有価証券報告書-第96期(令和2年4月1日-令和3年3月31日)
有報資料
当社は、需要家のニーズや環境・エネルギー等に対する社会的ニーズが多様化するなかで、「技術先進性」の拡大を通じた利益成長とCO2削減を含む環境に配慮した製鉄技術構築に資する研究開発分野に対し、重点的に経営資源を投入しています。鉄鋼研究所、先端技術研究所及びプロセス研究所の3つの中央研究組織と各製鉄所に配置した技術研究部が強固な連携体制を構築し、「リサーチ・アンド・エンジニアリング」の理念のもと、基礎基盤研究から、応用開発、エンジニアリングまでの一貫した研究開発を推進しています。
当社の強みは、①研究開発とエンジニアリングの融合による総合力及び開発スピード、②需要家立地の研究開発体制と需要家ニーズに対する的確なソリューション提案力、③高度な基盤技術に基づく新技術の開発力、④製鉄プロセス技術を基盤とした環境・エネルギー課題への対応力、⑤産学連携、海外アライアンス及び需要家との共同研究です。当社はこれらの強みを活かし、鉄を中心とした新しい機能を持つ商品開発をはじめ、環境に配慮した革新的生産プロセスの創出と迅速な実用化を図り、持続可能な開発目標(SDGs)に沿った社会の発展に貢献してまいります。
当連結会計年度における当社及び連結子会社全体の研究開発費は653億円です。各セグメントの研究主要課題、成果及び研究開発費は次のとおりです。
(製鉄)
当セグメントに係る研究開発費は573億円です。
当社は、3地点の研究開発センター(富津市、尼崎市、波崎市)を軸に、①鉄鋼研究所では、鉄鋼材料・商品と利用技術・ソリューション研究開発、②先端技術研究所では、共通基盤技術研究及びCO2の分離回収や再利用に関する研究、新素材事業を中心とした製鉄以外のセグメント事業支援開発、③プロセス研究所では、設備エンジニアリングと設備保全技術開発を担当する設備・保全技術センターと密接な連携を図りながらCO2削減も考慮した製鉄プロセス関連の研究開発に取り組み、開発の短期化・効率化を目指し、鉄源コストの削減・基幹ラインの生産性の抜本的向上・省CO2化等の研究開発の加速化を進めてまいりました。
<薄板>・当社は「自動車の進化を支える超高強度鋼板加工技術の開発」で第53回(令和2年度)市村産業賞貢献賞を受賞しました。市村賞は科学技術の進歩、産業の発展に貢献した技術開発者を表彰する伝統と権威ある賞です。当社は同賞を3年連続で受賞しております。自動車に求められる安全性向上のための車体高強度化とCO2排出量削減のための軽量化を両立するためには、車体により高強度の鋼板を適用することが有効です。当社は世界に先駆けて冷間プレス用超高強度鋼板を開発しましたが、強度が高いほどプレス成形性が低下して自動車部品への加工が困難となる課題がありました。そこでコンピューターシミュレーションを駆使して、プレス成型時の材料変形を適切に制御するプレス加工技術「自由曲げ工法」と「フランジ連続化工法」及び、それらを実現する金型装置を開発しました。開発技術は加工時の材料変形量を従来の50%以下に低減する画期的な工法であり、超高強度鋼板の形状が複雑な部品への加工を可能にしました。開発技術はお客様の歩留まり改善に貢献するとともに車体の軽量化と安全性向上を両立し、1000万台以上の自動車に適用されています。また、該当技術のCO2排出量の削減量は42,300トン/年と算出されております。
・当社は超ハイテン鋼板の供給体制を強化するため、東日本製鉄所君津地区第6CGLの商業運転を開始しました。同設備は月産能力が33千トン、強度1.5GPa級の超ハイテン鋼板の製造が可能です。自動車業界においては、世界的に環境規制強化と衝突安全基準の厳格化が進み、車体の軽量化・高強度化ニーズの高まりから超ハイテン鋼の適用が増加しており、今後も需要拡大が見込まれます。また、今後さらなる普及が見込まれる電気自動車等の電動車においても走行距離やバッテリー重量の問題により車体軽量化ニーズが一層高まると考えられます。こうした車体の軽量化・高強度化を実現する超ハイテン鋼板ニーズの拡大に対応するために供給体制を強化しました。
・当社が販売するブリキ、ティンフリースチール、ラミネート鋼板の3製品において、このたび国際規格ISO14025に準拠した一般社団法人サステナブル経営推進機構による「エコリーフ」環境ラベルの認証を取得しました。これらの製品はスチール缶の飲料容器をはじめ、さまざまな容器に用いられる極薄系のスチール素材です。容器用素材としては国内では初めての認証取得となります。「エコリーフ」はライフサイクルアセスメント手法を用いて、資源採取、製造から廃棄・リサイクルまでの製品のライフサイクルを考えた環境情報を定量的に開示するEPD認証制度の一つです。当社の製品を使用する場合、その製品に関わる環境負荷の客観的な評価ができます。
・当社が開発した新商品「FeLuce®(フェルーチェ)」(ヘアライン調電気めっき鋼板)が、公益財団法人日本デザイン振興会が主催する2020年度グッドデザイン賞を受賞しました。当社の薄板製品としては初めての受賞となります。「FeLuce®」は防錆性能を担保するためのめっき層自体に意匠性を付与するというエコで無駄のない画期的な製法により生まれた新しい鋼板です。金属本来の素材感を活かすシンプルなものづくりに挑戦しました。素材表面に塗料やフィルム等を付加していく従来手法によらず、薄板に要求される機能性に金属本来が持つ美しさを加えました。
<厚板>・当社は衝突安全性に優れる船舶用高延性厚鋼板「Nsafe®-Hull」を開発しています。同厚鋼板は延性阻害成分である硫化物等の介在物の生成を極限まで低減させ、熱加工処理時の圧延・冷却を精密に制御することで従来規則の1.5倍以上の伸びを実機操業の大量生産で具現化し、衝突による船舶の損傷軽減を実現しています。該当技術は国立研究開発法人海上・港湾・航空技術研究所、今治造船㈱及び一般財団法人日本海事協会と共同で、岩谷直治記念財団より第47回(令和2年度)岩谷直治記念賞及び第3回日本オープンイノベーション大賞「国土交通大臣賞」を受賞しました。岩谷直治記念賞は、エネルギー及び環境に関する技術開発において顕著な産業上の貢献が認められる業績を表彰する賞であり、2018年度のHRX®19の開発に続く受賞となります。日本オープンイノベーション大賞は、組織の壁を越えて知識や技術、経営資源を組み合わせ新しい取組みを行うオープンイノベーションをさらに推進するために、今後のロールモデルとして期待される取り組みを表彰する賞であり、今回当社が鉄鋼メーカーとして初めて受賞しました。また、「Nsafe®-Hull」の開発技術は第51回(2018年度)市村産業貢献賞や第66回(令和元年度)大河内記念生産賞をはじめとした多くの賞を受賞しております。「Nsafe®-Hull」は超大型タンカー(VLCC)7隻を含めて31隻の実船に適用され、油流出防止並びに船舶の安全性向上に寄与しています。
<鋼管>・当社の優れた商品開発力や高い納期遵守達成、サプライチェーン全体でのコスト削減、共同研究による20件以上のプロジェクト実績等が評価され、ロイヤルダッチシェルグループより石油・ガス掘削事業への貢献度の高いサプライヤーに対して与えられる「サプライヤーオブザイヤー(Equipment Supplier of the year)」を住友商事㈱と共同で受賞しました。この賞に選出されるのは世界で一社のみであり、2015年と2019年に続いて3度目の受賞となります。引き続き高い技術力とサービスを駆使して、近年ますます過酷化する石油ガス開発に貢献してまいります。
<棒線>・当社は従来鋼に比べて靭性と対水素脆性を改善し、さらに低合金化にも成功した低合金高強度懸架ばね用鋼「RIDESWELL®」を開発しました。自動車の軽量化による燃費向上のため、自動車用懸架ばねにも高強度化による軽量化が強く求められています。近年、ばね加工技術の発展により規格鋼SUP12をより高強度で使用することが海外を中心に検討されていますが、高強度化に伴う靭性や対水素脆性等の必要な機械特性が低下するという課題がありました。そこで添加成分とプロセスを適切に制御したことで偏析や粒界炭化物の析出を抑制し、対水素脆化性が低下することなく高強度化を実現した「RIDESWELL®」の開発に成功しました。
<建材>・当社は圧延プロセスを改善し、大断面サイズを中心とした「ハイパービーム®(外法一定H形鋼)」のサイズメニューを拡充し、「メガハイパービーム™(MEGA NSHYPER BEAM™)」として2020年4月より販売を開始しました。「ハイパービーム®」と「メガハイパービーム™」は一般社団法人サステナブル経営推進機構が認証する「エコリーフ」環境ラベルを取得しました。「ハイパービーム®」は1989年から製造販売を開始し、ウェブ高さとフランジ幅を一定にすることで設計簡素化と加工省力化を実現しております。今回の「メガハイパービーム™」の販売により、さらなる建築物の大型化に伴う鉄骨の大断面化、深刻化する人手不足を背景とした工期短縮ニーズにお応えします。
<チタン>・当社が展開するチタン製品ブランド「TranTixxii®」の採用が広がっています。「TranTixxii®」は屋根材として、小田急電鉄片瀬江ノ島駅の新駅舎屋、弘前レンガ倉庫美術館と新潟県上越市の八坂神社に採用されました。屋根材以外にも利用が広がっています。新開発チタン合金Super-TIX20AFGがカシオ計算機㈱より2021年4月に発売される新モデルの時計に採用されました。また、社寺建築金物の一つである六葉金物の素材として日本で初めて採用・商品化され、さらにアイジー工業㈱の金属デザインパネル「Xium」にも採用されました。チタンはその高耐食性や装飾性以外でも耐震補強材として利用されております。当社と日鉄防食㈱が製造販売するチタン箔シートが世界遺産登録「富岡製糸場西置繭所」(国宝)耐震補強工事に補強材の接合材として採用されました。
<交通産機品>・当社は新幹線用新型ブレーキパッドの開発で2020年度機械学会関西支部技術賞を東海旅客鉄道㈱と共同で受賞しました。新幹線の安全性を向上させるためのブレーキ制動距離の短縮と利便性を向上させるための速度向上、これら相反するニーズに応えるためには既存のブレーキ装置、特に従来のブレーキパッドでは適用できない領域に達しつつありました。このことから新幹線用のブレーキディスクで圧倒的なシェアを有する当社の強みを生かし、新型ブレーキパッドを開発しました。新型ブレーキパッドは、ブレーキディスクに適正化したばね構造で摩擦材を支持することでブレーキ時により均一にディスクとパッドを接触させ、既存のブレーキ装置と比べて最高速度からのフルブレーキで100℃以上の温度低下とブレーキ性能(摩擦係数)の安定化を達成しました。現在では東海道新幹線を走行する全ての車両(2020年7月にデビューしたN700Sを含む)に当社が開発した新型ブレーキパッドが採用されております。
<製鉄プロセス等>・当社は「新型高精度平坦度計を用いた高強度熱延鋼板製造技術の開発」で令和2年度文部科学大臣表彰科学技術賞(開発部門)を受賞しました。同技術は昨年度の第8回ものづくり日本大賞において製造・生産プロセス部門優秀賞に続く受賞となります。優れた機械特性を有する鋼材を製造するためには加工熱処理が必要になります。加工熱処理を高精度で行うためには熱延鋼板の平坦度確保が大前提となります。今回受賞した技術は、熱間圧延中に鋼板の伸び率の幅方向分布(平坦度)を高精度に測定したうえで圧延機を自動制御し、機械特性に優れた薄鋼板を安定的に製造する技術です。薄鋼板の熱間圧延においてすべての圧延材を対象に適用できる自動平坦度制御は世界初の技術です。
・当社は、室蘭製鉄所構内において製銑設備を保有する北海製鉄㈱の第2高炉を昨年7月に吹き止めし改修工事を実施してきましたが、本年11月に火入れを行い、稼働を再開しました。今回の改修は、当社では初めて高炉本体を覆う「鉄皮」をそのまま残した状態で関連設備と耐火物の更新を行う工法を採用しました。また、数学モデルを用いた炉内状況予測モデルを導入しました。これまでに高炉に取り付けたセンサーから得られた情報を解析し、鉄鉱石等の原料投入量や炉内への熱風吹込み量について、最適な操業条件を自動で調整することが可能となりました。高炉操業安定化とオペレーターの負荷軽減につながることが期待されます。当社は、同システムの運用で得られた結果を他高炉に利用することでさらなる安定生産、生産性向上を図ってまいります。
・当社は昨年7月に富山大学、千代田化工建設㈱、日鉄エンジニアリング㈱、ハイケム㈱及び三菱商事㈱と共同でNEDOの「カーボンリサイクル・次世代火力発電等技術開発/CO2排出削減・有効利用実用化技術開発/化学品へのCO2利用技術開発」に応募し、採択されました。当研究グループでは、CO2を原料とするパラキシレン製造に関する技術開発事業への取組みを開始しております。パラキシレンは高純度テレフタル酸を経由してポリエステル繊維やペットボトル用樹脂等に加工される化合物です。仮にパラキシレン需要のすべてをCO2原料に切り替えた場合のCO2固定量は1.6億トン/年になります。
・当社は京都大学、公益財団法人高輝度科学研究センター及び信州大学と共同で従来の吸着材とは異なるゲート型吸着材を活用した二酸化炭素の高効率分離システムを提案しました。本研究グループは自身が吸熱的に構造変形することでCO2を取り込む際の熱発生を抑えることが可能なゲート型吸着剤に着目し、優れたCO2分離性能を明らかにしました。同時にゲート型吸着剤の特性を活用した高速度吸着分離システムを考案し、CO2分離効率を従来方式と比べて極めて高くできることを見出しました。
・当社は製鉄所での設備状態監視基盤の構築に向けて、日本電気㈱のAI分析ソフトウェア「NEC Advanced Analytics - インバリアント分析」を採用し、製鉄製造現場におけるデジタルトランスフォーメーションを加速します。本年1月より東日本製鉄所君津地区で設備状態のオンライン監視における長期間運用テストを開始しました。インバリアント分析技術はリアルタイムに得られる計測データから“いつもの状態”を学習し、“いつもと違う”異常の予兆を自動検知し、トラブルによる設備の稼働停止や設備不良による製品の品質劣化を未然に防ぐことが期待されます。
・当社と日鉄ソリューションズ㈱は室蘭製鉄所において、製鉄製造現場における自営無線網の適用検証を共同で開始します。自営無線網は高速な無線網を自社専用に運用することで、大量のデータ通信を容量無制限で実現することはもとより、社外の通信網を一切通らないことから極めて高いセキュリティを担保することができます。また、高い建造物の多い製鉄所に特有の電波が届きにくい場所も含めて広い敷地内の隅々まで通信できるメリットもあります。
<スラグ・セメント>・当社の鉄鋼スラグ製品「カルシア改質材」が函館港の西防波堤補強工事に活用されています。今回の西防波堤補強工事の一環として行われている浚渫工事で発生した浚渫土に当社カルシア改質材を混合してカルシア改質土に変え、西防波堤の背後に盛土として補強のために利用されています。カルシア改質材は、軟弱な浚渫土の強度増強のみならず、濁りの発生を抑制できる改良材として活用されております。なお、北海道開発局の直轄工事でカルシア改質土を用いるのは初めてのことです。カルシア改質材は製鋼工程で副次的に生成される製鋼スラグを原料として、成分管理と粒度調整を施した軟弱浚渫土改質材です。カルシア改質材により改質されたカルシア改質土は深掘れ窪地の埋戻材料や埋立て工事材料、浅場・干潟の造成材料への有効活用が可能です。
・当社は、北海道古宇郡泊村及び古宇郡漁業組合と共同で2019年11月に古宇郡泊村地区に鉄分供給鉄鋼スラグ製品「ビバリー®ユニット」を埋設し、磯焼けで藻場が失われた海域を再生する「海の森づくり」をスタートしています。その一環で昨年7月に「ビバリー®ユニット」を埋設した海域において藻場の再生が確認できました。これまで当社は日本全国38カ所で「海の森づくり」による藻場の再生に取り組んできました。磯焼けの原因の一つである鉄をはじめとする栄養分の不足が挙げられています。当社の「ビバリー®ユニット」は鉄分不足を解消するため、製鉄プロセスにおける副産物である鉄鋼スラグと腐食殿混合物をヤシの繊維で編んだ袋に入れることで、鉄イオンを腐食酸鉄として長時間持続的に海藻まで届けることが可能です。当社はこれからも藻場の再生を通じてCO2の吸収・固定に貢献してまいります。
(エンジニアリング)
当セグメントに係る研究開発費は22億円です。
日鉄エンジニアリング㈱における研究開発への取組みは以下のとおりです。
・製鉄プラント分野 当社との共研を中心とした先進的製鉄プロセス関連の開発
・環境分野 溶融炉競争力強化、土壌浄化技術の開発
・エネルギー分野 オンサイト発電の高効率化/操業支援
・海洋分野 海底パイプライン敷設の自動化・高速化・高品質化
・建築分野 免制震デバイス商品の開発、次世代商品の探索
・陸上パイプライン分野 陸上パイプライン溶接技術の開発
(ケミカル&マテリアル)
当セグメントに係る研究開発費は39億円です。
日鉄ケミカル&マテリアル㈱における研究開発への取組みは以下のとおりです。
・コールケミカル製品、化学品、機能材料、複合材料等に関する研究開発
(システムソリューション)
当セグメントに係る研究開発費は16億円です。
日鉄ソリューションズ㈱における研究開発への取組みは以下のとおりです。
・システムの構築・運用における品質及び生産性の向上
・ITサービスの競争力強化、価値共創の取組み
・デジタルトランスフォーメーション(DX)を実現する技術への取組み
当社の強みは、①研究開発とエンジニアリングの融合による総合力及び開発スピード、②需要家立地の研究開発体制と需要家ニーズに対する的確なソリューション提案力、③高度な基盤技術に基づく新技術の開発力、④製鉄プロセス技術を基盤とした環境・エネルギー課題への対応力、⑤産学連携、海外アライアンス及び需要家との共同研究です。当社はこれらの強みを活かし、鉄を中心とした新しい機能を持つ商品開発をはじめ、環境に配慮した革新的生産プロセスの創出と迅速な実用化を図り、持続可能な開発目標(SDGs)に沿った社会の発展に貢献してまいります。
当連結会計年度における当社及び連結子会社全体の研究開発費は653億円です。各セグメントの研究主要課題、成果及び研究開発費は次のとおりです。
(製鉄)
当セグメントに係る研究開発費は573億円です。
当社は、3地点の研究開発センター(富津市、尼崎市、波崎市)を軸に、①鉄鋼研究所では、鉄鋼材料・商品と利用技術・ソリューション研究開発、②先端技術研究所では、共通基盤技術研究及びCO2の分離回収や再利用に関する研究、新素材事業を中心とした製鉄以外のセグメント事業支援開発、③プロセス研究所では、設備エンジニアリングと設備保全技術開発を担当する設備・保全技術センターと密接な連携を図りながらCO2削減も考慮した製鉄プロセス関連の研究開発に取り組み、開発の短期化・効率化を目指し、鉄源コストの削減・基幹ラインの生産性の抜本的向上・省CO2化等の研究開発の加速化を進めてまいりました。
<薄板>・当社は「自動車の進化を支える超高強度鋼板加工技術の開発」で第53回(令和2年度)市村産業賞貢献賞を受賞しました。市村賞は科学技術の進歩、産業の発展に貢献した技術開発者を表彰する伝統と権威ある賞です。当社は同賞を3年連続で受賞しております。自動車に求められる安全性向上のための車体高強度化とCO2排出量削減のための軽量化を両立するためには、車体により高強度の鋼板を適用することが有効です。当社は世界に先駆けて冷間プレス用超高強度鋼板を開発しましたが、強度が高いほどプレス成形性が低下して自動車部品への加工が困難となる課題がありました。そこでコンピューターシミュレーションを駆使して、プレス成型時の材料変形を適切に制御するプレス加工技術「自由曲げ工法」と「フランジ連続化工法」及び、それらを実現する金型装置を開発しました。開発技術は加工時の材料変形量を従来の50%以下に低減する画期的な工法であり、超高強度鋼板の形状が複雑な部品への加工を可能にしました。開発技術はお客様の歩留まり改善に貢献するとともに車体の軽量化と安全性向上を両立し、1000万台以上の自動車に適用されています。また、該当技術のCO2排出量の削減量は42,300トン/年と算出されております。
・当社は超ハイテン鋼板の供給体制を強化するため、東日本製鉄所君津地区第6CGLの商業運転を開始しました。同設備は月産能力が33千トン、強度1.5GPa級の超ハイテン鋼板の製造が可能です。自動車業界においては、世界的に環境規制強化と衝突安全基準の厳格化が進み、車体の軽量化・高強度化ニーズの高まりから超ハイテン鋼の適用が増加しており、今後も需要拡大が見込まれます。また、今後さらなる普及が見込まれる電気自動車等の電動車においても走行距離やバッテリー重量の問題により車体軽量化ニーズが一層高まると考えられます。こうした車体の軽量化・高強度化を実現する超ハイテン鋼板ニーズの拡大に対応するために供給体制を強化しました。
・当社が販売するブリキ、ティンフリースチール、ラミネート鋼板の3製品において、このたび国際規格ISO14025に準拠した一般社団法人サステナブル経営推進機構による「エコリーフ」環境ラベルの認証を取得しました。これらの製品はスチール缶の飲料容器をはじめ、さまざまな容器に用いられる極薄系のスチール素材です。容器用素材としては国内では初めての認証取得となります。「エコリーフ」はライフサイクルアセスメント手法を用いて、資源採取、製造から廃棄・リサイクルまでの製品のライフサイクルを考えた環境情報を定量的に開示するEPD認証制度の一つです。当社の製品を使用する場合、その製品に関わる環境負荷の客観的な評価ができます。
・当社が開発した新商品「FeLuce®(フェルーチェ)」(ヘアライン調電気めっき鋼板)が、公益財団法人日本デザイン振興会が主催する2020年度グッドデザイン賞を受賞しました。当社の薄板製品としては初めての受賞となります。「FeLuce®」は防錆性能を担保するためのめっき層自体に意匠性を付与するというエコで無駄のない画期的な製法により生まれた新しい鋼板です。金属本来の素材感を活かすシンプルなものづくりに挑戦しました。素材表面に塗料やフィルム等を付加していく従来手法によらず、薄板に要求される機能性に金属本来が持つ美しさを加えました。
<厚板>・当社は衝突安全性に優れる船舶用高延性厚鋼板「Nsafe®-Hull」を開発しています。同厚鋼板は延性阻害成分である硫化物等の介在物の生成を極限まで低減させ、熱加工処理時の圧延・冷却を精密に制御することで従来規則の1.5倍以上の伸びを実機操業の大量生産で具現化し、衝突による船舶の損傷軽減を実現しています。該当技術は国立研究開発法人海上・港湾・航空技術研究所、今治造船㈱及び一般財団法人日本海事協会と共同で、岩谷直治記念財団より第47回(令和2年度)岩谷直治記念賞及び第3回日本オープンイノベーション大賞「国土交通大臣賞」を受賞しました。岩谷直治記念賞は、エネルギー及び環境に関する技術開発において顕著な産業上の貢献が認められる業績を表彰する賞であり、2018年度のHRX®19の開発に続く受賞となります。日本オープンイノベーション大賞は、組織の壁を越えて知識や技術、経営資源を組み合わせ新しい取組みを行うオープンイノベーションをさらに推進するために、今後のロールモデルとして期待される取り組みを表彰する賞であり、今回当社が鉄鋼メーカーとして初めて受賞しました。また、「Nsafe®-Hull」の開発技術は第51回(2018年度)市村産業貢献賞や第66回(令和元年度)大河内記念生産賞をはじめとした多くの賞を受賞しております。「Nsafe®-Hull」は超大型タンカー(VLCC)7隻を含めて31隻の実船に適用され、油流出防止並びに船舶の安全性向上に寄与しています。
<鋼管>・当社の優れた商品開発力や高い納期遵守達成、サプライチェーン全体でのコスト削減、共同研究による20件以上のプロジェクト実績等が評価され、ロイヤルダッチシェルグループより石油・ガス掘削事業への貢献度の高いサプライヤーに対して与えられる「サプライヤーオブザイヤー(Equipment Supplier of the year)」を住友商事㈱と共同で受賞しました。この賞に選出されるのは世界で一社のみであり、2015年と2019年に続いて3度目の受賞となります。引き続き高い技術力とサービスを駆使して、近年ますます過酷化する石油ガス開発に貢献してまいります。
<棒線>・当社は従来鋼に比べて靭性と対水素脆性を改善し、さらに低合金化にも成功した低合金高強度懸架ばね用鋼「RIDESWELL®」を開発しました。自動車の軽量化による燃費向上のため、自動車用懸架ばねにも高強度化による軽量化が強く求められています。近年、ばね加工技術の発展により規格鋼SUP12をより高強度で使用することが海外を中心に検討されていますが、高強度化に伴う靭性や対水素脆性等の必要な機械特性が低下するという課題がありました。そこで添加成分とプロセスを適切に制御したことで偏析や粒界炭化物の析出を抑制し、対水素脆化性が低下することなく高強度化を実現した「RIDESWELL®」の開発に成功しました。
<建材>・当社は圧延プロセスを改善し、大断面サイズを中心とした「ハイパービーム®(外法一定H形鋼)」のサイズメニューを拡充し、「メガハイパービーム™(MEGA NSHYPER BEAM™)」として2020年4月より販売を開始しました。「ハイパービーム®」と「メガハイパービーム™」は一般社団法人サステナブル経営推進機構が認証する「エコリーフ」環境ラベルを取得しました。「ハイパービーム®」は1989年から製造販売を開始し、ウェブ高さとフランジ幅を一定にすることで設計簡素化と加工省力化を実現しております。今回の「メガハイパービーム™」の販売により、さらなる建築物の大型化に伴う鉄骨の大断面化、深刻化する人手不足を背景とした工期短縮ニーズにお応えします。
<チタン>・当社が展開するチタン製品ブランド「TranTixxii®」の採用が広がっています。「TranTixxii®」は屋根材として、小田急電鉄片瀬江ノ島駅の新駅舎屋、弘前レンガ倉庫美術館と新潟県上越市の八坂神社に採用されました。屋根材以外にも利用が広がっています。新開発チタン合金Super-TIX20AFGがカシオ計算機㈱より2021年4月に発売される新モデルの時計に採用されました。また、社寺建築金物の一つである六葉金物の素材として日本で初めて採用・商品化され、さらにアイジー工業㈱の金属デザインパネル「Xium」にも採用されました。チタンはその高耐食性や装飾性以外でも耐震補強材として利用されております。当社と日鉄防食㈱が製造販売するチタン箔シートが世界遺産登録「富岡製糸場西置繭所」(国宝)耐震補強工事に補強材の接合材として採用されました。
<交通産機品>・当社は新幹線用新型ブレーキパッドの開発で2020年度機械学会関西支部技術賞を東海旅客鉄道㈱と共同で受賞しました。新幹線の安全性を向上させるためのブレーキ制動距離の短縮と利便性を向上させるための速度向上、これら相反するニーズに応えるためには既存のブレーキ装置、特に従来のブレーキパッドでは適用できない領域に達しつつありました。このことから新幹線用のブレーキディスクで圧倒的なシェアを有する当社の強みを生かし、新型ブレーキパッドを開発しました。新型ブレーキパッドは、ブレーキディスクに適正化したばね構造で摩擦材を支持することでブレーキ時により均一にディスクとパッドを接触させ、既存のブレーキ装置と比べて最高速度からのフルブレーキで100℃以上の温度低下とブレーキ性能(摩擦係数)の安定化を達成しました。現在では東海道新幹線を走行する全ての車両(2020年7月にデビューしたN700Sを含む)に当社が開発した新型ブレーキパッドが採用されております。
<製鉄プロセス等>・当社は「新型高精度平坦度計を用いた高強度熱延鋼板製造技術の開発」で令和2年度文部科学大臣表彰科学技術賞(開発部門)を受賞しました。同技術は昨年度の第8回ものづくり日本大賞において製造・生産プロセス部門優秀賞に続く受賞となります。優れた機械特性を有する鋼材を製造するためには加工熱処理が必要になります。加工熱処理を高精度で行うためには熱延鋼板の平坦度確保が大前提となります。今回受賞した技術は、熱間圧延中に鋼板の伸び率の幅方向分布(平坦度)を高精度に測定したうえで圧延機を自動制御し、機械特性に優れた薄鋼板を安定的に製造する技術です。薄鋼板の熱間圧延においてすべての圧延材を対象に適用できる自動平坦度制御は世界初の技術です。
・当社は、室蘭製鉄所構内において製銑設備を保有する北海製鉄㈱の第2高炉を昨年7月に吹き止めし改修工事を実施してきましたが、本年11月に火入れを行い、稼働を再開しました。今回の改修は、当社では初めて高炉本体を覆う「鉄皮」をそのまま残した状態で関連設備と耐火物の更新を行う工法を採用しました。また、数学モデルを用いた炉内状況予測モデルを導入しました。これまでに高炉に取り付けたセンサーから得られた情報を解析し、鉄鉱石等の原料投入量や炉内への熱風吹込み量について、最適な操業条件を自動で調整することが可能となりました。高炉操業安定化とオペレーターの負荷軽減につながることが期待されます。当社は、同システムの運用で得られた結果を他高炉に利用することでさらなる安定生産、生産性向上を図ってまいります。
・当社は昨年7月に富山大学、千代田化工建設㈱、日鉄エンジニアリング㈱、ハイケム㈱及び三菱商事㈱と共同でNEDOの「カーボンリサイクル・次世代火力発電等技術開発/CO2排出削減・有効利用実用化技術開発/化学品へのCO2利用技術開発」に応募し、採択されました。当研究グループでは、CO2を原料とするパラキシレン製造に関する技術開発事業への取組みを開始しております。パラキシレンは高純度テレフタル酸を経由してポリエステル繊維やペットボトル用樹脂等に加工される化合物です。仮にパラキシレン需要のすべてをCO2原料に切り替えた場合のCO2固定量は1.6億トン/年になります。
・当社は京都大学、公益財団法人高輝度科学研究センター及び信州大学と共同で従来の吸着材とは異なるゲート型吸着材を活用した二酸化炭素の高効率分離システムを提案しました。本研究グループは自身が吸熱的に構造変形することでCO2を取り込む際の熱発生を抑えることが可能なゲート型吸着剤に着目し、優れたCO2分離性能を明らかにしました。同時にゲート型吸着剤の特性を活用した高速度吸着分離システムを考案し、CO2分離効率を従来方式と比べて極めて高くできることを見出しました。
・当社は製鉄所での設備状態監視基盤の構築に向けて、日本電気㈱のAI分析ソフトウェア「NEC Advanced Analytics - インバリアント分析」を採用し、製鉄製造現場におけるデジタルトランスフォーメーションを加速します。本年1月より東日本製鉄所君津地区で設備状態のオンライン監視における長期間運用テストを開始しました。インバリアント分析技術はリアルタイムに得られる計測データから“いつもの状態”を学習し、“いつもと違う”異常の予兆を自動検知し、トラブルによる設備の稼働停止や設備不良による製品の品質劣化を未然に防ぐことが期待されます。
・当社と日鉄ソリューションズ㈱は室蘭製鉄所において、製鉄製造現場における自営無線網の適用検証を共同で開始します。自営無線網は高速な無線網を自社専用に運用することで、大量のデータ通信を容量無制限で実現することはもとより、社外の通信網を一切通らないことから極めて高いセキュリティを担保することができます。また、高い建造物の多い製鉄所に特有の電波が届きにくい場所も含めて広い敷地内の隅々まで通信できるメリットもあります。
<スラグ・セメント>・当社の鉄鋼スラグ製品「カルシア改質材」が函館港の西防波堤補強工事に活用されています。今回の西防波堤補強工事の一環として行われている浚渫工事で発生した浚渫土に当社カルシア改質材を混合してカルシア改質土に変え、西防波堤の背後に盛土として補強のために利用されています。カルシア改質材は、軟弱な浚渫土の強度増強のみならず、濁りの発生を抑制できる改良材として活用されております。なお、北海道開発局の直轄工事でカルシア改質土を用いるのは初めてのことです。カルシア改質材は製鋼工程で副次的に生成される製鋼スラグを原料として、成分管理と粒度調整を施した軟弱浚渫土改質材です。カルシア改質材により改質されたカルシア改質土は深掘れ窪地の埋戻材料や埋立て工事材料、浅場・干潟の造成材料への有効活用が可能です。
・当社は、北海道古宇郡泊村及び古宇郡漁業組合と共同で2019年11月に古宇郡泊村地区に鉄分供給鉄鋼スラグ製品「ビバリー®ユニット」を埋設し、磯焼けで藻場が失われた海域を再生する「海の森づくり」をスタートしています。その一環で昨年7月に「ビバリー®ユニット」を埋設した海域において藻場の再生が確認できました。これまで当社は日本全国38カ所で「海の森づくり」による藻場の再生に取り組んできました。磯焼けの原因の一つである鉄をはじめとする栄養分の不足が挙げられています。当社の「ビバリー®ユニット」は鉄分不足を解消するため、製鉄プロセスにおける副産物である鉄鋼スラグと腐食殿混合物をヤシの繊維で編んだ袋に入れることで、鉄イオンを腐食酸鉄として長時間持続的に海藻まで届けることが可能です。当社はこれからも藻場の再生を通じてCO2の吸収・固定に貢献してまいります。
(エンジニアリング)
当セグメントに係る研究開発費は22億円です。
日鉄エンジニアリング㈱における研究開発への取組みは以下のとおりです。
・製鉄プラント分野 当社との共研を中心とした先進的製鉄プロセス関連の開発
・環境分野 溶融炉競争力強化、土壌浄化技術の開発
・エネルギー分野 オンサイト発電の高効率化/操業支援
・海洋分野 海底パイプライン敷設の自動化・高速化・高品質化
・建築分野 免制震デバイス商品の開発、次世代商品の探索
・陸上パイプライン分野 陸上パイプライン溶接技術の開発
(ケミカル&マテリアル)
当セグメントに係る研究開発費は39億円です。
日鉄ケミカル&マテリアル㈱における研究開発への取組みは以下のとおりです。
・コールケミカル製品、化学品、機能材料、複合材料等に関する研究開発
(システムソリューション)
当セグメントに係る研究開発費は16億円です。
日鉄ソリューションズ㈱における研究開発への取組みは以下のとおりです。
・システムの構築・運用における品質及び生産性の向上
・ITサービスの競争力強化、価値共創の取組み
・デジタルトランスフォーメーション(DX)を実現する技術への取組み