有価証券報告書-第124期(2023/04/01-2024/03/31)

【提出】
2024/06/24 15:00
【資料】
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【項目】
173項目
②戦略
「多才な人材が、エンゲージメント高く、一人ひとりのウェルビーイングを実現しながら、社会やお客様の課題を解決するためにパーパスを共有して俊敏に集い、社会のいたるところでイノベーションを創出する企業」を実現するため、以下3点を人事部門のグローバル戦略テーマとしています。
“Empowerment”
多様性を享受しオープンかつエンゲージメントの高い、信頼を基にした強固な文化を醸成します。
“Growth” 常にすべての従業員が魅力ある仕事に挑戦し、学び、成長する機会を提供します。
“Impact” 国境や組織の枠組みを越えてコラボレーションし、ビジネスと社会に強いインパクトをもたらす多様性あふれる集団を形成します。
0102010_011.png上記を実現するために、2023年度は主に以下の取り組みを進めました。
(ⅰ)事業戦略と一体となった人材ポートフォリオの策定
事業戦略を実現するためには、その戦略と一体となった人材ポートフォリオの策定が不可欠です。事業戦略に基づいて将来必要とされる人材のロールやスキルを定義するとともに、人数等の規模感を特定し、現有人材とのギャップ分析を行い、そのギャップを充足する計画の立案が必要です。
現在当社においては、事業と人材ポートフォリオの連動に向け、事業、ロール、地域の3軸での可視化・モニタリングプロセスの検討を開始しています。事業のポートフォリオとアラインしたロール別の人員数をマッピングし、成長領域への戦略的な人材の採用・配置や、リスキリング・アップスキリングを含めた人材育成施策を実行するとともに、効率化や自動化を推進することで生産性の向上を目指す分野を可視化していくことを目指しています。今後は、グローバルに統一されたロールフレームワークを用い、各リージョンや各事業の市場特性、人材マーケットの状況、ならびに現有人材ポートフォリオとのギャップを踏まえ、事業戦略実現に求められるロール別要員計画を地域別に策定してまいります。
(ⅱ)人材ポートフォリオの実現に向けた取り組み
・人材獲得(新卒採用、中途採用)の強化と従業員定着率の向上
当社では、2020年より導入しているジョブ型人材マネジメントの考え方に沿って、新卒採用においても、インターンシップの積極展開や、内定時に職種や配属本部を約束する応募コースの拡大により、入社後のミスマッチを防ぐ取り組みを実施しています。
ビジネス戦略実現に向けて、多様な人材をタイムリーに獲得するため、キャリア採用についても引き続き積極的に実施しており、2023年度は1,083名(前年度比約250名増加)を採用しました。
また、2023年度より、グローバル共通のEmployee Value Proposition(EVP)(注1)を展開し、新卒採用と中途採用の訴求力向上に努め、各種オンボーディング施策を実践するなど、採用力強化に加え、新規入社者の定着率向上についても実践しています。
(注)1.当社では、会社が社員に提供できる価値を明文化し、グローバルに統一されたEVPとして5つのPeople Promisesを定めています。①Do the right thing ②Trusted to transform ③Work Your Way ④Global reach, local impact ⑤Achieve together
・人材獲得競争力強化に向けた従業員報酬のあり方
当社が導入しているジョブ型人材マネジメントにおいては、人材獲得・定着に向けた競争力強化の観点から、「労働市場」を第一義として報酬水準を決定すること、すなわち、各人の職務・ポジションに対して、マーケットベンチマークに基づき相応しい報酬水準を設定することが基本的な考え方です。
この考え方に基づき、2023 年 4 月にグローバル企業のベンチマーク結果を踏まえ、従業員の報酬水準の引上げを実施しました。年収ベースで平均7%の引上げを実施し、人材獲得競争力の向上につながっています。
また、中長期的な当社のビジネスへの貢献度が極めて高い領域(注2)における人材獲得競争力の強化を目的として、当該領域に非常に高い専門性を有する従業員を対象に報酬のアドオンを行う「高度専門職系人材処遇制度」を実施しています。
(注)2.サイバーセキュリティ、AI、データサイエンティスト、重点オファリング(SAP, Salesforce, ServiceNow(3S))等を適用領域としています。
・リスキリング、アップスキリングの強化
事業戦略に沿って、必要となるスキルや専門性を有する人材の育成に向けて、リスキリングやアップスキリングに取り組んでいます。
特に、Fujitsu Uvanceの拡大に向けては、「Business Application」領域のソリューションであるSAP、Salseforce、ServiceNowのスキルを有するエンジニアの育成に注力しており、人材育成投資を当該領域に集中的に実施し、ServiceNow資格取得者数は昨年比213名増、Salesforceに関しても361名増と堅調に推移しています。
(ⅲ)ジョブポスティングの拡大とキャリアオーナーシップの実現
当社のジョブ型人材マネジメントにおいては、従業員一人ひとりが自らのキャリアを考え、成長に向けて主体的に行動していく「キャリアオーナーシップ」の考え方を重視しています。
人材配置においては、2020年度より社内公募制度である「ポスティング」を大幅拡大しました。2023年度は7,582名が応募し、2,725名が合格し異動しています。また、2022年度より、応募対象をグローバルに拡大した募集も開始し、2023年度は65名が合格しています。このほか、従業員自身が希望する部署に期間限定で異動し、異なる業務を経験できる、社内インターンシップ制度「Jobチャレ!!」や、所属組織や業務を超えて、スキルや経験を活かして挑戦できる社内副業制度「Assign Me」など、社員が主体的に挑戦できる機会の拡充に取り組んでいます。
人材育成においては、「キャリアオーナーシップ」マインドを醸成し、行動変革を促進するための施策と、自ら主体的に選択して受講できる教育機会の拡充に取り組んでいます。
多様な従業員と互いのキャリアを語り合う「キャリアCafé」は日本で延べ15,551名が参加しています。また、いくつかの質問に答えることで、個人のキャリアオーナーシップの状況を診断できる「キャリアオーナーシップ診断」は2022年度に導入し、既に日本で延べ27,000名の社員が活用しています。
学びの機会の拡充については、教育プラットフォーム「Udemy Business」や 「LinkedIn Learning」を導入し自律的な学びの文化の醸成を促進しています。
加えて、プログラムの提供だけでなく、職場・社員のキャリア形成を支援する専門家の設置や、所属組織以外の先輩社員とキャリアについて対話できるメンタリングの仕組みも2023年度より全社展開を開始し、一人ひとりのチャレンジを後押しする取り組みも進めています。
(ⅳ)グローバル共通の評価制度「Connect」
2021年より順次、当社グループ12万人が自律的に考え、行動を起こしていくためのグローバル共通の人材マネジメントの基盤「Connect」を導入しました。
「Connect」では、当社のパーパスと個人のパーパスを起点にそれらを結び付け、社員一人ひとりの主体的な挑戦を後押しし、組織や個人の成長と社会やお客様に大きなインパクトをもたらすことをねらいとしています。
また、評価制度としては社員一人ひとりがビジョン実現に向けて生み出したインパクトの大きさ(Impact)、Fujitsu Wayの大切にする価値観「挑戦」「信頼」「共感」の体現度(Behaviours)、パーパスやビジョンを基にした自身とチームの成長(Learning&Growth)を評価します。
加えて、評価結果を報酬やアサインメント、スキル向上支援の検討にも活用することで、一貫性のある人材マネジメントを行うことができる仕組みとし、組織と個人の成長を最大化することと、組織や社会、お客様に大きなインパクトをもたらすことに繋げています。
(ⅴ)エンゲージメント向上の取り組み
当社グループの持続的な成長を測る1つの指標として、2020年度より従業員エンゲージメントを非財務指標に設定し、2025年度までにグローバル企業と同等の数値(75)に引き上げることを目標に掲げ、様々な取り組みを推進しています。
社員一人ひとりが、パーパス実現に向けて 活き活きと活躍できるよう、年2回のエンゲージメントサーベイを通じて社員の声を集め、組織の風土を「見える化」し、各組織へフィードバックすることで組織活性化に取り組んでいます。
また、2023年度より、サーベイプラットフォームをグローバルで統一し、より一貫した集計の下、組織・チーム内での内省・メンバーと一緒に行動を起こすこと(Action Taking)の実行を積極的に促しています。
社員の主体的なチャレンジや成長支援を促す対話の場として上司と部下による1on1を引き続き推進しています。2023年度は従業員1人あたり、平均11.7回の1on1を実施しました。1on1の見える化と質向上に向けた取り組みとして、1on1支援サービス「みんなの1on1」や、メンバー一人ひとりの成長を促し、高め合う文化を醸成する「フィードバック研修」を展開しています。
2023年度は、エンゲージメントに対する考え方、サーベイに取り組む意義や目的、回答時のポイントなどを体系化した「Engagement Survey Playbook」の社内公開や、エンゲージメントの結果に全社員で向き合う「Engagement Week」を実施し、一人ひとりの理解促進・深化についても推進しています。
(ⅵ)DE&Iの実現に向けた取り組み
当社グループが目指すDE&Iの姿は「誰もが一体感をもって自分らしく活躍できる、公平でインクルーシブな企業文化」です。これを基盤に多様性を尊重した責任ある事業活動に取り組み、持続可能な社会に向けたイノベーションの創出を目指しています。
DE&Iにおける5つの重点領域(注3)をグローバルで設定し、持続的な発展を可能にする土台である多様な人材の活躍を支援しています。中でもジェンダーへの取り組みは現在の必須課題と位置づけており、非財務指標のKPIの一つとして、リーダーシップレベルにおける女性比率の目標を2025年度で20%と策定しました。2023年度末時点では16%を達成しています。
さらに、一人ひとり異なる価値観や能力を互いに活かし合える職場環境を醸成するため、全社員の意識やマネジメントスタイルの変革を目的とした「マインド改革(注4)」や、ありたい姿に向けた戦略的な採用・育成・登用等の「ポジティブアクション(注5)」を行うとともに、当社が提唱する「Work Life Shift」の下、多様で柔軟な働き方を実現し、社員のキャリアやライフイベントへのサポートを一層充実していく等、様々な取り組みを推進しています。
(注)3.2022年に「Global DE&I Vision & Inclusion Wheel」を刷新し、その中でジェンダー、世代間、LGBTI+、文化・民族、健康・障がい・アクセシビリティの5つを当社の重点領域として設定
4.マインド改革の例:アンコンシャスバイアス研修、インクルーシブリーダー研修、エンゲージメントサーベイの活用
5.ポジティブアクションの例:コミュニティの充実、メンター制度、キャリア支援
(ⅶ)健康経営、労働安全衛生の取り組みについて
当社では、健康に関する最終的な評価指標として「生産性向上」「個人・組織活性化」「人材リテンション強化」に関わる指標を設定し、下記5つの重点施策領域において、それぞれの指標を改善・向上させるためにPDCAサイクルを回しながら取り組んでいます。
1.生活習慣病・がん対策 2. メンタルヘルス対策 3.口腔・歯の健康施策
4.ヘルスリテラシー・健康意識向上、生活習慣の改善 5.労働環境の整備
また、労働安全衛生基本方針として「全ての事業活動において、心とからだの健康と安全を守ることを最優先とする」と定め、安全・快適に働く環境の整備と職場風土づくりをグループ一体となって推進し、社員の健康・安全の確保を図っています。この基本方針に基づき、各リージョンに労働安全衛生施策を展開しています。
(ⅷ)ウェルビーイングの実現に向けた取り組み
当社グループでは、事業活動の源泉である人に焦点を当てたウェルビーイングを、経営における重要課題の1つと位置づけています。
当社ではウェルビーイングの定義を「一人ひとりが、自身の大切にしている価値観に向き合い、仕事と生活を通じて、未来の幸せに日々向かっている」と定めました。一人ひとりのウェルビーイング向上に向けて以下4つのカテゴリにまとめ、各カテゴリごとに方針を定めてグローバルで活動を実践しています。
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ウェルビーイングの2025年度目標を、社員が「自身のウェルビーイング実現に向けて、具体的に行動している」とし、その実現に向けてウェルビーイングの理解・浸透策の展開と、データドリブンな可視化・分析の取り組みを重点的に推進しています。
(ⅸ)人的資本価値向上モデルとデータドリブンによる効果検証
当社では2022年度より、人的資本経営の実践に向けて他社のCHROと協働する「CHRO Roundtable」(注6)を主催しています。人的資本経営の実践においては、人材に関する取り組みが戦略の実現にどのように関わっているのかを伝える一貫性あるストーリーと、その裏づけとなる自社固有のKPIを特定し、取り組みを進めていくことが重要との認識のもと、2022年度のCHRO Roundtableでは、各社が人的資本経営を検討するにあたっての構想フレーム「人的資本価値向上モデル」を策定し、社外に公開しています。
この「人的資本価値向上モデル」では、人材に関する取り組みを、経営戦略・事業戦略の実現に向けて必要不可欠な「成果を生むための取り組み」と、そうした取り組みを持続的に支える「持続的効果を生むための取り組み」に区分し、施策間のつながりと、それぞれの施策がどのように企業価値の向上につながっているかを図式化しています。各社が人的資本経営を実践するにあたり、自社の施策をこのモデル図に落とし込んで整理していくことで、全体構造を捉えて検討できます。
また、CHRO Roundtableではこの人的資本価値向上モデルを活用し、経営戦略と人材に関する取り組みの関係性を定量的に可視化するデータ分析を実践しています。2023年度のCHRO Roundtableでは、データ分析についての議論を深めました(注7)。
(注)6.2022年度のCHRO Roundtableについては、「CHRO Roundtable Report」参照(下記リンク先よりダウンロード可)
https://mkt-japan.global.fujitsu.com/fj/gmu-crd/2022/cxo-roundtable_whitepaper/input.html?_gl=1*1910gbp*_ga*NTg2MjYxNT AyLjE2ODgxODIyOTE.*_ga_GSRCSNXHW8*MTcxNDExMTY0OS45 NC4wLjE3MTQxMTE2NTEuMC4wLjA.
7.2023年度の「CHRO Roundtable Report」は、2024年7月頃を予定
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