有価証券報告書-第46期(2023/04/01-2024/03/31)

【提出】
2024/06/25 16:53
【資料】
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【項目】
152項目

対処すべき課題

文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(1) 会社の経営の基本方針
当社グループは、鉄スクラップを鉄鋼製品にリサイクルし、省資源・省エネルギーを通じて地球環境の保全に努めるとともに、社会の発展に貢献する電炉グループです。顧客ニーズを追求し、合理的でオープンな経営により、ゆるぎない競争力を持ち、信頼される企業グループを目指します。私達は、この目標の実現に向け、自らの成長と変革を通じ、挑戦を続けます。
(2) 会社の対処すべき課題と中長期的な会社の経営戦略
当社グループは、電炉法による鉄リサイクルを通じて、循環型社会、及び脱炭素社会へ貢献するとともに、トップサプライヤーとして需要家のニーズに合った製品を供給するため、製造実力、コスト・品質競争力の更なる強化を図り、社会に貢献していくことを主眼とした「大阪製鐵グループ中期経営計画」を、2021年4月28日に策定・公表しております。公表内容は以下の通りです。
(環境認識)
国内一般形鋼、棒鋼需要は、足下新型コロナウイルス感染症の影響により低水準となっておりますが、今後一定程度は回復するものの、以前の水準には戻らず国内需要は構造的に縮小するものと認識しております。一方、海外市場は東南アジアを中心に一定の経済成長を持続すると考えております。
主原料であるスクラップは、中国の輸入再開等により、スクラップ需給は構造的に変化していくものと見ています。
電力における再生可能エネルギー比率アップによる供給構造の変化や、少子高齢化の更なる進展等、当社経営を取り巻く環境は絶え間なく変化していくものと考えています。
(主要課題と取り組み)
①盤石な国内事業基盤の構築
イ.大阪事業所の収益、事業基盤の更なる強化
当社の中核事業所である大阪事業所(堺工場、恩加島工場)における「Sプロ(大阪事業所圧延ライン
強化対策)」の最大活用を通じた事業基盤の一層の強化
ロ.グループ全体構造の見直し、グループ経営の深化
・日本スチール㈱の吸収合併による両社のシナジーの追求、製鋼~圧延の一貫管理強化等を通じた当社
グループ平鋼事業の一層の競争力強化
・東西拠点である大阪製鐵と東京鋼鐵の更なる一体的運営の追求など、各機能を担うグループ会社全体の
最適な体制の構築
ハ.お客様満足度の向上に向けて
・基本品位強化、技術サービス機能の一層の強化
・需要構造変化に応じた商品メニューの充実化等
二.設備投資の選択と集中
・固定費マネジメントの強化、次代に向けた設備投資案件選別の強化
・設備技術機能の充実を通じたメンテナンスエンジニア視点での保全強化
ホ.業務効率化の一層の推進
グループ全体の作業標準化及び新しいシステム基盤の構築、IoT導入推進による効率性の追求
②今後も成長が期待できる東南アジア需要の確実な捕捉を通じた成長戦略
・KOS(PT.KRAKATAU OSAKA STEEL:インドネシア)の黒字定着化、収益拡大によるグループ収益への貢献
・JVパートナーのPT.KRAKATAU STEELとの連携、協業強化
・輸出を含めた向け先拡大、形鋼の用途拡大、大阪製鐵輸出営業とのシナジー拡大の推進
・グループ国内3拠点からのビレットの安定(数量・品質)供給を通じた安定生産、デリバリー力の一層の
向上
③事業環境変化への対応
イ.省エネ施策の推進/電力構造変化への対応
・製鋼~圧延の直行率の更なる向上等、徹底的な省エネ対策の推進
・再生可能エネルギーの拡大等に伴い電力構造が変化している中、その変化に対応した稼働形態の追求、生産シフト見直しの検討
ロ.当社グループガバナンスの一層の強化
・グループ全体の連携強化に向けた組織体制の構築、安全環境防災・品質コンプライアンス等の企業
としての原点となる活動の徹底等
ハ.働き方改革の推進
・2021年4月よりスタートした65歳定年制の定着フォロー
・ダイバーシティ雇用の推進、及び在宅勤務、AI導入等を通じた少子高齢化への対応等、多様な働き方
の実現
(収益・投資計画)
2025年度ROS目標 10%程度
2021~25年度設備投資計画 230億円/5年
配当性向 30%程度目安
長期投資につきましては、十分な検証を踏まえ、国内外の事業成長のための投資を行ってまいります。また、グループ内最適化、最効率化の観点からグループ全体基盤の構築に向けたシステム投資を行います。

(3) 当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析
①当連結会計年度の経営成績 及び 大阪製鐵グループ中期経営計画の進捗状況
大阪製鐵グループ中期経営計画の目標・計画とそれに対する進捗状況は以下のとおりです。
(2020年度実績)2023年度実績2025年度目標・計画
連結売上高(766億円)1,171億円
連結経常利益(13億円)63億円
ROS(1.7%)5.4%10%程度
設備投資額(109億円/年)31億円/年230億円/5年
配当性向(30.4%)30.5%30%程度目安


②当連結会計年度の経営成績等の分析
当期の国内経済は、対面型サービスを中心とした個人消費や好調な企業収益を背景とした設備投資に支えられ回復基調にあるものの、物価上昇による消費者マインドの悪化や、一部業種での生産停止の影響で鉱工業生産が停滞するなど、一進一退の動きが継続いたしました。
当社の主要需要先である建設業界におきましても、物価上昇や人手不足の影響から工事が縮減もしくは延期される動きがみられ、建設向け鉄鋼需要は低迷いたしました。コスト面におきましても、脱炭素化へ向けた需要の高まりから主原料である鉄スクラップ価格が高止まりし、物流費の上昇もあり、厳しいコスト環境が継続いたしました。
当社が事業を営むインドネシアの経済は、堅調な個人消費を背景にGDP成長率は5%台を維持するなど、緩やかに回復いたしました。同国の鉄鋼需要につきましても、年後半にかけて在庫調整が進展し、設備投資の増加もあり、当社生産品種である形鋼・棒鋼需要は回復が進んでおります。
このような環境の下、マージン管理を徹底し、お客様の理解を得ながら販売価格の改定を図り、適正な販売価格の確保を最優先課題として取り組むとともに、自助努力による徹底的なコスト改善・拡販施策を進めた結果、売上高、経常利益は前年度並みを確保いたしました。
③当連結会計年度における重点課題への主要な取り組み
イ.盤石な国内事業基盤の構築
現場活動を中心とした地道な歩留・原単位の改善を継続するとともに、岸和田工場の圧延ライン延伸工事や東京鋼鐵㈱の排ガス分析装置設置などの設備投資による改善効果も享受し、増幅するエネルギー・市況品価格上昇影響の抑制を図りました。
また、当期は堺工場への省エネ・省CO2型電気炉の導入や熊本工場への製品倉庫新設及び太陽光発電設備の設置拡大、恩加島工場のレール加工設備の移管を決定するなど、将来へ向けた事業基盤整備にも取り組んでまいりました。加えて、当社が生産する主要6品種でエコリーフ環境ラベルを取得し、一般形鋼製品でマレーシアのSIRIMエコラベルを国外の一貫ミルとしては初めて取得するなど、お客様満足度向上へ向けた取組みも進めており、コスト・品質競争力強化とサステナブル社会への貢献を両立する施策を推進してまいりました。
並行して、安全・環境・防災への取組みも強化し、従業員の安全に資する投資を継続するなど、働きやすい職場環境づくりにも取り組みました。
ロ.今後も成長が期待できる東南アジア需要の確実な捕捉を通じた成長戦略
成長戦略の一環であるインドネシア事業は、グループ一体となった安価ビレット調達施策や輸出を含む拡販施策を講じてまいりましたが、同国内での競争激化によるマージンの悪化などにより、引き続き厳しい収益・財政状況となりました。現在、PT. KRAKATAU OSAKA STEEL(以下、KOS社)の事業損益及び財政状態の回復に向けた実効的な計画を立て、その実施に努めております。
ハ.事業環境変化への対応
主原料であるスクラップ価格やエネルギー価格が高止まりする中、再生産可能な販売価格の維持に努め、岸和田工場の圧延ライン延伸工事や東京鋼鐵㈱の排ガス分析装置設置などの設備投資による改善効果も享受し、増幅するエネルギー・市況品価格上昇影響の抑制を図るとともに、堺工場への省エネ・省CO2型電気炉の導入を決定するなど、将来のコスト競争力強化に向けた取り組みも推進しております。
サステナブル社会の実現へ向けた社会的要求の高まりに対し、ESGの視点を持った経営をより強化しており、マテリアリティへの対応を中心に個別取組みを推進しております。
(4)経営環境及び対処すべき課題
2024年度の経営環境及び対処すべき課題については、以下のように考えております。
今後の国内経済の見通しは、海外経済の減速を背景とした輸出の低迷が続くものの、雇用所得環境の改善による個人消費や高水準の企業収益を背景とした設備投資が堅調に推移することから、国内需要を中心に景気の回復基調は維持されることが期待されます。
一方、当社の国内における経営環境は、建設向け需要が当面大幅な回復は望めない状況にあり、またコスト面でも、2024年物流問題による物流費の本格的な上昇に加え電力料金の値上げもあり、経営環境は一段と厳しさを増しております。
インドネシア経済の見通しは、中国の景気減速により輸出の減少が見込まれますが、堅調な個人消費を背景に一定の成長は続くものと思われ、それに伴う鉄鋼需要も拡大していくものと期待されます。
このような環境の下、国内では生産出荷およびコスト改善による収益力強化が、インドネシアにおいては拡大する需要の捕捉による収益・財政状態の回復が喫緊の課題となります。
まずは、コスト上昇に対応した販売価格改定により再生産可能なマージンの確保を進めるとともに、安全・安定生産をベースとした納入対応力およびコスト競争力強化を図ります。現場に根差したコスト改善活動を継続するとともに、昨年決定した省エネ・省CO2型電気炉導入や製品倉庫建設、レール加工設備移管を着実に実行してまいります。
インドネシアにおいては、グループ一体となった安価原料調達施策を推進するとともに、在庫政策の見直しによる即納対応力強化を図り、拡大する需要を確実に捕捉してまいります。
また、気候変動対策や人的資本強化、働きやすい職場づくりの推進などサステナビリティ基本方針に則った活動を継続し、サステナブル社会へ貢献してまいります。