有価証券報告書-第125期(2024/04/01-2025/03/31)

【提出】
2025/06/23 16:02
【資料】
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【項目】
196項目
文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(1) 経営方針
当社グループは、培った技術で社会課題の解決に貢献することを企業としての存在意義と考え、「技術をつなぎ地球と働くすべての人を笑顔にする」ことを企業経営と事業運営の軸としております。
これに基づき、持てるモノづくり技術によって人とモノの自由な移動を可能にするソリューションプロバイダーとなることを2030年までの目指す姿として掲げ、一人ひとりが目標実現のために協力し合い、新たな価値を共創することを目指しております。

これからもMVV(Mission, Vision, Value)を企業経営の軸とし、モノづくりとモノづくり設備で培ってきた強みを結集して、グループの総力を最大限発揮する「全員参加」により、社会に最適なソリューションを提供し続けてまいります。
(2) 経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標
当社グループは、効率性と収益性を重視した経営を実現するため、ROE、PBR、事業利益率を経営上の目標の達成状況を判断するための重要指標と位置づけております。また、経営状況を把握する指標として、売上収益、事業利益、損益分岐点売上比率、棚卸資産回転数、NET DEレシオ、ROA、ROIC等の実績を用いております。
(3) 長期的な会社の経営戦略
社会を取り巻く環境は、温暖化等に代表される環境問題やエネルギー資源の枯渇、新興国の経済発展・人口増加に伴う水・食料の不足、先進国での高齢化等、様々な課題が顕在化しております。各産業分野で社会の持続的な成長に向けてテクノロジーにより社会的課題の解決が図られている中で、当社グループの売上収益の約8割を占める自動車産業においても、100年に一度の大変革期と言われているとおり、自動運転や電動化等CASEに代表される技術革新が急速に進んでおります。環境規制は更に強化され、カーボンニュートラルに向けた再生エネルギーの活用や水素社会の実現に向けた取組みも着実に進んでおります。
これらの取り巻く環境の変化に対応し、社会課題の解決を通して企業を成長させるため、2024年に第二期中期経営計画をスタートさせるとともに、2030年の目指す姿として「JTEKT Group 2030 Vision」を策定いたしました。


<中期経営計画>2021年から2030年までの10か年を、3年、3年、4年の三期に分け、第二期中期経営計画期間に当たる2024~2026年度は、「既存事業の成長と新規事業の育成」をテーマに各施策を進めております。既存製品の高付加価値化により成長への原資を生み出し、その原資をもとに新領域へチャレンジするという両輪で、企業価値向上を実現いたします。そのための重点施策と位置付けた「ソリューションの創出力強化」、「競争力の強化」、「グローバル体制の再構築」により、成長への足場固めを図ります。加えて、経営基盤を強化するために、「人と現場中心の経営」、「カーボンニュートラルの推進」、「キャッシュアロケーション・株主還元」にも注力してまいります。
当社は、2030年に目指す姿を実現するためのメインドライバーは「ソリューションプロバイダーへの変革」であると捉えております。ソリューションを創出できる仕組みづくりを着実に進め、グループ全体が持つ技術や社員一人ひとりの強みを掛け合わせたジェイテクトならではのソリューションで社会に貢献してまいります。
(4) 経営環境
当連結会計年度の世界経済には底堅い成長が認められましたが、当社の事業領域においては、自動車生産台数の伸び悩みや農建機を中心とした産機市場の冷え込み等、次第に不透明感が強まってまいりました。地域別には、特に欧州や中国で想定以上に景気停滞が深刻化し、成長を下押しする要因となりました。
(5) 優先的に対処すべき課題
当社は、中長期的な目標であるJTEKT Group 2030 Visionで「モノづくりとモノづくり設備でモビリティ社会の未来を創るソリューションプロバイダー」を目指すことを掲げました。自動車部品や軸受のモノづくり技術と、工作機械というモノづくり設備に強みをもつ当社だからこそ実現できる、画期的なソリューションで社会に貢献していきたいと考えております。そのためには、コア技術やコンピタンスを掛け合わせることで、既存製品の付加価値を高めていくとともに、新たな領域へチャレンジし成長事業へと育てていくことが不可欠となります。その先進的な事例として、主力製品の電動パワーステアリングの補助電源装置として開発された高耐熱リチウムイオンキャパシタ「Libuddy®」が、当社の持つ様々なコンピタンスと掛け合わさり、多方面へ新たなソリューションを提供しつつあります。例えば、電動パワーステアリングで培ったモーター制御技術や安全設計技術等のコンピタンスとLibuddy®を融合させ、ドローンの姿勢制御システムの開発に着手しております。更なる開発・検証を重ね、次世代のモビリティであるドローンの性能向上への貢献を目指します。このように当社がこれまで積み重ねてきた多岐にわたる技術や強みを活用し、積極的に新領域開拓に挑んでまいります。
人やモノが自由に移動できるモビリティ社会のなかで、当社が存在価値を発揮していくためには、これまでの受動型のビジネスからソリューション型ビジネスに大きく転換しなければなりません。その第一歩として、コアコンピタンスプラットフォーム(以下「ココプラ」)と呼ばれる、グループのコア技術やスキルを持つ人財を集約したプラットフォームの構築に注力しております。また、新たに設置したソリューション共創センター(以下「ソリセン」)では、お客様や社内が抱える課題を受け付け、ココプラをつなぎ合わせた最適なソリューションの創出を目指します。まずはココプラやソリセンの活用事例を社内で蓄積し、ソリューション型ビジネスの土台を築いてまいります。この仕組みをブラッシュアップしていくことで、全てのビジネスをソリューション型へと転換させ、ソリューションプロバイダーへと変革してまいります。
加えて、ソリューションプロバイダーへの飛躍を支える経営基盤の強化のため、不要なコストや固定費の徹底的な削減、構造改革や業務の見直し・効率化にも覚悟を持って取り組んでまいります。特に足元では北米において、Covid19蔓延以降の熟練技能者の離職増加や人員不足の顕在化による生産性悪化や不要なコスト増加が課題となっております。生産体制の正常化、コストの最小化のため、タスクフォースチームを現地に派遣して収益性改善に努めております。北米地域に限らず会社全体で不要なコストを極小化させ、健全に収益を生み出すことができる体制を固めてまいります。
また、「安全第一・品質第二」を旨とする当社は、「Yes for All, by All! ~みんなのためにみんなでやろう~」という価値観のもと、安全の確保や不正を起こさない職場風土の醸成といったガバナンスの強化を一層推し進め、社会から信頼される会社であり続けるよう、絶え間ない改善を続けてまいります。