有価証券報告書-第157期(2025/04/01-2026/03/31)

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2026/06/22 15:56
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188項目

有報資料

(1)経営の基本方針
当グループは、「優れた自主技術・製品の開発を通じて社会に貢献する」を企業理念として、顧客に対し、より高い価値をもたらす競争力のある製品・サービスを提供することで、一層の発展を遂げることをめざしています。当グループでは、グループ内の多様な経営資源を最大限に活用するとともに、キャッシュ・フロー創出力の強化やキャピタルアロケーションの最適化、さらにポートフォリオ改革の加速に取り組むことで、競争力を強化し、グローバル市場での持続的成長を実現します。こうした取組により、顧客、株主、従業員を含むステークホルダーの期待に応え、企業価値の向上を図っていくことを基本方針としています。
(2)経営環境及び対処すべき課題
①当グループの経営環境及び対処すべき課題
現在の世界は、将来の予測が立てにくい時代です。国家間及び地域の紛争や緊張の高まり、気候変動や資源不足、高齢化による人口構造の変化、都市化の問題など様々な変化が生じています。一方で、複雑化する社会課題を解決するためのイノベーションが世界中で起きています。
かかる経営環境において、当グループは、経営計画「Inspire 2027」の下、デジタルを軸とした企業への変革を進め、持続的な成長を実現するとともに、環境・人々の幸福・経済成長が調和する「ハーモナイズドソサエティ」の実現に貢献することをめざしています。
激変する経営環境においても、変化に柔軟かつ迅速に対応し、グループ一体で日立ならではの価値を創出する「真のOne Hitachi」で、企業価値のさらなる向上に取り組んでいきます。
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(イ)急拡大するAI市場の追い風を捉え、成長を加速
近年、製造やインフラの現場で労働力不足への対応や安全性・生産性の向上が求められており、物理空間での現場業務を革新するフィジカルAI(注)の領域に期待が集まり、今後さらなる市場拡大が見込まれています。こうした中、当グループは、社会インフラの現場に対するプロダクトやITシステムの導入実績により得られたデジタライズドアセットからデータを収集して、AIとドメインナレッジで分析し、デジタルサービスとして提供することで、更なる価値創出のサイクルを回すLumada 3.0を展開していきます。
Lumada事業の中核を成すソリューションとして、HMAXの展開を加速しています。2024年に鉄道事業者向けに生まれたHMAXは、現在、エネルギー・製造・ビルメンテナンスなど、幅広い業界への広がりを見せています。
今後も、フィジカルAIや自律的に判断・実行するAIであるエージェンティックAIといったAI市場の急拡大を追い風とし、Lumadaの成長エンジンであるHMAXの事業規模を拡大することで、全社の成長を加速し、収益性を強化していきます。
(注)現実世界のデータをAIが自律的に解析・判断し、その結果を設備や機器の制御等の具体的な行動につなげるAI技術
(ロ)グローバル自律分散型経営を通じ、各地域の事業機会を成長に繋げる
不確実な事業環境下においても、地域ごとに自律的に事業機会を探索することができるグローバル自律分散経営を実践することで、全社の成長を実現します。
具体的には、グローバルの6極(米州、EMEA、APAC、インド、日本、中国)において、地域ごとの成長分野を見極め、地域特性に応じた事業拡大を推進します。英国においては、日立エナジー社が同国最長となるHVDC連系線向け変換所の提供元に選定されたのをはじめ、地域固有の事業機会を確実に捉え、成長を実現していきます。0102010_002.png
Eastern Green Link3 プロジェクトへ参画、HVDCの更なる拡大

(ハ)サステナブル経営の深化
激変する経営環境への対応
グローバル自律分散型経営は、リスクの抑制にも有効であり、ERM(注)の高度化を通じてアジリティの高い経営を推進しています。工場の新設や拡張による現地調達率の向上や調達ルートの多様化により事業のレジリエンス強化を図るとともに、サプライチェーンの強靭化を継続します。すでに、米国相互関税の影響抑制に向け、適切な価格転嫁等の対策を講じています。
(注)Enterprise Risk Management:事業環境の変化に伴うリスクと機会を全社的に把握し、経営戦略や意思決定に反映する仕組み
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Hitachi Rail社ヘイガースタウン工場(米国メリーランド州)

長期的な企業価値向上を支える人的資本の強化
Inspire 2027に掲げる人財戦略の実行に向け、持続的成長をけん引する次世代リーダーの育成やAIプロフェッショナル人財の拡充に取り組んでいます。また、従業員の企業価値向上への意識を引き出すため、従業員への株式報酬制度の導入を決定しました。役員向け株式報酬制度と合わせ、当グループ全体で株主との価値共有を通じた長期的な企業価値向上をめざします。
(ニ)今後の成長に向けた取組
AIによる社内改革とカスタマーゼロ(注)として取り組むAI活用
従業員がAIを活用できる環境の整備を推進し、設計開発・品質保守・間接業務など幅広い領域において業務効率化に取り組んでいます。特に、システム開発においては、AIの活用によりシステムインテグレーション工程において生産性が向上するなど、社内業務改革を着実に進展させています。
幅広い事業領域を持つ当グループにおいて、AIによる社内業務改革を通じてナレッジやノウハウを体系化することは、カスタマーゼロとして大きな強みになります。社内での実績を、顧客のAIエージェントの導入効果を最大化するサービスや、フロントラインワーカーを支援するソリューションなどのサービスとして社外へ展開していきます。
(注)自社を最初の顧客(カスタマーゼロ)と捉え、デジタル技術やAIを活用した変革を先行して実践する
取組
次の成長をけん引する新事業・新技術の開発
戦略SIBビジネスユニットでは、「真のOne Hitachi」の強みが活かされ、次の成長をけん引するテーマを設定し、パートナーとの協創や資本提携を通じた事業創生の取組を加速しています。また、社会課題の解決に貢献する革新的な新技術の研究開発にも継続して取り組んでいます。
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日立は、激変する経営環境においても、これらの取組を通じて成長を加速するとともに、キャピタルアロケーションの方針に則った投資をはじめ規律ある経営を推進することで、さらなる企業価値向上と株主への安定的な還元に取り組んでいきます。
②注力分野における経営環境及び対処すべき課題
注力分野であるデジタルシステム&サービス、エナジー、モビリティ及びコネクティブインダストリーズの4セクターにおける経営環境及び対処すべき課題は、以下のとおりです。
デジタルシステム&サービス
グローバル経済環境の不透明さが継続するものの、AIの急速な進化に伴い、企業のビジネス効率化や競争力向上に向けたAI導入の本格化によりAI関連需要が急速に拡大し、グローバルDX(デジタルトランスフォーメーション)市場を中心とした成長が進んでいます。加えて国内では、労働力不足が懸念される一方で、ITシステムのモダナイゼーションやDXの旺盛な需要が継続して生まれています。
デジタルシステム&サービスセクターは、このような市場環境において、先進デジタル技術を活用したAIやクラウド、セキュリティ等の高度なデジタルソリューションを提供し、お客さまや社会の課題解決に取り組んでいます。また、他セクターとの連携のもと、デジタルシステム&サービスセクターが持つAI及びデジタルに関する知見と技術力を結集し、他セクターのインストールベースのデジタル化及びサービス化を強力に推進しています。さらに、急速に進化するAIを当グループの成長エンジンと位置づけ、業務の生産性を飛躍的に向上させるとともに、新たな事業機会を創出するAIトランスフォーメーションを推進していきます。これにより、AIで社会インフラを革新する次世代ソリューション群「HMAX」をお客さまのアセットへ広くスケールさせ、Lumada事業の展開を加速していくとともに、高付加価値なLumada事業の比率を当グループ全体で高めていきます。
また、国内IT市場においては、AIを活用したシステムインテグレーション(SI)の生産性向上を図るとともに、GlobalLogic社等、海外グループ各社の最先端ナレッジを持つデジタル人財の活用を進めています。こうした取組により、国内において深刻な課題となっているデジタル人財の不足を補いつつ、引き続き高い需要がある大規模なミッションクリティカルSIのニーズに対応していきます。さらに、グローバルパートナーとの積極的な協業強化により、革新的なソリューション創出に注力するとともに、高度なAIスキルを持つ人財育成にも取り組んでいきます。
エナジー
気候変動や地政学リスクの高まりを背景に、脱炭素社会に向けた動きが加速し、世界的に低炭素エネルギーへの転換が進んでいます。また、デジタル化やAIの進展に伴うデータセンターの増加等により、今後も電力需要の増加が見込まれており、電力の安定供給能力の強化に対するニーズが高まっています。具体的には、クリーンエネルギーの導入拡大やそれに対応する電力網の整備、電源構成の多様化・分散化によるマイクログリッドの拡大、原子力を含む安定電源の再評価が進んでいます。
エナジーセクターでは、Lumadaを活用したデジタライズドアセットとデジタルサービスの提供を加速させ、グローバルトップレベルの製品群とインテグレーション力を通じて、地球環境と社会・経済の持続的な発展が調和するハーモナイズドソサエティの実現に貢献していきます。
パワーグリッドでは、日立エナジー社が世界中に持つインストールベースの価値と当グループのデジタル技術を組み合わせ、「HMAX Energy」の展開を通じたサービスの高度化及び継続的な価値提供の拡大により収益性の向上を加速させることで、世界トップクラスのサービス企業への変革を推進します。また、原子力発電システムにおいては、パートナーであるGE Vernovaと連携しながら、カナダにおける小型モジュール炉(SMR)初号機の建設開始を契機として、日米における投資拡大の動きも踏まえ、北米やポーランドをはじめとする欧州等へのSMR事業の展開を進めていきます。
モビリティ
モビリティ分野、とりわけ鉄道事業を取り巻く経営環境は、脱炭素社会の実現に向けた世界的な動きや都市化、デジタル技術の高度化が進んでいます。鉄道は環境負荷の少ない大量輸送手段として再評価され、先進国のみならず新興国においてもインフラ投資が拡大しています。一方で、インフラの老朽化や保守人財不足、安全性・信頼性への要求高度化など、課題も複雑化しています。
当グループは、フィジカル、デジタル、AIを融合した鉄道ソリューションを基本戦略とし、2024年に買収したThales S.A.(以下、「Thales社」といいます。)の鉄道信号関連事業とのインテグレーションを通じ、車両から信号・制御、デジタルサービスまでを含む事業ポートフォリオを拡充しています。さらに、AIを活用した「HMAX Mobility」を中核に、デジタルアセットマネジメント事業を強化しています。
具体的には、2025年のOmnicomの買収によるデジタル監視技術の統合、国内での保守DX推進、北米・欧州での事業基盤強化を進めています。これらの取組を通じて、鉄道事業における付加価値の向上と競争力の強化を図り、持続可能なモビリティ社会への貢献と鉄道事業の持続的成長をめざします。
コネクティブインダストリーズ
産業界では、深刻な労働人口の減少・高齢化に加え、CAPEX(Capital Expenditure)投資の巨大化やOPEX(Operating Expense)変動の増大といった構造的課題に直面しています。また、AIによる自律化・省人化や、Time to Market(開発から市場投入までの期間)の短縮による投資の早期回収、そしてOPEXの低減・最適化を求めるニーズが急速に高まっています。
コネクティブインダストリーズセクターでは、インダストリー(計測・分析装置、ヘルスケア機器、産業・流通及び水・環境ソリューション)とファシリティ(ビルシステム、空調機器、産業機器)の各分野において、高い信頼性を有するプロダクトの豊富なインストールベースから創出されるデータに、現場の実運用を熟知したドメインナレッジ、及びフィジカルAIを掛け合わせた次世代ソリューション群「HMAX Industry」を展開し、お客さまのライフタイムバリューの最大化をめざします。
特に、AI関連投資の成長率が高く、当セクターの強いプロダクトとHMAXによって伸ばすことができる「ファシリティ」、「半導体製造」、「医療診断」、「医薬品製造」の4領域を注力事業領域と定めて、重点的に取り組んでいきます。例えば、ファシリティ領域においては、コネクテッド台数・率がグローバルトップクラスの昇降機を起点に、HMAXを用いて建物全体のエネルギー効率向上や運用の最適化を図ります。半導体製造、診断等の領域においては、グローバルNo.1のシェアを誇るCD-SEM(注)及び生化学免疫・分析装置を中心とした計測・分析技術を起点にHMAXを展開し、Time to Market短縮や生産性向上、ダウンタイム低減を図ります。
これらの成長を支える基盤として、高速・省電力エッジAI半導体などHMAX拡大に向けたフィジカルAIの研究開発を強化します。さらに、フィジカルAIを軸とした事業ポートフォリオ構築と次なるグローバルトッププロダクト創生を一層加速させていきます。
こうした成長戦略を加速するための事業体制として、2026年4月よりBU(ビジネスユニット)を「インダストリアルソリューションBU」、「インダストリアルプロダクツBU」及び「アーバンソリューション&サービスBU」の3つに再編しました。経営のスピードをさらに上げ、事業間のシナジーを創出し、One HitachiでLumadaによる成長をグローバルに加速していきます。
(注)測長SEM(Critical Dimension-Scanning Electron Microscope):半導体等のウェーハ上に形成された微細パターンの寸法計測用に専用化した走査型電子顕微鏡(SEM)の応用装置
(3)経営計画における経営指標
Inspire 2027においては、以下の指標を経営上の業績目標としています。
指 標Inspire 2027
目標
選定した理由
売上収益年成長率
(2024-2027年度 CAGR)(注)1
7-9%成長性を測る指標として選定
Adjusted EBITA率
(2027年度)(注)2
13-15%収益性を測る指標として選定
キャッシュフローコンバージョン
(2027年度)(注)3
90%超キャッシュ創出力を測る指標として選定
投下資本利益率(ROIC)
(2027年度)(注)4
12-13%投資効率を測る指標として選定

(注)1.CAGR(Compound Annual Growth Rate)は、年平均成長率です。
2.Adjusted EBITA(Adjusted Earnings before interest, taxes and amortization)は、調整後営業利益(売上収益から、売上原価並びに販売費及び一般管理費の額を減算して算出した指標)に、企業結合により認識した無形資産等の償却費を足し戻して算出しています。Adjusted EBITA率は、Adjusted EBITAを売上収益の額で除して算出した指標です。
3.キャッシュフローコンバージョンは、コア・フリー・キャッシュ・フローを当期利益の額で除して算出した指標です。コア・フリー・キャッシュ・フローは、フリー・キャッシュ・フロー(営業活動に関するキャッシュ・フローと投資活動に関するキャッシュ・フローを合わせたもの)から、M&Aや資産売却他に係るキャッシュ・フローを除いた経常的なキャッシュ・フローです。
4.ROIC(Return on invested capital)は、「(税引後の調整後営業利益+持分法損益)÷投下資本×100」により算出しています。なお、「税引後の調整後営業利益=調整後営業利益×(1-税金負担率)」、「投下資本=有利子負債+資本の部合計」です。
また、当グループは、Inspire 2027において、経営の長期目標として、Lumada事業の売上収益比率80%、Adjusted EBITA率20%をめざす「Lumada 80-20」を設定しています。Lumada事業への投資強化と事業ポートフォリオ改革を実行し、Lumada事業の更なる拡大と収益性向上を推進していきます。
上記の経営目標のほか、サステナブル経営を深化させるために、以下の項目を、サステナビリティ戦略「PLEDGES」に基づく取組として推進することで、社会への価値提供と当グループの持続的成長を加速していきます。
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