有価証券報告書-第126期(2025/04/01-2026/03/31)
②戦略
「多彩な人材が、エンゲージメント高く、一人ひとりのウェルビーイングを実現しながら、社会やお客様の課題を解決するためにパーパスを共有して俊敏に集い、社会のいたるところでイノベーションを創出する企業」を実現するため、以下3点を人事部門のグローバル戦略テーマとしています。
“Empowerment”
多様性を享受しオープンかつエンゲージメントの高い、信頼を基にした強固な文化を醸成します。
“Growth”
常にすべての従業員が魅力ある仕事に挑戦し、学び、成長する機会を提供します。
“Impact”
国境や組織の枠組みを越えてコラボレーションし、ビジネスと社会に強いインパクトをもたらす多様性あふれる集団を形成します。
上記を実現するために、2025年度は主に以下の取り組みを進めました。
(ⅰ)事業戦略と一体化した人材ポートフォリオの策定
事業戦略を実現するためには、その戦略と一体となった人材ポートフォリオの策定が不可欠です。事業戦略に基づいて将来必要とされる人材のロールやスキルを定義するとともに、人数等の規模感を特定し、現有人材とのギャップ分析を行い、そのギャップを充足する計画の立案が必要です。
そのため2023年度から2025年度までの中期経営計画の中で、事業のポートフォリオと連動したロール別の人員数をマッピングし、成長領域への戦略的な人材の採用・配置や、リスキリング・アップスキリングを含めた人材育成施策を実行することで、Uvanceやモダナイゼーション事業の成長を支えました。また、その他の領域でもAIを活用した効率化や自動化を推進することで生産性の向上に継続的に取り組み、2022年度と比較して、2025年度の従業員一人当たり調整後営業利益(注1)は約89%上昇の見込みであり、大きく伸長しています。
また2025年度より、グローバル統一の人材情報プラットフォームを日本及びグローバルの一部地域で稼働開始し、2026年度中には全リージョンに展開予定です。これによって、データドリブン経営・事業戦略と連動した人材ポートフォリオ変革をより強力に推進し、グローバルな人材の最適配置を実現します。
(注1)正規従業員のみを母数とした一人当たり調整後営業利益、デバイスソリューションを除く
(ⅱ)人材ポートフォリオの質的変革
事業戦略と連動した人材ポートフォリオの実現に向け、2020年より導入しているジョブ型人材マネジメントの考え方に沿って、社内の人材流動化の促進、より質の高い人材の採用、リスキリング・アップスキリングの強化に取り組んでいます。
・社内の人材流動化
社内公募制度であるポスティングをグローバル・グループワイドに展開しています。国内(グループ会社含む)を対象に実施しているグループワイドポスティングでは、2025年度は6,694名が応募し、うち2,143名が合格し異動しました。また、当社リージョン横断のグローバルポスティングでは50名が合格し、一貫して社内における適所適材の推進が進んでいます。このほか、従業員自身が希望する部署に期間限定で異動し、異なる業務を経験できる、社内インターンシップ制度「Jobチャレ!!」や、所属組織や業務を超えて、スキルや経験を活かして挑戦できる社内副業制度「Assign Me」等、社員が主体的に挑戦できる機会の拡充にも取り組んでいます。
・より質の高い人材の採用
新卒採用については、変化の激しい環境下で社会課題の解決やお客様のニーズに応えるために、求められるソリューションやテクノロジーに即応しながら、必要な役割を自律的に遂行できる人材の採用を加速するため、2026年度入社者より、新卒一括採用の廃止と新卒入社者へのジョブ型人材マネジメントの拡大を行うことを決定しました。毎年計画数を定めて一斉のタイミングや学歴別一律の初任給で採用する考え方を改め、新卒採用・キャリア採用の区分にこだわらず、必要な職務を担う人材を、計画数を定めずに通年でフレキシブルに採用しています。処遇については、入社時よりジョブレベルに応じた処遇を適用し、高度な専門性等が必要なジョブを担うことができる人材には、入社時からそれに応じた処遇とすることで、博士人材を含め、より優秀で多様な人材の獲得を推進していきます。また、応募者がジョブへの理解を高め、入社後の自身の活躍をイメージすることが重要との観点から、当社の各領域におけるスペシャリストとともに実ビジネスに挑戦できる数か月にわたる長期の有償インターンシップを実施しています。2025年度は約400名が当社のインターンシップを経験し、富士通への理解や参加者自身のキャリア形成に繋げることができました。
また、引き続き2023年度より、グローバル共通のEmployee Value Proposition(EVP)(注2)を展開し、新卒採用とキャリア採用の訴求力向上に努め、各種オンボーディング施策を実践する等、採用力強化に加え、新規入社者の定着率向上についても実践しています。
(注2) 当社では、会社が社員に提供できる価値を明文化し、グローバルに統一されたEVPとして5つのPeople Promisesを定めています。①Do the right thing ②Trusted to transform ③Work Your Way ④Global reach, local impact ⑤Achieve together
・リスキリング、アップスキリングの実践
事業戦略に沿って、必要となるスキルを有する人材の育成に向け、リスキリングやアップスキリングに継続して取り組んでいます。
Uvanceの拡大に向けては、「Business Application」領域のソリューションであるSAP、Salesforce、ServiceNowや「Hybrid-IT」領域のAmazon Web Services(AWS)、Microsoft Azureのスキル向上に注力しています。これらの重点領域に人材育成投資を集中し、資格取得の総数は前年度と同水準となる合計1万件超を維持しました。あわせて、AI分野においては事業成長を支える重要領域として位置付け、主要ベンダーのAI関連資格を中心に昨年度比2倍の2,500件超の取得が進み、専門性の高度化を推進しています。
また、資格取得に留まらず、人材最適配置と生産性向上を加速するため、当社コンサルティング事業「Uvance Wayfinders」の展開に向けたコンサルタントの育成や、デリバリー力強化に向けたデリバリー人材の育成に取り組み、当社重点強化領域へのリソースやスキルのシフトを推進しています。
加えて、2025年度は継続的な需要が見込まれるモダナイゼーションビジネスへの対応力強化を目的に、プロジェクトマネージャー育成を全社横断的な施策として実施しました。ケイパビリティの可視化に加え、レベル別育成プログラム及びOJTを通じた計画的なスキル向上を推進しています。これにより、高品質なプロジェクト遂行力の強化と、次世代人材の計画的な育成を進めています。
(ⅲ)キャリアオーナーシップの浸透
当社のジョブ型人材マネジメントにおいては、従業員一人ひとりが自らのキャリアを考え、成長に向けて主体的に行動していく「キャリアオーナーシップ」の考え方を重視しています。
人材育成においては、「キャリアオーナーシップ」マインドを醸成し、行動変革を促進するための施策と、自ら主体的に選択して受講できる教育機会の拡充に取り組んでいます。
多様な従業員と互いのキャリアを語り合う「キャリアCafe」は、国内(グループ会社含む)を対象に2021年度より実施しており、2025年度までに延べ28,915名が参加しています。2022年度までは幅広い世代に実施をしていましたが、2023年度からは、キャリア資本を戦略的に考えてもらうために、特に若手・ミドルシニア世代に注力し実施しています。2025年度は、2023年度からの継続及び新たに対象となる従業員を中心に実施しています。
また、いくつかの質問に答えることで、個人のキャリアオーナーシップの状況を診断できる「キャリアオーナーシップ診断」は2022年度に導入し、キャリアCafeとも連携しながら提供しており、日本では延べ46,102名の従業員が活用しています。
学びの機会の拡充については、教育プラットフォーム「Udemy Business」や 「LinkedIn ラーニング」を導入・継続利用し、自律的な学びの文化の醸成を促進しています。「Udemy Business」は、生成AI等の最新技術動向やデジタルリテラシー、お客様のDX戦略の加速とビジネス変革を支援するためのテクノロジー関連スキルの早期獲得を目的とし、2020年度より導入し、2026年度より全従業員(グローバル含む)に展開しています。「LinkedInラーニング」は、ビジネススキルの習得を目的に、2023年度より導入しています。
加えて、プログラムの提供だけでなく、職場・社員のキャリア形成を支援するキャリアカウンセラーの設置や、2025年度に約1,000名が参加した社内キャリアカウンセラーによるキャリア面談についても2022年度より全社展開を開始し、一人ひとりのチャレンジを後押しする取り組みも進めています。
(ⅳ)人材マネジメントの基本コンセプト「Connect」
2021年より順次、社員が自律的に考え、行動を起こしていくためのグローバル共通の人材マネジメントの基本コンセプト「Connect」を導入しました。
「Connect」では、当社のパーパスと個人のパーパスを起点にそれらを結び付け、社員一人ひとりの主体的な挑戦を後押しし、組織や個人の成長を最大化することと、社会やお客様に大きなインパクトをもたらすことをねらいとしています。
また、評価制度としては社員一人ひとりがビジョン実現に向けて生み出したインパクトの大きさ(Impact)、Fujitsu Wayの大切にする価値観「挑戦」「信頼」「共感」の体現度(Behaviors)、パーパスやビジョンを基にした自身とチームの成長(Learning&Growth)を評価します。
2024年度からは、毎月の1on1ミーティングのうち、3か月に1度の振り返りと未来に向けたアクションについて上司部下間で対話する「Connect Conversations」を全リージョンに導入しています。また、評価の決定と評価結果に基づいた個人のアサインメント・各種成長支援等の検討という一貫したアプローチを実施するための、組織全体の人材にまつわる議論の枠組みである「People discussions」についてもグローバルで考え方を統一しました。評価結果を報酬やアサインメント、スキル向上支援の検討にも活用することで、一貫性のある人材マネジメントを行うことができる仕組みとしています。加えて、2026年度の期初からはグローバル統一のシステム、スケジュールでのConnectプロセスの運用となります。これにより、国やリージョンを越えた、上司部下間の対話のサポートやデータの共有、同じ基準・仕組み・スケジュールでの評価の運用が可能となり、社員のロケーションに関係なく、全社員のより一層の挑戦と成長を後押ししていきます。
(ⅴ)エンゲージメントの向上
当社グループの持続的な成長を測る一つの指標として、2020年度より従業員エンゲージメントを非財務指標に設定し、グローバルIT企業と同等の数値(75ポイント)以上に引き上げることを目標に掲げ、様々な取り組みを推進しています。
社員一人ひとりが、パーパス実現に向けて活き活きと活躍できるよう、年2回のエンゲージメントサーベイを通じて社員の声を集め、組織の風土を「見える化」し、各組織へフィードバックすることで組織活性化に取り組んでいます。
2025年度の従業員エンゲージメントスコアは71ポイントとなり、前年度から3ポイント上昇しました。特に日本国内では5ポイントの改善が見られ、目標達成に向けた確かな進展が確認されています。また、組織別に見ると、約3割の組織が目標である75ポイントをクリアしており、半数以上の組織が70ポイントを超えて目標の一歩手前まで来ています。サーベイ結果及びフリーコメントの分析から、スコア向上の背景として、経営層からの情報発信の質の向上、上司と部下の信頼関係の強化、社員一人ひとりのオーナーシップや自己成長意欲の高まりといった、各組織における主体的な取り組みの広がりが確認されています。
これまでは、タウンホールミーティングやコミュニケーションツール「オープントーク」を活用し、組織のトップとメンバーが率直な対話を行う機会の充実等、対話や信頼を軸とした全社共通のエンゲージメント向上の基盤づくりを進めてきました。そのうえで、2025年度からは、こうした基盤を土台に、サーベイ結果の分析に基づいて各組織固有の課題を可視化し、組織の状況に応じた支援へと取り組みを深化させています。この結果、支援件数は前年より50件増加しました。また、重点的に支援を行った代表的な12組織においては、エンゲージメントスコアが平均で4ポイント向上しました。こうした成果は、当社の研究所が持つテクノロジー(Fujitsu因果AI)やAIを用いた課題可視化ツールを活用し、相関分析だけでは捉えきれなかった課題の根本構造を明らかにすることで、経験や勘に頼らないデータドリブンな改善につなげていることによるものです。加えて、現場起点の改善にとどまらず、制度や仕組みといった職場単位では解決が難しい経営レベルの課題へもアプローチを開始しています。
今後は、こうした取り組みを通じて得られた知見や成功事例を蓄積・展開し、テクノロジーやAIを活用したデータドリブンな改善サイクルをより一層進化させるとともに、全社共通の制度・仕組み・システム等働く環境に関する課題解決にも継続的に取り組み、従業員エンゲージメントのさらなる向上を目指していきます。
(ⅵ)多様性・インクルージョンの推進
当社グループが目指すダイバーシティ&インクルージョンの姿は、Fujitsu Wayを礎とし、「誰もが一体感をもって自分らしく活躍できる、インクルーシブな企業文化」としています。この考え方のもと、社員一人ひとりの多様な経験や専門性、そして多彩な個性と能力、可能性を当社の持続的成長に不可欠な人的資本と捉え、その価値を最大限に引き出すことを通じて、持続的な企業価値向上とイノベーションの創出を実現し、社会に信頼をもたらしていくことを目指しています。
また、当社グループでは、性別を含む属性の違いにかかわらず、社員一人ひとりが異なる価値観や能力を活かし合い、共に挑戦し成長するインクルーシブな組織文化の醸成を重視しています。中でも、非財務指標のKPIの一つとして、リーダーシップレベルにおける女性比率の目標は2030年度で30%と策定し、2025年度末時点では17.5%見込みとなっています。
さらに、具体的な取り組みとして、全社員の意識やマネジメントスタイルの変革を目指すカルチャー変革の取り組み(注3)に加え、戦略的な採用・育成・登用、学び直しの機会拡充、多様なキャリア形成支援等を通じて全社員の活躍を支援する取り組み(注4)を推進しています。加えて、当社が提唱する「Work Life Shift」のもと、多様で柔軟な働き方を進化させるとともに、AIの活用を前提とした働き方への変革も見据えながら、社員のキャリア形成やライフイベントとの両立支援を充実させ、ウェルビーイングの向上を図っています。障がい者に関する取り組みにおいては、特例子会社富士通ハーモニー株式会社が運営するカフェを4拠点に開設する等、障がいのある社員の活躍の場を拡大しています。
こうした取り組みを通じて、社員一人ひとりの挑戦と成長を支え、多彩な知見と力が組織の中で共鳴し、人的資本の価値最大化とウェルビーイングが好循環を生み出し、持続的に実現される企業文化の形成を推進しています。
(注3) カルチャー変革の取り組みの例:グローバルウェルビーイングサーベイ及びエンゲージメントサーベイの分析と活用、マネジメント変革
(注4) 活躍支援の取り組みの例:多様なキャリア・キャリアオーナーシップの支援、メンター制度、コミュニティの充実
(ⅶ)健康経営と労働安全衛生の遵守
当社では、健康に関する評価指標として「生産性向上」「個人・組織活性化」「人材リテンション強化」に関わる指標を設定し、下記5つの重点施策領域において、それぞれの指標を改善・向上させるためにPDCAサイクルを回しながら取り組んでいます。
1.生活習慣病・がん対策 2.メンタルヘルス対策 3.口腔・歯の健康施策
4.ヘルスリテラシー・健康意識向上、生活習慣の改善 5.職場環境の整備
また、安全衛生においては、「富士通グループ労働安全衛生基本方針」をグローバル全体で以下のとおりに定めています。本方針に基づき、各リージョン主導による安全衛生活動を実施するとともに、安全・快適な労働環境の整備と職場風土づくりをグループ一体となって推進し、社員の健康・安全の確保を図っています。
<富士通グループ労働安全衛生基本方針>●基本理念
富士通グループは、すべての事業活動において心とからだの健康と安全を守り、持続可能な未来の実現に貢献する。
●行動指針
1.各国各地域の労働安全衛生に関する法令・指針・コンプライアンスを遵守し、安全衛生情報の開示および社員の意見を取り入れた安全衛生活動を実施する。
2.安全衛生管理推進体制を継続的に改善し、各国各地域の状況に応じて安全・健康・心理社会的リスクへ配慮した職場環境を維持増進することで、社員一人ひとりのウェルビーイングの実現を目指す。
3.「重大な労働災害ゼロ」および予防可能な業務上の災害によるビジネス機会の損失をゼロにする。
4.職場点検やリスクアセスメント等の実施を通して、危険箇所および健康障害となり得る要因を特定し、優先順位を付けて課題の改善に取り組む。
●本方針の適用範囲
本方針は、富士通グループの全社員に適用されます。また、富士通グループのすべてのお取引先およびパートナーに対しては、富士通グループサステナブル調達指針にて「2. 安全衛生」を制定し、理解と遵守を求めています。
●本方針の承認先
本方針は、CHRO(最高人事責任者)によって承認されました。
(ⅷ)ウェルビーイングの実現
当社グループでは、マテリアリティ(組織が優先して取り組んでいく重要課題)の1つとして「人々のウェルビーイングの向上」を定めています。
当社ではウェルビーイングの定義を「一人ひとりが自らの志を胸に、より良い未来のために挑戦し続けている状態」と定めました。社員一人ひとりのウェルビーイング向上に向けて以下4つのカテゴリにまとめ、カテゴリごとに方針を定めてグローバルで活動を実践しています。

近年、人間の活力、意欲、エネルギーが世界的に低下していることを示唆するHuman Energy Crisisと呼ばれる世界的に静かに進行する異変が問題視されています。OECD(経済協力開発機構)の調査(注5)では、コロナ禍以降、加盟国における主観的ウェルビーイングや社会的つながりが下降リスクの兆候を示しており、将来のウェルビーイングに対する脅威が依然として存在することに言及しています。その一方で当社は今、AI時代を迎え、AI分野における先進的な企業として大きな変革期にあります。
このような時代において、社員一人ひとりが自律的に成長し、内側から湧き上がるような意欲を持って取り組める環境へと変革していくことが不可欠です。そうした背景も踏まえ、2025年度に実施したウェルビーイングサーベイ(注6)の中では「成長」に焦点を当て、新たに「成長意欲」の大きさを成長行動の頻度で問う設問を設けました。分析結果(注7)からは、成長意欲の水準が高い層ほど、ウェルビーイング実感値の平均が高い傾向が明らかになった一方、ウェルビーイング実感値が高くても成長意欲の水準は低、中程度である層も一定数確認できました。これらの結果を受けて、当社では、成長意欲とウェルビーイング実感値の双方が高い状態を目指していくことが重要であると考えています。
(注5)OECD (2024). How’s Life? 2024: Well-being and Resilience in Times of Crisis. OECD Publishing, Paris. https://www.oecd.org/en/publications/how-s-life-2024_90ba854a-en.html
(注6:2025年度ウェルビーイングサーベイ実施概要)
(注7)データ分析範囲は提出会社のみ
(ⅸ)人的資本価値向上とデータ検証
当社は2022年度より、人的資本経営の実践に向けて他社のCHROと協働する「CHRO Roundtable」(注8)を主催しています。人的資本経営の実践において、人材に関する取り組みが企業戦略の実現にどのように関わるかを伝える一貫性のあるストーリー構築の重要性と、その裏づけとなる自社固有のKPIの特定、そして取り組みの推進が不可欠との認識のもと運営しています。2022年度に実施した第1回CHRO Roundtableでは、各社が人的資本経営を検討するにあたっての共通の構想フレームである「人的資本価値向上モデル」を策定し、社外に公開いたしました。各社が人的資本経営を実践するにあたり、自社の施策を当該モデル図に落とし込んで整理していくことで、企業価値向上につながる全体構造を捉えることが可能になります。
2024年から2025年にかけて実施した第3回CHRO Roundtable(注9)では、人的資本経営が事業成長につながる実践フェーズへと移行しつつあるという現状を踏まえ、事業部責任者のパートナーとして、人的な側面から事業戦略の実現をサポートする機能・役割を担うHR Business Partner(以下、「HRBP」)と連携し、データドリブンに組織の課題解決を図る試みに着手しました。本Roundtableでは、HRBPが当該事業部門のDXO(注10)に対して行った実態把握のヒアリングをもとに、「仕事のやりがいや意義、業務の進め方」に関して多くの課題感が存在するということを本質的なテーマ(論点)として特定しました。当該テーマに対し、「Fujitsu Data Intelligence PaaS」を活用した因果分析を実施し、従業員の感じている業務遂行の障壁と密接な関係があることを科学的に特定しました。具体的には、業務の進め方に関する課題が、社員のエンゲージメントにネガティブな影響をもたらす可能性があるとの示唆が得られました。さらに、同分析手法により、業務遂行の障壁の度合いがどのような環境下で影響を受けるのかについて、管理職と非管理職で異なる結果となる示唆を得ました。これらの分析結果とそこから導出される仮説をもとに、HRBPと事業部門が再度深く対話し、組織全体への方針浸透、マネジメント層の意識改革、そして組織の特性や階層ごとのニーズに合わせた具体的な施策の検討に着手しています。
(注8)第1回CHRO Roundtableの概要については、下記リンク先参照
https://info.archives.global.fujitsu/jp/news/2023/04/20.html
(注9)第3回CHRO Roundtableについては、「CHRO Roundtable Report 2025」参照
(下記リンク先よりダウンロード可)
https://global.fujitsu/ja-jp/insight/tl-chro-roundtable-20250728
(注10)DX Officer(各部門のデジタル変革の責任者)

「多彩な人材が、エンゲージメント高く、一人ひとりのウェルビーイングを実現しながら、社会やお客様の課題を解決するためにパーパスを共有して俊敏に集い、社会のいたるところでイノベーションを創出する企業」を実現するため、以下3点を人事部門のグローバル戦略テーマとしています。
“Empowerment”
多様性を享受しオープンかつエンゲージメントの高い、信頼を基にした強固な文化を醸成します。
“Growth”
常にすべての従業員が魅力ある仕事に挑戦し、学び、成長する機会を提供します。
“Impact”
国境や組織の枠組みを越えてコラボレーションし、ビジネスと社会に強いインパクトをもたらす多様性あふれる集団を形成します。
上記を実現するために、2025年度は主に以下の取り組みを進めました。(ⅰ)事業戦略と一体化した人材ポートフォリオの策定
事業戦略を実現するためには、その戦略と一体となった人材ポートフォリオの策定が不可欠です。事業戦略に基づいて将来必要とされる人材のロールやスキルを定義するとともに、人数等の規模感を特定し、現有人材とのギャップ分析を行い、そのギャップを充足する計画の立案が必要です。
そのため2023年度から2025年度までの中期経営計画の中で、事業のポートフォリオと連動したロール別の人員数をマッピングし、成長領域への戦略的な人材の採用・配置や、リスキリング・アップスキリングを含めた人材育成施策を実行することで、Uvanceやモダナイゼーション事業の成長を支えました。また、その他の領域でもAIを活用した効率化や自動化を推進することで生産性の向上に継続的に取り組み、2022年度と比較して、2025年度の従業員一人当たり調整後営業利益(注1)は約89%上昇の見込みであり、大きく伸長しています。
また2025年度より、グローバル統一の人材情報プラットフォームを日本及びグローバルの一部地域で稼働開始し、2026年度中には全リージョンに展開予定です。これによって、データドリブン経営・事業戦略と連動した人材ポートフォリオ変革をより強力に推進し、グローバルな人材の最適配置を実現します。
(注1)正規従業員のみを母数とした一人当たり調整後営業利益、デバイスソリューションを除く
(ⅱ)人材ポートフォリオの質的変革
事業戦略と連動した人材ポートフォリオの実現に向け、2020年より導入しているジョブ型人材マネジメントの考え方に沿って、社内の人材流動化の促進、より質の高い人材の採用、リスキリング・アップスキリングの強化に取り組んでいます。
・社内の人材流動化
社内公募制度であるポスティングをグローバル・グループワイドに展開しています。国内(グループ会社含む)を対象に実施しているグループワイドポスティングでは、2025年度は6,694名が応募し、うち2,143名が合格し異動しました。また、当社リージョン横断のグローバルポスティングでは50名が合格し、一貫して社内における適所適材の推進が進んでいます。このほか、従業員自身が希望する部署に期間限定で異動し、異なる業務を経験できる、社内インターンシップ制度「Jobチャレ!!」や、所属組織や業務を超えて、スキルや経験を活かして挑戦できる社内副業制度「Assign Me」等、社員が主体的に挑戦できる機会の拡充にも取り組んでいます。
・より質の高い人材の採用
新卒採用については、変化の激しい環境下で社会課題の解決やお客様のニーズに応えるために、求められるソリューションやテクノロジーに即応しながら、必要な役割を自律的に遂行できる人材の採用を加速するため、2026年度入社者より、新卒一括採用の廃止と新卒入社者へのジョブ型人材マネジメントの拡大を行うことを決定しました。毎年計画数を定めて一斉のタイミングや学歴別一律の初任給で採用する考え方を改め、新卒採用・キャリア採用の区分にこだわらず、必要な職務を担う人材を、計画数を定めずに通年でフレキシブルに採用しています。処遇については、入社時よりジョブレベルに応じた処遇を適用し、高度な専門性等が必要なジョブを担うことができる人材には、入社時からそれに応じた処遇とすることで、博士人材を含め、より優秀で多様な人材の獲得を推進していきます。また、応募者がジョブへの理解を高め、入社後の自身の活躍をイメージすることが重要との観点から、当社の各領域におけるスペシャリストとともに実ビジネスに挑戦できる数か月にわたる長期の有償インターンシップを実施しています。2025年度は約400名が当社のインターンシップを経験し、富士通への理解や参加者自身のキャリア形成に繋げることができました。
また、引き続き2023年度より、グローバル共通のEmployee Value Proposition(EVP)(注2)を展開し、新卒採用とキャリア採用の訴求力向上に努め、各種オンボーディング施策を実践する等、採用力強化に加え、新規入社者の定着率向上についても実践しています。
(注2) 当社では、会社が社員に提供できる価値を明文化し、グローバルに統一されたEVPとして5つのPeople Promisesを定めています。①Do the right thing ②Trusted to transform ③Work Your Way ④Global reach, local impact ⑤Achieve together
・リスキリング、アップスキリングの実践
事業戦略に沿って、必要となるスキルを有する人材の育成に向け、リスキリングやアップスキリングに継続して取り組んでいます。
Uvanceの拡大に向けては、「Business Application」領域のソリューションであるSAP、Salesforce、ServiceNowや「Hybrid-IT」領域のAmazon Web Services(AWS)、Microsoft Azureのスキル向上に注力しています。これらの重点領域に人材育成投資を集中し、資格取得の総数は前年度と同水準となる合計1万件超を維持しました。あわせて、AI分野においては事業成長を支える重要領域として位置付け、主要ベンダーのAI関連資格を中心に昨年度比2倍の2,500件超の取得が進み、専門性の高度化を推進しています。
また、資格取得に留まらず、人材最適配置と生産性向上を加速するため、当社コンサルティング事業「Uvance Wayfinders」の展開に向けたコンサルタントの育成や、デリバリー力強化に向けたデリバリー人材の育成に取り組み、当社重点強化領域へのリソースやスキルのシフトを推進しています。
加えて、2025年度は継続的な需要が見込まれるモダナイゼーションビジネスへの対応力強化を目的に、プロジェクトマネージャー育成を全社横断的な施策として実施しました。ケイパビリティの可視化に加え、レベル別育成プログラム及びOJTを通じた計画的なスキル向上を推進しています。これにより、高品質なプロジェクト遂行力の強化と、次世代人材の計画的な育成を進めています。
(ⅲ)キャリアオーナーシップの浸透
当社のジョブ型人材マネジメントにおいては、従業員一人ひとりが自らのキャリアを考え、成長に向けて主体的に行動していく「キャリアオーナーシップ」の考え方を重視しています。
人材育成においては、「キャリアオーナーシップ」マインドを醸成し、行動変革を促進するための施策と、自ら主体的に選択して受講できる教育機会の拡充に取り組んでいます。
多様な従業員と互いのキャリアを語り合う「キャリアCafe」は、国内(グループ会社含む)を対象に2021年度より実施しており、2025年度までに延べ28,915名が参加しています。2022年度までは幅広い世代に実施をしていましたが、2023年度からは、キャリア資本を戦略的に考えてもらうために、特に若手・ミドルシニア世代に注力し実施しています。2025年度は、2023年度からの継続及び新たに対象となる従業員を中心に実施しています。
また、いくつかの質問に答えることで、個人のキャリアオーナーシップの状況を診断できる「キャリアオーナーシップ診断」は2022年度に導入し、キャリアCafeとも連携しながら提供しており、日本では延べ46,102名の従業員が活用しています。
学びの機会の拡充については、教育プラットフォーム「Udemy Business」や 「LinkedIn ラーニング」を導入・継続利用し、自律的な学びの文化の醸成を促進しています。「Udemy Business」は、生成AI等の最新技術動向やデジタルリテラシー、お客様のDX戦略の加速とビジネス変革を支援するためのテクノロジー関連スキルの早期獲得を目的とし、2020年度より導入し、2026年度より全従業員(グローバル含む)に展開しています。「LinkedInラーニング」は、ビジネススキルの習得を目的に、2023年度より導入しています。
加えて、プログラムの提供だけでなく、職場・社員のキャリア形成を支援するキャリアカウンセラーの設置や、2025年度に約1,000名が参加した社内キャリアカウンセラーによるキャリア面談についても2022年度より全社展開を開始し、一人ひとりのチャレンジを後押しする取り組みも進めています。
(ⅳ)人材マネジメントの基本コンセプト「Connect」
2021年より順次、社員が自律的に考え、行動を起こしていくためのグローバル共通の人材マネジメントの基本コンセプト「Connect」を導入しました。
「Connect」では、当社のパーパスと個人のパーパスを起点にそれらを結び付け、社員一人ひとりの主体的な挑戦を後押しし、組織や個人の成長を最大化することと、社会やお客様に大きなインパクトをもたらすことをねらいとしています。
また、評価制度としては社員一人ひとりがビジョン実現に向けて生み出したインパクトの大きさ(Impact)、Fujitsu Wayの大切にする価値観「挑戦」「信頼」「共感」の体現度(Behaviors)、パーパスやビジョンを基にした自身とチームの成長(Learning&Growth)を評価します。
2024年度からは、毎月の1on1ミーティングのうち、3か月に1度の振り返りと未来に向けたアクションについて上司部下間で対話する「Connect Conversations」を全リージョンに導入しています。また、評価の決定と評価結果に基づいた個人のアサインメント・各種成長支援等の検討という一貫したアプローチを実施するための、組織全体の人材にまつわる議論の枠組みである「People discussions」についてもグローバルで考え方を統一しました。評価結果を報酬やアサインメント、スキル向上支援の検討にも活用することで、一貫性のある人材マネジメントを行うことができる仕組みとしています。加えて、2026年度の期初からはグローバル統一のシステム、スケジュールでのConnectプロセスの運用となります。これにより、国やリージョンを越えた、上司部下間の対話のサポートやデータの共有、同じ基準・仕組み・スケジュールでの評価の運用が可能となり、社員のロケーションに関係なく、全社員のより一層の挑戦と成長を後押ししていきます。
(ⅴ)エンゲージメントの向上
当社グループの持続的な成長を測る一つの指標として、2020年度より従業員エンゲージメントを非財務指標に設定し、グローバルIT企業と同等の数値(75ポイント)以上に引き上げることを目標に掲げ、様々な取り組みを推進しています。
社員一人ひとりが、パーパス実現に向けて活き活きと活躍できるよう、年2回のエンゲージメントサーベイを通じて社員の声を集め、組織の風土を「見える化」し、各組織へフィードバックすることで組織活性化に取り組んでいます。
2025年度の従業員エンゲージメントスコアは71ポイントとなり、前年度から3ポイント上昇しました。特に日本国内では5ポイントの改善が見られ、目標達成に向けた確かな進展が確認されています。また、組織別に見ると、約3割の組織が目標である75ポイントをクリアしており、半数以上の組織が70ポイントを超えて目標の一歩手前まで来ています。サーベイ結果及びフリーコメントの分析から、スコア向上の背景として、経営層からの情報発信の質の向上、上司と部下の信頼関係の強化、社員一人ひとりのオーナーシップや自己成長意欲の高まりといった、各組織における主体的な取り組みの広がりが確認されています。
これまでは、タウンホールミーティングやコミュニケーションツール「オープントーク」を活用し、組織のトップとメンバーが率直な対話を行う機会の充実等、対話や信頼を軸とした全社共通のエンゲージメント向上の基盤づくりを進めてきました。そのうえで、2025年度からは、こうした基盤を土台に、サーベイ結果の分析に基づいて各組織固有の課題を可視化し、組織の状況に応じた支援へと取り組みを深化させています。この結果、支援件数は前年より50件増加しました。また、重点的に支援を行った代表的な12組織においては、エンゲージメントスコアが平均で4ポイント向上しました。こうした成果は、当社の研究所が持つテクノロジー(Fujitsu因果AI)やAIを用いた課題可視化ツールを活用し、相関分析だけでは捉えきれなかった課題の根本構造を明らかにすることで、経験や勘に頼らないデータドリブンな改善につなげていることによるものです。加えて、現場起点の改善にとどまらず、制度や仕組みといった職場単位では解決が難しい経営レベルの課題へもアプローチを開始しています。
今後は、こうした取り組みを通じて得られた知見や成功事例を蓄積・展開し、テクノロジーやAIを活用したデータドリブンな改善サイクルをより一層進化させるとともに、全社共通の制度・仕組み・システム等働く環境に関する課題解決にも継続的に取り組み、従業員エンゲージメントのさらなる向上を目指していきます。
(ⅵ)多様性・インクルージョンの推進
当社グループが目指すダイバーシティ&インクルージョンの姿は、Fujitsu Wayを礎とし、「誰もが一体感をもって自分らしく活躍できる、インクルーシブな企業文化」としています。この考え方のもと、社員一人ひとりの多様な経験や専門性、そして多彩な個性と能力、可能性を当社の持続的成長に不可欠な人的資本と捉え、その価値を最大限に引き出すことを通じて、持続的な企業価値向上とイノベーションの創出を実現し、社会に信頼をもたらしていくことを目指しています。
また、当社グループでは、性別を含む属性の違いにかかわらず、社員一人ひとりが異なる価値観や能力を活かし合い、共に挑戦し成長するインクルーシブな組織文化の醸成を重視しています。中でも、非財務指標のKPIの一つとして、リーダーシップレベルにおける女性比率の目標は2030年度で30%と策定し、2025年度末時点では17.5%見込みとなっています。
さらに、具体的な取り組みとして、全社員の意識やマネジメントスタイルの変革を目指すカルチャー変革の取り組み(注3)に加え、戦略的な採用・育成・登用、学び直しの機会拡充、多様なキャリア形成支援等を通じて全社員の活躍を支援する取り組み(注4)を推進しています。加えて、当社が提唱する「Work Life Shift」のもと、多様で柔軟な働き方を進化させるとともに、AIの活用を前提とした働き方への変革も見据えながら、社員のキャリア形成やライフイベントとの両立支援を充実させ、ウェルビーイングの向上を図っています。障がい者に関する取り組みにおいては、特例子会社富士通ハーモニー株式会社が運営するカフェを4拠点に開設する等、障がいのある社員の活躍の場を拡大しています。
こうした取り組みを通じて、社員一人ひとりの挑戦と成長を支え、多彩な知見と力が組織の中で共鳴し、人的資本の価値最大化とウェルビーイングが好循環を生み出し、持続的に実現される企業文化の形成を推進しています。
(注3) カルチャー変革の取り組みの例:グローバルウェルビーイングサーベイ及びエンゲージメントサーベイの分析と活用、マネジメント変革
(注4) 活躍支援の取り組みの例:多様なキャリア・キャリアオーナーシップの支援、メンター制度、コミュニティの充実
(ⅶ)健康経営と労働安全衛生の遵守
当社では、健康に関する評価指標として「生産性向上」「個人・組織活性化」「人材リテンション強化」に関わる指標を設定し、下記5つの重点施策領域において、それぞれの指標を改善・向上させるためにPDCAサイクルを回しながら取り組んでいます。
1.生活習慣病・がん対策 2.メンタルヘルス対策 3.口腔・歯の健康施策
4.ヘルスリテラシー・健康意識向上、生活習慣の改善 5.職場環境の整備
また、安全衛生においては、「富士通グループ労働安全衛生基本方針」をグローバル全体で以下のとおりに定めています。本方針に基づき、各リージョン主導による安全衛生活動を実施するとともに、安全・快適な労働環境の整備と職場風土づくりをグループ一体となって推進し、社員の健康・安全の確保を図っています。
<富士通グループ労働安全衛生基本方針>●基本理念
富士通グループは、すべての事業活動において心とからだの健康と安全を守り、持続可能な未来の実現に貢献する。
●行動指針
1.各国各地域の労働安全衛生に関する法令・指針・コンプライアンスを遵守し、安全衛生情報の開示および社員の意見を取り入れた安全衛生活動を実施する。
2.安全衛生管理推進体制を継続的に改善し、各国各地域の状況に応じて安全・健康・心理社会的リスクへ配慮した職場環境を維持増進することで、社員一人ひとりのウェルビーイングの実現を目指す。
3.「重大な労働災害ゼロ」および予防可能な業務上の災害によるビジネス機会の損失をゼロにする。
4.職場点検やリスクアセスメント等の実施を通して、危険箇所および健康障害となり得る要因を特定し、優先順位を付けて課題の改善に取り組む。
●本方針の適用範囲
本方針は、富士通グループの全社員に適用されます。また、富士通グループのすべてのお取引先およびパートナーに対しては、富士通グループサステナブル調達指針にて「2. 安全衛生」を制定し、理解と遵守を求めています。
●本方針の承認先
本方針は、CHRO(最高人事責任者)によって承認されました。
(ⅷ)ウェルビーイングの実現
当社グループでは、マテリアリティ(組織が優先して取り組んでいく重要課題)の1つとして「人々のウェルビーイングの向上」を定めています。
当社ではウェルビーイングの定義を「一人ひとりが自らの志を胸に、より良い未来のために挑戦し続けている状態」と定めました。社員一人ひとりのウェルビーイング向上に向けて以下4つのカテゴリにまとめ、カテゴリごとに方針を定めてグローバルで活動を実践しています。

近年、人間の活力、意欲、エネルギーが世界的に低下していることを示唆するHuman Energy Crisisと呼ばれる世界的に静かに進行する異変が問題視されています。OECD(経済協力開発機構)の調査(注5)では、コロナ禍以降、加盟国における主観的ウェルビーイングや社会的つながりが下降リスクの兆候を示しており、将来のウェルビーイングに対する脅威が依然として存在することに言及しています。その一方で当社は今、AI時代を迎え、AI分野における先進的な企業として大きな変革期にあります。
このような時代において、社員一人ひとりが自律的に成長し、内側から湧き上がるような意欲を持って取り組める環境へと変革していくことが不可欠です。そうした背景も踏まえ、2025年度に実施したウェルビーイングサーベイ(注6)の中では「成長」に焦点を当て、新たに「成長意欲」の大きさを成長行動の頻度で問う設問を設けました。分析結果(注7)からは、成長意欲の水準が高い層ほど、ウェルビーイング実感値の平均が高い傾向が明らかになった一方、ウェルビーイング実感値が高くても成長意欲の水準は低、中程度である層も一定数確認できました。これらの結果を受けて、当社では、成長意欲とウェルビーイング実感値の双方が高い状態を目指していくことが重要であると考えています。
(注5)OECD (2024). How’s Life? 2024: Well-being and Resilience in Times of Crisis. OECD Publishing, Paris. https://www.oecd.org/en/publications/how-s-life-2024_90ba854a-en.html
(注6:2025年度ウェルビーイングサーベイ実施概要)
| 目的 | ・社員のウェルビーイング実感値を把握する。 ・サーベイ結果を基に、ウェルビーイング向上のための施策を企画・実行する。 |
| 対象者 | 海外含む全富士通グループ社員に任意調査(有効回答数72,393人※全設問回答者数) |
| 回答期間 | 2025年11月~12月 |
(注7)データ分析範囲は提出会社のみ
(ⅸ)人的資本価値向上とデータ検証
当社は2022年度より、人的資本経営の実践に向けて他社のCHROと協働する「CHRO Roundtable」(注8)を主催しています。人的資本経営の実践において、人材に関する取り組みが企業戦略の実現にどのように関わるかを伝える一貫性のあるストーリー構築の重要性と、その裏づけとなる自社固有のKPIの特定、そして取り組みの推進が不可欠との認識のもと運営しています。2022年度に実施した第1回CHRO Roundtableでは、各社が人的資本経営を検討するにあたっての共通の構想フレームである「人的資本価値向上モデル」を策定し、社外に公開いたしました。各社が人的資本経営を実践するにあたり、自社の施策を当該モデル図に落とし込んで整理していくことで、企業価値向上につながる全体構造を捉えることが可能になります。
2024年から2025年にかけて実施した第3回CHRO Roundtable(注9)では、人的資本経営が事業成長につながる実践フェーズへと移行しつつあるという現状を踏まえ、事業部責任者のパートナーとして、人的な側面から事業戦略の実現をサポートする機能・役割を担うHR Business Partner(以下、「HRBP」)と連携し、データドリブンに組織の課題解決を図る試みに着手しました。本Roundtableでは、HRBPが当該事業部門のDXO(注10)に対して行った実態把握のヒアリングをもとに、「仕事のやりがいや意義、業務の進め方」に関して多くの課題感が存在するということを本質的なテーマ(論点)として特定しました。当該テーマに対し、「Fujitsu Data Intelligence PaaS」を活用した因果分析を実施し、従業員の感じている業務遂行の障壁と密接な関係があることを科学的に特定しました。具体的には、業務の進め方に関する課題が、社員のエンゲージメントにネガティブな影響をもたらす可能性があるとの示唆が得られました。さらに、同分析手法により、業務遂行の障壁の度合いがどのような環境下で影響を受けるのかについて、管理職と非管理職で異なる結果となる示唆を得ました。これらの分析結果とそこから導出される仮説をもとに、HRBPと事業部門が再度深く対話し、組織全体への方針浸透、マネジメント層の意識改革、そして組織の特性や階層ごとのニーズに合わせた具体的な施策の検討に着手しています。
(注8)第1回CHRO Roundtableの概要については、下記リンク先参照
https://info.archives.global.fujitsu/jp/news/2023/04/20.html
(注9)第3回CHRO Roundtableについては、「CHRO Roundtable Report 2025」参照
(下記リンク先よりダウンロード可)
https://global.fujitsu/ja-jp/insight/tl-chro-roundtable-20250728
(注10)DX Officer(各部門のデジタル変革の責任者)
