有価証券報告書-第71期(平成31年4月1日-令和2年3月31日)
有報資料
文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(1) 会社の経営の基本方針
当社グループは「豊かな創造力と誇れる品質」を経営理念とし、顧客をはじめ社会や社員に対し「信頼と満足」を普遍的に提供することを経営の基本方針としております。また事業領域を「快適環境の創造」と定義し、業務用空調機器を中核にしながら、建物に関わる各種事業へ業容拡大を目指しております。
(2) 経営環境
① 当社の主力事業領域
空調システムは、大きく家庭用と業務用に分けることができます。そのうち業務用は、セントラル空調と個別空調に分かれ、当社の主力事業はこの「セントラル空調」に属しております。
セントラル空調は、主に事務所、工場、病院、ホテル、商業施設など、大規模な建物で採用されます。熱を作る熱源機器、その熱により空気を冷暖房する空調機器、それらを制御する計装機器から構成され、当社は空調機器のメーカーです。これら空調機器には、フロア全体を空調する大型のエアハンドリングユニット(AHU)、各部屋を空調する小型のファンコイルユニット(FCU)があり、当社は特にAHUに強みを持っております。

② セントラル空調と個別空調の違い
1) システム全体
建物を一体のシステムと捉えるセントラル空調は、熱源機器を集中設置してまとめて熱を作り、その熱をAHU、FCUなどの空調機器に供給して空調します。その際、熱媒体として「水」を循環させます。それに対し個別空調は、各部屋に室外機、室内機をセットで設置して、個々で熱を作って空調します。循環させる熱媒体は「フロンガス」です。
システムを一括で制御するセントラル空調は、建物全体の管理や省エネルギーに向いているのに対し、個々に制御できる個別空調は、システムが簡易で利便性が高いと言われます。

2) 機器に求められる要件
セントラル空調は大規模の建物に採用されることが多く、個別空調は中小規模の建物に採用されます。大規模の建物は各施設の要望に応じて個々に設計され、建物毎に要件が異なるため、AHUは一品一様で設計・製造され、最適なシステムが構築されます。一方、個別空調では汎用品でシステムが構築されるため、セントラル空調と個別空調ではメーカーに求められる要件が大きく異なります。
③ セントラル空調のメリットと今後の動向
セントラル空調の最大のメリットは、熱の搬送にフロンガスを使わず水を使用するため、地球環境にやさしいということが挙げられます。
空調分野において、熱の移動を媒介する冷媒ガス(以下、冷媒)には、古くはアンモニアや二酸化硫黄、20世紀半ば頃からは高効率かつ不燃性で毒性もないフロンが利用されておりました。ところが、フロンによるオゾン層破壊問題がクローズアップされ、1987年のモントリオール議定書によって特定フロンが規制されると、オゾン層を破壊しない代替フロンへの転換が始まりました。しかしその後、新たに地球温暖化問題が顕在化し、1997年の京都議定書では先進国が、2015年のパリ協定では発展途上国を含む全ての国が温室効果ガスの削減に取り組むこととなり、全世界で代替フロンに対する規制が進んでおります。
個別空調はその簡易性、利便性から採用が増加しておりますが、このフロン規制を受けて、地球環境にやさしいセントラル空調の存在が改めてフォーカスされております。
セントラル空調には、その他にも、フロンガスにはできない精密な温度・湿度制御ができる、上質な空気質を作ることができる、熱源をまとめて大型化するためエネルギー効率の高い運転ができる、機器がまとまって設置されているためメンテナンス性がよいなど、多くのメリットがあります。
④ セントラル空調の事業構造
セントラル空調を使用する大規模建物の工事において、空調機器は建築工程に合わせて納入、設置されます。発注主としてディベロッパーなどの施主、建物の設計をする設計事務所、建築工事として全体を束ねるゼネコン、設備工事を請けるサブコンを中心に多くの企業が関わり、工事が進められます。サブコンにはそれぞれの専門分野があり、セントラル空調を構成する熱源、空調、計装の各メーカーは、空調設備工事を担当するサブコンに対して製品を納入します。
従いまして当社の事業は、主にサブコンから発注を受け、製造した空調機器を建物の工期に合わせて建築現場に納入するという流れで進められます。

⑤ 今後のセントラル空調市場
国内市場
新築物件について、当面はオリンピックのために持ち越しとなっていた案件や都市圏の開発需要が見込まれ、その後の大型物件としては統合型リゾートやリニア中央新幹線関連の需要が中心になると期待しております。
また、当社では大規模な再開発案件の実績が多く、例えば、2016年以降の丸の内・大手町地区では約90%の建物で採用されております。更新物件については、高度経済成長期に建設された高層ビルの建て替えや80年から90年代に建てられた建物の設備更新の時期が到来しております。例えば日本初の超高層ビルとして知られる霞が関ビルは竣工後50年が経過しておりますが、当社でAHUの更新を手掛けており、いま3度目の大規模更新の時期にあたります。また1990年前後にオープンしたランドマークタワーや東京ドームなども当社が継続的にAHU更新を行ってきた大規模建物の一例になります。また既設機器のメンテナンスについて、これまでは都市圏での引合いが中心でしたが、需要は地方にも広がっております。その中には、過去に撤退した大手電機メーカー製AHUも多く含まれており、これまで以上に個々の現場に合わせた柔軟性と技術力が求められる状況になっております。
一方、新型コロナウイルス感染症拡大の影響により、景気は急速に後退しており、先行きに不透明感が増しております。オリンピックの延期に伴い、都市開発プロジェクトの工期の見直し、設備更新など各社の投資計画の延期が懸念されます。また人口減少や働き方改革を背景にした労働者の不足・労務費の上昇が顕著になっており、感染症拡大が及ぼす影響と併せて注視する必要があります。
アジア市場
アジア最大の市場である中国では、中長期的にはインフラ投資の拡大が期待されますが、新型コロナウイルスの影響や長引く米中貿易摩擦などによる景気の冷え込みが懸念されます。足元では持ち直しの動きも見られるものの、消費及び設備投資が大幅に縮小し、世界経済が悪化するなかで輸出も減少する厳しい状況が続いており、景気動向を注視する必要があります。
新型コロナウイルス感染症の影響
当業界は、東京オリンピック・パラリンピックの延期および緊急事態宣言の発令による建築現場の閉所など、新型コロナウイルス感染症拡大による影響を受けております。当社グループにおいても、現場閉所による納品停滞やサプライチェーン途絶による部品供給の遅れなどはあったものの、感染防止対策を進めたうえで事業は継続されるとみており、影響は限定的と考えております。但し、再度、緊急事態宣言が発令され、休業や外出自粛などの長期化によって建物のオーナーやテナント企業の財政状態が悪化し、建築計画の延期及び設備投資などが縮小された場合、今後の業績が下振れする可能性があります。
一方、感染症の拡大によって換気の重要性が再認識され、大規模建物で換気を行うAHUの需要が高まる、もしくは室内の健康な空気質への要求が高まるなど新たな市場が広がる可能性があり、空調機器メーカーとして注視してまいります。また国内市場ほど換気が重視されてこなかった中国市場においても同様に、AHUの需要や室内の空気質への要求の高まりが期待され、その動向を注視してまいります。
(3) 中長期的な会社の経営戦略
当社グループは、経営環境を踏まえて中長期的な経営戦略を次の項目としております。
市場戦略
① 国内市場
東京オリンピック後の新たな新築物件の需要に加え、高度経済成長期に建てられたビルなどの更新需要が見込まれるなか、市場からは多様な仕様検討、柔軟な納期変更、高い品質要求への対応力が求められております。AHUのリーディングカンパニーとして、業界を支える生産量を確保すると共に、事務所や病院など施設毎に求められる機能の組込み、既存現場で求められる分割搬入・現地組立が可能な製品の設計など、個別受注への対応力を確保してまいります。
また中小規模の建物でもオーダーメイドに対する要望は根強く存在しております。当社はこうした市場の声に応え、供給温度の精度と追従性に優れ、また冬期には安定した湿度コントロールを行う大風量・大容量タイプのヒートポンプ式AHUを開発いたしました。今後もセントラル空調分野で蓄積したノウハウを存分に活かし、パートナーとの共同開発で製品ラインアップを拡充させ、個別空調向けの製品群を積極的に展開してまいります。
② アジア市場
中国市場においては、ここ数年、当社グループの強みが活かせない汎用品の安値受注競争に巻き込まれ、利益の低下を招く要因となっておりました。一方、中国は近年、製造強国、科学技術強国、品質強国といった国策を掲げており、建築分野においても品質を重視したモノの選択がなされるようになってまいりました。
今後は計画段階から高機能型AHUを提案することにより価格競争を回避し、採算性重視の販売戦略を徹底するほか、原価管理の強化など構造改革に取り組んでまいります。また国内で蓄積したノウハウを積極的に転用し、業績回復に注力してまいります。
機能戦略
① 事業基盤の拡充
当社グループは、中長期的な事業基盤を更に強化するため、販売事業を担う当社と連結子会社で製造事業を担う新晃空調工業株式会社及び三井鉄工株式会社との合併により、設計、積算・購買、品質保証の機能統合、業務フローの見直しを含む基幹システムの再構築を進め、一層の生産性向上を目指してまいります。
また合併による製販の文化融合と併せ、個別受注生産方式の強みを次世代型に進化させることを目的として「SIMA(SINKO Innovative Manufacturing of AHU)」プロジェクトを始動いたしました。これは従来からの顧客要望やそれに伴う設計・製造指示、カスタマイズに必要な各種ノウハウをデジタル化し、上流からの情報の一気通貫による設計と生産を融合した、革新的な空調機生産方式を目指すものです。またデジタルデータの徹底活用によるその先には、仕様要件を入力するとタブレット端末で即時に3D図面が作成され、その場で見積提示、納期確認、手配まで行うことができる、テレワーク時代のインパクト営業の確立を見据えております。
業務プロセスのイノベーションを通じて、個別受注生産特有の品質・コストの二律背反を解消し、新しい製販体制の構築を進めてまいります。
② 新製品・サービスの創造
国内市場で長年培ってきた実績・経験・ノウハウを活用して研究開発に注力し、高効率・コンパクト化の実現を目指して開発したコア技術(送風機・熱交換器)を製品に実装し、高まり続ける市場の高効率・省エネルギー化のニーズに応えてまいります。併せて、外部の技術を柔軟に取り入れたパートナー型事業を推進し、変化の激しい市場に対してタイムリーに新たな価値・サービスを展開してまいります。
③ グループ事業の業容拡大
研究所、マザー工場を中心とする技術支援に加え、建物計画時における設計提案や施工時における現場サポートなど、上流から下流までの営業支援を充実させ、グループの底上げを図ります。またM&Aの活用を通して、グループ全体の収益拡大を目指してまいります。
(4) 目標とする経営指標
当社グループは需要を見据えた製品開発と販売戦略及びコストダウンなどを通じた利益率向上を目指しており、連結売上高営業利益率を経営指標としております。
(5) 優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題
事業上の強み
当社はAHUのメーカーとして、AHU市場では国内シェア40%程度を長年維持しております。今後の経営戦略を遂行する上で核になる当社の強みとして下記が挙げられます。
① 需要予測に基づく受注生産力
一品一様で設計されるAHUは、完全な受注生産品です。部材手配からラインの組み換えまで、生産現場が柔軟に対応する必要があり、量産メーカーにとっては高い障壁となりますが、それ以上に困難なことは、月によって出荷のバラつきが大きく、生産量を安定させられないことにあります。
当社は、建物の計画段階から設計を手伝う業界最大の上流営業部門を構え、案件情報を早期に獲得することで需要予測を行うとともに、これまで納入してきた多くのストックからの更新案件や小口案件を取り込むことで生産量を安定させ、工場をフル稼働させる運営システムを構築しております。この結果、当社の更新案件比率は約50%と大変高くなっております。
② オーダーメイドに応える設計力
セントラル空調は建物毎に機器に求められる要件が異なりますが、その中でもAHUは、同一の建物内でも1台毎に要求される仕様・能力・サイズが異なるため、全数について顧客と打合せを繰り返し、要望に合わせて設計する必要があります。当社はセントラル空調特有の「オーダーメイドの要求」に応えきる製品設計について長年の納入実績に裏打ちされたノウハウを有しております。
③ 品質管理・トラブル対応力
多くの現場に様々な空調機を納めてきた実績と蓄積された現場経験値が当社の製品品質を支えており、トラブルが発生した場合の営業から技術、製造、メンテナンスまで一体となって迅速に動く対応力で、要求の厳しい建築現場におかれているお客様に安心を感じていただけるよう努めてまいりました。
対処すべき課題
当社グループは、事業環境の変化に耐えうる利益体質の構築と事業基盤の強化を経営課題としております。国内では、新型コロナウイルスの影響の他、人口減少や働き方改革を背景にした労働者の不足・労務費の上昇が顕著になっております。アジア市場においては、新型コロナウイルスに加えて、通商問題等による中国経済の更なる下振れ懸念があり、厳しい事業環境が続くものと思われます。
このような背景を受け、当社グループが取り組む重要課題は以下のとおりであります。
① 生産方式の進化
1) 業務のデジタル化
労働者の不足・労務費の上昇は技術・製造分野で顕著になっております。また近年の生産現場は外国人労働者が増加し、伝統的な阿吽の呼吸によるものづくりは限界を迎えております。当社が強みとするオーダーメイド要求への対応力をさらに高めるには、個人の習熟度合いに左右されない業務体制の確立が急務であり、そのためには顧客要望やそれに伴う設計・製造指示、カスタマイズに必要な各種ノウハウなどのデジタル化による業務プロセスのイノベーションが必須になります。SIMAプロジェクトを確実に推進し、設計工程の見直し、造り方改革、生産管理を効率化するAI開発などを通して、ダイバーシティを重視した製造の実現、労働集約型工場からの脱却を進めてまいります。
2) 幹部人材の育成
当社グループの事業運営において、根幹をなす空調機器の販売・製造を束ねる幹部人材の育成が成長のカギになります。特に製造側では、需要予測に基づく営業情報を踏まえつつ、生産計画、工程設計や設備配置を含む現場管理、品質管理、デジタル技術の活用など、高度で幅広い知識・経験を有する全体感のある人材が求められております。製販の合併を通じて、製造分野だけでなく、設計、積算・購買、品質保証など幅広い知識・経験を持った幹部人材の育成に注力し、グループの組織力の強化を進めてまいります。
3) 総合品質の向上
製品品質の更なる追求に加え、多種多様な要望に対応する個別設計・生産、建築現場の要望に沿った納期対応、納品後の保守サービスなど、グループを挙げて総合的な品質を向上させ、お客様に対しより大きな安心を提供できるよう努めてまいります。
② 海外事業の立て直し
アジア市場においては中国現地法人の業績回復が喫緊の課題であります。計画段階からの高機能型AHUの提案による採算性重視の販売戦略、原価管理の強化などを徹底してまいります。また国内事業で蓄積してきたノウハウを現地ニーズに合致・深化させ、事業の立て直しに尽力してまいります。
(1) 会社の経営の基本方針
当社グループは「豊かな創造力と誇れる品質」を経営理念とし、顧客をはじめ社会や社員に対し「信頼と満足」を普遍的に提供することを経営の基本方針としております。また事業領域を「快適環境の創造」と定義し、業務用空調機器を中核にしながら、建物に関わる各種事業へ業容拡大を目指しております。
(2) 経営環境
① 当社の主力事業領域
空調システムは、大きく家庭用と業務用に分けることができます。そのうち業務用は、セントラル空調と個別空調に分かれ、当社の主力事業はこの「セントラル空調」に属しております。
セントラル空調は、主に事務所、工場、病院、ホテル、商業施設など、大規模な建物で採用されます。熱を作る熱源機器、その熱により空気を冷暖房する空調機器、それらを制御する計装機器から構成され、当社は空調機器のメーカーです。これら空調機器には、フロア全体を空調する大型のエアハンドリングユニット(AHU)、各部屋を空調する小型のファンコイルユニット(FCU)があり、当社は特にAHUに強みを持っております。

② セントラル空調と個別空調の違い
1) システム全体
建物を一体のシステムと捉えるセントラル空調は、熱源機器を集中設置してまとめて熱を作り、その熱をAHU、FCUなどの空調機器に供給して空調します。その際、熱媒体として「水」を循環させます。それに対し個別空調は、各部屋に室外機、室内機をセットで設置して、個々で熱を作って空調します。循環させる熱媒体は「フロンガス」です。
システムを一括で制御するセントラル空調は、建物全体の管理や省エネルギーに向いているのに対し、個々に制御できる個別空調は、システムが簡易で利便性が高いと言われます。

2) 機器に求められる要件
セントラル空調は大規模の建物に採用されることが多く、個別空調は中小規模の建物に採用されます。大規模の建物は各施設の要望に応じて個々に設計され、建物毎に要件が異なるため、AHUは一品一様で設計・製造され、最適なシステムが構築されます。一方、個別空調では汎用品でシステムが構築されるため、セントラル空調と個別空調ではメーカーに求められる要件が大きく異なります。
③ セントラル空調のメリットと今後の動向
セントラル空調の最大のメリットは、熱の搬送にフロンガスを使わず水を使用するため、地球環境にやさしいということが挙げられます。
空調分野において、熱の移動を媒介する冷媒ガス(以下、冷媒)には、古くはアンモニアや二酸化硫黄、20世紀半ば頃からは高効率かつ不燃性で毒性もないフロンが利用されておりました。ところが、フロンによるオゾン層破壊問題がクローズアップされ、1987年のモントリオール議定書によって特定フロンが規制されると、オゾン層を破壊しない代替フロンへの転換が始まりました。しかしその後、新たに地球温暖化問題が顕在化し、1997年の京都議定書では先進国が、2015年のパリ協定では発展途上国を含む全ての国が温室効果ガスの削減に取り組むこととなり、全世界で代替フロンに対する規制が進んでおります。
個別空調はその簡易性、利便性から採用が増加しておりますが、このフロン規制を受けて、地球環境にやさしいセントラル空調の存在が改めてフォーカスされております。
セントラル空調には、その他にも、フロンガスにはできない精密な温度・湿度制御ができる、上質な空気質を作ることができる、熱源をまとめて大型化するためエネルギー効率の高い運転ができる、機器がまとまって設置されているためメンテナンス性がよいなど、多くのメリットがあります。
④ セントラル空調の事業構造
セントラル空調を使用する大規模建物の工事において、空調機器は建築工程に合わせて納入、設置されます。発注主としてディベロッパーなどの施主、建物の設計をする設計事務所、建築工事として全体を束ねるゼネコン、設備工事を請けるサブコンを中心に多くの企業が関わり、工事が進められます。サブコンにはそれぞれの専門分野があり、セントラル空調を構成する熱源、空調、計装の各メーカーは、空調設備工事を担当するサブコンに対して製品を納入します。
従いまして当社の事業は、主にサブコンから発注を受け、製造した空調機器を建物の工期に合わせて建築現場に納入するという流れで進められます。

⑤ 今後のセントラル空調市場
国内市場
新築物件について、当面はオリンピックのために持ち越しとなっていた案件や都市圏の開発需要が見込まれ、その後の大型物件としては統合型リゾートやリニア中央新幹線関連の需要が中心になると期待しております。
また、当社では大規模な再開発案件の実績が多く、例えば、2016年以降の丸の内・大手町地区では約90%の建物で採用されております。更新物件については、高度経済成長期に建設された高層ビルの建て替えや80年から90年代に建てられた建物の設備更新の時期が到来しております。例えば日本初の超高層ビルとして知られる霞が関ビルは竣工後50年が経過しておりますが、当社でAHUの更新を手掛けており、いま3度目の大規模更新の時期にあたります。また1990年前後にオープンしたランドマークタワーや東京ドームなども当社が継続的にAHU更新を行ってきた大規模建物の一例になります。また既設機器のメンテナンスについて、これまでは都市圏での引合いが中心でしたが、需要は地方にも広がっております。その中には、過去に撤退した大手電機メーカー製AHUも多く含まれており、これまで以上に個々の現場に合わせた柔軟性と技術力が求められる状況になっております。
一方、新型コロナウイルス感染症拡大の影響により、景気は急速に後退しており、先行きに不透明感が増しております。オリンピックの延期に伴い、都市開発プロジェクトの工期の見直し、設備更新など各社の投資計画の延期が懸念されます。また人口減少や働き方改革を背景にした労働者の不足・労務費の上昇が顕著になっており、感染症拡大が及ぼす影響と併せて注視する必要があります。
アジア市場
アジア最大の市場である中国では、中長期的にはインフラ投資の拡大が期待されますが、新型コロナウイルスの影響や長引く米中貿易摩擦などによる景気の冷え込みが懸念されます。足元では持ち直しの動きも見られるものの、消費及び設備投資が大幅に縮小し、世界経済が悪化するなかで輸出も減少する厳しい状況が続いており、景気動向を注視する必要があります。
新型コロナウイルス感染症の影響
当業界は、東京オリンピック・パラリンピックの延期および緊急事態宣言の発令による建築現場の閉所など、新型コロナウイルス感染症拡大による影響を受けております。当社グループにおいても、現場閉所による納品停滞やサプライチェーン途絶による部品供給の遅れなどはあったものの、感染防止対策を進めたうえで事業は継続されるとみており、影響は限定的と考えております。但し、再度、緊急事態宣言が発令され、休業や外出自粛などの長期化によって建物のオーナーやテナント企業の財政状態が悪化し、建築計画の延期及び設備投資などが縮小された場合、今後の業績が下振れする可能性があります。
一方、感染症の拡大によって換気の重要性が再認識され、大規模建物で換気を行うAHUの需要が高まる、もしくは室内の健康な空気質への要求が高まるなど新たな市場が広がる可能性があり、空調機器メーカーとして注視してまいります。また国内市場ほど換気が重視されてこなかった中国市場においても同様に、AHUの需要や室内の空気質への要求の高まりが期待され、その動向を注視してまいります。
(3) 中長期的な会社の経営戦略
当社グループは、経営環境を踏まえて中長期的な経営戦略を次の項目としております。
市場戦略
① 国内市場
東京オリンピック後の新たな新築物件の需要に加え、高度経済成長期に建てられたビルなどの更新需要が見込まれるなか、市場からは多様な仕様検討、柔軟な納期変更、高い品質要求への対応力が求められております。AHUのリーディングカンパニーとして、業界を支える生産量を確保すると共に、事務所や病院など施設毎に求められる機能の組込み、既存現場で求められる分割搬入・現地組立が可能な製品の設計など、個別受注への対応力を確保してまいります。
また中小規模の建物でもオーダーメイドに対する要望は根強く存在しております。当社はこうした市場の声に応え、供給温度の精度と追従性に優れ、また冬期には安定した湿度コントロールを行う大風量・大容量タイプのヒートポンプ式AHUを開発いたしました。今後もセントラル空調分野で蓄積したノウハウを存分に活かし、パートナーとの共同開発で製品ラインアップを拡充させ、個別空調向けの製品群を積極的に展開してまいります。
② アジア市場
中国市場においては、ここ数年、当社グループの強みが活かせない汎用品の安値受注競争に巻き込まれ、利益の低下を招く要因となっておりました。一方、中国は近年、製造強国、科学技術強国、品質強国といった国策を掲げており、建築分野においても品質を重視したモノの選択がなされるようになってまいりました。
今後は計画段階から高機能型AHUを提案することにより価格競争を回避し、採算性重視の販売戦略を徹底するほか、原価管理の強化など構造改革に取り組んでまいります。また国内で蓄積したノウハウを積極的に転用し、業績回復に注力してまいります。
機能戦略
① 事業基盤の拡充
当社グループは、中長期的な事業基盤を更に強化するため、販売事業を担う当社と連結子会社で製造事業を担う新晃空調工業株式会社及び三井鉄工株式会社との合併により、設計、積算・購買、品質保証の機能統合、業務フローの見直しを含む基幹システムの再構築を進め、一層の生産性向上を目指してまいります。
また合併による製販の文化融合と併せ、個別受注生産方式の強みを次世代型に進化させることを目的として「SIMA(SINKO Innovative Manufacturing of AHU)」プロジェクトを始動いたしました。これは従来からの顧客要望やそれに伴う設計・製造指示、カスタマイズに必要な各種ノウハウをデジタル化し、上流からの情報の一気通貫による設計と生産を融合した、革新的な空調機生産方式を目指すものです。またデジタルデータの徹底活用によるその先には、仕様要件を入力するとタブレット端末で即時に3D図面が作成され、その場で見積提示、納期確認、手配まで行うことができる、テレワーク時代のインパクト営業の確立を見据えております。
業務プロセスのイノベーションを通じて、個別受注生産特有の品質・コストの二律背反を解消し、新しい製販体制の構築を進めてまいります。
② 新製品・サービスの創造
国内市場で長年培ってきた実績・経験・ノウハウを活用して研究開発に注力し、高効率・コンパクト化の実現を目指して開発したコア技術(送風機・熱交換器)を製品に実装し、高まり続ける市場の高効率・省エネルギー化のニーズに応えてまいります。併せて、外部の技術を柔軟に取り入れたパートナー型事業を推進し、変化の激しい市場に対してタイムリーに新たな価値・サービスを展開してまいります。
③ グループ事業の業容拡大
研究所、マザー工場を中心とする技術支援に加え、建物計画時における設計提案や施工時における現場サポートなど、上流から下流までの営業支援を充実させ、グループの底上げを図ります。またM&Aの活用を通して、グループ全体の収益拡大を目指してまいります。
(4) 目標とする経営指標
当社グループは需要を見据えた製品開発と販売戦略及びコストダウンなどを通じた利益率向上を目指しており、連結売上高営業利益率を経営指標としております。
(5) 優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題
事業上の強み
当社はAHUのメーカーとして、AHU市場では国内シェア40%程度を長年維持しております。今後の経営戦略を遂行する上で核になる当社の強みとして下記が挙げられます。
① 需要予測に基づく受注生産力
一品一様で設計されるAHUは、完全な受注生産品です。部材手配からラインの組み換えまで、生産現場が柔軟に対応する必要があり、量産メーカーにとっては高い障壁となりますが、それ以上に困難なことは、月によって出荷のバラつきが大きく、生産量を安定させられないことにあります。
当社は、建物の計画段階から設計を手伝う業界最大の上流営業部門を構え、案件情報を早期に獲得することで需要予測を行うとともに、これまで納入してきた多くのストックからの更新案件や小口案件を取り込むことで生産量を安定させ、工場をフル稼働させる運営システムを構築しております。この結果、当社の更新案件比率は約50%と大変高くなっております。
② オーダーメイドに応える設計力
セントラル空調は建物毎に機器に求められる要件が異なりますが、その中でもAHUは、同一の建物内でも1台毎に要求される仕様・能力・サイズが異なるため、全数について顧客と打合せを繰り返し、要望に合わせて設計する必要があります。当社はセントラル空調特有の「オーダーメイドの要求」に応えきる製品設計について長年の納入実績に裏打ちされたノウハウを有しております。
③ 品質管理・トラブル対応力
多くの現場に様々な空調機を納めてきた実績と蓄積された現場経験値が当社の製品品質を支えており、トラブルが発生した場合の営業から技術、製造、メンテナンスまで一体となって迅速に動く対応力で、要求の厳しい建築現場におかれているお客様に安心を感じていただけるよう努めてまいりました。
対処すべき課題
当社グループは、事業環境の変化に耐えうる利益体質の構築と事業基盤の強化を経営課題としております。国内では、新型コロナウイルスの影響の他、人口減少や働き方改革を背景にした労働者の不足・労務費の上昇が顕著になっております。アジア市場においては、新型コロナウイルスに加えて、通商問題等による中国経済の更なる下振れ懸念があり、厳しい事業環境が続くものと思われます。
このような背景を受け、当社グループが取り組む重要課題は以下のとおりであります。
① 生産方式の進化
1) 業務のデジタル化
労働者の不足・労務費の上昇は技術・製造分野で顕著になっております。また近年の生産現場は外国人労働者が増加し、伝統的な阿吽の呼吸によるものづくりは限界を迎えております。当社が強みとするオーダーメイド要求への対応力をさらに高めるには、個人の習熟度合いに左右されない業務体制の確立が急務であり、そのためには顧客要望やそれに伴う設計・製造指示、カスタマイズに必要な各種ノウハウなどのデジタル化による業務プロセスのイノベーションが必須になります。SIMAプロジェクトを確実に推進し、設計工程の見直し、造り方改革、生産管理を効率化するAI開発などを通して、ダイバーシティを重視した製造の実現、労働集約型工場からの脱却を進めてまいります。
2) 幹部人材の育成
当社グループの事業運営において、根幹をなす空調機器の販売・製造を束ねる幹部人材の育成が成長のカギになります。特に製造側では、需要予測に基づく営業情報を踏まえつつ、生産計画、工程設計や設備配置を含む現場管理、品質管理、デジタル技術の活用など、高度で幅広い知識・経験を有する全体感のある人材が求められております。製販の合併を通じて、製造分野だけでなく、設計、積算・購買、品質保証など幅広い知識・経験を持った幹部人材の育成に注力し、グループの組織力の強化を進めてまいります。
3) 総合品質の向上
製品品質の更なる追求に加え、多種多様な要望に対応する個別設計・生産、建築現場の要望に沿った納期対応、納品後の保守サービスなど、グループを挙げて総合的な品質を向上させ、お客様に対しより大きな安心を提供できるよう努めてまいります。
② 海外事業の立て直し
アジア市場においては中国現地法人の業績回復が喫緊の課題であります。計画段階からの高機能型AHUの提案による採算性重視の販売戦略、原価管理の強化などを徹底してまいります。また国内事業で蓄積してきたノウハウを現地ニーズに合致・深化させ、事業の立て直しに尽力してまいります。