有価証券報告書-第124期(2023/04/01-2024/03/31)

【提出】
2024/06/24 15:00
【資料】
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【項目】
173項目
② 戦略
<中長期環境ビジョン>グローバル社会におけるカーボンニュートラルへの取り組みが加速する中、当社グループが果たすべき社会的役割を再検討し、「2050年度に富士通グループ自らが排出するCO2をゼロエミッション」としてきたこれまでのビジョンを20年前倒しして2030年度にゼロエミッション達成を目指すこととしました。さらにバリューチェーン全体の温室効果ガス排出量を2040年度にネットゼロ※とする目標を定めました。
新ビジョンは、「バリューチェーンでのネットゼロ」「緩和:カーボンニュートラル社会への貢献」「適応:気候変動に対する社会の適応策への貢献」という3つの柱で構成されています。先進のDX技術を効果的に活用して当社グループ自らのネットゼロにいち早く取り組むとともに、そこで得られたノウハウを当社グループのソリューションとしてお客様・社会に提供します。それにより、ビジネスを通して気候変動の緩和と適応に貢献することを目指しています。
※ 温室効果ガス排出量ネットゼロ:温室効果ガス排出量を目標年度に基準年度の90%以上を削減し、10%以下となった残存排出量を大気中のCO2を直接回収する技術(DAC)の活用や、植林などによる吸収で除去すること。
詳細については、以下のウェブサイトをご参照ください。
https://www.fujitsu.com/jp/about/environment/climate-energy-vision/
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また、当社グループでは、気候変動戦略のレジリエンスを確保するため、2018年度に「2℃」シナリオ、 2021年度にIPCC、IEA、環境省・気象庁等政府機関、各種民間調査機関の公開情報を参照し、「1.5℃」及び「4℃」の外部シナリオを用いて、気候変動による事業インパクトを分析し、当社グループの気候関連リスク・機会を特定するとともに対応策を検討しました。自社オペレーション、サプライチェーンにネガティブな影響を及ぼす移行・物理リスクに対応するとともに、お客様の気候関連リスクを理解することで価値創造の提案につなげ、ビジネス機会の獲得を目指します。
・シナリオ分析
当社は、ビジネスを加速し、社会課題に挑むソリューション「Fujitsu Uvance」において、クロスインダストリーな重点分野を定めています。そのうち、特に気候変動の影響が大きいと考えられるSustainable Manufacturing(検討領域:石油化学、自動車、食品、電子機器関連ビジネス)、Trusted Society(検討領域:公共、交通、エネルギー関連ビジネス)、Hybrid IT(検討領域:データセンター関連ビジネス)に対し、1.5℃及び 4℃シナリオを用いて2050年までを考慮したシナリオ分析を実施しました。分析は「リスク重要度の評価」、「シナリオ群の定義」、「事業へのインパクト評価」、「対応策の検討」という4つのステップにて行いました。 Sustainable Manufacturing及びTrusted Societyはお客様の気候関連リスクへの対応を支援するなど、当社におけるビジネスの「機会」を中心とした分析を行い、Hybrid ITは、自社事業及びお客様の気候関連リスクへの対応など、「リスク」と「機会」の両面で分析しました。分析結果として、シナリオで分析した機会についてオファリングの検討・開発方向と一致していること、また、リスクについても対応策を整備できていることを確認し、中長期的な観点から当社の事業は戦略のレジリエンスがあると評価しました。現在、顧客のGHG排出量の削減、エネルギー効率向上などをデジタルリハーサルによりお客様のESG経営を支援するオファリングを提供しています。また、サプライチェーン全体の環境変化を可視化し、データドリブンの施策実行によりScope3までを含むGHG排出量削減など環境への影響を最小限に抑え、各企業のESG経営に繋がるサプライチェーンマネジメントの実現に向けた「Dynamic Supply Chain Management」のオファリングを準備しています。
詳細については、以下の当社ウェブサイトに掲載している「TCFDに基づく情報開示」、「Fujitsu Uvance」をご参照ください。
https://www.fujitsu.com/jp/about/environment/tcfd/
https://activate.fujitsu/ja/uvance
機会
機会分類対象期間内容主な対応策
製品・サービス短~長期高エネルギー効率製品・サービスの開発・提供による売上増加高性能・低消費電力の5G仮想化基地局、高性能・省電力のスーパーコンピュータ等の開発・提供
市場短~長期ICT活用により創出される気候変動対策に向けた新規市場機会の獲得サプライチェーンのCO₂排出量算定・可視化、ゼロエミッションに向けた新材料探索を効率化するシステム等の開発・提供
レジリエンス短~長期レジリエンス強化に関する新製品及びサービスを通じた売上の増加防災情報システム、洪水時の河川水位を予測するAI水管理予測システム等の開発・提供

リスク
リスク分類対象期間内容主な対応策
移行政策/
規制
短~長期・温室効果ガス排出やエネルギー使用に関する法規制強化(炭素税、省エネ政策等)に伴い、対応コストが増加
・上記法規制に違反した場合の企業価値低下のリスク
・温室効果ガス排出量の継続的な削減(再生可能エネルギーの積極的な利用拡大、省エネルギーの徹底)
・EMSを通じた法規制遵守の徹底
市場中~長期・カーボンニュートラルの推進(電動化などの普及)に伴った電力価格の高騰・社内基準の策定、革新的な技術開発などによる電力消費量の削減
技術中~長期・熾烈な技術開発競争(省エネ性能、低炭素サービス等)で劣勢になり、市場ニーズを満たせなかった場合、ビジネス機会を逸失するリスク・顧客の気候変動課題解決に対応する製品・サービス開発、イノベーション推進
評判短~長期・投資家・顧客等のステークホルダーからの要請へ対応することによるコストの増加
・外部要請への対応遅れによる評価・売上に対するネガティブ影響が発生
・中長期環境ビジョン、環境行動計画の策定・推進
・気候変動戦略の透明性確保に向けた積極的な情報開示
物理
(自然災害等)
慢性、急性短~長期・降水・気象パターンの変化、平均気温の上昇、海面上昇、渇水などへの対応コストが増加
・異常気象の激甚化によるサプライチェーンを含む操業停止、復旧コストが増加
・BCP対策強化、お取引先の事業継続体制の調査やマルチソース化などの対策実施
・潜在的水リスクの評価とモニタリングの実施