有価証券報告書-第157期(2025/04/01-2026/03/31)
(2)重要課題に対する取組
日立は創業以来、「優れた自主技術・製品の開発を通じて社会に貢献する」ことを企業理念としており、社会インフラを支える技術・製品の開発によって社会が直面する課題を解決してきました。
経営計画「Inspire 2027」において日立がめざすのは、「環境、幸福、経済成長が調和するハーモナイズドソサエティの実現に貢献し、持続的に成長」することです。その実現に向けて、地球環境を守りながらグリーントランスフォーメーション(GX)を推進し、人的資本への積極投資により持続的成長をけん引する人財の強化を図ります。
①脱炭素・気候変動に関する取組(TCFDに基づく開示)
当社は、2018年6月に金融安定理事会(FSB)「気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)」の提言に賛同を表明し、同年に公開した日立サステナビリティレポート2018より、TCFD提言に基づく情報開示をしています。
本有価証券報告書では、その抜粋を掲載します。
(イ)ガバナンス
当グループは、気候変動を含む環境課題への対応を重要な経営課題の一つと認識し、気候変動に関するガバナンスについても、前項の「(1)ガバナンス及びリスク管理」に準じた体制で取り組んでいます。
(ロ)戦略
日立にとって環境は、GXを通じた中長期的な価値創造を支える重要な基盤です。世界的な環境課題の深刻化への対応として、日立はグループ全体の方向性を示す環境ビジョンを定めています。このビジョンの実現に向けて、日立は「脱炭素」「サーキュラーエコノミー」「ネイチャーポジティブ」を軸とした環境長期目標「日立環境イノベーション2050」を掲げています。

気候変動関連のリスク
気候変動に関するリスクについては、「脱炭素への移行リスク(主に1.5℃シナリオに至るリスク)」及び、「気候変動の物理的影響に関連したリスク(主に4℃シナリオに至るリスク)」に分類して分析・管理しています。
・脱炭素への移行リスク(主に1.5℃シナリオに至るリスク)
脱炭素への移行に関連する重大なリスクとは、一般的に「脱炭素化が実現した世界では、現状のままでは存続することができない事業」に関するリスクです。これは、化石燃料が使えなくなるリスクに該当しますが、現在の当グループの事業では、電気をエネルギー源とするものが多いため、重大なリスクはほとんど見つかりませんでした。
その他、当グループが想定する脱炭素への移行リスクとしては、炭素税、燃料・エネルギー費への課税、排出権取引などの導入に伴う事業コスト負担増や、脱炭素向け製品・サービスの技術開発の遅れによる販売機会の逸失などがあります。このなかで、製品開発の遅れのリスクについては、機会と表裏一体であり、脱炭素化に貢献する事業を進めることで、リスク回避が可能と判断しています。
・気候変動の物理的影響に関連したリスク(主に4℃シナリオに至るリスク)
気候変動に関する物理的リスクに関しては、気候変動の影響と考えられる気象災害、例えば台風や洪水、渇水などの激化(急性リスク)や、海面上昇、長期的な熱波など(慢性リスク)による事業継続のリスクが考えられます。
このようなリスクを回避するための一つの施策として、工場新設時には洪水被害を念頭に置いた上で立地条件や設備の配置などを考慮しています。
気候変動関連の機会
当グループでは、気候変動に関連する多くの機会が考えられます。
環境長期目標「日立環境イノベーション2050」に掲げたCO2排出量の削減目標を達成するには、事業所の脱炭素化はもちろん、バリューチェーン全体の排出の多くを占める、販売された製品・サービスの使用に伴うCO2排出の削減が重要です。省エネルギー化等による、CO2削減に貢献する製品・サービスの開発・提供は、顧客ニーズへの対応であり、社会の脱炭素化への貢献になります。また、顧客との協創によるカーボンフリーソリューションやサービスの普及のような脱炭素化に貢献するビジネスの拡大にも機会があります。GXへの取組は、当グループの経営戦略として推し進めている「社会イノベーション事業」の大きな柱であり、短・中・長期にわたる大きな事業機会になります。
当グループの気候変動関連のリスク及び機会について
気候変動関連のリスクを検討した結果、当グループの事業継続に重大で対応が困難なリスクは現時点では認識されていません。一方、気候変動対策への取組はビジネス機会となり得ることから、政策・市場動向等の変化を踏まえ、リスク及び機会の評価を継続的に実施していきます。
1.5℃及び4℃いずれのシナリオ下においても、市場の動向を注視し柔軟かつ戦略的に事業を展開することで、当グループは、中・長期観点から、脱炭素への移行において高いレジリエンスを有していると考えています。
(ハ)リスク管理
気候変動関連のリスク管理については、BU及びグループ会社ごとに環境負荷などを把握し、評価・査定しています。グループ全体として特に重要なリスク及び機会を認識した場合には、経営会議で審議し、必要に応じて取締役会でも審議します。
(ニ)指標及び目標
当グループは、環境長期目標「日立環境イノベーション2050」において、脱炭素の分野で以下の目標を掲げています。
2050年度(長期)
・バリューチェーンにおけるネットゼロ
2030年度(中期)
・ファクトリー・オフィスにおけるカーボンニュートラル
・バリューチェーンにおける温室効果ガス(GHG)排出量52%削減
環境長期目標の達成に向けて、短期の目標として3年ごとに「環境行動計画」を策定しています。現在、「2027環境行動計画」に基づき、指標及び目標を設定し、進捗を管理しています。
「2027環境行動計画」の脱炭素に関する指標のうち、ファクトリー・オフィスにおけるGHG排出量削減率に関する目標は以下のとおりです。
当グループは、GHG排出量削減に関する2025年度目標(60%)を達成する見込みです。詳細は後日公表予定の「日立サステナビリティレポート2026」をご覧ください。
日立グループの温室効果ガス排出量(2025年度)
(注)1. 当社は、当社の定める「環境管理区分判定基準」に基づき、当グループの全事業所をA・B・Cの3区分に分類して管理しており、上記表中のScope1及びScope2は、当グループの中で環境負荷が大きいA区分の事業所及び発電事業を対象としています。
2. 当グループ内での燃料の使用や工業プロセスによる直接排出
3. 当グループが購入した電気・熱の使用に伴う間接排出
②人的資本・多様性に関する取組
(イ)戦略
i)グローバル人財マネジメント
日立は、人こそが価値の源泉であるとの考えを基盤とし、経営計画「Inspire 2027」のもと、人的資本への積極的な投資を進めています。世界中の従業員の力を強化・結集し、「真のOne Hitachi」として、顧客と社会に価値を提供することをめざしています。急速な技術進展や人財をめぐるグローバル競争の激化、求められるスキルの高度化といった外部環境を踏まえ、将来顕在化し得るリスクや組織課題を先取りして対応するため、新たなグローバル人財戦略を策定しました。
IT、OT、プロダクトを併せ持つ強みと、多様な事業ポートフォリオを有する日立にとって、グローバルに選ばれる雇用者(Employer of choice)となり、質の高い人財を惹きつけ、育成・定着させることは、競争力を持続する上で不可欠です。この考えのもと、新たなグローバル人財戦略においては、タレントマネジメント及びトータルリワードの領域において、関連する制度及びオペレーティングモデルのグローバルでの一貫性を保ちつつ、市場競争力と公平性を備え、かつ各地域の特性にも柔軟に対応できる仕組みへと進化させています。同時に、日立が日本中心の組織から真にグローバルな企業へと進化するために、地域や事業を越えた協働を可能にする制度、業務プロセス及びそれらを支えるデジタルプラットフォームの強化にも取り組みます。この戦略を通して、グループ全体の力を最大限に引き出し、社会及びすべてのステークホルダーに対する長期的な価値創出をめざしています。
(a)日立のグローバル人財戦略の概要
日立の新たなグローバル人財戦略においては、「タレントマネジメント」、「トータルリワード」及び「One HRプラットフォーム」の3つを重点領域と位置づけ、体系的に取組を推進しています。
■ タレントマネジメント
日立は、組織の強靭性と持続性を確保するため、リーダー人財の継続的な育成と後継者育成計画(リーダーシップパイプライン及びサクセッションプランニング)の強化に取り組んでいます。また、グローバルでの職務を基軸としたタレントマネジメントの枠組みを強化し、役割の明確化、公平性・透明性の向上を図るとともに、スキル、職務、人財に関する意思決定を事業戦略とより強く連動させています。これにより、日立グループ全体での人財流動性の促進と、計画的な能力開発を支援しています。
■ トータルリワード
職務に基づく報酬体系と、成果に連動した報酬(Pay for Performance)の考え方を中核に、透明性、公平性、市場競争力を高めるトータルリワードへと変革を進めています。本取組を通じて、グローバルベンチマークに基づく競争力のある報酬の提供を推進しています。また、多様な人財のグローバルでの獲得・定着及びモチベーション向上を支える、日立ならではの差別化されたインクルーシブな制度設計をめざしています。
■ One HRプラットフォーム
上記の重点領域は、共通のOne HRプラットフォームによって支えられています。グループ共通のシステム、データ及びプロセスを整備することで、日立グループ全体における一貫性とスケーラビリティを確保しています。
(b)日立のグローバル人財戦略の主要施策とHRプログラム
以下の図は、日立の人財戦略における3つの重点領域・6つの主要施策・各HRプログラムのつながりを体系的に整理したものです。
⦅3つの重点領域・6つの主要施策・各HRプログラムのつながりのイメージ図⦆

各主要施策及びHRプログラムの詳細は以下の通りです。
タレントマネジメント-主要施策Ⅰ:人財の獲得・育成・配置の促進によるシナジー強化
急速に変化する事業環境の中で組織のレジリエンスを維持するためには、人財・スキル・配置を、変化し続ける戦略的優先事項と継続的に整合させていくことが不可欠です。この考え方のもと、日立は長期的な成長を支える戦略の基盤として、タレントマネジメントの強化を進めています。具体的には、職務を基軸とした統合的なタレントマネジメントの枠組みを通じて、戦略実行に必要な人財・スキルの強化と、リーダーを適時・適所に配置できる体制の強化に取り組んでいます。また、人財の採用・育成・配置を一体的に連動させることで、グループ全体での効果的な人財流動を実現するとともに、継続的な学習と成長志向(グロース・マインドセット)の醸成を図っています。
(HRプログラムⅠ-① 人財獲得に向けた取組の概要)
グローバルな人財市場は、新たなスキルの急速な出現、候補者の価値観や期待の変化、人口動態の変化などにより、大きく変化しています。日立は、グローバルに優秀な人財を惹きつけ、採用していくために、要員計画・人財獲得・人財育成を一体的に推進する統合的なタレント戦略を策定し、変化する事業環境や求められる能力に柔軟に対応しています。
また、ビジネスユニット(BU)のタレントアクイジションチームは特定の地域・セクターにおける専門性を有する組織として配置されています。この体制により、機動的な採用活動を行うとともに、若手人財向けのプログラムや専門性の高いポジションへの対応等、ターゲットを明確にした取組を推進しています。さらに、各取組から得られた知見やベストプラクティスは組織横断で共有され、継続的な改善につなげています。
例えば、Hitachi Rail社では、長期的なプロジェクトの見通し(プロジェクトパイプライン)、技術ロードマップ及び地域別成長戦略と人財獲得戦略を一体的に連動させ、デジタル信号、ソフトウェアエンジニアリング、AIを活用した保守、システムエンジニアリング、サイバーセキュリティ及びサステナビリティ等の重要領域の人財確保に取り組んでいます。その目的は、汎用性の高いスキルを重視しつつ、採用、エンジニアリング、デジタルといった各チーム間の連携を強化するとともに、変化する業界のニーズに合わせて能力ギャップを先行的に特定し、将来に備えた人財の育成につなげることにあります。これにより、関連産業からの多様な人財の獲得や、必要スキルの迅速な確保を実現し、中長期的な人財のレジリエンス及び雇用の持続可能性の強化につなげています。
日本においては、新卒採用を中心に、ジョブ型を念頭においた個々のキャリア志向に応じた人財獲得戦略を推進しています。個人のキャリア志向と具体的な職務を結びつけ、それぞれの強みや希望に応じた最適な役割とのマッチングを図っています。その中核となるのが、ジョブ型インターンシッププログラムです。新卒候補者が実際の職務や業務に関わることで、専門領域や適性を自ら理解し、より主体的で納得感の高いマッチングを実現しています。
(HRプログラムⅠ-② 人財配置に関する取組)
日立では、役割・ケイパビリティ・事業戦略を整合させるグローバルかつ体系的なアプローチにより、人財の最適配置を推進し、組織全体にわたる効果的な人財活用を実現しています。この取組は、ジョブ型人財マネジメントによって支えられており、各役割に求められる要件を明確化するとともに、事業・地域をまたいで一貫性と客観性のある人財配置を可能にしています。
また、グローバル単位・事業単位・地域単位で実施するタレントレビューを通じて、従業員一人ひとりのケイパビリティ、パフォーマンス、ポテンシャルを可視化し、最適な人財配置や後継者計画に活用しています。さらに、社内公募制度を通じて、事業単位や地域単位を越えた内部人財の異動や活用を促進するとともに、多様なキャリア機会へのアクセスを提供することで、変化する事業ニーズへの対応力を高めています。
これらの施策は、グローバルでのタレントモビリティ(人財の流動化)に関する方針・枠組みの強化や、特に日本におけるジョブ型マネジメントの導入・拡大とあわせて推進しており、組織全体の一貫性、透明性及び公平性を高めるとともに、機会への平等なアクセスの確保につなげています。これにより、従業員のモチベーション向上と目的意識の共有を促進し、個人と組織の双方における持続的な成長を可能にしています。あわせて、人財の変化への対応力を高め、リーダー人財の継続的な育成を強化するとともに、事業戦略の実効を支えています。
(HRプログラムⅠ-③ 日本でのジョブ型人財マネジメントの推進)
日立は、制度・仕組みの整備に加え、意識・行動変革を促す取組を通じて、日本におけるジョブ型人財マネジメントを推進してきました。その結果、その基盤は概ね確立されました。具体的な成果は複数の領域に表れています。例えば、グループ内の社内公募制度においては、過去5年間で募集ポジション数及び応募者数のいずれもが約2倍に増加しました。これにより、国籍、性別、年齢といった属性に左右されることなく、個人の意欲や能力に基づいて、各職務に最適な人財が配置されるケースが着実に増えました。これは、職務内容や求められる要件を明確化したことで、従業員が自らのスキルやキャリア志向に応じて主体的に応募する機会が拡大したことによるものです。
また、新卒採用においては、内定時点で職種や配属ポジションを明確にする「ジョブマッチング型採用」を導入しています。2025年に実施した内定者アンケートでは内定者の90%以上から、自身のスキルやキャリア志向と職務内容の高い適合性を実感できたこと、入社後の役割が明確であることにより、モチベーション向上につながっているとの肯定的な評価が寄せられました。
今後は、事業戦略の遂行に必要な職務を起点として、採用、報酬、能力開発・パフォーマンス向上、スキルや意欲に基づく配置・再配置までを一体で捉えたジョブ型サイクルを継続的に運用していきます。これにより、タイムリーな人財確保とパフォーマンスの最大化を実現するとともに、競争力のさらなる強化を図っていきます。

タレントマネジメント-主要施策Ⅱ:持続的な成長に向けたリーダー育成
日立では、将来にわたりグループ全体を牽引できるリーダー人財の育成を人財戦略の重要な柱としています。特に環境変化のスピードが加速し、事業のグローバル化が進む中、次世代リーダーの輩出が十分に進まない場合、事業の遂行力や組織の持続性に影響を及ぼすリスクとなり得ると認識しています。
日立は、将来のリーダー人財の層を強化するため、「これからのリーダーに求められる要件」を再定義し、それに基づいてリーダーシップ開発プログラムの高度化を進めています。あらゆる階層の人財を対象に、迅速に学び、組織全体を俯瞰して戦略的に思考し、変革を推進するとともに、多様な人財を活かし、明確なビジョンを示して周囲を鼓舞できるリーダーシップの育成をめざしています。
こうした取組を通じて、日立は次世代のグローバルリーダーを育成するとともに、グループ全体の後継者計画を支え、継続的にリーダー人財を育成・輩出する仕組みの構築を推進しています。
トータルリワード-主要施策Ⅲ:ハイパフォーマンス文化の醸成
日立は、従業員一人ひとりが安心して能力を発揮し、野心的な目標に挑戦し続けられる環境・文化を育むことを重要な機会と位置づけています。公正で透明性の高い評価・処遇、成果や貢献に対して適切に報いる報酬制度、長期的な視点に立ったインセンティブ、そしてライフステージに応じた安心して働ける支援制度等を通じて、従業員のエンゲージメントとパフォーマンスの最大化を図っています。また、日立におけるトータルリワードは、短期的な成果のみならず、将来に向けた成長や挑戦という行動評価も重視し、組織への継続的な貢献を後押しする仕組みとして設計されています。
これにより、従業員一人ひとりの成長と企業価値の向上を連動させ、ハイパフォーマンス文化を強化するとともに、持続的な競争力の確立につなげています。
(HRプログラムⅢ-① 日本における報酬水準・制度見直し)
当社においては、労働市場環境の変化や人財の流動性の高まりを踏まえ、市場競争力のある処遇の実現を目的に、各職務等級における報酬水準の見直しを行い、報酬レンジの引き上げを実施しました。これは、従業員一人ひとりの挑戦と成果を適切に評価・還元することで、エンゲージメントの向上と価値創出の好循環を生み出すことを狙いとしています。あわせて、職務や役割に基づく公正で透明性の高い処遇を実現するため、日本においてもジョブ型報酬(Pay for Job)への段階的な転換を進めており、専門性や役割の重要性に応じた報酬設定を可能にすることで、事業戦略に即した人財ポートフォリオの構築を図っています。また、採用時に職位別の報酬レンジを公開する等、報酬に関する透明性の高い情報開示も進めています。
職務に基づく報酬制度の導入を通じて、職務の内容や責任の大きさといったより明確な報酬基準を設定することで、従来の職能型報酬制度と比較して、報酬に対する透明性と納得性の向上に寄与しています。
トータルリワード-主要施策Ⅳ:従業員へのインセンティブ付与を通じた企業価値の向上
日立は、従業員のインセンティブを企業の長期的な価値創出と整合させることを、人財戦略における重要な要素の一つと位置づけています。複雑かつ変化の激しい事業環境において、従業員が長期的な視点を持って行動することを促すことは、人財に関する機会を的確に捉え、実行力を高めることにつながります。このようなアプローチを通じて、日立はグループ全体における持続的な成長と価値創出を支える強固な基盤の構築をめざしています。
(HRプログラムⅣ-① シニアリーダー層への譲渡制限付株式報酬ユニット(RSU)制度)
日立は、新たに従業員向け株式報酬制度を導入し、当社の従業員並びに一部の子会社の取締役及び従業員のうち、各事業部門のCEO及びコーポレート部門等の部門長から2~3階層下を目安とした経営リーダー層を対象者として、世界約40か国超、約1,800名にRSUを付与しました(注)。これにより、経営リーダー層全体にオーナーシップの意識を浸透させ、経営的視点の醸成を促すとともに、対象者と株主の利益を一致させることで、長期的な企業価値創出を図ります。さらに、従業員のエンゲージメント向上と、優秀な人財の獲得と定着をめざします。
(注)海外法規制により株式を交付することが困難な国の居住者等に対しては、信託による当社株式の交付に代えて、RSU 相当額の金銭を給付します。
(HRプログラムⅣ-② 従業員持株制度(従業員持株会及びESPP))
当社及び一部の国内グループ会社は、従業員の資産形成の支援や経営参画意識の向上を図るため、従業員持株会を導入しています。なお、従業員持株会を通じた保有株式は、大株主順位第7位(発行済株式(自己株式を除く。)の総数に対する所有株式数の割合1.64%)となっています(2026年3月末時点)。また、日本以外の国・地域の従業員(注)も株式を購入できるよう、新たな仕組み(従業員向け株式購入プラン:ESPP)の導入を推進しています。2027年度までにESPPの対象者を15万人とすることを目標に、制度の拡充に取り組んでいきます。従業員持株制度(従業員持株会及びESPP)では、当社の株式取得にあたり、資産形成に関する教育を行うほか、従業員は当社の業績に応じた奨励金の支給を得られるようになっており、会社の成長が従業員の資産形成につながる仕組みとしています。これら取組を通じ、資産形成の支援をより一層推進するともに、帰属意識を高め、従業員と株主の価値共有を図ります。
(注) 法的又は実務的に導入が困難な従業員は除きます。
One HR プラットフォーム-主要施策Ⅴ:AIの専門性強化と実装推進
日立は、AIを将来に向けた競争力及び価値創出の重要なドライバーと位置づけ、AIに関する専門性の強化と浸透を人財戦略の中核要素の一つとしています。将来を見据えた人財及び組織を実現する上で、AIを理解し、活用できる能力の育成は不可欠であると考えています。その一方で、AIに関する知識やそれを活用するスキルが十分に組織全体へ浸透しない場合、技術進化への対応が遅れ、競争力の低下につながるリスクがあるほか、リスクマネジメントや倫理面での課題が顕在化する可能性も認識しています。
これらを踏まえ、日立はグループ全体でAI関連ケイパビリティの強化を通じて事業変革の実行力を高めるとともに、テクノロジーに起因するリスクを適切に管理し、持続的かつ中長期的な成長の実現をめざしています。
(HRプログラムⅤ-① AIプロフェッショナルの獲得・育成)
日立におけるAI人財の強化は、AIプロフェッショナル人財5万人の育成をめざし、2024年より開始しました。AI技術の進化とその適用範囲の拡大により、エージェンティックAI、フィジカルAI等へ注力エリアが拡大しており、育成・採用の両面から、各部門における事業推進に必要なAIスキル・ケイパビリティの獲得を推進しています。本取組を通し、2025年度は、AIプロフェッショナル人財を約39,000人規模まで拡大することができました。育成にあたっては、各事業推進に必要な人財に求められるスキルを迅速に習得させるため、日立独自の育成プログラムに加え、様々な外部リソースを柔軟に組み合わせて、グローバルに展開しています。
(HRプログラムⅤ-② AIリテラシープログラム)
日立は、従業員教育、実践的なAI活用、そして強固なガバナンスを統合した、組織横断的かつ体系的な取組により、AIリテラシーの強化を進めています。この取組は、次の3つの柱に基づいています。
1.日立はAI CoEを設置しています。AI CoEは、日立グループの責任あるAI原則に基づき、安全性・倫理性・実践性を確保しながら、AIの活用による価値創出を推進する全社組織として、中核機能を担っています。
2.当グループは、全社的なAIリテラシー研修プログラムを展開しています。本プログラムでは、AIに関する基礎的な理解の醸成、AI技術への親和性の向上、並びにリスクマネジメントやAI活用に向けた準備意識の強化に注力しており、日立のガバナンス基準及び倫理ガイドラインと整合しています。
3.人財部門をはじめとする各機能部門が連携し、AI活用の知見を共有・蓄積する部門横断的なコミュニティである、デジタル・コミュニティ・オブ・プラクティスを形成しています。このコミュニティでは、AIツールを日常業務へ組み込む取組を通じて、AI活用の知見を共有するとともに、ナレッジ共有や従業員同士の相互学習を通じて、継続的な学習を促進しています。
One HR プラットフォーム-主要施策Ⅵ: 「One Hitachi」の連携に向けたグローバル人財プラットフォームの強化
日立は、戦略的人財活用の高度化を重要な機会と捉え、グローバルで統合されたタレントマネジメント基盤の構築を推進しています。こうした基盤の整備が不十分であったり、運用にばらつきが生じたりした場合には、人財の可視化や最適配置が阻害され、日立グループ全体の競争力低下につながるリスクがあると認識しています。これを踏まえ、日立は人財データベースの構築や、選抜されたトップ人財を対象とするグローバルリーダー育成プログラムの導入を起点として、職務等級及びパフォーマンスマネジメントの共通化、グローバル学習プラットフォーム並びにグローバル人財マネジメント統合プラットフォーム(Workday)の整備へと取組を拡大しています。これらの施策を通じて、国や事業を越えた人財の可視化を実現するとともに、リーダー人財の戦略的な育成及び登用を可能にし、組織全体における意思決定力と実行力の強化につなげています。
(HRプログラムⅥ-① グローバル人財マネジメント統合プラットフォーム(Workday))
グローバルに最適な人財の確保・配置・育成を行うため、グローバル共通の人財マネジメント統合プラットフォーム(Workday)の構築を進めるとともに、グローバルでのタレントモビリティを促進しています。Workdayプラットフォームの構築を通して、従業員のスキルやキャリア志向など最新の人財情報データをクラウドシステムで共有しています。このプラットフォームにより、グローバルでの人財検索や情報の収集、チームマネジメントへの活用、パフォーマンス管理や育成計画・キャリア開発など、さまざまなプロセスを一元管理でき、その運用範囲をグループ全体に順次拡大しています。
さらに、今後は自律的に学べる環境の整備に向けてグローバルでの教育プラットフォームを展開していきます。

(注)従業員サーベイにおける従業員エンゲージメントの設問に対する肯定的回答率。(「自社で働くことへの誇り」、「働き甲斐のある職場であるか」「当面自社で勤務する勤労意識」の3点から測定)
ii) 多様な視点を取り入れた事業活動推進
日立は、多様な視点を持ちあわせた人財からなる組織を作ることで、グローバルな顧客に最適なサービスを提供し、世界が直面する社会課題に対応するための革新的なソリューションを継続的に提供し続けられると考えています。このような組織の基盤となるのは、相互に協力し支え合うカルチャーであり、これは、日立がめざす社会イノベーション事業を通じた中長期的な企業価値向上や、サステナブルな社会の実現に不可欠なものです。そのため、日立は、従業員一人ひとりの持つ価値が認められ、尊重され、能力が最大限に発揮できるインクルーシブな職場環境の醸成にコミットしてきました。日立では、執行役社長によるトップコミットメントのもと、多様な視点に沿った取組をグローバルに推進しています。

ⅲ) 心身の健康と安全の確保
日立は、「安全と健康を守ることは全てに優先する」を基本理念とする「日立グループ安全衛生ポリシー」を世界の全グループ会社と共有しています。そして、コントラクターや調達パートナーを含む関係する全企業と連携しながら、グループ一丸となって、事業活動に関わる全ての人にとって安全・安心・快適で健康な職場づくりに努めています。当グループは、事故のない安全な職場の構築をめざし、事業に適した労働安全衛生マネジメントシステムの構築・導入、定期的なリスクアセスメントや監査の実施、労働安全衛生に関する教育の展開等にグローバルで取り組んでいます。2025年度は死亡災害が発生していることを重く受け止め、重大災害防止に向けた事故予防活動の向上を更に図るべく、グループグローバルでのリスクアセスメント活動の強化を推進しています。リスクアセスメントの質を高めるには、危険源を的確に把握し、実効性のある対策を講じることが重要です。これを各グループ会社・事業所で着実に実践できるよう、AIや過去の知見の活用も取り入れながら、リスクアセスメントのレベル向上を図っています。全ての災害は防ぐことができるという強いリーダーシップのもと、災害のない職場作りをめざして、今後も取組を継続します。
(ロ)指標及び目標
Inspire 2027における具体的な人財施策の実行にあたっては、各施策が経営目標や主な経営戦略にどのように繋がっているかを整理し、それぞれの人財戦略・施策に対してKPIを設け、進捗をモニタリングしています。そのうち、特に重要性が高い人財戦略・施策に関連するものについては日立のサステナビリティ戦略である「PLEDGES」における人財目標として以下のとおり設定し、全社的な取組として2027年度目標の達成に向けて推進しています。
(注)1.海外法規制により株式を交付することが困難な国の居住者等に対しては、信託による当社株式の交付に代えて、RSU 相当額の金銭を給付します。
2.Total Recordable Injury Frequency Rate(20万労働時間当たりの死傷者数)
3.「2030年までに東証プライム市場に上場する企業の女性役員の割合を30%以上にする」という政府の要請に沿ったものです。当社単体の目標及び実績で、役員層は、当社執行役及び理事をいいます。
日立は創業以来、「優れた自主技術・製品の開発を通じて社会に貢献する」ことを企業理念としており、社会インフラを支える技術・製品の開発によって社会が直面する課題を解決してきました。
経営計画「Inspire 2027」において日立がめざすのは、「環境、幸福、経済成長が調和するハーモナイズドソサエティの実現に貢献し、持続的に成長」することです。その実現に向けて、地球環境を守りながらグリーントランスフォーメーション(GX)を推進し、人的資本への積極投資により持続的成長をけん引する人財の強化を図ります。
①脱炭素・気候変動に関する取組(TCFDに基づく開示)
当社は、2018年6月に金融安定理事会(FSB)「気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)」の提言に賛同を表明し、同年に公開した日立サステナビリティレポート2018より、TCFD提言に基づく情報開示をしています。
本有価証券報告書では、その抜粋を掲載します。
(イ)ガバナンス
当グループは、気候変動を含む環境課題への対応を重要な経営課題の一つと認識し、気候変動に関するガバナンスについても、前項の「(1)ガバナンス及びリスク管理」に準じた体制で取り組んでいます。
(ロ)戦略
日立にとって環境は、GXを通じた中長期的な価値創造を支える重要な基盤です。世界的な環境課題の深刻化への対応として、日立はグループ全体の方向性を示す環境ビジョンを定めています。このビジョンの実現に向けて、日立は「脱炭素」「サーキュラーエコノミー」「ネイチャーポジティブ」を軸とした環境長期目標「日立環境イノベーション2050」を掲げています。

気候変動関連のリスク
気候変動に関するリスクについては、「脱炭素への移行リスク(主に1.5℃シナリオに至るリスク)」及び、「気候変動の物理的影響に関連したリスク(主に4℃シナリオに至るリスク)」に分類して分析・管理しています。
・脱炭素への移行リスク(主に1.5℃シナリオに至るリスク)
脱炭素への移行に関連する重大なリスクとは、一般的に「脱炭素化が実現した世界では、現状のままでは存続することができない事業」に関するリスクです。これは、化石燃料が使えなくなるリスクに該当しますが、現在の当グループの事業では、電気をエネルギー源とするものが多いため、重大なリスクはほとんど見つかりませんでした。
その他、当グループが想定する脱炭素への移行リスクとしては、炭素税、燃料・エネルギー費への課税、排出権取引などの導入に伴う事業コスト負担増や、脱炭素向け製品・サービスの技術開発の遅れによる販売機会の逸失などがあります。このなかで、製品開発の遅れのリスクについては、機会と表裏一体であり、脱炭素化に貢献する事業を進めることで、リスク回避が可能と判断しています。
・気候変動の物理的影響に関連したリスク(主に4℃シナリオに至るリスク)
気候変動に関する物理的リスクに関しては、気候変動の影響と考えられる気象災害、例えば台風や洪水、渇水などの激化(急性リスク)や、海面上昇、長期的な熱波など(慢性リスク)による事業継続のリスクが考えられます。
このようなリスクを回避するための一つの施策として、工場新設時には洪水被害を念頭に置いた上で立地条件や設備の配置などを考慮しています。
気候変動関連の機会
当グループでは、気候変動に関連する多くの機会が考えられます。
環境長期目標「日立環境イノベーション2050」に掲げたCO2排出量の削減目標を達成するには、事業所の脱炭素化はもちろん、バリューチェーン全体の排出の多くを占める、販売された製品・サービスの使用に伴うCO2排出の削減が重要です。省エネルギー化等による、CO2削減に貢献する製品・サービスの開発・提供は、顧客ニーズへの対応であり、社会の脱炭素化への貢献になります。また、顧客との協創によるカーボンフリーソリューションやサービスの普及のような脱炭素化に貢献するビジネスの拡大にも機会があります。GXへの取組は、当グループの経営戦略として推し進めている「社会イノベーション事業」の大きな柱であり、短・中・長期にわたる大きな事業機会になります。
当グループの気候変動関連のリスク及び機会について
気候変動関連のリスクを検討した結果、当グループの事業継続に重大で対応が困難なリスクは現時点では認識されていません。一方、気候変動対策への取組はビジネス機会となり得ることから、政策・市場動向等の変化を踏まえ、リスク及び機会の評価を継続的に実施していきます。
1.5℃及び4℃いずれのシナリオ下においても、市場の動向を注視し柔軟かつ戦略的に事業を展開することで、当グループは、中・長期観点から、脱炭素への移行において高いレジリエンスを有していると考えています。
(ハ)リスク管理
気候変動関連のリスク管理については、BU及びグループ会社ごとに環境負荷などを把握し、評価・査定しています。グループ全体として特に重要なリスク及び機会を認識した場合には、経営会議で審議し、必要に応じて取締役会でも審議します。
(ニ)指標及び目標
当グループは、環境長期目標「日立環境イノベーション2050」において、脱炭素の分野で以下の目標を掲げています。
2050年度(長期)
・バリューチェーンにおけるネットゼロ
2030年度(中期)
・ファクトリー・オフィスにおけるカーボンニュートラル
・バリューチェーンにおける温室効果ガス(GHG)排出量52%削減
環境長期目標の達成に向けて、短期の目標として3年ごとに「環境行動計画」を策定しています。現在、「2027環境行動計画」に基づき、指標及び目標を設定し、進捗を管理しています。
「2027環境行動計画」の脱炭素に関する指標のうち、ファクトリー・オフィスにおけるGHG排出量削減率に関する目標は以下のとおりです。
| 項目 | 指標 | 基準年 | 目標 | ||
| 2025年度 | 2026年度 | 2027年度 | |||
| ファクトリー・オフィス GHG排出量削減 | GHG排出量削減率 | 2019年度 | 60% | 65% | 75% |
当グループは、GHG排出量削減に関する2025年度目標(60%)を達成する見込みです。詳細は後日公表予定の「日立サステナビリティレポート2026」をご覧ください。
日立グループの温室効果ガス排出量(2025年度)
| 指 標 | 実 績 |
| Scope1(注)1、2 | 285kt-CO2e |
| Scope2(注)1、3 | 113kt-CO2e |
(注)1. 当社は、当社の定める「環境管理区分判定基準」に基づき、当グループの全事業所をA・B・Cの3区分に分類して管理しており、上記表中のScope1及びScope2は、当グループの中で環境負荷が大きいA区分の事業所及び発電事業を対象としています。
2. 当グループ内での燃料の使用や工業プロセスによる直接排出
3. 当グループが購入した電気・熱の使用に伴う間接排出
②人的資本・多様性に関する取組
(イ)戦略
i)グローバル人財マネジメント
日立は、人こそが価値の源泉であるとの考えを基盤とし、経営計画「Inspire 2027」のもと、人的資本への積極的な投資を進めています。世界中の従業員の力を強化・結集し、「真のOne Hitachi」として、顧客と社会に価値を提供することをめざしています。急速な技術進展や人財をめぐるグローバル競争の激化、求められるスキルの高度化といった外部環境を踏まえ、将来顕在化し得るリスクや組織課題を先取りして対応するため、新たなグローバル人財戦略を策定しました。
IT、OT、プロダクトを併せ持つ強みと、多様な事業ポートフォリオを有する日立にとって、グローバルに選ばれる雇用者(Employer of choice)となり、質の高い人財を惹きつけ、育成・定着させることは、競争力を持続する上で不可欠です。この考えのもと、新たなグローバル人財戦略においては、タレントマネジメント及びトータルリワードの領域において、関連する制度及びオペレーティングモデルのグローバルでの一貫性を保ちつつ、市場競争力と公平性を備え、かつ各地域の特性にも柔軟に対応できる仕組みへと進化させています。同時に、日立が日本中心の組織から真にグローバルな企業へと進化するために、地域や事業を越えた協働を可能にする制度、業務プロセス及びそれらを支えるデジタルプラットフォームの強化にも取り組みます。この戦略を通して、グループ全体の力を最大限に引き出し、社会及びすべてのステークホルダーに対する長期的な価値創出をめざしています。
(a)日立のグローバル人財戦略の概要
日立の新たなグローバル人財戦略においては、「タレントマネジメント」、「トータルリワード」及び「One HRプラットフォーム」の3つを重点領域と位置づけ、体系的に取組を推進しています。
■ タレントマネジメント
日立は、組織の強靭性と持続性を確保するため、リーダー人財の継続的な育成と後継者育成計画(リーダーシップパイプライン及びサクセッションプランニング)の強化に取り組んでいます。また、グローバルでの職務を基軸としたタレントマネジメントの枠組みを強化し、役割の明確化、公平性・透明性の向上を図るとともに、スキル、職務、人財に関する意思決定を事業戦略とより強く連動させています。これにより、日立グループ全体での人財流動性の促進と、計画的な能力開発を支援しています。
■ トータルリワード
職務に基づく報酬体系と、成果に連動した報酬(Pay for Performance)の考え方を中核に、透明性、公平性、市場競争力を高めるトータルリワードへと変革を進めています。本取組を通じて、グローバルベンチマークに基づく競争力のある報酬の提供を推進しています。また、多様な人財のグローバルでの獲得・定着及びモチベーション向上を支える、日立ならではの差別化されたインクルーシブな制度設計をめざしています。
■ One HRプラットフォーム
上記の重点領域は、共通のOne HRプラットフォームによって支えられています。グループ共通のシステム、データ及びプロセスを整備することで、日立グループ全体における一貫性とスケーラビリティを確保しています。
(b)日立のグローバル人財戦略の主要施策とHRプログラム
以下の図は、日立の人財戦略における3つの重点領域・6つの主要施策・各HRプログラムのつながりを体系的に整理したものです。
⦅3つの重点領域・6つの主要施策・各HRプログラムのつながりのイメージ図⦆

各主要施策及びHRプログラムの詳細は以下の通りです。
タレントマネジメント-主要施策Ⅰ:人財の獲得・育成・配置の促進によるシナジー強化
急速に変化する事業環境の中で組織のレジリエンスを維持するためには、人財・スキル・配置を、変化し続ける戦略的優先事項と継続的に整合させていくことが不可欠です。この考え方のもと、日立は長期的な成長を支える戦略の基盤として、タレントマネジメントの強化を進めています。具体的には、職務を基軸とした統合的なタレントマネジメントの枠組みを通じて、戦略実行に必要な人財・スキルの強化と、リーダーを適時・適所に配置できる体制の強化に取り組んでいます。また、人財の採用・育成・配置を一体的に連動させることで、グループ全体での効果的な人財流動を実現するとともに、継続的な学習と成長志向(グロース・マインドセット)の醸成を図っています。
(HRプログラムⅠ-① 人財獲得に向けた取組の概要)
グローバルな人財市場は、新たなスキルの急速な出現、候補者の価値観や期待の変化、人口動態の変化などにより、大きく変化しています。日立は、グローバルに優秀な人財を惹きつけ、採用していくために、要員計画・人財獲得・人財育成を一体的に推進する統合的なタレント戦略を策定し、変化する事業環境や求められる能力に柔軟に対応しています。
また、ビジネスユニット(BU)のタレントアクイジションチームは特定の地域・セクターにおける専門性を有する組織として配置されています。この体制により、機動的な採用活動を行うとともに、若手人財向けのプログラムや専門性の高いポジションへの対応等、ターゲットを明確にした取組を推進しています。さらに、各取組から得られた知見やベストプラクティスは組織横断で共有され、継続的な改善につなげています。
例えば、Hitachi Rail社では、長期的なプロジェクトの見通し(プロジェクトパイプライン)、技術ロードマップ及び地域別成長戦略と人財獲得戦略を一体的に連動させ、デジタル信号、ソフトウェアエンジニアリング、AIを活用した保守、システムエンジニアリング、サイバーセキュリティ及びサステナビリティ等の重要領域の人財確保に取り組んでいます。その目的は、汎用性の高いスキルを重視しつつ、採用、エンジニアリング、デジタルといった各チーム間の連携を強化するとともに、変化する業界のニーズに合わせて能力ギャップを先行的に特定し、将来に備えた人財の育成につなげることにあります。これにより、関連産業からの多様な人財の獲得や、必要スキルの迅速な確保を実現し、中長期的な人財のレジリエンス及び雇用の持続可能性の強化につなげています。
日本においては、新卒採用を中心に、ジョブ型を念頭においた個々のキャリア志向に応じた人財獲得戦略を推進しています。個人のキャリア志向と具体的な職務を結びつけ、それぞれの強みや希望に応じた最適な役割とのマッチングを図っています。その中核となるのが、ジョブ型インターンシッププログラムです。新卒候補者が実際の職務や業務に関わることで、専門領域や適性を自ら理解し、より主体的で納得感の高いマッチングを実現しています。
(HRプログラムⅠ-② 人財配置に関する取組)
日立では、役割・ケイパビリティ・事業戦略を整合させるグローバルかつ体系的なアプローチにより、人財の最適配置を推進し、組織全体にわたる効果的な人財活用を実現しています。この取組は、ジョブ型人財マネジメントによって支えられており、各役割に求められる要件を明確化するとともに、事業・地域をまたいで一貫性と客観性のある人財配置を可能にしています。
また、グローバル単位・事業単位・地域単位で実施するタレントレビューを通じて、従業員一人ひとりのケイパビリティ、パフォーマンス、ポテンシャルを可視化し、最適な人財配置や後継者計画に活用しています。さらに、社内公募制度を通じて、事業単位や地域単位を越えた内部人財の異動や活用を促進するとともに、多様なキャリア機会へのアクセスを提供することで、変化する事業ニーズへの対応力を高めています。
これらの施策は、グローバルでのタレントモビリティ(人財の流動化)に関する方針・枠組みの強化や、特に日本におけるジョブ型マネジメントの導入・拡大とあわせて推進しており、組織全体の一貫性、透明性及び公平性を高めるとともに、機会への平等なアクセスの確保につなげています。これにより、従業員のモチベーション向上と目的意識の共有を促進し、個人と組織の双方における持続的な成長を可能にしています。あわせて、人財の変化への対応力を高め、リーダー人財の継続的な育成を強化するとともに、事業戦略の実効を支えています。
| ■ Global One HR体制の構築/グループコーポレート 日立は、人財を地域・ファンクション・事業を越えて結集し、多様で専門性の高いグローバルなチームを構築することで、タレントモビリティの向上をはかり、「Global One HR」の体制を構築しています。その目的は、グローバルでの統合された実行力の強化と各事業・地域の連携を通じて、グローバルに人財施策を実行することです。その結果、より統合されたグローバルHR組織の構築や、セクター及び地域間の連携・コミュニケーションの強化、実行力の向上につながっています。また、継続的な試行錯誤を通じて、将来的なグローバル化に向けたモデルケースになるべく、推進していきます。 |
(HRプログラムⅠ-③ 日本でのジョブ型人財マネジメントの推進)
日立は、制度・仕組みの整備に加え、意識・行動変革を促す取組を通じて、日本におけるジョブ型人財マネジメントを推進してきました。その結果、その基盤は概ね確立されました。具体的な成果は複数の領域に表れています。例えば、グループ内の社内公募制度においては、過去5年間で募集ポジション数及び応募者数のいずれもが約2倍に増加しました。これにより、国籍、性別、年齢といった属性に左右されることなく、個人の意欲や能力に基づいて、各職務に最適な人財が配置されるケースが着実に増えました。これは、職務内容や求められる要件を明確化したことで、従業員が自らのスキルやキャリア志向に応じて主体的に応募する機会が拡大したことによるものです。
また、新卒採用においては、内定時点で職種や配属ポジションを明確にする「ジョブマッチング型採用」を導入しています。2025年に実施した内定者アンケートでは内定者の90%以上から、自身のスキルやキャリア志向と職務内容の高い適合性を実感できたこと、入社後の役割が明確であることにより、モチベーション向上につながっているとの肯定的な評価が寄せられました。
今後は、事業戦略の遂行に必要な職務を起点として、採用、報酬、能力開発・パフォーマンス向上、スキルや意欲に基づく配置・再配置までを一体で捉えたジョブ型サイクルを継続的に運用していきます。これにより、タイムリーな人財確保とパフォーマンスの最大化を実現するとともに、競争力のさらなる強化を図っていきます。

タレントマネジメント-主要施策Ⅱ:持続的な成長に向けたリーダー育成
日立では、将来にわたりグループ全体を牽引できるリーダー人財の育成を人財戦略の重要な柱としています。特に環境変化のスピードが加速し、事業のグローバル化が進む中、次世代リーダーの輩出が十分に進まない場合、事業の遂行力や組織の持続性に影響を及ぼすリスクとなり得ると認識しています。
日立は、将来のリーダー人財の層を強化するため、「これからのリーダーに求められる要件」を再定義し、それに基づいてリーダーシップ開発プログラムの高度化を進めています。あらゆる階層の人財を対象に、迅速に学び、組織全体を俯瞰して戦略的に思考し、変革を推進するとともに、多様な人財を活かし、明確なビジョンを示して周囲を鼓舞できるリーダーシップの育成をめざしています。
こうした取組を通じて、日立は次世代のグローバルリーダーを育成するとともに、グループ全体の後継者計画を支え、継続的にリーダー人財を育成・輩出する仕組みの構築を推進しています。
| ■ 学習とコーチングを通じたリーダーの育成/日立エナジー社 日立エナジー社のリーダーシップ開発プログラム「Power Your Leadership」は、eラーニングやワークショップ、協働型学習プログラムから構成される体系的なプログラムです。世界中の管理職を対象に、リーダーシップに対する意識の向上や、固定観念への挑戦、リーダーシップ行動の強化に活用されています。さらに、日立エナジー社では、全従業員に対してプロフェッショナル・コーチングの提供も行っています。こうした学習とコーチングを組み合わせることで、従業員一人ひとりが自己を省察し、潜在能力を引き出すとともに、組織全体に変革をもたらすことを目的としています。本プログラムは複数の事業部門や地域でグローバルに展開されており、2022年から2025年の間に250名以上が参加者し、2,100時間以上のコーチングを受けました。 |
トータルリワード-主要施策Ⅲ:ハイパフォーマンス文化の醸成
日立は、従業員一人ひとりが安心して能力を発揮し、野心的な目標に挑戦し続けられる環境・文化を育むことを重要な機会と位置づけています。公正で透明性の高い評価・処遇、成果や貢献に対して適切に報いる報酬制度、長期的な視点に立ったインセンティブ、そしてライフステージに応じた安心して働ける支援制度等を通じて、従業員のエンゲージメントとパフォーマンスの最大化を図っています。また、日立におけるトータルリワードは、短期的な成果のみならず、将来に向けた成長や挑戦という行動評価も重視し、組織への継続的な貢献を後押しする仕組みとして設計されています。
これにより、従業員一人ひとりの成長と企業価値の向上を連動させ、ハイパフォーマンス文化を強化するとともに、持続的な競争力の確立につなげています。
(HRプログラムⅢ-① 日本における報酬水準・制度見直し)
当社においては、労働市場環境の変化や人財の流動性の高まりを踏まえ、市場競争力のある処遇の実現を目的に、各職務等級における報酬水準の見直しを行い、報酬レンジの引き上げを実施しました。これは、従業員一人ひとりの挑戦と成果を適切に評価・還元することで、エンゲージメントの向上と価値創出の好循環を生み出すことを狙いとしています。あわせて、職務や役割に基づく公正で透明性の高い処遇を実現するため、日本においてもジョブ型報酬(Pay for Job)への段階的な転換を進めており、専門性や役割の重要性に応じた報酬設定を可能にすることで、事業戦略に即した人財ポートフォリオの構築を図っています。また、採用時に職位別の報酬レンジを公開する等、報酬に関する透明性の高い情報開示も進めています。
職務に基づく報酬制度の導入を通じて、職務の内容や責任の大きさといったより明確な報酬基準を設定することで、従来の職能型報酬制度と比較して、報酬に対する透明性と納得性の向上に寄与しています。
トータルリワード-主要施策Ⅳ:従業員へのインセンティブ付与を通じた企業価値の向上
日立は、従業員のインセンティブを企業の長期的な価値創出と整合させることを、人財戦略における重要な要素の一つと位置づけています。複雑かつ変化の激しい事業環境において、従業員が長期的な視点を持って行動することを促すことは、人財に関する機会を的確に捉え、実行力を高めることにつながります。このようなアプローチを通じて、日立はグループ全体における持続的な成長と価値創出を支える強固な基盤の構築をめざしています。
(HRプログラムⅣ-① シニアリーダー層への譲渡制限付株式報酬ユニット(RSU)制度)
日立は、新たに従業員向け株式報酬制度を導入し、当社の従業員並びに一部の子会社の取締役及び従業員のうち、各事業部門のCEO及びコーポレート部門等の部門長から2~3階層下を目安とした経営リーダー層を対象者として、世界約40か国超、約1,800名にRSUを付与しました(注)。これにより、経営リーダー層全体にオーナーシップの意識を浸透させ、経営的視点の醸成を促すとともに、対象者と株主の利益を一致させることで、長期的な企業価値創出を図ります。さらに、従業員のエンゲージメント向上と、優秀な人財の獲得と定着をめざします。
(注)海外法規制により株式を交付することが困難な国の居住者等に対しては、信託による当社株式の交付に代えて、RSU 相当額の金銭を給付します。
(HRプログラムⅣ-② 従業員持株制度(従業員持株会及びESPP))
当社及び一部の国内グループ会社は、従業員の資産形成の支援や経営参画意識の向上を図るため、従業員持株会を導入しています。なお、従業員持株会を通じた保有株式は、大株主順位第7位(発行済株式(自己株式を除く。)の総数に対する所有株式数の割合1.64%)となっています(2026年3月末時点)。また、日本以外の国・地域の従業員(注)も株式を購入できるよう、新たな仕組み(従業員向け株式購入プラン:ESPP)の導入を推進しています。2027年度までにESPPの対象者を15万人とすることを目標に、制度の拡充に取り組んでいきます。従業員持株制度(従業員持株会及びESPP)では、当社の株式取得にあたり、資産形成に関する教育を行うほか、従業員は当社の業績に応じた奨励金の支給を得られるようになっており、会社の成長が従業員の資産形成につながる仕組みとしています。これら取組を通じ、資産形成の支援をより一層推進するともに、帰属意識を高め、従業員と株主の価値共有を図ります。
(注) 法的又は実務的に導入が困難な従業員は除きます。
One HR プラットフォーム-主要施策Ⅴ:AIの専門性強化と実装推進
日立は、AIを将来に向けた競争力及び価値創出の重要なドライバーと位置づけ、AIに関する専門性の強化と浸透を人財戦略の中核要素の一つとしています。将来を見据えた人財及び組織を実現する上で、AIを理解し、活用できる能力の育成は不可欠であると考えています。その一方で、AIに関する知識やそれを活用するスキルが十分に組織全体へ浸透しない場合、技術進化への対応が遅れ、競争力の低下につながるリスクがあるほか、リスクマネジメントや倫理面での課題が顕在化する可能性も認識しています。
これらを踏まえ、日立はグループ全体でAI関連ケイパビリティの強化を通じて事業変革の実行力を高めるとともに、テクノロジーに起因するリスクを適切に管理し、持続的かつ中長期的な成長の実現をめざしています。
(HRプログラムⅤ-① AIプロフェッショナルの獲得・育成)
日立におけるAI人財の強化は、AIプロフェッショナル人財5万人の育成をめざし、2024年より開始しました。AI技術の進化とその適用範囲の拡大により、エージェンティックAI、フィジカルAI等へ注力エリアが拡大しており、育成・採用の両面から、各部門における事業推進に必要なAIスキル・ケイパビリティの獲得を推進しています。本取組を通し、2025年度は、AIプロフェッショナル人財を約39,000人規模まで拡大することができました。育成にあたっては、各事業推進に必要な人財に求められるスキルを迅速に習得させるため、日立独自の育成プログラムに加え、様々な外部リソースを柔軟に組み合わせて、グローバルに展開しています。
| ■ 業務支援AI応用プロジェクト/日立電梯(中国)有限公司 日立電梯(中国)有限公司は、技術開発とガバナンスを統合したAI管理プラットフォームを構築し、業務支援AI応用プロジェクトを推進しています。同プラットフォームの活用により、事業ユニット間でAIケイパビリティの共有・再利用を可能とするとともに、業務プロセスへのインテリジェントツールの組込を進めています。 |
(HRプログラムⅤ-② AIリテラシープログラム)
日立は、従業員教育、実践的なAI活用、そして強固なガバナンスを統合した、組織横断的かつ体系的な取組により、AIリテラシーの強化を進めています。この取組は、次の3つの柱に基づいています。
1.日立はAI CoEを設置しています。AI CoEは、日立グループの責任あるAI原則に基づき、安全性・倫理性・実践性を確保しながら、AIの活用による価値創出を推進する全社組織として、中核機能を担っています。
2.当グループは、全社的なAIリテラシー研修プログラムを展開しています。本プログラムでは、AIに関する基礎的な理解の醸成、AI技術への親和性の向上、並びにリスクマネジメントやAI活用に向けた準備意識の強化に注力しており、日立のガバナンス基準及び倫理ガイドラインと整合しています。
3.人財部門をはじめとする各機能部門が連携し、AI活用の知見を共有・蓄積する部門横断的なコミュニティである、デジタル・コミュニティ・オブ・プラクティスを形成しています。このコミュニティでは、AIツールを日常業務へ組み込む取組を通じて、AI活用の知見を共有するとともに、ナレッジ共有や従業員同士の相互学習を通じて、継続的な学習を促進しています。
One HR プラットフォーム-主要施策Ⅵ: 「One Hitachi」の連携に向けたグローバル人財プラットフォームの強化
日立は、戦略的人財活用の高度化を重要な機会と捉え、グローバルで統合されたタレントマネジメント基盤の構築を推進しています。こうした基盤の整備が不十分であったり、運用にばらつきが生じたりした場合には、人財の可視化や最適配置が阻害され、日立グループ全体の競争力低下につながるリスクがあると認識しています。これを踏まえ、日立は人財データベースの構築や、選抜されたトップ人財を対象とするグローバルリーダー育成プログラムの導入を起点として、職務等級及びパフォーマンスマネジメントの共通化、グローバル学習プラットフォーム並びにグローバル人財マネジメント統合プラットフォーム(Workday)の整備へと取組を拡大しています。これらの施策を通じて、国や事業を越えた人財の可視化を実現するとともに、リーダー人財の戦略的な育成及び登用を可能にし、組織全体における意思決定力と実行力の強化につなげています。
(HRプログラムⅥ-① グローバル人財マネジメント統合プラットフォーム(Workday))
グローバルに最適な人財の確保・配置・育成を行うため、グローバル共通の人財マネジメント統合プラットフォーム(Workday)の構築を進めるとともに、グローバルでのタレントモビリティを促進しています。Workdayプラットフォームの構築を通して、従業員のスキルやキャリア志向など最新の人財情報データをクラウドシステムで共有しています。このプラットフォームにより、グローバルでの人財検索や情報の収集、チームマネジメントへの活用、パフォーマンス管理や育成計画・キャリア開発など、さまざまなプロセスを一元管理でき、その運用範囲をグループ全体に順次拡大しています。
さらに、今後は自律的に学べる環境の整備に向けてグローバルでの教育プラットフォームを展開していきます。

| ■ スケーラブルな人財成長を支えるグローバルHRプラットフォーム/日立エナジー社 日立エナジー社は、強固なデジタル基盤と標準化されたプロセスを活用し、2024年から2027年にかけて15,000人規模の採用・人財統合を含む大規模な人財拡大を支えるグローバルHRプラットフォームの強化を進めています。その目的は、単一のグローバルHRマスターデータを基盤とし、標準化されたガバナンスと明確な役割分担のもとで、データ品質の向上、業務効率化、部門横断の連携強化を実現し、スケーラブルかつデータドリブンな人財マネジメントを可能にすることです。その結果、年間100万件を超える応募処理や大規模採用・人財流動の推進を実現し、オートメーションやデータ分析、セルフサービスツールを通じて業務効率の向上を図るとともに、多様性・包摂性及び高パフォーマンス文化の強化に貢献しています。 |
| (c)各主要施策及びHRプログラムを通じた従業員エンゲージメント向上 | |
| 日立は、人財マネジメントの一環として、グローバル従業員サーベイ(Hitachi Insights)を通じて従業員エンゲージメントを継続的に把握するとともに、その取組を評価・改善するために、従業員エンゲージメントスコア(注)をKPIとして設定しています。具体的には人財の配置、企業文化及び職場環境などに関わる主要なエンゲージメントドライバー(従業員エンゲージメントを高める上で相関性の高い項目)に焦点をあて、各種施策を展開しています。 | ![]() |
| また、タウンホールミーティング、ラウンドテーブルディスカッション及び社内のソーシャルプラットフォームを通じて、経営層と従業員との双方向コミュニケーションを強化し、経営の透明性向上を図っています。こうした取組の結果、2025年度の従業員エンゲージメントスコアは73.3ポイントとなり、2024年度比で1.8ポイント向上しました。Inspire 2027においては、80ポイントという意欲的な目標を掲げており、その達成に向けて引き続き取組を推進していきます。2026年度以降は、従業員からのフィードバックをさらに効果的に活用するため、サーベイの再設計を進めるとともに、分析及びアクションプラン策定においてAIの活用を進めていきます。加えて、サーベイ結果の活用により上長とチームメンバーの対話の機会を促進することで、従業員一人ひとりのオーナーシップ意識を醸成し、専門性の成長を促すとともに、組織全体のパフォーマンス向上をめざします。 | |
(注)従業員サーベイにおける従業員エンゲージメントの設問に対する肯定的回答率。(「自社で働くことへの誇り」、「働き甲斐のある職場であるか」「当面自社で勤務する勤労意識」の3点から測定)
| ■「Ask Me Anything」セッション 日立は、CHRO(Chief Human Resources Officer)が従業員からの質問に直接回答する「Ask Me Anything」セッションを開催し、グローバルで数多くの人財が参加しました。経営に関するトピックについて率直かつオープンな対話の場を提供することで、双方向コミュニケーションの促進と経営の透明性の向上につなげています。また、従業員のエンゲージメント向上と組織としての方向性の共有を目的に、本セッションに加え、事業別のグローバルなタウンホールミーティングも実施しました。これらの取組を通じて、会社の戦略的優先事項や事業の方向性、人財戦略に対する理解を深めるとともに、インクルーシブで参加型の職場文化の醸成を図っています。 |
| ■ タウンホールミーティング タウンホールミーティングは、経営層と従業員が直接対話し、経営戦略や重要課題を、その背景とともに、透明性高く共有する場であり、双方向のコミュニケーションを通じた理解促進を担っています。 従業員の「自分事化」を促し、エンゲージメント向上と企業文化の浸透並びに「One Hitachi」としての一体感の醸成を図ることを目的としています。2025年度は計50回以上にわたって世界各地で幅広く実施され、組織内の透明性及び信頼関係の向上にもつながっています。 |
ii) 多様な視点を取り入れた事業活動推進
日立は、多様な視点を持ちあわせた人財からなる組織を作ることで、グローバルな顧客に最適なサービスを提供し、世界が直面する社会課題に対応するための革新的なソリューションを継続的に提供し続けられると考えています。このような組織の基盤となるのは、相互に協力し支え合うカルチャーであり、これは、日立がめざす社会イノベーション事業を通じた中長期的な企業価値向上や、サステナブルな社会の実現に不可欠なものです。そのため、日立は、従業員一人ひとりの持つ価値が認められ、尊重され、能力が最大限に発揮できるインクルーシブな職場環境の醸成にコミットしてきました。日立では、執行役社長によるトップコミットメントのもと、多様な視点に沿った取組をグローバルに推進しています。

| ■ インクルーシブ・リーダーシップ・ワークショップ 複雑なビジネス環境において、多様な人財を尊重し、イノベーションを推進して競争力を高めるために必要なスキルとなる「インクルーシブ・リーダーシップ」の重要性を理解するため、「インクルーシブ・リーダーシップ・ワークショップ」を2023年度より実施しています(2023年度は役員層84名が出席。2024年度は対象者を約130名に拡大。)。このワークショップは、インクルーシブ・リーダーシップを発揮するための具体的なアクションを習得することを目的としており、2025年度は、約3,000名のシニアリーダー層に拡大して実施しています。 |
| ■ プライド月間(LGBTQIA+) インクルーシブでオープンな企業文化の醸成の一環として、グローバル及び各地域において、多様な視点、考え方及び価値観を持つことの重要性の理解を促進するためのイベントやウェビナーを開催しました。また、日本においては、国内最大のLGBTQIA+関連のイベントである「Tokyo Pride 2025」に協賛し、LGBTQIA+インクルージョンの継続的な取組を実践しました。このイベントに協賛することは、現在及び将来の従業員全てに対して、心理的安全性及びインクルーシブな企業文化を大切にするという、日立の姿勢が反映されています。 |
| ■ インクルージョン月間 日立は2025年10月を「インクルージョン月間」として設定し、この期間をイノベーションと成長に不可欠なインクルージョンについての理解を深める機会としました。本期間中は、リーダーによるメッセージ発信や、全従業員を対象としたeラーニングの展開に加え、日本においては、インクルージョンに関する日々の行動を促す「30Days チャレンジ」を実施し、従業員一人ひとりがインクルーシブな行動を意識し、実践するきっかけを提供しました。これら一連の取組を通じて、「従業員全ての声が尊重され、インクルーシブで心理的安全性が高い職場環境を育むことが重要である」というメッセージを強調しました。 |
| ■ 障がいのインクルージョン 日立は一人ひとりの「エンパワーメント(主体性向上)」を軸に、障がいのインクルージョンをビジネスの中心に据え、社会変革をめざすグローバルネットワーク「The valuable 500」への参画、デフリンピック協賛などを通じて、多様な個性がイノベーションの原動力となる組織文化をグローバルに醸成しています。 あわせて、独自のガイドラインやセミナーを通じた意識変革と制度の最適化を推進することで、全ての従業員が社会に貢献し、自分らしく輝けるインクルージョンの実現を加速させています。 また、アクセシビリティは、職場環境のみならず、広範なシステムやツールに組み込まれています。なお、日立の新しいグローバルブランドガイドラインでは、アクセシビリティを重視したタイポグラフィ(書体)を採用するなど、全ての従業員、パートナー、顧客が公平に日立のコンテンツへアクセスし、関与できるようにしています。 |
| ■ 従業員リソースグループ(ERG) 日立全体において、共通の特性や関心を持つ社員が従業員リソースグループ(ERG)として自主的に活動し、職場における意識向上、実体験の共有、実践的な改善の推進において重要な役割を果たしています。ERGは、各ビジネス・地域単位で活動しており、意識向上に関するキャンペーンからアクセシビリティ評価に至るまで、様々な取組を主導し、インクルーシブな職場環境づくりを推進しています。 |
| ■ 女性リーダー育成に関する取組 当社及び国内のグループ会社の管理職に占める女性従業員の割合は、徐々に増加しているものの、未だ十分な割合に達しているとはいえず、女性リーダー育成の取組を強化しています。具体的には、女性のキャリア支援やワークライフバランスを実現するための取組を、以下のとおり進めています。 ・若年層向け女性キャリア研修、女性向けメンタリングプログラム等による女性のキャリア支援、育休前・復職後のキャリア支援、多様な働き方促進セミナーによる多様な働き方の選択肢の提供等を実施 ・男性の育児参画の促進に向け、育児休暇制度の検討等を促すプレパパ・プレママセミナーや、育児休暇の取得計画・上長とのコミュニケーションをサポートするシステム(育休取得宣言)の導入 ・法定の制度を上回る育児・介護等のライフサポート目的の休暇・休職制度や、コンシェルジュサービスの拡充(「育児と女性の健康コンシェルジュ」「企業主導型保育園とのマッチングサービス」による保育園への入所、及び女性の健康に関するサポート) |
ⅲ) 心身の健康と安全の確保
日立は、「安全と健康を守ることは全てに優先する」を基本理念とする「日立グループ安全衛生ポリシー」を世界の全グループ会社と共有しています。そして、コントラクターや調達パートナーを含む関係する全企業と連携しながら、グループ一丸となって、事業活動に関わる全ての人にとって安全・安心・快適で健康な職場づくりに努めています。当グループは、事故のない安全な職場の構築をめざし、事業に適した労働安全衛生マネジメントシステムの構築・導入、定期的なリスクアセスメントや監査の実施、労働安全衛生に関する教育の展開等にグローバルで取り組んでいます。2025年度は死亡災害が発生していることを重く受け止め、重大災害防止に向けた事故予防活動の向上を更に図るべく、グループグローバルでのリスクアセスメント活動の強化を推進しています。リスクアセスメントの質を高めるには、危険源を的確に把握し、実効性のある対策を講じることが重要です。これを各グループ会社・事業所で着実に実践できるよう、AIや過去の知見の活用も取り入れながら、リスクアセスメントのレベル向上を図っています。全ての災害は防ぐことができるという強いリーダーシップのもと、災害のない職場作りをめざして、今後も取組を継続します。
(ロ)指標及び目標
Inspire 2027における具体的な人財施策の実行にあたっては、各施策が経営目標や主な経営戦略にどのように繋がっているかを整理し、それぞれの人財戦略・施策に対してKPIを設け、進捗をモニタリングしています。そのうち、特に重要性が高い人財戦略・施策に関連するものについては日立のサステナビリティ戦略である「PLEDGES」における人財目標として以下のとおり設定し、全社的な取組として2027年度目標の達成に向けて推進しています。
| 区分 | 指標 | 2027年度 目標 | 2025年度 実績 |
| PLEDGES における指標 | 成長戦略を実現するグローバルリーダー数 | 1,000人 | 約550人 |
| AIプロフェッショナル人財数 | 50,000人 | 約39,000人 | |
| 従業員成長マインドセットスコア | 70.0ポイント | 69.2ポイント | |
| 従業員エンゲージメントスコア | 80.0ポイント | 73.3ポイント | |
| 従業員株式報酬におけるRSU付与対象人数(注)1 | 1,500人 | 約1,800人 | |
| ESPP対象人数 | 150,000人 | 約130,000人 | |
| 死亡災害件数 | 年間0件 | 年間4件 | |
| TRIFR(総災害発生率)(注)2 | 0.1以下 | 0.15 | |
| その他 重要指標 | 役員層における女性比率(注)3 | 25% | 15.9% |
| 役員層における民族的・文化的多様性比率 (グローバル目標) | 30% | 23.2% (2026年4月現在) |
(注)1.海外法規制により株式を交付することが困難な国の居住者等に対しては、信託による当社株式の交付に代えて、RSU 相当額の金銭を給付します。
2.Total Recordable Injury Frequency Rate(20万労働時間当たりの死傷者数)
3.「2030年までに東証プライム市場に上場する企業の女性役員の割合を30%以上にする」という政府の要請に沿ったものです。当社単体の目標及び実績で、役員層は、当社執行役及び理事をいいます。
