有価証券報告書-第87期(平成31年4月1日-令和2年3月31日)

【提出】
2020/06/24 15:00
【資料】
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【項目】
165項目

対処すべき課題

文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものです。
(1) 会社の経営の基本方針
当社グループは、電子部品事業、車載情報機器事業、物流事業を柱とし、各事業が密なる連携によるシナジーを発揮し、グローバルな事業展開を行っています。
目指す姿を「革新的T型企業“ITC101”」としています。コアデバイスを深耕して製品力を高める「縦のI型」と、広範なデバイスや技術をシステムに仕上げる「横のI型」を合わせた革新的な「T型」企業へと進化し、新たな価値を提供することで2024年度までに売上高1兆円、営業利益率10%を目指します。このために、電子部品事業では「部品サプライヤーから機能デバイスパートナーへの進化」を、車載情報機器事業では「内製コアデバイスを持つモビリティライフクリエーターへの進化」を進めていきます。
なお、新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、世界経済、社会生活への影響も不確実さを増しています。このような状況下において、当社グループは各国政府の指導に沿って事業活動地域での感染拡大防止に努めるとともに、従業員の安全を確保し各事業への影響を軽減すべく取り組んでいきます。
電子部品事業は、「人と地球に喜ばれる新たな価値を創造します」という企業理念のもと、人とメディアの快適なコミュニケーションの実現を目指しています。その「ものづくり」の姿勢は、「美しい電子部品を究めます」との言葉に凝縮され、「Right(最適な)」「Unique(独自性)」「Green(環境にやさしい)」を兼ね備えたもの、すなわち洗練された外観のみならず、求められる機能を高い品質で実現し、かつ省エネルギーや省資源等環境への影響も十分に配慮した製品です。その実現には、微細加工技術や金型加工技術、ソフトウェア・IC設計技術、材料加工技術等、多彩な固有技術をベースとした先端のものづくりを常に追究しています。スイッチ、センサなどコンポーネント製品、モジュール製品をはじめ、グリーンデバイスなど新しい製品開発、事業分野にも挑戦しています。
車載情報機器事業では、電子部品事業の車載デバイス・モジュール製品と車載情報機器事業の自動車メーカー向け製品等をひとつにし、これまで両事業が培ってきた技術と、それぞれの得意分野を組み合わせた相乗効果により、今後、人とクルマにかかわる安心・快適・感動を提案するサービス、上質な移動空間の実現に向けた独創的かつ革新的な製品開発に取り組んでいきます。
物流事業では、(株)アルプス物流が電子部品を主な取扱い貨物とし、「ものづくりを支える最適物流を追求し、豊かな社会の実現に貢献します」との企業理念を掲げ、事業領域を「電子部品を核とした総合物流サービス」と定めています。
グループ各社は企業理念のもと連携して、中期・短期の経営計画を推進し、業容の拡大と企業価値の最大化を図っていきます。
(2) 中長期的な経営戦略と目標とする経営指標
2019年4月から2022年3月末まで3年にわたる第1次中期経営計画がスタートしました。目指す姿を「革新的T型企業“ITC101“」、部品サプライヤーから機能デバイスパートナーへの進化、内製コアデバイスを持つモビリティライフクリエーターへの進化とし、2024年度までに売上高1兆円、営業利益率10%を達成する目標を掲げています。
電子部品事業では、HMI、センサ、コネクティビティの三つのコア技術の融合と、これにソフトを内包させた機能デバイスへの進化を目指します。
車載情報機器事業では、車の利用スタイルが変化する中、カーライフ全体を考えた提案型のシステム製品へ、更にそれらに電子部品事業で培ったコアデバイスをあわせた高付加価値製品の開発を目指します。
物流事業では、2019年度より3年にわたる第4次中期経営計画をスタートしました。中期基本方針を「進化する『最適物流』をより多くのお客様に」と定め、「連結売上高1,200億円の達成」と「企業クオリティの向上」に取り組んでいきます。
(3) 会社の経営環境と対処すべき課題
当社グループを取り巻く環境は、不確実性が強まる中で先行きを見通すことが大変困難ですが、エレクトロニクス製品・自動車の需要は、先進国における高機能・多機能化に加えて、中長期的には新興国における需要の増加が牽引役となり、今後も拡大していくものと期待されます。
電子部品事業では、よりエレクトロニクスの重要性が高まる自動車市場、成長は鈍化したものの高機能部品の需要は高いスマートフォン市場、また新たにVR市場が立ち上がりを見せるなど、今後も拡大が見込まれます。当社では、HMI、センサ、コネクティビティの三つの技術領域から優位性の高い製品を継続して生み出し、これらニーズに応えていきます。開発スピードアップ、生産性並びに品質の向上に向けて技術・営業・製造部門が一体となった取り組みを更に強化し、Number1製品を創出していきます。
また、お客様がグローバル各地域に広がり、製品によって短期間での激しい需要増減もある中で、より強固でフレキシブルな生産体制の整備・確立が急務であり、国内外生産拠点の整備を進めるとともに、間接部門を含めた生産性向上により、収益性の強化にもつなげていきます。更に、EHII市場では幅広く、さまざまなビジネス形態がある中で、独自の製品開発と他社との協業や提携などによって事業基盤の確立に取り組みます。
車載情報機器事業では、現在の自動車産業は100年に1度とも言われる大きな変革の時代に入っており、特にCASEと呼ばれる4つの領域においては、インターネットへの常時接続機能の搭載、自動運転、自動車シェアリングサービス、ハイブリッド車や電気自動車の電動化等、他の業界に類を見ないほどの大きな変化が生じています。また、IT企業による自動車業界への進出に代表されるように、自動車業界の枠組みを超えた合従連衡の動きは従来よりも格段に加速しています。今後もCASE領域への経営資源の集中は自動車業界全体のトレンドであり続け、HMI等のサプライヤーは、単なるモジュール製品の開発だけではなく、自動車全体におけるトータルシステムソリューションの提案まで行うことが期待されています。
このように目まぐるしく変化する車載情報機器の市場環境を踏まえ、電子部品事業と当事業の強みを融合させた新製品の開発及び市場投入までの期間短縮は喫緊の課題となっています。経営統合によるシナジーを創出することで、これらの課題に速やかに対処し顧客の期待に応えていきます。
物流事業では、主要顧客である電子部品業界は、さまざまな機器や自動車の電子化の進展、そして新興国需要の拡大によって、今後も成長が予想されています。一方で、商品やマーケットの変化に対応した最適地生産や生販合理化が進んでおり、顧客の物流改革ニーズは高度化かつ多様化しています。このような中、顧客ごとの「最適物流」を追求し、より多くの顧客に提供していくことで、更なるグローバル成長を図ります。
また、その他の事業についても、グループ外部に対する拡販活動の強化などにより、収益への貢献を果たしていきます。