有価証券報告書-第129期(平成30年1月1日-平成30年12月31日)

【提出】
2019/03/22 12:41
【資料】
PDFをみる
【項目】
61項目

研究開発活動

当社は「食料・水・環境を一体のものとして捉え、優れた製品・技術・サービスを通じて課題解決し、地球と人の未来を支え続ける」ことを使命としております。当社はこの使命に基づき、事業に直結した製品・技術の開発と、会社の持続的な発展を支える中長期的研究開発の両立に努めております。
当年度に発生した研究開発支出は558億円であり、事業別セグメントごとの研究開発支出及びその主な研究開発成果等は次のとおりです。「その他」事業の研究開発支出及び特定の事業部門に関連づけられない基礎研究支出等は、合算の上で「その他・全社」として分類しております。
(1) 機械
農業機械及び農業関連商品、エンジン、建設機械等の製品開発とそれに関連する先行基礎研究開発を行っております。主な成果は次のとおりです。
担い手向け5条刈・6条刈コンバイン「ディオニス」の開発
収穫機事業では、担い手農家向け自脱型コンバイン「ディオニス」を開発し、大型のフラッグシップ機を10年ぶりにフルモデルチェンジしました。主な特長は以下のとおりです。①国内特殊自動車排出ガス4次規制適合の高出力クリーンエンジンを搭載することで、作業能率向上を図ると同時に湿田作業や多収米・飼料用米の収穫等の高負荷作業も余裕をもって行えるようになりました。②GPS、3G通信機器、無線LANを内蔵した「直接通信ユニット」の採用により、キーONするだけで位置情報・作業情報・稼働情報が自動的にKSAS(クボタスマートアグリシステム)のサーバーに送信されるため、作業日誌作成のためのデータ送信作業が不要になりました。さらに、収穫作業をしながら圃場単位で収穫物の食味・収量を測定できる「食味・収量センサ」仕様に「食味収量メッシュマップキット」を加えることで、圃場内のより細かい単位(5m/10m/15m/20mの4段階)ごとの食味・収量のバラツキをパソコン画面上に色の濃淡で表示して「見える化」しました。これにより、翌年の品質・収量向上のための圃場改善や土作り、施肥計画に役立てることができます。③グレンタンク側板、カッタ後部カバーを開閉可能にすることで頻繁に清掃する箇所のメンテナンス作業を容易に行えるようになりました。
担い手向け6条植・8条植田植機「ナビウェル」の開発
移植機事業では、低コスト稲作を志向する担い手農家向けにGPSを活用して高精度化、低コスト化に寄与する新機能を搭載した田植機「ナビウェル」を開発しました。主な特長は以下のとおりです。①GPSによる車速情報からスリップ補正ができるため、設定した株間で植え付けができるようになりました。これにより株間が狭くなることがないため余分な苗が不要となりコスト削減が図れ、安定した稲の生育も期待できます。②植え付けと同時に施肥を行う場合にもGPSの車速情報でスリップによるバラツキが補正されるため、設定した施肥量で散布でき、余分な肥料を使わずコスト低減が図れるようになりました。③GPSの位置情報を利用してステアリングを自動で補正する「直進キープ機能」に加え、「条間アシスト機能」を装備することで、圃場の端でターンをしたときに条間がずれても自動で補正できるようになりました。さらに、隣接の苗を踏んだり、苗と苗の間が広がり過ぎたりしないため、不慣れなオペレータでもきれいに田植えをすることができるようになりました。④KSASと連動することで、圃場ごとに設定した施肥量や植付株数(株間)等が自動で設定できるようになりました。
欧州向けミニバックホー「KX037-4」の開発
建設機械事業では、欧州の3-4tクラスのミニバックホー市場へフルモデルチェンジ機を導入すべく「KX037-4」を開発しました。主な特長は以下のとおりです。①操縦席周辺のベース設計を見直し、4-5tクラスのキャビンを搭載できるようにすることで、居住空間及び乗降口を拡大しました。また、エンジン配置の見直しにより、騒音規制に適合しつつヒートバランス性能を大きく改善し、エアコン搭載を実現しました。②前置きデジタルメータの採用により作業状況の視認性が向上し、オペレータの疲労低減を実現しました。③2019年からの欧州排ガス規制StageⅤに対応するため、現行機搭載の過流(IDI)式22.9kWエンジンに替えて直噴(DI)式18.5kWエンジンを搭載しました。その上で、油圧のチューニング、圧力損失の低減を行うことで、現行機同等の作業性能を実現しました。
当セグメントに係る研究開発支出は466億円です。
(2) 水・環境
パイプ関連製品(ダクタイル鉄管、合成管、ポンプ、バルブ等)、環境関連製品(各種環境プラント等)、社会インフラ関連製品(素形材、スパイラル鋼管等)の製品開発とそれに関連する先行基礎研究開発を行っております。主な成果は次のとおりです。
下水圧送管路の腐食診断技術「スネーくん」の開発
パイプシステム事業では、下水圧送管路の腐食破損に起因する漏水・道路陥没事故の未然防止を図るための定期的な調査・診断が行える下水圧送管路の腐食診断技術「スネーくん」を開発しました。主な特長は以下のとおりです。①管路断面図と流量から非満流となる場所を腐食危険箇所として机上で事前に絞り込めるようになりました。②ビデオカメラ調査により管路内の腐食の有無を判断できるようになりました。③腐食危険箇所の空気弁設置場所から30mの範囲を土木工事不要で調査可能にしました。これにより下水圧送管路の維持管理を安く・早く・正確に行うことができるようになり、さらに、改築・更新の計画が容易に立案できるようになりました。
省エネMBRシステム(SCRUM)の開発
環境事業では、国内の小規模下水市場で実績のあるMBR下水処理システムを中大規模処理場へも普及させるために、集積度を向上させた液中膜ユニットと曝気風量制御技術の融合により電力使用量を大幅に削減可能な省エネMBRシステム「SCRUM」を開発しました。主な特長は以下のとおりです。①従前のMBRシステムに比べて消費電力約50%削減を実現し、電力使用量を従前の高度処理法と同等以下の0.22kWh/㎥まで削減することが可能になりました。②曝気風量制御技術として各種センサ情報を基に膜ろ過圧力予測モデルを用いて、膜洗浄風量を最適値へ自動的に制御できるようになりました。また、処理水のNH4-N濃度を基に硝化に必要な空気量を確保しながら補助散気風量を最小化する制御技術を開発しました。
当セグメントに係る研究開発支出は52億円です。
(3) その他・全社
全社の基盤技術であるメカトロ・センシング・情報通信・高精度制御技術を高度化し、各事業部の製品群に組み込む先行要素技術開発、モノづくりを革新する社内工場向けの検査装置・監視システムの開発、水環境インフラソリューション向け遠隔監視・診断システム及びスマート農業関連技術等の研究開発に取り組んでおります。
当セグメントに係る研究開発支出は40億円です。