有価証券報告書-第159期(2023/01/01-2023/12/31)
3.重要性がある会計方針
(1) 連結の基礎
① 子会社
子会社とは、当社グループにより支配されている企業です。支配とは、投資先に対するパワーを有し、投資先への関与により生じるリターンの変動に晒され、かつ投資先に対するパワーを通じてリターンに影響を与える能力を有する場合をいいます。
子会社の財務諸表は、当社グループが支配を獲得した日から支配を喪失する日まで、連結財務諸表に含まれています。子会社に対する当社グループ持分の一部を処分した後も支配が継続する場合には、当社グループの持分の変動を資本取引として会計処理しており、非支配持分の調整額と対価の公正価値との差額は、親会社の所有者に帰属する持分として資本に直接認識されています。支配を喪失した場合には、支配の喪失から生じた利得又は損失は純損益で認識しています。
子会社が適用する会計方針が当社グループの適用する会計方針と異なる場合には、当社グループが適用する会計方針と整合させるため、必要に応じて当該子会社の財務諸表に調整を加えております。
当社グループ内の債権債務残高及び取引、並びに当社グループ内取引によって発生した未実現損益は、連結財務諸表の作成に際して消去しています。
② 関連会社及び共同支配企業
関連会社とは、当社グループがその財務及び経営方針に対して重要な影響力を有しているものの、支配又は共同支配をしていない企業です。関連会社への投資は持分法によって会計処理しています。
共同支配企業とは当社グループを含む複数の当事者が取決めに対する契約上合意された支配を共有し、関連性のある活動に関する意思決定に際して、支配を共有する当事者の一致した合意を必要とする企業をいいます。共同支配企業への投資は持分法によって会計処理しています。
関連会社に対する投資は当初取得原価で認識されています。重要な影響力を有することとなった日から重要な影響力を喪失する日までの関連会社の損益及びその他の包括利益に対する当社グループの持分は、関連会社に対する投資額の変動として認識しています。
共同支配企業に対する投資は当初取得原価で認識されています。共同支配を有することとなった日から共同支配を喪失する日までの共同支配企業の損益及びその他の包括利益に対する当社グループの持分は、共同支配企業に対する投資額の変動として認識しています。
持分法適用会社の会計方針は、当社グループが適用する会計方針と整合させるため、必要に応じて修正しています。
損失に対する当社グループの持分が持分法適用会社に対する投資を上回った場合には、その投資の帳簿価額をゼロまで減額し、当社グループが被投資企業に代わって債務を負担し又は支払いを行う場合を除き、それ以上の損失は認識していません。
③ 企業結合
当社グループは、取得法に基づき企業結合の会計処理をしています。非支配持分は、取得日における被取得企業の識別可能純資産に対する比例的持分で当初測定しています。
支払対価の公正価値、被取得企業の非支配持分の金額及び段階取得の場合には取得企業が以前より保有していた被取得企業の支配獲得日の公正価値の合計が、取得日における識別可能資産及び引受負債の正味価額を上回る場合に、その超過額をのれんとして認識しています。一方、この対価の総額が、識別可能資産及び負債の正味価額を下回る場合、その差額を利得として損益に認識しています。
企業結合に関連して発生した取得費用は、負債性金融商品及び資本性金融商品の発行費用を除き、発生時に費用として処理しています。
企業結合の当初の会計処理が、企業結合が発生した連結会計年度末までに完了していない場合には、完了していない項目を暫定的な金額で計上しています。取得日時点で存在し、なおかつそれを知っていたならば取得日で認識した金額の測定に影響したであろう事実及び状況に関する情報を、認識される金額の測定に影響を与えていたと判断される期間(以下、「測定期間」)に入手した場合、その情報を反映して、取得日に認識した暫定的な金額を遡及的に修正しています。この新たに得た情報により資産と負債の追加での認識が発生する場合があります。測定期間は最長で1年間です。
(2) 外貨換算
① 外貨建取引
外貨建取引は、取引日における為替レートを用いてグループ企業の各機能通貨に換算しています。外貨建貨幣性資産・負債は、報告日の為替レートで機能通貨に換算しています。外貨建の公正価値で測定される非貨幣性資産・負債は、その公正価値の算定日における為替レートで機能通貨に換算しています。外貨建の取得原価に基づいて測定されている非貨幣性項目は、取引日の為替レートで換算しています。為替換算差額は通常、純損益で認識し、金融費用として表示していますが、非貨幣性項目の評価差額をその他の包括利益として認識する場合は、当該為替部分はその他の包括利益として認識しています。
② 在外営業活動体の財務諸表
在外営業活動体の資産・負債は、取得により発生したのれん及び公正価値の調整を含め、期末日の為替レートで表示通貨に換算しています。在外営業活動体の収益及び費用は、為替レートが著しく変動している場合を除き、報告期間の期中平均為替レートで換算しています。為替換算差額はその他の包括利益で認識し、為替換算差額を非支配持分に配分している部分を除き、為替換算調整勘定に累積しています。在外営業活動体の一部又はすべてを処分し、支配、重要な影響力又は共同支配を喪失する場合には、その在外営業活動体に関連する為替換算調整勘定の累積金額を、処分に係る利得又は損失の一部として純損益に組み替えます。当社グループが、子会社の持分を部分的に処分するが、支配は保持する場合、累積金額の一部は適宜非支配持分に再配分します。当社グループが、支配を保持する一方で、関連会社又は共同支配企業を部分的にのみ処分する場合には、累積金額の一部を適宜純損益に組み替えます。なお、超インフレ経済下にある子会社の収益及び費用は、超インフレ会計の適用により決算日の為替レートで表示通貨に換算しています。超インフレ会計の詳細は「41. 超インフレの調整」に記載のとおりです。
(3) 金融商品
① 非デリバティブ金融資産
当社グループは、営業債権を、これらの発生日に当初認識しています。その他の金融資産は、当社グループが当該金融商品の契約当事者となった取引日に当初認識しています。
当社グループは、金融資産から生じるキャッシュ・フローに対する契約上の権利が消滅した場合、又は金融資産の所有に係るリスクと経済的便益を実質的にすべて移転する取引において、当該金融資産から生じるキャッシュ・フローを受け取る契約上の権利を移転した時に当該金融資産の認識を中止しています。金融資産の所有に伴う実質的にすべてのリスク及び経済的価値を留保も移転もしない取引においては、当社グループは当該金融資産への支配を保持していない場合にその資産の認識を中止するものとしています。
金融資産の分類及び測定モデルの概要は、以下のとおりです。
(ⅰ) 償却原価で測定する金融資産
次の条件がともに満たされる金融資産を償却原価で測定する金融資産に分類しています。
・契約上のキャッシュ・フローを回収するために資産を保有することを目的とする事業モデルに基づいて、資産が保有されている。
・金融資産の契約条件により、元本及び元本残高に対する利息の支払のみであるキャッシュ・フローが特定の日に生じる。
償却原価で測定する金融資産は、当初認識時に公正価値にその取得に直接起因する取引コストを加算して測定しています。また、当初認識後は実効金利法を適用した総額の帳簿価額から減損損失を控除しています。
(ⅱ) 純損益を通じて公正価値で測定する金融資産
償却原価で測定する金融資産以外の金融資産は、公正価値で測定する金融資産に分類しています。
公正価値で測定する金融資産のうち、その他の包括利益を通じて公正価値で測定する金融資産に分類されたもの以外の金融資産については、純損益を通じて公正価値で測定する金融資産に分類しています。
純損益を通じて公正価値で測定する金融資産は、当初認識時に公正価値により測定し、その取得に直接起因する取引コストは、発生時に純損益で認識しています。また、当初認識後は公正価値で測定し、その事後的な変動を純損益として認識しています。
(ⅲ) その他の包括利益を通じて公正価値で測定する金融商品
公正価値で測定する負債性金融商品のうち、次の条件がともに満たされる場合には、その他の包括利益を通じて公正価値で測定する金融資産に分類しています。
・契約上のキャッシュ・フローを回収するため、及び売却するために資産を保有することを目的とする事業モデルに基づいて、資産が保有されている。
・金融資産の契約条件により、元本及び元本残高に対する利息の支払のみであるキャッシュ・フローが特定の日に生じる。
その他の包括利益を通じて公正価値で測定する金融資産は、当初認識時に公正価値にその取得に直接起因する取引コストを加算して測定しています。また、利息、為替差損益及び減損損失は、純損益として認識し、これらを除いた公正価値の変動額をその他の包括利益として認識しています。
また、売買目的ではない資本性金融商品への投資については、当初認識時に、その公正価値の事後的な変動をその他の包括利益に表示するという取消不能な選択を行うことが認められており、当社グループでは金融商品ごとに当該指定を行い、その他の包括利益を通じて公正価値で測定する資本性金融商品に分類しています。
その他の包括利益を通じて公正価値で測定する資本性金融商品は、当初認識時に公正価値にその取得に直接起因する取引コストを加算して測定しています。また、当初認識後は公正価値で測定し、その事後的な変動をその他の包括利益として認識しています。その他の包括利益として認識した金額は、認識を中止した場合(もしくは公正価値が著しく低下した場合)にその累積額を利益剰余金に振り替えており、純損益には振り替えていません。なお、配当については、当該配当金が明らかに投資の取得原価の回収を示している場合を除いて純損益として認識しています。
② 金融資産の減損
償却原価で測定する金融資産については、予想信用損失に対する貸倒引当金を認識しています。当社グループは、期末日ごとに信用リスクが当初認識時点から著しく増大しているか否かについて判断しており、信用リスクが当初認識以降に著しく増大している場合には、当該金融資産の全期間の予想信用損失に等しい金額で貸倒引当金を測定し、著しく増大していない場合には、12ヶ月の予想信用損失に等しい金額で貸倒引当金を測定しています。ただし重大な金利要素を含んでいない営業債権、契約資産及びリース債権については、上記に関わらず常に全期間の予想信用損失により貸倒引当金の額を測定しています。
信用リスクの著しい増大の有無は、債務不履行発生のリスクの変化に基づいて判断しており、債務不履行とは、債務者による契約上のキャッシュ・フローの支払いに重大な問題が生じ、金融資産の全体又は一部分を回収するという合理的な予想を有していない状態と定義しています。債務不履行発生のリスクに変化があるかどうかの判断においては、主に外部信用格付け、期日経過の情報等を考慮しています。期末日において金融商品に係る信用リスクが低いと判断された場合、金融商品に係る信用リスクは当初認識から著しく増大していないと判断されます。当社グループでは、原則として30日を超えて支払いが延滞している場合には、信用リスクが著しく増加していると判断しています。これらの判断には、過大なコストや労力をかけずに利用可能な合理的で裏付け可能な情報を考慮しており、当該情報に基づいて反証可能である場合には、信用リスクの著しい増大は生じていないものと判断しています。
債務者の財政状態の著しい悪化、債務者の破産等による法的整理の手続の開始等があった場合には、当該債権は信用減損が発生していると判定しています。将来回収できないことが明らかとなった債権については、金融資産の帳簿価額を直接減額し、対応する貸倒引当金の金額を減額しています。金融資産に係る貸倒引当金の繰入額は、純損益で認識しています。貸倒引当金を減額する事象が発生した場合は、貸倒引当金の戻入額を純損益で認識しています。
金融商品の予想信用損失は、次のものを反映する方法で見積っています。
(ⅰ) 一定範囲の生じ得る結果を評価することにより算定される、偏りのない確率加重金額
(ⅱ) 貨幣の時間価値
(ⅲ) 過去の事象、現在の状況及び将来の経済状況の予測についての、報告日において過大なコストや労力をかけずに利用可能な合理的で裏付け可能な情報
③ 非デリバティブ金融負債
当社グループでは、金融負債を発生日に当初認識しており、償却原価で測定しています。当初認識時には公正価値からその発行に直接起因する取引コストを減算して測定しています。また、当初認識後は実効金利法に基づく償却原価で測定しています。
金融負債は、金融負債が消滅した時、すなわち、契約中に特定された債務が免責、取消し又は失効となった時に認識を中止しています。
(ⅰ) 条件付対価
条件付対価はその他の金融負債に含まれ、純損益を通じて公正価値で測定される金融負債に分類しています。公正価値は、将来の業績等を考慮し、支払額を見込んで算定しています。
④ デリバティブ及びヘッジ会計
当社グループでは、為替変動リスク、金利変動リスク等をヘッジするために、先物為替予約取引、金利スワップ取引等のデリバティブ取引を行っています。
当社グループでは、ヘッジの開始時においてヘッジ関係並びにヘッジの実施についてのリスク管理目的及び戦略の公式な指定及び文書化を行っています。当該文書にはヘッジ手段の特定、ヘッジの対象となる項目又は取引、ヘッジされるリスクの性質、及びヘッジされたリスクに起因するヘッジ対象の公正価値又はキャッシュ・フローの変動に対するエクスポージャーを相殺するに際してのヘッジ手段の有効性の評価方法が含まれています。また、当社グループでは、これらのヘッジについて、ヘッジされたリスクに起因する公正価値又はキャッシュ・フローの変動を相殺するに際し極めて有効であると見込んでいますが、ヘッジ指定されていた会計期間を通じて実際に極めて有効であったか否かを判断するために、継続的に評価しています。
デリバティブは公正価値で当初認識しています。また、当初認識後は公正価値で測定し、その事後的な変動は次のとおり処理しています。
(ⅰ) 公正価値ヘッジ
ヘッジ手段であるデリバティブの公正価値変動は純損益として認識しています。また、ヘッジされたリスクに対応するヘッジ対象の公正価値の変動については、ヘッジ対象の帳簿価額を修正して、純損益として認識しています。
(ⅱ) キャッシュ・フロー・ヘッジ
ヘッジ手段であるデリバティブの公正価値変動のうち有効なヘッジと判定される部分は、その他の包括利益として認識しています。
その他の包括利益に認識した金額は、ヘッジ対象である取引が純損益に影響を与える会計期間においてその他の資本の構成要素から純損益に振り替えています。ただし、予定取引のヘッジがその後において非金融資産又は非金融負債の認識を生じさせるものである場合には、その他の包括利益に認識した金額を当該非金融資産又は非金融負債の当初の帳簿価額の修正として処理しています。
ヘッジ手段が失効、売却、終結又は行使された場合、ヘッジ比率を調整してもなお、ヘッジの適格要件を満たさなくなった場合には、ヘッジ会計を将来に向けて中止しています。予定取引の発生がもはや見込まれない場合には、その他の包括利益として認識した金額は、即時にその他の資本の構成要素から純損益に振り替えています。
(ⅲ) ヘッジ指定されていないデリバティブ
デリバティブの公正価値の変動は、純損益として認識しています。
⑤ 金融資産と金融負債の相殺
金融資産と金融負債は、認識した金額を相殺する法的に強制力のある権利を有しており、かつ、純額で決済する又は資産の実現と負債の決済を同時に実行する意図を有している場合に、相殺して純額で表示しています。
(4) 現金及び現金同等物
現金及び現金同等物は、手許現金、随時引き出し可能な預金及び容易に一定の金額に換金可能であり、かつ価値の変動について僅少なリスクしか負わない取得日から3ヶ月以内に償還期限の到来する短期投資から構成されています。
(5) 棚卸資産
棚卸資産は、取得原価と正味実現可能価額のうち、いずれか低い方の金額で測定しています。棚卸資産の取得原価には、棚卸資産の取得に係る費用、製造費及び加工費並びに棚卸資産が現在の場所及び状態に至るまでに発生したその他のコストのすべてを含んでおり、主として総平均法(「精密・電子」は移動平均法)に基づいて配分されています。正味実現可能価額は、通常の営業過程における予想販売価額から完成までに要する見積原価及び見積販売費用を控除した額としています。
(6) 有形固定資産(使用権資産を除く)
① 認識及び測定
当社グループは、有形固定資産の認識後の測定において原価モデルを採用し、取得原価から減価償却累計額及び減損損失累計額を控除した金額で表示しています。
取得原価には資産の取得に直接関連する費用、資産の解体及び除去費用、原状回復費用の見積額、並びに資産計上の要件を満たす借入コストが含まれています。
有形固定資産の取得後に発生した支出のうち、通常の修繕及び維持については発生時に費用として処理し、主要な取替及び改良に係る支出については、その支出により将来当社グループに経済的便益がもたらされることが見込まれる場合に限り資産計上しています。
② 減価償却
土地、建設仮勘定以外の有形固定資産は、使用が可能となった時点から、それぞれの見積耐用年数にわたって定額法で減価償却しています。主要な有形固定資産の見積耐用年数は次のとおりです。
なお、減価償却方法、見積耐用年数及び残存価額は、毎期末日に見直しを行い、必要に応じて改定しています。
(7) のれん及び無形資産
① のれん
当初認識時におけるのれんの測定については、「(1) 連結の基礎 ③ 企業結合」に記載しています。のれんは償却を行わず、毎年同時期及び減損の兆候を識別した時はその都度、減損テストを実施しています。のれんの減損損失は損益として認識されますが、戻入れは行っていません。
当初認識後、のれんは取得原価から減損損失累計額を控除した価額で表示しています。
② 無形資産(使用権資産を除く)
個別に取得した無形資産は取得原価で測定しており、企業結合により取得した無形資産の取得原価は企業結合日の公正価値で測定しています。
当社グループは、無形資産の認識後の測定において原価モデルを採用し、取得原価から償却累計額及び減損損失累計額を控除した金額で表示しています。
耐用年数を確定できる無形資産はそれぞれの見積耐用年数にわたり、定額法で償却しています。主要な
無形資産の見積耐用年数は次のとおりです。
耐用年数を確定できない無形資産及び未だ使用可能でない無形資産は償却を行わず、毎年同時期及び減損の兆候を識別した時はその都度、減損テストを実施しています。
なお、償却方法及び耐用年数は、毎期末日に見直しを行い、必要に応じて改定しています。
(8) リース
(借手側)
当社グループは、リースの開始日に使用権資産とリース負債を認識します。契約がリースであるか否か、又は契約にリースが含まれているか否かについては、法的にはリースの形態をとらないものであっても、契約の実態に基づき判断しています。リース期間は、解約不能期間に合理的に確実な延長するオプション(当社グループが当該オプションを行使することが合理的に確実である場合)と解約するオプション(当社グループが解約オプションを行使しないことが合理的に確実である場合)を加えて決定しています。
使用権資産は、取得原価で当初測定しています。この取得原価は、リース負債の当初測定額に、開始日又はそれ以前に支払ったリース料を調整し、発生した当初直接コストと原資産の解体及び撤去、原資産又は原資産の設置された敷地の原状回復の際に生じるコストの見積を加えた額で、受領済みのリース・インセンティブを控除して算定します。
当初認識後、使用権資産は、開始日から使用権資産の耐用年数の終了時又はリース期間の終了時のいずれか早い方の日まで、定額法により減価償却します。使用権資産の見積耐用年数は、自己所有の有形固定資産と同様に決定します。
リース負債は、開始日時点で支払われていないリース料をリースの計算利子率を用いて割り引いた現在価値で当初測定しています。リースの計算利子率が容易に算定できない場合には、当社及び当社グループの追加借入利子率を用いており、一般的に、当社及び当社グループは追加借入利子率を割引率として使用しています。
指数又はレートの変動により将来のリース料が変動した場合、残価保証に基づいて支払うと見込まれる金額の見積りが変動した場合、又は購入、延長、あるいは解約オプションを行使するかどうかの判定が変化した場合、又は解約不能期間に変更が生じる等、リース期間の変化があった場合、リース負債は再測定されます。このようにリース負債を再測定する場合、対応する修正は使用権資産の帳簿価額を修正するか、使用権資産の帳簿価額がゼロまで減額されている場合には損益として認識します。
当社グループは、連結財政状態計算書において、使用権資産を「有形固定資産」、リース負債を「社債、借入金及びリース負債」に含めて表示しています。
短期リース及び少額資産のリース
当社グループは、リース期間が12ヶ月以内の短期リース及び少額資産のリースについて、使用権資産及びリース負債を認識しないことを選択しています。当社グループは、これらのリースに係るリース料をリース期間にわたり定額法により費用として認識しています。
(貸手側)
オペレーティング・リース取引においては、対象となる資産を連結財政状態計算書に計上しており、受取リース料は連結損益計算書においてリース期間にわたって定額法により収益として認識しています。
(9) 非金融資産の減損
有形固定資産及び無形資産等の非金融資産については、資産が減損している可能性を示す兆候があるか否かを評価しています。
減損の兆候が存在する場合には、個別の資産又は資金生成単位ごとの回収可能価額を測定しています。なお、のれん、耐用年数を確定できない無形資産及び未だ使用可能でない無形資産は償却を行わず、毎期同時期及び減損の兆候が存在する場合にはその都度、減損テストを実施しています。
減損テストにおいて、資産は、継続的な使用により他の資産又は資金生成単位のキャッシュ・インフローから概ね独立したキャッシュ・インフローを生み出す最小の資産グループに集約しています。当社グループの全社資産は、独立したキャッシュ・インフローを生成しないため、全社資産に減損の兆候がある場合、全社資産が帰属する資金生成単位の回収可能価額を見積もっています。
回収可能価額は、使用価値と処分コスト控除後の公正価値のいずれか高い方で算定しています。使用価値は、見積将来キャッシュ・フローを貨幣の時間価値及びその資産の固有のリスクを反映した税引前割引率を用いて現在価値に割り引いて算定しています。
個別の資産又は資金生成単位の帳簿価額が回収可能価額を上回る場合には純損益にて減損損失を認識し、当該資産の帳簿価額を回収可能価額まで減額しています。資金生成単位に関連して認識した減損損失は、まずその単位に配分されたのれんの帳簿価額を減額するように配分し、次に資金生成単位内のその他の資産の帳簿価額を比例的に減額しています。
のれんに係る減損損失は、戻入れを行っていません。のれん以外の非金融資産に係る減損損失は、減損損失がもはや存在しないか又は減少している可能性を示す兆候が存在する場合に当該資産の回収可能価額を見積もっており、回収可能価額が減損処理後の帳簿価額を上回った場合には減損損失の戻入れを行っています。なお、減損損失の戻入れは過去の期間において当該資産に認識した減損損失がなかった場合の帳簿価額を超えない範囲を上限として回収可能価額と帳簿価額との差額を純損益にて認識しています。
(10) 従業員給付
① 退職後給付
(確定給付制度)
確定給付制度債務は、従業員が過年度及び当連結会計年度において提供したサービスの対価として獲得した将来給付額を見積り、当該金額を現在価値に割り引くことによって算定しています。割引率は、当社グループの確定給付制度債務と概ね同じ満期日を有する優良社債の期末日時点の市場利回りを参照して決定しています。
退職後給付制度に係る資産又は退職後給付制度に係る負債は、確定給付制度債務の現在価値から制度資産の公正価値(制度資産の上限の調整を含む)を控除した額を認識しています。勤務費用及び確定給付負債(資産)の純額に係る利息純額は、純損益にて認識しています。
確定給付制度の再測定により発生した増減額は、発生した期においてその他の包括利益に一括認識し、直ちに利益剰余金に振り替えています。また過去勤務費用は発生時に全額純損益に認識しています。
(確定拠出制度)
確定拠出制度については、確定拠出制度に支払うべき拠出額を、従業員が関連する勤務を提供した時に費用として認識しています。
② 短期従業員給付
短期従業員給付については、割引計算を行わず、関連するサービスが提供された時点で費用として認識しています。
賞与及び有給休暇費用については、それらを支払う法的もしくは推定的な債務を有し、信頼性のある見積りが可能な場合に、それらの制度に基づいて支払われると見積られる額を負債として認識しています。
③ その他の長期従業員給付
当社グループの長期従業員給付に対する純債務は、従業員が過年度及び当連結会計年度において提供したサービスの対価として獲得した将来給付額です。この給付額は現在価値に割り引いています。再測定による差異は発生した期間に純損益で認識しています。
(11) 株式報酬取引
当社グループは、取締役、執行役及び従業員に対するインセンティブ制度として、以下の株式報酬制度を採用しています。
(ストック・オプション制度)
ストック・オプションは権利付与日の公正価値に基づき算定しており、最終的に権利確定すると予想されるストック・オプションの数を考慮した上で、権利確定期間にわたって費用として認識し、同額を資本の増加として認識しています。ストック・オプションの公正価値は、ブラック・ショールズモデルにて算定しています。
(譲渡制限付株式報酬及び業績連動型株式報酬制度)
企業価値の持続的な向上に対する貢献意識を高めるとともに、株主との価値共有を進めることを目的として、持分決済型及び現金決済型の株式報酬制度を導入しています。
持分決済型の株式報酬については、受領したサービスの対価を、付与する当社株式の公正価値を参照して測定しています。算定されたサービスの対価は費用として純損益に認識するとともに、対応する金額を資本の増加として認識しています。
現金決済型の株式報酬については、支払額の公正価値を負債として認識し、無条件に報酬を受ける権利が確定するまでの期間にわたり、当該負債の公正価値の変動を純損益に認識しています。
(12) 引当金
引当金は、過去の事象の結果として、当社グループが現在の法的債務又は推定的債務を有し、その債務を決済するために経済的便益を有する資源の流出の可能性が高く、かつその資源の流出の金額について信頼できる見積りができる場合に認識しています。
引当金は見積将来キャッシュ・フローを貨幣の時間的価値及びその負債に特有のリスクを反映した税引前の利率を用いて現在価値に割り引いています。時間の経過による影響を反映した引当金の増加額は、金融費用として認識しています。
(13) 売上収益
顧客との契約について、当社グループは、次の5ステップアプローチに基づき、収益を認識しています。
ステップ1:契約の識別
ステップ2:履行義務の識別
ステップ3:取引価格の算定
ステップ4:履行義務への取引価格の配分
ステップ5:履行義務の充足による収益の認識
当社グループは「建築・産業」、「エネルギー」、「インフラ」、「環境」、「精密・電子」の各分野にわたり製造、販売、工事、保守等を行っています。
① 「建築・産業」、「エネルギー」、「インフラ」
「建築・産業」においては、主に標準ポンプ(陸上ポンプ、水中ポンプ、給水ポンプ)、冷熱機械及び送風機の製造、販売、工事、保守サービスを行っています。
「エネルギー」においては、主にカスタムポンプ(ボイラ給水ポンプ)、コンプレッサやタービンなどの製造、販売、工事、保守サービスを行っています。
「インフラ」においては、主にカスタムポンプ(農業用ポンプ、排水ポンプ、上下水道ポンプ)、トンネル用送風機などの製造、販売、工事、保守サービスを行っています。
「建築・産業」、「エネルギー」、「インフラ」における製品の製造及び販売については、製品に対する法的所有権、物理的占有、所有に伴う重大なリスクと経済価値の顧客への移転状況及び顧客から支払いを受ける権利といった支配の移転に関する指標を総合的に判断した結果、製品に対する支配を顧客に移転して履行義務を充足するのは主として製品の引渡又は検収時点であると当社グループは判断しています。
「建築・産業」、「エネルギー」、「インフラ」における工事請負契約及び保守契約については、主として、次の要件のいずれかに該当し、製品又は役務に対する支配が一定期間にわたり移転するため、一定の期間にわたり履行義務を充足し収益を認識しています。
(ⅰ) 顧客が履行によって提供される便益を、履行するにつれて同時に受け取って消費する。
(ⅱ) 履行が、資産を創出するか又は増価させ、顧客が当該資産の創出又は増価について支配する。
(ⅲ) 履行が、他に転用できる資産を創出せず、かつ、現在までに完了した履行に対する支払いを受ける強制可能な権利を有している。
これらについては、履行義務の結果を合理的に測定できる場合は、報告期間の末日において測定した履行義務の充足に係る進捗度に応じて、工事期間又は保守期間にわたって売上収益を認識します。進捗度は、見積総原価に対する実際原価の割合で算出し(インプット法)、履行義務の結果を合理的に測定できないが、当該履行義務を充足するコストを回収すると見込んでいる場合は、発生したコストの範囲でのみ売上収益を計上することにより、当社グループの履行を忠実に描写しています。
② 「環境」
「環境」においては、都市ごみ焼却プラント、産業廃棄物焼却プラントに関連した製造、販売、工事、保守サービスを行っています。
「環境」における製品の製造及び販売については、製品に対する法的所有権、物理的占有、所有に伴う重大なリスクと経済価値の顧客への移転状況及び顧客から支払いを受ける権利といった支配の移転に関する指標を総合的に判断した結果、製品に対する支配を顧客に移転して履行義務を充足するのは主として製品の引渡又は検収時点であると当社グループは判断しています。
「環境」における工事請負契約及び保守契約については、主として、次の要件のいずれかに該当し、製品又は役務に対する支配が一定期間にわたり移転するため、一定の期間にわたり履行義務を充足し収益を認識しています。
(ⅰ) 顧客が履行によって提供される便益を、履行するにつれて同時に受け取って消費する。
(ⅱ) 履行が、資産を創出するか又は増価させ、顧客が当該資産の創出又は増価について支配する。
(ⅲ) 履行が、他に転用できる資産を創出せず、かつ、現在までに完了した履行に対する支払いを受ける強制可能
な権利を有している。
これらについては、履行義務の結果を合理的に測定できる場合は、報告期間の末日において測定した履行義務の充足に係る進捗度に応じて、工事期間又は保守期間にわたって売上収益を認識します。進捗度は、見積総原価に対する実際原価の割合で算出し(インプット法)、履行義務の結果を合理的に測定できないが、当該履行義務を充足するコストを回収すると見込んでいる場合は、発生したコストの範囲でのみ売上収益を計上することにより、当社グループの履行を忠実に描写しています。
③ 「精密・電子」
「精密・電子」においては、主に真空ポンプ、CMP装置、めっき装置、排ガス処理装置の製造、販売、保守サービスを行っています。
「精密・電子」における製品の製造及び販売については、製品に対する法的所有権、物理的占有、所有に伴う重大なリスクと経済価値の顧客への移転状況及び顧客から支払いを受ける権利といった支配の移転に関する指標を総合的に判断した結果、製品に対する支配を顧客に移転して履行義務を充足するのは主として製品の引渡又は検収時点であると当社グループは判断しています。
売上収益は顧客との契約において約束された対価から、値引き、遅延損害金等を控除した金額で測定しています。変動性がある値引き等を含む変動対価については、合理的に利用可能なすべての情報を用いて対価の金額を見積り、重大な戻入が生じない可能性が非常に高い範囲でのみ売上収益を認識しています。また、当社グループでは、契約開始時に、顧客に財又はサービスを移転する時点と顧客が対価を支払う時点までの期間が1年以内であると見込まれるため、IFRS第15号「顧客との契約から生じる収益」で規定される実務上の便法を適用し、対価に係る金利要素について調整を行っていません。
契約に複数の履行義務が識別される場合には、主に観察可能な独立販売価格の比率でそれぞれの履行義務に取引価格を配分しています。
(14) 法人所得税
法人所得税費用は、当期税金と繰延税金の合計として表示しています。
当期税金は、決算日において制定され又は実質的に制定されている税率を用いて、税務当局に対する納付又は税務当局からの還付が予想される金額で算定しています。これらは、企業結合に関連するもの及び直接資本の部又はその他の包括利益で認識される項目を除き、当期の純損益にて認識しています。
繰延税金資産及び負債は、決算日までに制定又は実質的に制定されている税法に基づいて、資産が実現する期又は負債が決済される期に適用されると予想される税率で算定しています。繰延税金資産及び負債は、資産及び負債の会計上の帳簿価額と税務基準額の差額である一時差異並びに繰越欠損金に基づいて算定しています。繰延税金資産は、将来減算一時差異、税務上の繰越欠損金及び繰越税額控除に対して、それらを利用できる課税所得が生じる可能性が高い範囲で認識しています。
なお、企業結合ではなく、取引時に会計上の利益にも課税所得にも影響を与えず、かつ同額の将来加算一時差異と将来減算一時差異を生じさせない取引における当初認識から生じる一時差異については、繰延税金資産及び負債を認識していません。さらにのれんの当初認識において生じる将来加算一時差異については、繰延税金負債を認識していません。
子会社・関連会社に対する投資に係る将来加算一時差異については、繰延税金負債を認識しています。ただし、一時差異を解消する時期をコントロールでき、かつ予測可能な期間内に一時差異が解消しない可能性が高い場合には認識していません。また、子会社・関連会社に対する投資に係る将来減算一時差異については、一時差異が予測し得る期間内に解消し、かつ課税所得を稼得する可能性が高い範囲でのみ繰延税金資産を認識しています。
繰延税金資産及び繰延税金負債は、当期税金資産と当期税金負債を相殺する法律上強制力のある権利を有し、かつ同一の税務当局によって同一の納税主体に対して課される法人所得税に関するものである場合に相殺しています。
当社及び一部の連結子会社は、当連結会計年度からグループ通算制度を適用しています。
当社グループは、2023年5月に公表された「国際的な税制改革-第2の柱モデルルール(IAS第12号の改訂)」を適用しています。本改訂は、経済協力開発機構(OECD)が公表した第2の柱モデルルールに関する税制から生じる税金に係る繰延税金の認識及び開示を一時的に免除する例外規定を定めたものです。当社グループは、当該例外規定を適用し、第2の柱の法人所得税に係る繰延税金について認識及び開示を行っていません。
(15) 借入コスト
意図した使用又は販売が可能となるまでに相当の期間を要する資産に関して、その資産の取得、建設又は生産に直接起因する借入コストは、当該資産の取得原価の一部として資産化しています。その他の借入コストはすべて、発生した期間に費用として認識しています。
(16) 1株当たり利益
基本的1株当たり当期利益は、親会社の普通株主に帰属する純損益を、その期間の自己株式を調整した発行済普通株式の加重平均株式数で除して計算しています。希薄化後1株当たり当期利益は、希薄化効果を有するすべての潜在株式の影響を調整して計算しています。
(17) 超インフレの調整
詳細は「41. 超インフレの調整」に記載のとおりです。
(1) 連結の基礎
① 子会社
子会社とは、当社グループにより支配されている企業です。支配とは、投資先に対するパワーを有し、投資先への関与により生じるリターンの変動に晒され、かつ投資先に対するパワーを通じてリターンに影響を与える能力を有する場合をいいます。
子会社の財務諸表は、当社グループが支配を獲得した日から支配を喪失する日まで、連結財務諸表に含まれています。子会社に対する当社グループ持分の一部を処分した後も支配が継続する場合には、当社グループの持分の変動を資本取引として会計処理しており、非支配持分の調整額と対価の公正価値との差額は、親会社の所有者に帰属する持分として資本に直接認識されています。支配を喪失した場合には、支配の喪失から生じた利得又は損失は純損益で認識しています。
子会社が適用する会計方針が当社グループの適用する会計方針と異なる場合には、当社グループが適用する会計方針と整合させるため、必要に応じて当該子会社の財務諸表に調整を加えております。
当社グループ内の債権債務残高及び取引、並びに当社グループ内取引によって発生した未実現損益は、連結財務諸表の作成に際して消去しています。
② 関連会社及び共同支配企業
関連会社とは、当社グループがその財務及び経営方針に対して重要な影響力を有しているものの、支配又は共同支配をしていない企業です。関連会社への投資は持分法によって会計処理しています。
共同支配企業とは当社グループを含む複数の当事者が取決めに対する契約上合意された支配を共有し、関連性のある活動に関する意思決定に際して、支配を共有する当事者の一致した合意を必要とする企業をいいます。共同支配企業への投資は持分法によって会計処理しています。
関連会社に対する投資は当初取得原価で認識されています。重要な影響力を有することとなった日から重要な影響力を喪失する日までの関連会社の損益及びその他の包括利益に対する当社グループの持分は、関連会社に対する投資額の変動として認識しています。
共同支配企業に対する投資は当初取得原価で認識されています。共同支配を有することとなった日から共同支配を喪失する日までの共同支配企業の損益及びその他の包括利益に対する当社グループの持分は、共同支配企業に対する投資額の変動として認識しています。
持分法適用会社の会計方針は、当社グループが適用する会計方針と整合させるため、必要に応じて修正しています。
損失に対する当社グループの持分が持分法適用会社に対する投資を上回った場合には、その投資の帳簿価額をゼロまで減額し、当社グループが被投資企業に代わって債務を負担し又は支払いを行う場合を除き、それ以上の損失は認識していません。
③ 企業結合
当社グループは、取得法に基づき企業結合の会計処理をしています。非支配持分は、取得日における被取得企業の識別可能純資産に対する比例的持分で当初測定しています。
支払対価の公正価値、被取得企業の非支配持分の金額及び段階取得の場合には取得企業が以前より保有していた被取得企業の支配獲得日の公正価値の合計が、取得日における識別可能資産及び引受負債の正味価額を上回る場合に、その超過額をのれんとして認識しています。一方、この対価の総額が、識別可能資産及び負債の正味価額を下回る場合、その差額を利得として損益に認識しています。
企業結合に関連して発生した取得費用は、負債性金融商品及び資本性金融商品の発行費用を除き、発生時に費用として処理しています。
企業結合の当初の会計処理が、企業結合が発生した連結会計年度末までに完了していない場合には、完了していない項目を暫定的な金額で計上しています。取得日時点で存在し、なおかつそれを知っていたならば取得日で認識した金額の測定に影響したであろう事実及び状況に関する情報を、認識される金額の測定に影響を与えていたと判断される期間(以下、「測定期間」)に入手した場合、その情報を反映して、取得日に認識した暫定的な金額を遡及的に修正しています。この新たに得た情報により資産と負債の追加での認識が発生する場合があります。測定期間は最長で1年間です。
(2) 外貨換算
① 外貨建取引
外貨建取引は、取引日における為替レートを用いてグループ企業の各機能通貨に換算しています。外貨建貨幣性資産・負債は、報告日の為替レートで機能通貨に換算しています。外貨建の公正価値で測定される非貨幣性資産・負債は、その公正価値の算定日における為替レートで機能通貨に換算しています。外貨建の取得原価に基づいて測定されている非貨幣性項目は、取引日の為替レートで換算しています。為替換算差額は通常、純損益で認識し、金融費用として表示していますが、非貨幣性項目の評価差額をその他の包括利益として認識する場合は、当該為替部分はその他の包括利益として認識しています。
② 在外営業活動体の財務諸表
在外営業活動体の資産・負債は、取得により発生したのれん及び公正価値の調整を含め、期末日の為替レートで表示通貨に換算しています。在外営業活動体の収益及び費用は、為替レートが著しく変動している場合を除き、報告期間の期中平均為替レートで換算しています。為替換算差額はその他の包括利益で認識し、為替換算差額を非支配持分に配分している部分を除き、為替換算調整勘定に累積しています。在外営業活動体の一部又はすべてを処分し、支配、重要な影響力又は共同支配を喪失する場合には、その在外営業活動体に関連する為替換算調整勘定の累積金額を、処分に係る利得又は損失の一部として純損益に組み替えます。当社グループが、子会社の持分を部分的に処分するが、支配は保持する場合、累積金額の一部は適宜非支配持分に再配分します。当社グループが、支配を保持する一方で、関連会社又は共同支配企業を部分的にのみ処分する場合には、累積金額の一部を適宜純損益に組み替えます。なお、超インフレ経済下にある子会社の収益及び費用は、超インフレ会計の適用により決算日の為替レートで表示通貨に換算しています。超インフレ会計の詳細は「41. 超インフレの調整」に記載のとおりです。
(3) 金融商品
① 非デリバティブ金融資産
当社グループは、営業債権を、これらの発生日に当初認識しています。その他の金融資産は、当社グループが当該金融商品の契約当事者となった取引日に当初認識しています。
当社グループは、金融資産から生じるキャッシュ・フローに対する契約上の権利が消滅した場合、又は金融資産の所有に係るリスクと経済的便益を実質的にすべて移転する取引において、当該金融資産から生じるキャッシュ・フローを受け取る契約上の権利を移転した時に当該金融資産の認識を中止しています。金融資産の所有に伴う実質的にすべてのリスク及び経済的価値を留保も移転もしない取引においては、当社グループは当該金融資産への支配を保持していない場合にその資産の認識を中止するものとしています。
金融資産の分類及び測定モデルの概要は、以下のとおりです。
(ⅰ) 償却原価で測定する金融資産
次の条件がともに満たされる金融資産を償却原価で測定する金融資産に分類しています。
・契約上のキャッシュ・フローを回収するために資産を保有することを目的とする事業モデルに基づいて、資産が保有されている。
・金融資産の契約条件により、元本及び元本残高に対する利息の支払のみであるキャッシュ・フローが特定の日に生じる。
償却原価で測定する金融資産は、当初認識時に公正価値にその取得に直接起因する取引コストを加算して測定しています。また、当初認識後は実効金利法を適用した総額の帳簿価額から減損損失を控除しています。
(ⅱ) 純損益を通じて公正価値で測定する金融資産
償却原価で測定する金融資産以外の金融資産は、公正価値で測定する金融資産に分類しています。
公正価値で測定する金融資産のうち、その他の包括利益を通じて公正価値で測定する金融資産に分類されたもの以外の金融資産については、純損益を通じて公正価値で測定する金融資産に分類しています。
純損益を通じて公正価値で測定する金融資産は、当初認識時に公正価値により測定し、その取得に直接起因する取引コストは、発生時に純損益で認識しています。また、当初認識後は公正価値で測定し、その事後的な変動を純損益として認識しています。
(ⅲ) その他の包括利益を通じて公正価値で測定する金融商品
公正価値で測定する負債性金融商品のうち、次の条件がともに満たされる場合には、その他の包括利益を通じて公正価値で測定する金融資産に分類しています。
・契約上のキャッシュ・フローを回収するため、及び売却するために資産を保有することを目的とする事業モデルに基づいて、資産が保有されている。
・金融資産の契約条件により、元本及び元本残高に対する利息の支払のみであるキャッシュ・フローが特定の日に生じる。
その他の包括利益を通じて公正価値で測定する金融資産は、当初認識時に公正価値にその取得に直接起因する取引コストを加算して測定しています。また、利息、為替差損益及び減損損失は、純損益として認識し、これらを除いた公正価値の変動額をその他の包括利益として認識しています。
また、売買目的ではない資本性金融商品への投資については、当初認識時に、その公正価値の事後的な変動をその他の包括利益に表示するという取消不能な選択を行うことが認められており、当社グループでは金融商品ごとに当該指定を行い、その他の包括利益を通じて公正価値で測定する資本性金融商品に分類しています。
その他の包括利益を通じて公正価値で測定する資本性金融商品は、当初認識時に公正価値にその取得に直接起因する取引コストを加算して測定しています。また、当初認識後は公正価値で測定し、その事後的な変動をその他の包括利益として認識しています。その他の包括利益として認識した金額は、認識を中止した場合(もしくは公正価値が著しく低下した場合)にその累積額を利益剰余金に振り替えており、純損益には振り替えていません。なお、配当については、当該配当金が明らかに投資の取得原価の回収を示している場合を除いて純損益として認識しています。
② 金融資産の減損
償却原価で測定する金融資産については、予想信用損失に対する貸倒引当金を認識しています。当社グループは、期末日ごとに信用リスクが当初認識時点から著しく増大しているか否かについて判断しており、信用リスクが当初認識以降に著しく増大している場合には、当該金融資産の全期間の予想信用損失に等しい金額で貸倒引当金を測定し、著しく増大していない場合には、12ヶ月の予想信用損失に等しい金額で貸倒引当金を測定しています。ただし重大な金利要素を含んでいない営業債権、契約資産及びリース債権については、上記に関わらず常に全期間の予想信用損失により貸倒引当金の額を測定しています。
信用リスクの著しい増大の有無は、債務不履行発生のリスクの変化に基づいて判断しており、債務不履行とは、債務者による契約上のキャッシュ・フローの支払いに重大な問題が生じ、金融資産の全体又は一部分を回収するという合理的な予想を有していない状態と定義しています。債務不履行発生のリスクに変化があるかどうかの判断においては、主に外部信用格付け、期日経過の情報等を考慮しています。期末日において金融商品に係る信用リスクが低いと判断された場合、金融商品に係る信用リスクは当初認識から著しく増大していないと判断されます。当社グループでは、原則として30日を超えて支払いが延滞している場合には、信用リスクが著しく増加していると判断しています。これらの判断には、過大なコストや労力をかけずに利用可能な合理的で裏付け可能な情報を考慮しており、当該情報に基づいて反証可能である場合には、信用リスクの著しい増大は生じていないものと判断しています。
債務者の財政状態の著しい悪化、債務者の破産等による法的整理の手続の開始等があった場合には、当該債権は信用減損が発生していると判定しています。将来回収できないことが明らかとなった債権については、金融資産の帳簿価額を直接減額し、対応する貸倒引当金の金額を減額しています。金融資産に係る貸倒引当金の繰入額は、純損益で認識しています。貸倒引当金を減額する事象が発生した場合は、貸倒引当金の戻入額を純損益で認識しています。
金融商品の予想信用損失は、次のものを反映する方法で見積っています。
(ⅰ) 一定範囲の生じ得る結果を評価することにより算定される、偏りのない確率加重金額
(ⅱ) 貨幣の時間価値
(ⅲ) 過去の事象、現在の状況及び将来の経済状況の予測についての、報告日において過大なコストや労力をかけずに利用可能な合理的で裏付け可能な情報
③ 非デリバティブ金融負債
当社グループでは、金融負債を発生日に当初認識しており、償却原価で測定しています。当初認識時には公正価値からその発行に直接起因する取引コストを減算して測定しています。また、当初認識後は実効金利法に基づく償却原価で測定しています。
金融負債は、金融負債が消滅した時、すなわち、契約中に特定された債務が免責、取消し又は失効となった時に認識を中止しています。
(ⅰ) 条件付対価
条件付対価はその他の金融負債に含まれ、純損益を通じて公正価値で測定される金融負債に分類しています。公正価値は、将来の業績等を考慮し、支払額を見込んで算定しています。
④ デリバティブ及びヘッジ会計
当社グループでは、為替変動リスク、金利変動リスク等をヘッジするために、先物為替予約取引、金利スワップ取引等のデリバティブ取引を行っています。
当社グループでは、ヘッジの開始時においてヘッジ関係並びにヘッジの実施についてのリスク管理目的及び戦略の公式な指定及び文書化を行っています。当該文書にはヘッジ手段の特定、ヘッジの対象となる項目又は取引、ヘッジされるリスクの性質、及びヘッジされたリスクに起因するヘッジ対象の公正価値又はキャッシュ・フローの変動に対するエクスポージャーを相殺するに際してのヘッジ手段の有効性の評価方法が含まれています。また、当社グループでは、これらのヘッジについて、ヘッジされたリスクに起因する公正価値又はキャッシュ・フローの変動を相殺するに際し極めて有効であると見込んでいますが、ヘッジ指定されていた会計期間を通じて実際に極めて有効であったか否かを判断するために、継続的に評価しています。
デリバティブは公正価値で当初認識しています。また、当初認識後は公正価値で測定し、その事後的な変動は次のとおり処理しています。
(ⅰ) 公正価値ヘッジ
ヘッジ手段であるデリバティブの公正価値変動は純損益として認識しています。また、ヘッジされたリスクに対応するヘッジ対象の公正価値の変動については、ヘッジ対象の帳簿価額を修正して、純損益として認識しています。
(ⅱ) キャッシュ・フロー・ヘッジ
ヘッジ手段であるデリバティブの公正価値変動のうち有効なヘッジと判定される部分は、その他の包括利益として認識しています。
その他の包括利益に認識した金額は、ヘッジ対象である取引が純損益に影響を与える会計期間においてその他の資本の構成要素から純損益に振り替えています。ただし、予定取引のヘッジがその後において非金融資産又は非金融負債の認識を生じさせるものである場合には、その他の包括利益に認識した金額を当該非金融資産又は非金融負債の当初の帳簿価額の修正として処理しています。
ヘッジ手段が失効、売却、終結又は行使された場合、ヘッジ比率を調整してもなお、ヘッジの適格要件を満たさなくなった場合には、ヘッジ会計を将来に向けて中止しています。予定取引の発生がもはや見込まれない場合には、その他の包括利益として認識した金額は、即時にその他の資本の構成要素から純損益に振り替えています。
(ⅲ) ヘッジ指定されていないデリバティブ
デリバティブの公正価値の変動は、純損益として認識しています。
⑤ 金融資産と金融負債の相殺
金融資産と金融負債は、認識した金額を相殺する法的に強制力のある権利を有しており、かつ、純額で決済する又は資産の実現と負債の決済を同時に実行する意図を有している場合に、相殺して純額で表示しています。
(4) 現金及び現金同等物
現金及び現金同等物は、手許現金、随時引き出し可能な預金及び容易に一定の金額に換金可能であり、かつ価値の変動について僅少なリスクしか負わない取得日から3ヶ月以内に償還期限の到来する短期投資から構成されています。
(5) 棚卸資産
棚卸資産は、取得原価と正味実現可能価額のうち、いずれか低い方の金額で測定しています。棚卸資産の取得原価には、棚卸資産の取得に係る費用、製造費及び加工費並びに棚卸資産が現在の場所及び状態に至るまでに発生したその他のコストのすべてを含んでおり、主として総平均法(「精密・電子」は移動平均法)に基づいて配分されています。正味実現可能価額は、通常の営業過程における予想販売価額から完成までに要する見積原価及び見積販売費用を控除した額としています。
(6) 有形固定資産(使用権資産を除く)
① 認識及び測定
当社グループは、有形固定資産の認識後の測定において原価モデルを採用し、取得原価から減価償却累計額及び減損損失累計額を控除した金額で表示しています。
取得原価には資産の取得に直接関連する費用、資産の解体及び除去費用、原状回復費用の見積額、並びに資産計上の要件を満たす借入コストが含まれています。
有形固定資産の取得後に発生した支出のうち、通常の修繕及び維持については発生時に費用として処理し、主要な取替及び改良に係る支出については、その支出により将来当社グループに経済的便益がもたらされることが見込まれる場合に限り資産計上しています。
② 減価償却
土地、建設仮勘定以外の有形固定資産は、使用が可能となった時点から、それぞれの見積耐用年数にわたって定額法で減価償却しています。主要な有形固定資産の見積耐用年数は次のとおりです。
建物及び構築物 | 2~60 年 |
機械装置及び運搬具 | 2~38 年 |
なお、減価償却方法、見積耐用年数及び残存価額は、毎期末日に見直しを行い、必要に応じて改定しています。
(7) のれん及び無形資産
① のれん
当初認識時におけるのれんの測定については、「(1) 連結の基礎 ③ 企業結合」に記載しています。のれんは償却を行わず、毎年同時期及び減損の兆候を識別した時はその都度、減損テストを実施しています。のれんの減損損失は損益として認識されますが、戻入れは行っていません。
当初認識後、のれんは取得原価から減損損失累計額を控除した価額で表示しています。
② 無形資産(使用権資産を除く)
個別に取得した無形資産は取得原価で測定しており、企業結合により取得した無形資産の取得原価は企業結合日の公正価値で測定しています。
当社グループは、無形資産の認識後の測定において原価モデルを採用し、取得原価から償却累計額及び減損損失累計額を控除した金額で表示しています。
耐用年数を確定できる無形資産はそれぞれの見積耐用年数にわたり、定額法で償却しています。主要な
無形資産の見積耐用年数は次のとおりです。
自社利用目的のソフトウエア | 5 年 |
耐用年数を確定できない無形資産及び未だ使用可能でない無形資産は償却を行わず、毎年同時期及び減損の兆候を識別した時はその都度、減損テストを実施しています。
なお、償却方法及び耐用年数は、毎期末日に見直しを行い、必要に応じて改定しています。
(8) リース
(借手側)
当社グループは、リースの開始日に使用権資産とリース負債を認識します。契約がリースであるか否か、又は契約にリースが含まれているか否かについては、法的にはリースの形態をとらないものであっても、契約の実態に基づき判断しています。リース期間は、解約不能期間に合理的に確実な延長するオプション(当社グループが当該オプションを行使することが合理的に確実である場合)と解約するオプション(当社グループが解約オプションを行使しないことが合理的に確実である場合)を加えて決定しています。
使用権資産は、取得原価で当初測定しています。この取得原価は、リース負債の当初測定額に、開始日又はそれ以前に支払ったリース料を調整し、発生した当初直接コストと原資産の解体及び撤去、原資産又は原資産の設置された敷地の原状回復の際に生じるコストの見積を加えた額で、受領済みのリース・インセンティブを控除して算定します。
当初認識後、使用権資産は、開始日から使用権資産の耐用年数の終了時又はリース期間の終了時のいずれか早い方の日まで、定額法により減価償却します。使用権資産の見積耐用年数は、自己所有の有形固定資産と同様に決定します。
リース負債は、開始日時点で支払われていないリース料をリースの計算利子率を用いて割り引いた現在価値で当初測定しています。リースの計算利子率が容易に算定できない場合には、当社及び当社グループの追加借入利子率を用いており、一般的に、当社及び当社グループは追加借入利子率を割引率として使用しています。
指数又はレートの変動により将来のリース料が変動した場合、残価保証に基づいて支払うと見込まれる金額の見積りが変動した場合、又は購入、延長、あるいは解約オプションを行使するかどうかの判定が変化した場合、又は解約不能期間に変更が生じる等、リース期間の変化があった場合、リース負債は再測定されます。このようにリース負債を再測定する場合、対応する修正は使用権資産の帳簿価額を修正するか、使用権資産の帳簿価額がゼロまで減額されている場合には損益として認識します。
当社グループは、連結財政状態計算書において、使用権資産を「有形固定資産」、リース負債を「社債、借入金及びリース負債」に含めて表示しています。
短期リース及び少額資産のリース
当社グループは、リース期間が12ヶ月以内の短期リース及び少額資産のリースについて、使用権資産及びリース負債を認識しないことを選択しています。当社グループは、これらのリースに係るリース料をリース期間にわたり定額法により費用として認識しています。
(貸手側)
オペレーティング・リース取引においては、対象となる資産を連結財政状態計算書に計上しており、受取リース料は連結損益計算書においてリース期間にわたって定額法により収益として認識しています。
(9) 非金融資産の減損
有形固定資産及び無形資産等の非金融資産については、資産が減損している可能性を示す兆候があるか否かを評価しています。
減損の兆候が存在する場合には、個別の資産又は資金生成単位ごとの回収可能価額を測定しています。なお、のれん、耐用年数を確定できない無形資産及び未だ使用可能でない無形資産は償却を行わず、毎期同時期及び減損の兆候が存在する場合にはその都度、減損テストを実施しています。
減損テストにおいて、資産は、継続的な使用により他の資産又は資金生成単位のキャッシュ・インフローから概ね独立したキャッシュ・インフローを生み出す最小の資産グループに集約しています。当社グループの全社資産は、独立したキャッシュ・インフローを生成しないため、全社資産に減損の兆候がある場合、全社資産が帰属する資金生成単位の回収可能価額を見積もっています。
回収可能価額は、使用価値と処分コスト控除後の公正価値のいずれか高い方で算定しています。使用価値は、見積将来キャッシュ・フローを貨幣の時間価値及びその資産の固有のリスクを反映した税引前割引率を用いて現在価値に割り引いて算定しています。
個別の資産又は資金生成単位の帳簿価額が回収可能価額を上回る場合には純損益にて減損損失を認識し、当該資産の帳簿価額を回収可能価額まで減額しています。資金生成単位に関連して認識した減損損失は、まずその単位に配分されたのれんの帳簿価額を減額するように配分し、次に資金生成単位内のその他の資産の帳簿価額を比例的に減額しています。
のれんに係る減損損失は、戻入れを行っていません。のれん以外の非金融資産に係る減損損失は、減損損失がもはや存在しないか又は減少している可能性を示す兆候が存在する場合に当該資産の回収可能価額を見積もっており、回収可能価額が減損処理後の帳簿価額を上回った場合には減損損失の戻入れを行っています。なお、減損損失の戻入れは過去の期間において当該資産に認識した減損損失がなかった場合の帳簿価額を超えない範囲を上限として回収可能価額と帳簿価額との差額を純損益にて認識しています。
(10) 従業員給付
① 退職後給付
(確定給付制度)
確定給付制度債務は、従業員が過年度及び当連結会計年度において提供したサービスの対価として獲得した将来給付額を見積り、当該金額を現在価値に割り引くことによって算定しています。割引率は、当社グループの確定給付制度債務と概ね同じ満期日を有する優良社債の期末日時点の市場利回りを参照して決定しています。
退職後給付制度に係る資産又は退職後給付制度に係る負債は、確定給付制度債務の現在価値から制度資産の公正価値(制度資産の上限の調整を含む)を控除した額を認識しています。勤務費用及び確定給付負債(資産)の純額に係る利息純額は、純損益にて認識しています。
確定給付制度の再測定により発生した増減額は、発生した期においてその他の包括利益に一括認識し、直ちに利益剰余金に振り替えています。また過去勤務費用は発生時に全額純損益に認識しています。
(確定拠出制度)
確定拠出制度については、確定拠出制度に支払うべき拠出額を、従業員が関連する勤務を提供した時に費用として認識しています。
② 短期従業員給付
短期従業員給付については、割引計算を行わず、関連するサービスが提供された時点で費用として認識しています。
賞与及び有給休暇費用については、それらを支払う法的もしくは推定的な債務を有し、信頼性のある見積りが可能な場合に、それらの制度に基づいて支払われると見積られる額を負債として認識しています。
③ その他の長期従業員給付
当社グループの長期従業員給付に対する純債務は、従業員が過年度及び当連結会計年度において提供したサービスの対価として獲得した将来給付額です。この給付額は現在価値に割り引いています。再測定による差異は発生した期間に純損益で認識しています。
(11) 株式報酬取引
当社グループは、取締役、執行役及び従業員に対するインセンティブ制度として、以下の株式報酬制度を採用しています。
(ストック・オプション制度)
ストック・オプションは権利付与日の公正価値に基づき算定しており、最終的に権利確定すると予想されるストック・オプションの数を考慮した上で、権利確定期間にわたって費用として認識し、同額を資本の増加として認識しています。ストック・オプションの公正価値は、ブラック・ショールズモデルにて算定しています。
(譲渡制限付株式報酬及び業績連動型株式報酬制度)
企業価値の持続的な向上に対する貢献意識を高めるとともに、株主との価値共有を進めることを目的として、持分決済型及び現金決済型の株式報酬制度を導入しています。
持分決済型の株式報酬については、受領したサービスの対価を、付与する当社株式の公正価値を参照して測定しています。算定されたサービスの対価は費用として純損益に認識するとともに、対応する金額を資本の増加として認識しています。
現金決済型の株式報酬については、支払額の公正価値を負債として認識し、無条件に報酬を受ける権利が確定するまでの期間にわたり、当該負債の公正価値の変動を純損益に認識しています。
(12) 引当金
引当金は、過去の事象の結果として、当社グループが現在の法的債務又は推定的債務を有し、その債務を決済するために経済的便益を有する資源の流出の可能性が高く、かつその資源の流出の金額について信頼できる見積りができる場合に認識しています。
引当金は見積将来キャッシュ・フローを貨幣の時間的価値及びその負債に特有のリスクを反映した税引前の利率を用いて現在価値に割り引いています。時間の経過による影響を反映した引当金の増加額は、金融費用として認識しています。
(13) 売上収益
顧客との契約について、当社グループは、次の5ステップアプローチに基づき、収益を認識しています。
ステップ1:契約の識別
ステップ2:履行義務の識別
ステップ3:取引価格の算定
ステップ4:履行義務への取引価格の配分
ステップ5:履行義務の充足による収益の認識
当社グループは「建築・産業」、「エネルギー」、「インフラ」、「環境」、「精密・電子」の各分野にわたり製造、販売、工事、保守等を行っています。
① 「建築・産業」、「エネルギー」、「インフラ」
「建築・産業」においては、主に標準ポンプ(陸上ポンプ、水中ポンプ、給水ポンプ)、冷熱機械及び送風機の製造、販売、工事、保守サービスを行っています。
「エネルギー」においては、主にカスタムポンプ(ボイラ給水ポンプ)、コンプレッサやタービンなどの製造、販売、工事、保守サービスを行っています。
「インフラ」においては、主にカスタムポンプ(農業用ポンプ、排水ポンプ、上下水道ポンプ)、トンネル用送風機などの製造、販売、工事、保守サービスを行っています。
「建築・産業」、「エネルギー」、「インフラ」における製品の製造及び販売については、製品に対する法的所有権、物理的占有、所有に伴う重大なリスクと経済価値の顧客への移転状況及び顧客から支払いを受ける権利といった支配の移転に関する指標を総合的に判断した結果、製品に対する支配を顧客に移転して履行義務を充足するのは主として製品の引渡又は検収時点であると当社グループは判断しています。
「建築・産業」、「エネルギー」、「インフラ」における工事請負契約及び保守契約については、主として、次の要件のいずれかに該当し、製品又は役務に対する支配が一定期間にわたり移転するため、一定の期間にわたり履行義務を充足し収益を認識しています。
(ⅰ) 顧客が履行によって提供される便益を、履行するにつれて同時に受け取って消費する。
(ⅱ) 履行が、資産を創出するか又は増価させ、顧客が当該資産の創出又は増価について支配する。
(ⅲ) 履行が、他に転用できる資産を創出せず、かつ、現在までに完了した履行に対する支払いを受ける強制可能な権利を有している。
これらについては、履行義務の結果を合理的に測定できる場合は、報告期間の末日において測定した履行義務の充足に係る進捗度に応じて、工事期間又は保守期間にわたって売上収益を認識します。進捗度は、見積総原価に対する実際原価の割合で算出し(インプット法)、履行義務の結果を合理的に測定できないが、当該履行義務を充足するコストを回収すると見込んでいる場合は、発生したコストの範囲でのみ売上収益を計上することにより、当社グループの履行を忠実に描写しています。
② 「環境」
「環境」においては、都市ごみ焼却プラント、産業廃棄物焼却プラントに関連した製造、販売、工事、保守サービスを行っています。
「環境」における製品の製造及び販売については、製品に対する法的所有権、物理的占有、所有に伴う重大なリスクと経済価値の顧客への移転状況及び顧客から支払いを受ける権利といった支配の移転に関する指標を総合的に判断した結果、製品に対する支配を顧客に移転して履行義務を充足するのは主として製品の引渡又は検収時点であると当社グループは判断しています。
「環境」における工事請負契約及び保守契約については、主として、次の要件のいずれかに該当し、製品又は役務に対する支配が一定期間にわたり移転するため、一定の期間にわたり履行義務を充足し収益を認識しています。
(ⅰ) 顧客が履行によって提供される便益を、履行するにつれて同時に受け取って消費する。
(ⅱ) 履行が、資産を創出するか又は増価させ、顧客が当該資産の創出又は増価について支配する。
(ⅲ) 履行が、他に転用できる資産を創出せず、かつ、現在までに完了した履行に対する支払いを受ける強制可能
な権利を有している。
これらについては、履行義務の結果を合理的に測定できる場合は、報告期間の末日において測定した履行義務の充足に係る進捗度に応じて、工事期間又は保守期間にわたって売上収益を認識します。進捗度は、見積総原価に対する実際原価の割合で算出し(インプット法)、履行義務の結果を合理的に測定できないが、当該履行義務を充足するコストを回収すると見込んでいる場合は、発生したコストの範囲でのみ売上収益を計上することにより、当社グループの履行を忠実に描写しています。
③ 「精密・電子」
「精密・電子」においては、主に真空ポンプ、CMP装置、めっき装置、排ガス処理装置の製造、販売、保守サービスを行っています。
「精密・電子」における製品の製造及び販売については、製品に対する法的所有権、物理的占有、所有に伴う重大なリスクと経済価値の顧客への移転状況及び顧客から支払いを受ける権利といった支配の移転に関する指標を総合的に判断した結果、製品に対する支配を顧客に移転して履行義務を充足するのは主として製品の引渡又は検収時点であると当社グループは判断しています。
売上収益は顧客との契約において約束された対価から、値引き、遅延損害金等を控除した金額で測定しています。変動性がある値引き等を含む変動対価については、合理的に利用可能なすべての情報を用いて対価の金額を見積り、重大な戻入が生じない可能性が非常に高い範囲でのみ売上収益を認識しています。また、当社グループでは、契約開始時に、顧客に財又はサービスを移転する時点と顧客が対価を支払う時点までの期間が1年以内であると見込まれるため、IFRS第15号「顧客との契約から生じる収益」で規定される実務上の便法を適用し、対価に係る金利要素について調整を行っていません。
契約に複数の履行義務が識別される場合には、主に観察可能な独立販売価格の比率でそれぞれの履行義務に取引価格を配分しています。
(14) 法人所得税
法人所得税費用は、当期税金と繰延税金の合計として表示しています。
当期税金は、決算日において制定され又は実質的に制定されている税率を用いて、税務当局に対する納付又は税務当局からの還付が予想される金額で算定しています。これらは、企業結合に関連するもの及び直接資本の部又はその他の包括利益で認識される項目を除き、当期の純損益にて認識しています。
繰延税金資産及び負債は、決算日までに制定又は実質的に制定されている税法に基づいて、資産が実現する期又は負債が決済される期に適用されると予想される税率で算定しています。繰延税金資産及び負債は、資産及び負債の会計上の帳簿価額と税務基準額の差額である一時差異並びに繰越欠損金に基づいて算定しています。繰延税金資産は、将来減算一時差異、税務上の繰越欠損金及び繰越税額控除に対して、それらを利用できる課税所得が生じる可能性が高い範囲で認識しています。
なお、企業結合ではなく、取引時に会計上の利益にも課税所得にも影響を与えず、かつ同額の将来加算一時差異と将来減算一時差異を生じさせない取引における当初認識から生じる一時差異については、繰延税金資産及び負債を認識していません。さらにのれんの当初認識において生じる将来加算一時差異については、繰延税金負債を認識していません。
子会社・関連会社に対する投資に係る将来加算一時差異については、繰延税金負債を認識しています。ただし、一時差異を解消する時期をコントロールでき、かつ予測可能な期間内に一時差異が解消しない可能性が高い場合には認識していません。また、子会社・関連会社に対する投資に係る将来減算一時差異については、一時差異が予測し得る期間内に解消し、かつ課税所得を稼得する可能性が高い範囲でのみ繰延税金資産を認識しています。
繰延税金資産及び繰延税金負債は、当期税金資産と当期税金負債を相殺する法律上強制力のある権利を有し、かつ同一の税務当局によって同一の納税主体に対して課される法人所得税に関するものである場合に相殺しています。
当社及び一部の連結子会社は、当連結会計年度からグループ通算制度を適用しています。
当社グループは、2023年5月に公表された「国際的な税制改革-第2の柱モデルルール(IAS第12号の改訂)」を適用しています。本改訂は、経済協力開発機構(OECD)が公表した第2の柱モデルルールに関する税制から生じる税金に係る繰延税金の認識及び開示を一時的に免除する例外規定を定めたものです。当社グループは、当該例外規定を適用し、第2の柱の法人所得税に係る繰延税金について認識及び開示を行っていません。
(15) 借入コスト
意図した使用又は販売が可能となるまでに相当の期間を要する資産に関して、その資産の取得、建設又は生産に直接起因する借入コストは、当該資産の取得原価の一部として資産化しています。その他の借入コストはすべて、発生した期間に費用として認識しています。
(16) 1株当たり利益
基本的1株当たり当期利益は、親会社の普通株主に帰属する純損益を、その期間の自己株式を調整した発行済普通株式の加重平均株式数で除して計算しています。希薄化後1株当たり当期利益は、希薄化効果を有するすべての潜在株式の影響を調整して計算しています。
(17) 超インフレの調整
詳細は「41. 超インフレの調整」に記載のとおりです。