訂正有価証券報告書-第160期(2024/01/01-2024/12/31)

【提出】
2025/04/03 16:07
【資料】
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【項目】
151項目
(2)戦略
中期経営計画E-Plan2025の基本方針に、「5:ESG経営の更なる進化」を設定しています。持続可能な社会づくりに貢献するため、下表の戦略に基づき、高度なESG経営の実践を進めています。なお、ガバナンス(G)についての戦略及び取り組みについては、 「第4 提出会社の状況 4 コーポレート・ガバナンスの状況等」に記載しております。

①E(環境)
E(環境)に対しては、2050年のカーボンニュートラル達成のため、自社製品・サービス提供を通じた環境負荷低減を進めています。
(i)<気候変動への対応~カーボンニュートラルの達成に向けて>荏原グループでは、2030年にありたい姿の一つに高度なESG経営の実践を掲げており、その重要テーマとして気候変動への対応を掲げています。持続可能な社会の実現とグループの成長との両立を目指し、自社とバリューチェーンにおけるGHG(Greenhouse gas)排出量を低減することにより、2050年にカーボンニュートラルを目指します。この実現に向け、サステナビリティ委員会において当社グループの方針、戦略、目標及び KPIを審議し、成果や進捗の確認を行っています。
自社の活動によるGHG排出(Scope1,2)については、各拠点の省エネルギーに取り組むとともに、国内外の拠点で太陽光発電設備の設置や、CO2フリー電力の調達などを進めています。
バリューチェーンのGHG排出(Scope3)については、その大部分を占める当社製品の使用による排出(カテゴリ11)を対象に2030年の削減目標を設定しました。Scope3の削減策として当社製品の高効率化をはじめ、サプライヤや顧客との連携を進めます。
2024年6月にはSBTイニシアチブにコミットメントレターを送付し、2年以内のSBT認定をコミットしました。また、2023年のScope1,2,3排出量について第三者保証を取得していますが、今後も継続的な取得を予定しています。
さらに、当社が顧客のGHG削減に寄与する施策を『顧客のGHG削減への貢献目標』として整理し、「削減貢献量」、「当社定義によるGHG削減量」、「カーボンニュートラル社会の実現をサポートするビジネス創出」の3つの目標を設定しました。省エネルギー型のポンプや地球温暖化係数の高いPFCs(パーフルオロカーボン)を化石燃料用いずに無害化する排ガス処理装置の製造販売などに加え、水素・アンモニア向けなどのGHG排出削減に貢献する製品・サービスの開発、提供などによりカーボンニュートラル社会の実現をサポートします。
≪2030年の目標≫
・Scope1,2:2018年度比GHG排出量を55%削減
・Scope3(カテゴリ11):2021年度比GHG排出量を25%削減
・削減貢献量 (WBCSDの“Guidance on Avoided Emissions”を参照):2023年~2030年の累計で4,300万
トン削減
・当社定義による顧客のGHG削減量:2023年~2030年の累計で1億トン削減
・カーボンニュートラル社会の実現をサポートするビジネス創出
詳細はウェブサイト(荏原グループのカーボンニュートラル)に掲載しています。
https://www.ebara.com/sustainability/environment/information/carbon-neutrality.html
(ii)<気候関連開示>2019年に賛同署名したTCFD提言に基づき気候関連のリスク・機会の分析を行い、シナリオ分析の結果を中期経営計画E-Plan2025(2023~2025年)に反映させています。TCFDによる企業の気候関連情報開示モニタリング機能が2024年にIFRS®サステナビリティ開示基準S2号気候関連開示(以下、IFRS®S2)に移管されたため、IFRS®S2の開示基準を参照して2024年6月に気候関連の情報を更新しました。
・ガバナンス
気候関連のリスク・機会を含む非財務経営課題行動計画の進捗を取締役会が監督しています。気候関連の情報開示とその更新に際しては、執行側の会議体であるサステナビリティ委員会又は経営会議に諮った上で、取締役会に上程し、内容の確認を経て開示しています。
・戦略
主要な対面市場ごとに気温上昇を1.5℃、4℃に抑える世界観における気候関連シナリオ分析を行っています。シナリオ分析の結果は中期経営計画E-Plan2025の各カンパニーの戦略に落とし込まれています。本項(ⅰ)の目標達成に向けた施策は気候関連戦略に含まれています。
1.5℃、4℃の世界観において、当社事業への財務インパクトを当社Webサイトに公表しています。
・リスク管理
気候関連シナリオ分析によって特定した重要なリスクと機会に基づく各種施策の進捗は、代表執行役社長が主宰する「経営課題行動計画モニタリング会議」に各カンパニープレジデントが報告する体制としています。気候関連を含む非財務の指標・目標の全体の進捗はサステナビリティ委員会に報告され、レビューする仕組みとしています。サステナビリティ委員会の報告・審議内容は取締役会に報告されます。
・指標と目標
本項(ⅰ)に記載の通り、指標と目標を設定してカーボンニュートラルを推進しています。
詳細はウェブサイト(気候関連開示(TCFD提言))に掲載しています。
https://www.ebara.com/sustainability/think/information/tcfd.html
②S(社会)
S(社会)に対しては、人的資本経営の強化を進め、ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョン(DE&I)を推進します。サプライチェーンにおける人権デューディリジェンスへの対応も進めています。
(i)<人的資本経営の強化>長期ビジョンE-Vision2030のマテリアリティ4「人材の活躍促進」に向けて、荏原グループは「チャレンジ精神をもって創意工夫する多様な人材を世界中から獲得し、働きやすい職場環境下での適切な競争や挑戦によって実力が最大限発揮され、公正に評価され、個々の社員が充実し、成長する企業風土を目指す」という人事・人材開発基本方針を掲げています。
この方針のもと、多様な人材の活躍推進とグローバルでの人材マネジメント基盤を確立するための具体的な取り組みを実現するため、2023年にCHROオフィスを設置しました。各事業の人材ニーズや人材に関する経営課題を解決するため、グループ全体の人事戦略(ONE EBARA HR)に基づいた施策を遂行し、「人的資本経営」の強化を図っています。人材を「資本」として捉え、その価値を最大限に引き出し、「グローバルでの持続的成長」を実現するための基盤整備をより加速させ、「競争し、挑戦する」人材を育成し、グローバルモビリティの向上を通じて、人材の最適配置をグループ全体で強化しています。
<中期経営計画E-Plan2025期間中の主要施策>1. 学びたい人、挑戦したい人に対して、早期選抜・育成に資する様々な機会を提供するとともに、自らキャリアチェンジを目指せるような仕組みを構築し、適所でモチベーション高く働けるよう支援します。
2. 海外グループ会社のローカル社員がより重要なポジション(グローバルキーポジションGKP:Global Key Position)で活躍するための、グローバルで統一された役割等級制度の導入の推進、グローバル人材育成プログラムの全社展開、国内外のサクセッションの戦略的な実行を推進します。
3. リファラル採用、アルムナイ制度を活用し、多様な人材の獲得を進めます。また、多様な人材がより働きやすい環境を提供するために、EBARA New Workstyleの更なる拡大を行います。
4. 「人材の見える化」をグローバルに加速させるための基盤となる「グローバルHCM(Human Capital Management)プラットフォーム」を構築し、各人事施策の効果を定量的にモニタリングできる体制を構築していきます。
「グローバルHCMプラットフォーム構築の取り組み」<技術元素表>当社では技術と人の結びつきを技術・人材マップにより整理する試みを継続しており、それを可視化したものが、技術元素表です。5カンパニー別の技術と、複数のカンパニーに共通する共通技術、さらには全社横断的な重要な共通技術について整理しています。この技術元素表の活用により、社内外のコラボレーションを進めるとともに、人材が不足する重要な技術については人材の補強、さらにはローテーションを行って、確実に技術を継承、発展させていく体制を整えていきます。

(ii)<ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョン(DE&I)に向けた取り組み>当社は、より強い企業となり、成長し続けるために、多様な人材の登用と活躍を目的としたダイバーシティ・エクイティ&インクルージョンの推進に力を入れています。主な取り組みとしては以下となります。
a.意識・風土醸成
全社員を対象に、DE&Iの理念浸透と心理的安全性の確保を目的とした研修やeラーニングを実施、チェンジマネジメントを活用して社員の理解浸透に取り組み、相互の価値観を尊重する企業文化の醸成を図っています。
b.ライフイベント支援
社内勉強会による理解促進や制度の見直し・周知を通じて、仕事と介護の両立支援、育児休業取得、ジェンダー平等の推進に取り組んでいます。
c.LGBTQ+に関する取り組み
社内勉強会の開催、東京レインボープライド2024への協賛、プライド指標獲得を通じて、すべての社員が自分らしく働ける環境づくりを進めています。
d.障がいのある社員の活躍促進
社内勉強会による理解促進などを通じて、障がいのある社員の活躍につながる環境づくりを進めています。社員一人ひとりの能力が最大限に発揮できる環境を整え、持続的な成長と社会への貢献を目指してまいります。
特に女性管理職比率を向上するために、2023年より昇格試験制度の見直し(管理職登用までの期間短縮・抜擢受験の実現)等を通じて、出産・育児等のライフイベントの影響なく挑戦をサポートする体制を整えました。さらに今後はより早期から学びの機会を増やしていくことでスキルアップを図るとともに、年代別の研修等を通じて中長期のキャリアをより明確に描けるような仕組みづくりを推進していきます。
(iii)<人権の尊重>a.「人権尊重の基本方針」
荏原グループは、世界人権宣言の「すべての人間は、生まれながらにして尊厳と権利とについて平等である」との規定に基づき、荏原グループCSR方針に掲げる「人権と多様性を尊重する」経営を実践するために、「荏原グループ人権方針」を定め、社内外に公表しています。3つの基本方針とともに、それを実践していくための対応方針を定めています。荏原グループ人権方針は、国際労働機関(ILO)の「労働における基本的原則及び権利に関する宣言」と国連の「ビジネスと人権に関する指導原則」を尊重しています。
荏原グループ人権方針の全文は、ウェブサイトに掲載しています。
https://www.ebara.co.jp/sustainability/social/information/respect.html
b.「人権に関する救済」
国内グループ会社においては、コンプライアンス相談窓口が人権を含む苦情を受け付け、対応しています。海外グループ会社に10か国に所在する22のグループ会社にホットラインを設置しており、全グループ会社への整備を進めています。社外からの相談は、当社ウェブサイトのお問い合わせ窓口で受け付けています。2022年6月改正公益通報者保護法施行にあたり、人権に関する苦情や相談を受け付けた場合には、コンプライアンス相談窓口が当該法に則って対応します。さらに、当社グループ以外のサプライヤからの苦情や相談に対応する仕組みとして、2024年4月に一般社団法人ビジネスと人権対話救済機構(JaCER)に加盟しました。
c.「2024年の取り組み」
外部との対話人権委員会は、人権に対する課題認識の範囲を広げることや当社グループの人権マネジメントの改善につなげることを目的として、人権に関する社外有識者と対話を行っています。
<2024年>・一般社団法人ビジネスと人権対話救済機構(JaCER)を招いて、救済メカニズムの目的や意義、バリューチェーンを含めて人権課題に取り組むことの重要性、ビジネスと人権救済の実態、企業の課題、などについて意見交換を行いました。
人権デューディリジェンス人権委員会では、従業員の人権に配慮することや、サプライヤにも人権尊重の意識を持って活動していただくことが当社グループの事業活動において特に重要であると考え、人権デューディリジェンスを行っています。
<従業員に対する人権デューディリジェンス>人事部門が全グループ会社の従業員を対象に毎年行っているグローバルエンゲージメントサーベイを利用し、「職場の公正・公平性」「差別」「労働安全衛生」をグループ共通の人権項目として、約60組織のスコアをモニターしています。人権項目のエンゲージメントのスコアが一定水準に達していない会社に対して、人権委員会が人権アクションプランの策定を指示し、各社が改善策を実行します。活動の成果は翌年のエンゲージメントサーベイスコアにより評価しています。
<2024年結果>・2024年は当社グループ3社に対して改善策を求めました。当社グループの水準に達するよう、継続的な改善活動を行います。
<サプライヤに対する人権デューディリジェンス>2022年に人権尊重を含む当社CSR調達ガイドラインについて、サプライヤの皆様に理解と実践を求めることを目的とし、グローバルの一次サプライヤに対してCSR調達アンケートを実施しました。
アンケートの内容には人権に関する設問が含まれており、人権委員会は、サプライヤにおいて児童労働や強制労働、差別が起きないような取り組みがなされているか、適正な労働環境が維持されているかなど、人権に関する設問の結果を調達部門と共有し、健全なサプライチェーンマネジメントの構築を推進しています。詳細について「(4)指標と目標③人権の尊重」をご覧ください。