有価証券報告書-第43期(平成26年4月1日-平成27年3月31日)

【提出】
2015/06/19 13:25
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【項目】
123項目

対処すべき課題

現在当社グループは、2010年4月よりスタートさせた長期経営計画『マスタープラン2010』を遂行しています。計画の中では、目指す企業ビジョンを「精密加工を核に、世界の顧客のベストパートナーになる。~顧客の成長に必要な唯一無二の存在~」と定め、お客様から選んでいただける企業グループとなるべく、現状の課題を明確化して取り組んでいます。
長期経営計画『マスタープラン2010』の初年度となる2010年度は、筋肉質な企業体質を構築するための「事業の再構築」を中心に施策を展開しました。希望退職者の募集や拠点の統廃合、不採算製品からの撤退、開発案件の選択と集中といった施策を通して、変動費、固定費の域を問わずコストの削減に取り組みました。2011年度から2013年度までの3年間は、売上規模を増大させるための「事業拡大」に軸足を転じ、光通信用部品の測定装置で世界トップブランドのDATA-PIXEL SAS(仏)へ資本参加を行うほか、自動車関連やエレクトロニクス関連の業界に安定した顧客基盤を有する不二電子工業株式会社を連結子会社に加えました。これらの施策により、売上規模はそれまでの2倍以上に拡大し、『マスタープラン2010』に掲げた2015年度の連結売上目標100億円を前倒しで達成させることができました。当連結会計年度は、引き続き売上規模の増大を追いながら、一方で変動費の削減活動を強力に推進し、前連結会計年度に達成できなかった当期純利益の回復を実現いたしました。
現在の当社グループが最重視すべき経営課題は、当連結会計年度に回復した当期純利益を今後も安定的に維持、拡大し、継続的に企業価値を成長させることのできる企業体質を構築することであります。その実現に向けて対処すべき課題は、次の3点と認識しております。
(1) グループ内連携による価値創造
当社グループは、「小型」「精密」「光学」をキーワードに、社会の進歩発展に貢献する製品やサービスをグローバルに提供してまいりたいと考えております。M&Aを含む他社とのアライアンスは、これを実現するための手段のひとつと認識しており、日頃から積極的に検討を行っています。
2012年度にグループに加わったフランスの企業、DATA-PIXEL SASは、光通信用部品の測定装置や検査装置の分野で世界をリードするメーカーであり、これらの開発を通して培った高度な画像処理技術を有しています。また2013年度に連結子会社化した不二電子工業株式会社は、インサート成形やプレス成形等の多種多様な成形技術を有しており、自動車部品業界に強固な顧客基盤を築いています。こうして獲得した新しい技術や顧客基盤は、当社グループにとって大変貴重な経営資源であります。
当社グループにとって、これからの課題は、グループ各社が有するこれらの「技術」「人」「情報」「顧客基盤」といった有形無形の経営資源を有機的に連携させ、そこから数多くの新たな付加価値を創造していくことであります。その実現に向けて現在は、半年に一度、グループ各社の幹部が日本本社に集結し、市場の動向や技術開発の状況を共有する国際経営会議を開催しています。また、本社と不二電子工業株式会社との間では、定期的に技術交流会を開催し、両社の技術者が情報交換を行うほか、数名の出向社員を派遣する等、人的交流を積極的に図っています。こうした取り組みを継続的に行うことで、世の中をより快適に、より便利にする付加価値を効率よく生み出すことができる当社グループへと進化してまいりたいと考えております。
(2) 販売力の強化と生産性の向上
当社グループが事業を営む情報通信・エレクトロニクス関連業界は市場の移り変わりが早く、競争環境は国家や業界の垣根を超えて一段と激化しています。そうした中でも着実にシェアを伸ばし、売上の成長を実現するためには販売力の強化が欠かせません。そのためにはまず、的確なマーケティングを通して成長市場を見極め、その市場に求められるニーズと当社グループが保有する技術や製品との接点を把握することが重要です。当社グループにとって新しい市場においては、新しいお客様と出会う機会を数多く作り出す必要があります。このため、展示会への出展や新聞、専門誌等へのプレスリリース、ホームページ等のメディアを通して当社グループの技術やサービスを積極的に広報し、市場での認知度を高めてまいります。既存の市場においては、お客様の成長を後押しするような技術や製品を他社に先駆けて提供することができるよう、お客様にとって最も近い距離に立ち、課題を共有すると共に、常に市場の未来を見据えた技術の研鑽に努めてまいりたいと考えています。
ライフサイクルが短く、販売価格の下落が著しい製品においても、一定の付加価値を確保し続けるためには、継続的な生産性向上が不可欠であります。その実現に向けて当社グループは、「生産」「購買」「物流」の各方面の最適化に取り組んでおります。
生産面においては、中国の製造子会社、杭州精工技研有限公司及び大連精工技研有限公司を軸に不良率の低減と工程改善による生産リードタイムの短縮に取り組みます。機械による加工工程が多い日本本社においては、人的資源の効率的な活用を目的として多能工化を推進する一方、業務量の繁閑に応じて社外への業務委託量を調整する等、原価の最小化に努めます。
購買面においては、取引先との良好なパートナーシップを維持しながら、世界で最良の部材を世界で最も適切な価格で調達できる体制の構築を目指します。
物流面においては、受注から納品までの無駄を排除し、コストと時間を最小化するサプライチェーンの構築に取り組んでまいります。
(3) 新分野・新製品の早期創出
当社グループは創業以来、コアテクノロジーである精密研磨技術や精密加工、組立技術を活かし、様々な種類の金型や光通信関連部品等を市場に提供してまいりました。育んできた技術を最大限に活用し、質の高い製品を市場に提供することを通じて社会の進歩発展に貢献するという企業姿勢は、創業から現在まで一貫して維持してまいりました。当社グループの根底に流れるその理念を踏襲しながら、さらなる成長を実現する上で重要なことは、社会の進歩や市場の変化を先取りする新しい製品の創出や、当社グループにとって新たな分野の開拓に常にチャレンジし続けることであります。
精機関連では現在、金型を販売するビジネスから、社内で造った金型を用いて付加価値の高い成形品を量産し、これを販売するビジネスへと移行する途上にあります。スマートフォン向けのカメラレンズは、高温環境下で半田付けを行うリフロー工程に耐えることができ、かつ画素数が200万画素を超える高耐熱レンズを世界で初めて開発しました。光製品関連では、高速大容量通信を実現する新しい光通信用部品の開発に拍車がかかっています。また、X線を用いて個体の内部を非接触でスキャンニングし、これを3次元画像で解析することができるX線透視CT装置を新たにラインアップに加え、研究開発機関を対象にマーケティングとプロモーションを開始しました。
当社グループはこれからも、常にリスクを恐れず新しい分野の開拓、新しい製品の創出に取り組み、より幅広い産業領域で社会の発展に貢献する企業グループとなるべく、一層努力してまいりたいと考えております。