有価証券報告書-第156期(令和2年1月1日-令和2年12月31日)

【提出】
2021/03/29 14:38
【資料】
PDFをみる
【項目】
175項目

研究開発活動

当社グループの研究開発は、2020年に策定した“価値創造ストーリー”である「E-Vision2030」の実現に向け、重要課題とした「5つのマテリアリティ」を解決するプロセスを通じて持続的に社会に貢献するため、風水力事業、環境プラント事業、精密・電子事業、及びこれら事業と連携を取るコーポレート研究開発組織で取り組んでいます。
各事業部及び各グループ会社では、新技術の実用化・新製品応用のための研究開発、及び技術や製品の高付加価値化に向けて、業務提携などの外部との協業も活用して効果的に進めました。
これらの事業を支える共通基盤及び戦略的に重要となるコア技術の強化、更に中長期的展望に基づいた技術シーズの探索と実用化をコーポレート研究組織が中心となって実施し、大学等の外部研究機関との共同研究も積極的に活用して進めました。さらに、新事業創出のための制度であるEIX(Ebara Innovation for X)制度を活用し、プロセスイノベーション等への取り組みと成果の利用を加速させています。
また、特徴のある技術を有する中小企業との連携を発展させ、研究開発に係わる試作機能を継続的に強化しています。当連結会計年度の研究開発費は12,514百万円です。
セグメントごとの研究開発活動の状況は、以下のとおりです。
(風水力事業)
風水力事業分野では、中長期的に成長の持続が期待される、水インフラ、エネルギー(石油・ガス、電力)、建築設備分野などのグローバル市場向け製品に関し、海外グループ会社との連携強化を含め、ラインナップ拡充や製品力強化に取り組んでいます。標準ポンプでは、省エネ・省資源・環境負荷低減を指向した製品群の開発を継続して進めており、高効率のポンプ製品のシリーズ範囲を拡大し市場投入しました。顧客の省人化・省力化に貢献するICT技術製品の開発も継続して進めており、ポンプ等の健全性を遠隔にて把握できる状態監視システムについて客先でのモニタリングを実施しています。カスタムポンプでは、エネルギー分野と水利分野において省エネ・省資源・環境負荷低減を指向した製品群の開発を継続して進めると共に、水素社会実現へ貢献すべく液体水素ポンプの開発も進めています(NEDO助成事業)。コンプレッサ・タービン分野では、省エネ・省資源に貢献する新型高効率タービンの開発を継続して進めています。冷凍機分野では、環境負荷低減ニーズの高まりに応えるため、地球温暖化係数の小さい冷媒を使用する冷凍機の開発を継続し、ラインナップ拡充、応用範囲拡大に努めています。基盤技術に関しては、コーポレート研究開発組織とも連携し、技術開発を実施しました。「素形材・溶接・表面改質・加工等に対する新しい生産基盤技術」については、鋳造リードタイム削減に向けた“3D積層技術”による鋳型製作を検討しています。その他にも「数値シミュレーションと新しい最適化手法の導入などによる開発スループットの一層の向上とプロセスの標準化」、「PIV(粒子画像流速計)技術の導入による実験基盤技術の拡充」、「製品性能や信頼性の向上に寄与する製品ライフサイクルを支えるIoT技術の開発・応用」などを進めています。当連結会計年度の研究開発費は5,782百万円です。
(環境プラント事業)
環境プラント事業分野では、廃棄物処理施設の建設工事(EPC)から施設運営・維持管理(O&M)までを長期的に一括して行うDBO事業、既存施設の延命化を提案する延命化事業、既存施設のO&Mを長期にわたり運営委託を受ける長期包括事業に取り組んでおり、これまで以上に提案力や、品質、コスト競争力強化が求められています。これらの状況を踏まえ、施設更新に伴う機能強化、ライフサイクルコスト低減を可能とする新技術・新製品開発、保守運営技術の改良開発に加え、これらを支えるAIやIoT技術の活用を推進しています。また、再生可能エネルギーの1つとしての木質バイオマス発電や、産業廃棄物処理の需要を見込み、発電効率や運転の安定性を向上するための要素技術の開発に取り組んでいます。さらに、最近世界的な環境問題となっている気候変動問題や廃プラスチック問題の解決に寄与すべく、廃プラスチックのケミカルリサイクルに適用するガス化技術の開発を再開しました。当連結会計年度の研究開発費は660百万円です。
(精密・電子事業)
精密・電子事業分野では、半導体デバイス製造プロセス装置において、チップの微細化や3次元集積化だけでなく、重要度が増している新しいパッケージング技術などの開発要求や、急成長するAI、IoT分野に関する技術開発要求にも対応するよう、装置の改良・改善及び新機種の開発に取り組んでいます。コンポーネント製品においては、更なる省エネ化及び環境負荷低減に貢献できる製品の開発に取り組んでいます。また、顧客との共同開発・コンソーシアムへの参画、さらには各大学との共同研究などを通して、次世代半導体プロセス技術の研究も継続しています。当連結会計年度の研究開発費は6,071百万円です。