてライセンスを獲得したことで、国内LPWA通信サービス分野では主要な一社となっています。
(e)ドキュメントソリューション
当レポーティングセグメントでは、プリンターや複合機、商業用インクジェットプリンターの製造・販売、及びドキュメントソリューションサービスをグローバルに展開しており、競合は主に日本や米国の大手ドキュメント機器会社です。
当社は、自社開発の長寿命感光体ドラムの搭載や低消費電力システムにより、環境に配慮し、かつ低ランニングコストで差別化を実現した製品を提供しています。また、高画質かつ省エネルギーを追求したトナーの開発にも継続的に取り組んでおり、付加価値の向上に努めています。さらに、高速機から低速機まで幅広く製品ラインアップを拡充し、様々な顧客ニーズへの対応を進めています。同時に、基幹部品やトナーコンテナ等の製造ラインの自動化を行い、生産効率を良くすることでコスト競争力を高めています。
新たに事業参入した商業用インクジェット事業では、高画質、高生産・高耐久を実現すると同時に、多品種大量印刷ニーズにも対応でき、印刷コストを低減する経済性に優れた製品の開発に取り組んでいます。
また、ドキュメントソリューション事業の拡大により一層の競争力の向上を図っています。モバイル機器とクラウド環境の連携等、お客様のニーズに対応した様々なアプリケーションソフトウェアを効果的に活用し、顧客ごとに最適なドキュメント環境を提供することでビジネスチャンスの拡大を進めています。また、積極的なM&AによりECM事業等を手掛ける企業を加えたことで、ドキュメントソリューション事業の顧客への提供価値を一層高めています。
(f)生活・環境
ソーラーエネルギー事業においては、太陽電池のパネルの製造から太陽光発電システムの販売を行っています。多くの競合会社が存在し、価格競争は厳しさを増しているものの、業界の先駆者として40年以上にわたる事業活動から蓄積した技術により、高い変換効率と長期信頼性を実現した製品が当社の強みとなっています。さらに、システム設計、施工・メンテナンスまで提供することで、公共・産業用市場で国内トップクラスの導入実績を有しています。当社は、今後の拡大が見込まれる自家消費需要を捉えるため、グループの経営資源やノウハウに加え、外部との協業を活用し、蓄電池やEMS(Energy Management System)等の開発強化、次世代エネルギーマネジメントに関する実証実験への参画等により、エネルギーソリューション事業の展開を積極的に進めています。当期においては世界初となるクレイ型リチウムイオン蓄電池の開発・製造に成功し、低コストで安全性の高い製品の量産に今後取り組む予定です。また、長期間にわたるアフターサービスやメンテナンスの提供を可能とする強固な財務基盤を有している点も当社の優位性となっています。
医療機器事業では、人工関節や脊椎インプラント、人工歯根が主要製品です。主に国内市場で展開しており、国内メーカーとしてはトップクラスの競争力を有しています。製品の長寿命化を実現する表面処理技術や抗菌性を高める技術を付与した製品の展開により、競争力の一層の強化に努めています。また、M&Aを通じた米国市場への展開により、事業規模のさらなる拡大を図っています。
d.主要市場の動向
当社は、「情報通信」「自動車関連」「環境・エネルギー」「医療・ヘルスケア」の4つを重点市場と捉えています。
「情報通信」については、5Gが市場のけん引役になると考えています。2019年には、セラミックコンデンサ等の5G基地局向け製品の需要の伸びが見られました。2020年は、一層のインフラ整備に向けた基地局関連製品の需要増に加え、5G対応スマートフォンの市場投入開始による端末関連製品の需要増が見込まれますが、新型コロナウイルス感染症の影響による生産減や販売減少等も予想されることから、今後の需要は不透明な状況です。このような状況にあるものの、高速・大容量・低遅延・多接続を可能にする5Gサービスを自営網で活用する動きがあります。これに伴い、ローカル5Gの構築に向けたシステム・サービス事業の拡大が見込まれます。
「自動車関連」については、2020年の自動車販売台数は低調に推移するものと予想しています。自動運転や安全性の向上等、運転者の負担軽減に貢献するADASや、環境性向上等のニーズは引き続き高まるものの、新型コロナウイルス感染症の影響による生産停止や販売減少による影響が懸念されます。これに伴い、当社が展開するカメラモジュールや通信モジュール、各種電子部品、LEDヘッドライト用部品等の需要への影響を想定しています。
「環境・エネルギー」については、当社ソーラーエネルギー事業の主要市場である国内市場の需要喚起は、電力固定価格買取制度から再生可能エネルギーの自家消費へシフトしていくものと予想しています。当社はこの新たな需要を収益に結びつけるため、ソーラーパネルに加え、世界初となるクレイ型リチウムイオン蓄電池やSOFC(Solid Oxide Fuel Cell、家庭用固体酸化物形燃料電池)、EMS等の拡販に努めます。また、再生可能エネルギーを軸にした効率的なエネルギー利用に向けて、バーチャルパワープラント(VPP)や地域エネルギーマネジメントシステム等のインフラ構築の動きもみられ、今後、機器だけでなく、各種システムやサービスまで含めたニーズの拡大が予想されます。
「医療・ヘルスケア」における当社主要製品は人工関節製品です。高齢化社会に向けて、これらの需要は今後さらに高まるものと予想しています。当社は、国内の人工関節市場では国内メーカーでシェアNO.1であり、医療関係者より高い信頼を得ています。これらの強みを活かし、今後はマーケットボリュームの大きい海外市場への展開を進めます。さらに、再生医療やモバイルヘルスケア関連の需要も見込まれることから、当社は、外部機関とも連携し、各種プロジェクトへの参画や、新規事業の創造に取り組んでいます。