有価証券報告書-第44期(令和3年4月1日-令和4年3月31日)

【提出】
2022/06/27 9:18
【資料】
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【項目】
139項目

対処すべき課題

文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(1) 会社の経営の基本方針
当社グループは、鉄スクラップを鉄鋼製品にリサイクルし、省資源・省エネルギーを通じて地球環境の保全に努めるとともに、社会の発展に貢献する電炉グループです。顧客ニーズを追求し、合理的でオープンな経営により、ゆるぎない競争力を持ち、信頼される企業グループを目指します。私達は、この目標の実現に向け、自らの成長と変革を通じ、挑戦を続けます。
(2) 会社の対処すべき課題と中長期的な会社の経営戦略
当社グループは、電炉法による鉄リサイクルを通じて、循環型社会、及び脱炭素社会へ貢献するとともに、トップサプライヤーとして需要家のニーズに合った製品を供給するため、製造実力、コスト・品質競争力の更なる強化を図り、社会に貢献していくことを主眼とした「大阪製鐵グループ中期経営計画」を、2021年4月28日に策定・公表しております。公表内容は以下の通りです。
(環境認識)
国内一般形鋼、棒鋼需要は、足下新型コロナウイルス感染症の影響により低水準となっておりますが、今後一定程度は回復するものの、以前の水準には戻らず国内需要は構造的に縮小するものと認識しております。一方、海外市場は東南アジアを中心に一定の経済成長を持続すると考えております。
主原料であるスクラップは、中国の輸入再開等により、スクラップ需給は構造的に変化していくものと見ています。
電力における再生可能エネルギー比率アップによる供給構造の変化や、少子高齢化の更なる進展等、当社経営を取り巻く環境は絶え間なく変化していくものと考えています。
(主要課題と取り組み)
①盤石な国内事業基盤の構築
イ.大阪事業所の収益、事業基盤の更なる強化
当社の中核事業所である大阪事業所(堺工場、恩加島工場)における「Sプロ(大阪事業所圧延ライン
強化対策)」の最大活用を通じた事業基盤の一層の強化
ロ.グループ全体構造の見直し、グループ経営の深化
・日本スチール㈱の吸収合併による両社のシナジーの追求、製鋼~圧延の一貫管理強化等を通じた当社
グループ平鋼事業の一層の競争力強化
・東西拠点である大阪製鐵と東京鋼鐵の更なる一体的運営の追求など、各機能を担うグループ会社全体の
最適な体制の構築
ハ.お客様満足度の向上に向けて
・基本品位強化、技術サービス機能の一層の強化
・需要構造変化に応じた商品メニューの充実化等
二.設備投資の選択と集中
・固定費マネジメントの強化、次代に向けた設備投資案件選別の強化
・設備技術機能の充実を通じたメンテナンスエンジニア視点での保全強化
ホ.業務効率化の一層の推進
グループ全体の作業標準化及び新しいシステム基盤の構築、IoT導入推進による効率性の追求
②今後も成長が期待できる東南アジア需要の確実な捕捉を通じた成長戦略
・KOS(PT.KRAKATAU OSAKA STEEL:インドネシア)の黒字定着化、収益拡大によるグループ収益への貢献
・JVパートナーのPT.KRAKATAU STEELとの連携、協業強化
・輸出を含めた向け先拡大、形鋼の用途拡大、大阪製鐵輸出営業とのシナジー拡大の推進
・グループ国内3拠点からのビレットの安定(数量・品質)供給を通じた安定生産、デリバリー力の一層の
向上
③事業環境変化への対応
イ.省エネ施策の推進/電力構造変化への対応
・製鋼~圧延の直行率の更なる向上等、徹底的な省エネ対策の推進
・再生可能エネルギーの拡大等に伴い電力構造が変化している中、その変化に対応した稼働形態の追求、生産シフト見直しの検討
ロ.当社グループガバナンスの一層の強化
・グループ全体の連携強化に向けた組織体制の構築、安全環境防災・品質コンプライアンス等の企業
としての原点となる活動の徹底等
ハ.働き方改革の推進
・2021年4月よりスタートした65歳定年制の定着フォロー
・ダイバーシティ雇用の推進、及び在宅勤務、AI導入等を通じた少子高齢化への対応等、多様な働き方
の実現
(収益・投資計画)
2025年度ROS目標 10%程度
2021~25年度設備投資計画 230億円/5年
配当性向 30%程度目安
長期投資につきましては、十分な検証を踏まえ、国内外の事業成長のための投資を行ってまいります。また、グループ内最適化、最効率化の観点からグループ全体基盤の構築に向けたシステム投資を行います。


(3) 当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析
①当連結会計年度の経営成績 及び 大阪製鐵グループ中期経営計画の進捗状況
大阪製鐵グループ中期経営計画の目標・計画とそれに対する進捗状況は以下のとおりです。
(2020年度実績)2021年度実績2025年度目標・計画
連結売上高(766億円)1,045億円
連結経常利益(13億円)40億円
ROS(1.7%)3.8%10%程度
設備投資額(109億円/年)42億円/年230億円/5年
配当性向(30.4%)31.1%30%程度目安

②当連結会計年度の経営成績等の分析
当連結会計年度におけるわが国経済は、新型コロナウイルス感染症の影響から持ち直しつつある中で、国内外経済の回復や脱炭素へ向けた動き、東欧情勢の悪化も相まって、資源価格を中心に物価が急激に上昇しており、変異株の再拡大とともに景気減速のリスクとなっております。当社子会社(PT.KRAKATAU OSAKA STEEL、以下KOS社)が所在するインドネシアは、同感染症の感染者が増減を繰り返す中、経済が厳しい状況にあったものの、年後半には持ち直しの動きがみられました。
鉄鋼業界では、年前半は経済活動の回復により鋼材需要は総じて増加し、当社の主要需要先である建設向けも回復の兆しがみられましたが、中小型物件の需要は低迷したことで、当社の販売量は前年と同水準にとどまりました。足元ではサプライチェーンの混乱や変異株による感染の再拡大から鉄鋼需要は一時的に調整局面を迎えており、また資源価格・エネルギー価格の急騰により製造コストは大幅に上昇するなど、厳しい経営環境となっております。KOS社を取り巻く環境につきましても、需要が低迷する中、主原料であるビレット価格が年間を通して上昇し、国内同様製造コストの増加を余儀なくされました。
このような環境の中、需要家の皆様のご理解をいただきながら販売価格の改善に取り組むとともに、下記重点課題へ取り組み、加えて在庫評価差もあり、対前年度に対し増益を達成することができました。
③当連結会計年度における重点課題への主要な取り組み
イ.盤石な国内事業基盤の構築
大阪事業所圧延ライン強化対策につきましては、2020年度に設備工事が完工し、2021年度には主要品種の認証・認定の取得が完了、営業生産を開始するとともに、生産集約効果として製鋼から圧延への熱片ビレット直送率の向上を図り、省エネ効果も発揮し始めております。
また、平鋼事業の一層の強化を目的に当社子会社であった日本スチール㈱の吸収合併を昨年8月に実行し、一体運営による事業競争力強化を図っております。
お客様満足度の向上へ向けた取り組みとして、商品企画部の人員強化を図り、組織を管理/保証別7グループ化するなど、管理体制の強化を実行いたしました。また、大阪事業所堺工場において、製品の寸法などを熱間で測定できる熱間プロフィルメーターを更新するなど、製造面でも品質強化へ向けた取り組みを推進しております。
ロ.今後も成長が期待できる東南アジア需要の確実な捕捉を通じた成長戦略
成長戦略の一環であるKOS社事業におきましては、需要が低迷する中、新規販路の拡大やビレット外部調達ソースの拡大による原料の安価調達などの施策を実行し、2017年の操業開始以降初めての経常黒字化を実現いたしました。
ハ.事業環境変化への対応
原材料やエネルギー価格の急激な上昇に対し、需要家の皆様のご理解をいただきながら販売価格の改善に取り組むとともに、大阪事業所圧延ライン強化対策により製鋼から圧延への熱片ビレット直送率を向上するなど、自助努力としても省エネ対策を推進しております。
また、サステナブル社会の実現へ向けた社会的要求の高まりに対し、ESGの視点を持った経営をより強化するため、昨年12月にサステナビリティ基本方針を策定いたしました。脱炭素化・循環型社会への貢献による環境負荷の低減をはじめとして、ダイバーシティの推進や働きやすい職場環境の整備、グループガバナンスの強化などを推進するため、マテリアリティ目標を設定し活動を始めております。
(4)経営環境及び対処すべき課題
2022年度の経営環境及び対処すべき課題については、以下のように考えております。
わが国経済の見通しは、消費や企業活動への同感染症による下押し圧力や供給制約の影響が低減され、景気は回復していくものと期待されますが、感染動向及びその対策については不確実性が高く、加えて東欧情勢の深刻化で世界経済が急減速する懸念があるなど、先行き不透明な状況が続くものと想定されます。インドネシアにおいては、同感染症の再拡大などによる景気減速リスクは残るものの、ワクチン接種の更なる進展などにより正常化し、経済は拡大していくものと期待されます。
当社グループを取り巻く経営環境につきましても、鉄鋼需要は回復していくと思われますが、同感染症拡大以前の水準には回復せず、コスト面では脱炭素化の潮流は継続することで資源価格やエネルギー価格は高止まりすることが想定され、厳しいコスト環境となることを覚悟せざるを得ません。 こうした環境の下、お客様の理解を得ながら、原材料価格などの上昇に応じた再生産可能な販売価格への改定を進めるとともに、自助努力としても大阪製鐵グループ中期経営計画の施策を強力に推進してまいります。 具体的には、大阪事業所圧延ライン強化対策を完遂し、その効果を確実に享受するとともに、更なる省エネ対策を検討いたします。また、需要が以前の水準に戻らないことを念頭に、最適な生産体制・グループ構造を見直し、盤石な国内事業基盤の構築を図るとともに、インドネシアにおける同感染症から回復が見込まれる需要を確実に捕捉し、KOS社の収益貢献拡大を目指します。また、サステナビリティ方針に則り、脱炭素への取り組みや働きやすい会社づくりにも継続して取り組んでまいります。