有価証券報告書-第159期(2023/01/01-2023/12/31)

【提出】
2024/03/28 17:12
【資料】
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【項目】
151項目
(2)戦略
中期経営計画E-Plan2025の基本方針に、「5:ESG経営の更なる進化」を設定しています。持続可能な社会づくりに貢献するため、下表の戦略に基づき、高度なESG経営の実践を進めています。なお、ガバナンス(G)についての戦略及び取り組みについては、 「第4 提出会社の状況 4 コーポレート・ガバナンスの状況等」に記載しております。

①E(環境)
E(環境)に対しては、現在及び将来の気候変動に対処しつつ、2050年のカーボンニュートラル達成のため、自社製品・サービス提供を通じた環境負荷低減を進めています。
(i)<気候変動を想定したシナリオ分析~TCFD提言への対応~>当社グループでは、気候変動は世界が直面している重大な課題であると認識し、2019年にTCFD(Task Force on Climate-related Financial Disclosures)を支持する署名を行いました。ステークホルダーとの対話を通じて、気候変動に対するガバナンス、戦略、リスク管理、指標・目標について情報を開示し、取り組みを推進することの重要性を認識しています。事業ごとに気候関連のリスクと機会をより明確にすることを目的とし、対面市場別のシナリオ分析を行いました。脱炭素社会に向けて進化しているオイル&ガス市場向けの事業、社会全体の高効率化に欠くことのできない半導体製造市場向けの事業、ビルやマンション、また様々な産業の工場におけるエネルギーマネジメントにより脱炭素化が期待される建築・産業市場向け事業、ごみの再資源化や廃熱をエネルギーとして循環させることが期待される固形廃棄物処理市場向け事業、豪雨や洪水など気候変動に伴う災害への適応が期待される水インフラ市場向け事業について、気温上昇を4℃シナリオ、1.5℃シナリオで、それぞれの事業に、どのような財務インパクトが生じるのかを分析し、その結果に基づき、気候関連リスク・機会に対する2050年までの対応策を検討しました。気候関連シナリオ分析には、各カンパニープレジデントの責任の下に行いました。
検討結果は、TCFD提言に基づき開示を行っています。開示に際しては取締役会に開示案を提案し、助言を得ています。シナリオ分析の結果は、2023年にスタートした中期経営計画E-Plan2025に気候関連の戦略に反映されています。シナリオ分析のレビューは中期経営計画策定と同じサイクルで行います。
当社グループの開示内容は「環境省「TCFDを活用した経営戦略立案のススメ」2022年度版シナリオ分析開示事例(国内外)」に掲載されているほか、GPIFの国内株式運用機関が選ぶ2023年の優れたTCFD開示にも選ばれています。TCFDに基づく情報開示の詳細については、ウェブサイトをご覧ください。
https://www.ebara.com/sustainability/think/information/tcfd.html
(ii)<気候変動を回避するための取り組み~カーボンニュートラルの達成に向けて>当社グループでは、持続可能な社会の実現と、グループの成長との両立を目指し、自社とバリューチェーンにおけるGHG(Greenhouse gas)排出量を低減することにより、2050年にGHG排出ネットゼロを目指しています。このため、カーボンニュートラル推進に関するガバナンス体制を強化しました。具体的にはこれまで実務レベルでの化石エネルギー使用の合理化等を所掌してきたエネルギー管理委員会を、再エネや非化石エネルギーも含めたすべてのエネルギーを所掌する組織に改組いたしました。本委員会を中心として、CO2排出量の削減目標達成に向けた具体的な取り組みを進めるとともに、サステナビリティ委員会において、当社グループの方針、戦略、目標及びKPIを審議し、成果や進捗の確認を行うことで、着実にカーボンニュートラルに向けた取り組みを推進していきます。また、具体的な取り組みとして、社内事業活動における省エネを徹底するとともに、グループのエネルギー使用の約8割を占める電力について、国内の主要な事業拠点では低CO2電力を導入しています。国内外の事業拠点においては太陽光発電設備の拡充を進めており、藤沢事業所では2020年に竣工した新工場建屋の屋上への1.6MW級の太陽光発電設備の設置に加え、オフサイトPPAモデルによるCO2フリー電力の調達も行っています。さらに、GHG排出係数の高い排ガスを無害化する排ガス処理設備の製造販売や、二酸化炭素回収・貯留技術(CCUS)に貢献するCO2インジェクションポンプの開発・製造・販売、廃プラスチックのケミカルリサイクル技術の商用化実現、水素・アンモニアなどの次世代燃料の製造や活用に関するインフラ設備開発などを通じ、社会全体のGHG排出量削減にも取り組んでいます。
②S(社会)
S(社会)に対しては、人的資本経営の強化を進め、ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョン(DE&I)を推進します。サプライチェーンにおける人権デューデリジェンスへの対応も進めています。
(i)<人的資本経営の強化>長期ビジョンE-Vision2030のマテリアリティ4「人材の活躍促進」に向けて、荏原グループは「チャレンジ精神をもって創意工夫する多様な人材を世界中から獲得し、働きやすい職場環境下での適切な競争や挑戦によって実力が最大限発揮され、公正に評価され、個々の社員が充実し、成長する企業風土を目指す」という人事・人材開発基本方針を掲げています。
この方針のもと、多様な人材の活躍推進とグローバルでの人材マネジメント基盤を確立するための具体的な取り組みを実現するため、2023年にCHROオフィスを設置しました。各事業の人材ニーズや人材に関する経営課題を解決するため、グループ全体の人事戦略(ONE EBARA HR)に基づいた施策を遂行し、「人的資本経営」の強化を図っています。人材を「資本」として捉え、その価値を最大限に引き出し、「グローバルでの持続的成長」を実現するための基盤整備をより加速させ、「競争し、挑戦する」人材を育成し、グローバルモビリティの向上を通じて、人材の最適配置をグループ全体で強化しています。
<中期経営計画E-Plan2025期間中の主要施策>1. 学びたい人、挑戦したい人に対して、早期選抜・育成に資する様々な機会を提供するとともに、自らキャリアチェンジを目指せるような仕組みを構築し、適所でモチベーション高く働けるよう支援します。
2. 海外グループ会社のローカル社員がより重要なポジション(グローバルキーポジションGKP:Global Key Position)で活躍するための、グローバルで統一された役割等級制度の導入の推進、グローバル人材育成プログラムの全社展開、国内外のサクセッションの戦略的な実行を推進します。
3. リファラル採用、アルムナイ制度を活用し、多様な人材の獲得を進めます。また、多様な人材がより働きやすい環境を提供するために、EBARA New Workstyleの更なる拡大を行います。
4. 「人材の見える化」をグローバルに加速させるための基盤となる「グローバルHCM(Human Capital Management)プラットフォーム」を構築し、各人事施策の効果を定量的にモニタリングできる体制を構築していきます。
「グローバルHCMプラットフォーム構築の取り組み」<技術元素表>当社では技術と人の結びつきを技術・人材マップにより整理する試みを継続しており、それを可視化したものが、技術元素表です。5カンパニー別の技術と、複数のカンパニーに共通する共通技術、さらには全社横断的な重要な共通技術について整理しています。この技術元素表の活用により、社内外のコラボレーションを進めるとともに、人材が不足する重要な技術については人材の補強、さらにはローテーションを行って、確実に技術を継承、発展させていく体制を整えていきます。

(ii)<ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョン(DE&I)に向けた取り組み>当社は、より強い企業となり、成長し続けるために、多様な人材の登用を目的としたダイバーシティ推進に力を入れています。2023年9月からは、DE&I を強力に推進していくために、ダイバーシティプロジェクトをダイバーシティ・エクイティ&インクルージョン推進部に再編しました。実施する施策として、①採用・育成の多様化、②女性活躍推進、③障がいのある社員の活躍促進を掲げています。
特に女性管理職比率を向上するために、2023年より昇格試験制度の見直し(管理職登用までの期間短縮・抜擢受験の実現)等を通じて、出産・育児等のライフイベントの影響なく挑戦をサポートする体制を整えました。さらに今後はより早期から学びの機会を増やしていくことでスキルアップを図るとともに、年代別の研修等を通じて中長期のキャリアをより明確に描けるような仕組みづくりを推進していきます。
(iii)<人権の尊重>a.「人権尊重の基本方針」
荏原グループは、世界人権宣言の「すべての人間は、生まれながらにして尊厳と権利とについて平等である」との規定に基づき、荏原グループCSR方針に掲げる「人権と多様性を尊重する」経営を実践するために、「荏原グループ人権方針」を定め、社内外に公表しています。3つの基本方針とともに、それを実践していくための対応方針を定めています。荏原グループ人権方針は、国際労働機関(ILO)の「労働における基本的原則及び権利に関する宣言」と国連の「ビジネスと人権に関する指導原則」を尊重しています。
荏原グループ人権方針の全文は、ウェブサイトをご覧ください。
https://www.ebara.co.jp/sustainability/social/information/respect.html
b.「人権に関する救済」
国内グループ会社においては、コンプライアンス相談窓口が人権を含む苦情を受け付け、対応しています。海外グループ会社にもホットラインを設置し対応しています。社外からの相談は、当社ウェブサイトのお問い合わせ窓口で受け付けています。2022年6月改正公益通報者保護法施行にあたり、人権に関する苦情や相談を受け付けた場合には、コンプライアンス相談窓口が当該法に則って対応します。
c.「2023年の取り組み」
外部との対話人権委員会は、人権に対する課題認識の範囲を広げることや当社グループの人権マネジメントの改善につなげることを目的として、人権に関する社外有識者と対話を行っています。
【2023年】
・「ITと人権」をテーマに社外有識者による講話を聴講し、意見交換を行いました。
人権デューデリジェンス人権委員会では、従業員の人権に配慮することや、サプライヤにも人権尊重の意識を持って活動していただくことが当社グループの事業活動において特に重要であると考え、人権デューデリジェンスを行っています。
【従業員に対する人権デューデリジェンス】
人事部門が全グループ会社の従業員を対象に毎年行っているグローバルエンゲージメントサーベイを利用し、「職場の公正・公平性」「差別」「労働安全衛生」をグループ共通の人権項目として、約60組織のスコアをモニターしています。人権項目のエンゲージメントのスコアが一定水準に達していない会社に対して、人権委員会が人権アクションプランの策定を指示し、各社が改善策を実行します。活動の成果は翌年のエンゲージメントサーベイスコアにより評価しています。
<2023年結果>・2023年に改善策を求めた5組織の内、2組織が目指す水準に達しました。まだ課題が残る3組織に引き続き人権アクションプランの策定と実施を求めました。
【サプライヤに対する人権デューデリジェンス】
・2022年に人権尊重を含む当社CSR調達ガイドラインについて、サプライヤの皆様に理解と実践を求めることを目的とし、グローバルの一次サプライヤに対してCSR調達アンケートを実施しました。
・アンケートの内容には人権に関する設問が含まれており、人権委員会は、サプライヤにおいて児童労働や強制労働、差別が起きないような取り組みがなされているか、適正な労働環境が維持されているかなど、人権に関する設問の結果を調達部門と共有し、健全なサプライチェーンマネジメントの構築を推進しています。詳細について「(4)指標と目標③人権の尊重」をご覧ください。