訂正有価証券報告書-第82期(平成29年4月1日-平成30年3月31日)

【提出】
2019/06/21 15:27
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【項目】
57項目

事業等のリスク

有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、投資家の判断に重要な影響を及ぼす可能性があると認識している主要なリスクは以下のとおりであります。ただし、以下に記載された項目以外のリスクが生じた場合においても、当社グループの業績及び財務状況に重大な影響を及ぼす可能性があります。
なお、文中における将来に関する事項は、有価証券報告書提出日(2018年6月28日)現在入手し得る情報に基づいて当社グループが判断したものであります。
(1) 当社製品の需要変動について
当社グループは、各種エレクトロニクス製品を生産する電子機器メーカーに対して、電子部品を供給することを主たる事業としております。
エレクトロニクス製品の需要動向は、世界の経済情勢に大きく左右されます。従って、経済情勢の急激な変化は、当社の業績に大きな影響を及ぼします。加えて、特に成長性の高いエレクトロニクス製品に使用される電子部品については、実態とは乖離する部品需要が発生することもあり、その場合、当社グループは需要変動の影響をさらに増幅して受けることになります。
当社グループでは、世界経済の動向を注視し、中長期的な市場予測に基づき需要の増加に対応して生産設備と必要人員を迅速に手配し生産能力を拡充すること、及び短期的には需要の変動に合わせて生産能力や稼働日数を調整することなどにより、需要の急激な増加への対応と余剰資産の発生を抑制するよう対策を講じております。
しかし、世界経済やエレクトロニクス産業全般の急激な変化により当社グループの製品の需要が予測を大幅に下回る事態となった場合には、手配した生産設備、人員、資材、製品等が余剰となり、当社グループの業績や財務状況の悪化をもたらす可能性があります。一方、想定を超える需要が急激に発生した場合には、顧客の要求に応じられず販売機会を逃し、そのことが将来の競争力低下に繋がる可能性があります。
(2) 製品の価格競争及び原材料等の価格と調達について
電子部品の価格は、厳しい値下げ要請や同業者間の熾烈な競争により、恒常的に低下する傾向にあります。さらに一部の製品については、東アジア地域の電子部品メーカーが低価格品を販売していることもあり、価格競争はさらに激化する傾向にあります。
これに対して当社グループは、継続的かつ積極的なコストダウンを推進し、売上の拡大や収益性の向上に努めております。しかし、価格競争の一層の激化により、価格下落を補うコストダウンや売上・生産の拡大が必ずしも実現できず、当社グループの業績及び財務状況に重大な影響を及ぼす可能性があります。
また、原材料等の仕入価格上昇にともなうコストアップや需給逼迫、自然災害に起因する原材料等の調達難による生産への影響があります。これに対して、当社グループは重要資材について政策的な在庫の確保、仕入先の分散化などを実施しておりますが、これらの対策を超えた急激な原材料価格の高騰や原材料供給の悪化により、当社グループの生産やコストに重大な影響を及ぼす可能性があります。
(3) 新技術・製品の開発について
当社グループが属する電子部品業界は、技術革新のスピードが加速し、製品のライフサイクルが短期化しており、将来にわたって当社グループの売上高を維持・拡大していくためには、革新的な新製品の開発を適切なタイミングで実施していくことが重要となっております。
当社グループでは、新技術や新製品開発に必要な研究開発投資を継続的かつ積極的に行っており、売上高に占める研究開発費の割合は電子部品業界の中でも比較的高い水準にあります。
研究開発のテーマについては、将来の市場、製品及び技術動向の予測に基づいて選定し、研究開発活動の各段階において研究開発成果の評価を行うなど、その実効性と効率性の向上に努めております。
しかし、市場、製品動向の変化や当社グループの技術を代替しうる技術革新が予測を超えて起こった場合には、期待した製品需要の減退、開発期間の長期化や開発費用の増大を招き、将来の企業経営に重大な影響を及ぼす可能性があります。また、研究開発から量産に至る過程において、技術難度の高さから費用が増大し、当社グループの業績及び財務状況に重大な影響を及ぼす可能性があります。
(4) 海外市場での事業展開について
海外での事業展開の成果は、当該国・地域の政情、為替、税制等の法制度、金融・輸出入に関する諸規制、社会資本の整備状況、その他の地域的特殊性、及びこれらの諸要因の急激な変化の影響を受ける傾向にあります。
当社グループは、世界各国で、販売や生産などの事業活動を行っておりますが、海外展開にあたっては、販売拠点は世界の主要市場を網羅できる地域に、生産拠点は採算性のある規模、周辺市場の拡大予測、生産コスト等から総合的に判断して配置することとしております。また、新興国への進出に際しては、そのリスクを慎重に検討、評価した上で判断しております。
特に、近年の中国を中心とした新興国市場拡大に伴い、新興国への生産・販売拠点設置と規模の拡大を積極的に行っており、新興国における政治・経済・社会的要因の急激な変化が起きた場合には、当社グループの業績及び財務状況に重大な影響を及ぼす可能性があります。
(5) M&A、業務提携、戦略的投資について
当社グループは、新技術の獲得、新たな事業領域への進出、既存事業の競争力強化などを目的に、必要に応じてM&A、業務提携、戦略的投資を実施しております。
当社グループは、このような他社との協業に際しては、対象となる市場や事業並びに相手先企業の経営状況などのリスク分析を行った上で判断しております。
しかし、市場環境や競争環境の著しい変化、提携当事者間の利害の不一致、買収した企業や事業の顧客基盤の変化または人材の流出などにより、計画通り事業を展開することができず、投下資金の未回収や追加的な費用が発生し、当社グループの業績及び財務状況に重大な影響を及ぼす可能性があります。
(6) 顧客の信用リスクについて
当社グループは、世界各地の電子機器メーカーに対して電子部品を供給しておりますが、エレクトロニクス市場は事業環境の変化が激しいことから、当社グループが売上債権を有する顧客に財務上重要な問題が発生する可能性があります。
当社グループの売上は、大手電子機器メーカーを中心に多数の顧客に分散しており、また取引条件は顧客に対する継続的な信用リスク評価を勘案して設定するよう努めております。
しかし、エレクトロニクス製品の大幅な需要変動、エレクトロニクス業界での企業再編や技術革新などにより、当社グループの重要な顧客の事業環境が急激に悪化した場合には、売上債権の一部が回収不能となることも想定され、そのことが当社グループの業績及び財務状況に重大な影響を及ぼす可能性があります。
(7) 為替変動について
当社グループの海外売上高比率は約92%と高く、またグローバルに事業を展開していることから、生産・販売等の事業活動が為替変動の影響を大きく受けます。また、為替変動は当社グループの外貨建取引から発生する収益・費用及び資産・負債の円換算額を変動させ、業績及び財務状況に影響を及ぼします。
当社グループでは、為替変動リスクを軽減させるため、海外での販売を円建又は為替の変動を販売価格に反映させるよう努めており、また為替変動による損益への影響をヘッジする目的で外貨建取引金額の一定比率に対して為替予約契約を締結しております。
しかし、これらの対策を講じても為替変動による影響を完全に排除することは困難であり、米ドルなど他の通貨に対して、円高が急激に進んだり長期に及んだ場合には、当社グループの業績及び財務状況に重大な影響を及ぼす可能性があります。
(8) 資金の運用について
当社グループでは、事業への投資の原資として運用資金を保有しているため、投機目的の運用は行わず高格付の公社債、信用リスクが小さいと考えられる銀行への預金など、安全性の高い金融商品に分散投資を行っております。
しかし、債券市場や株式市場など金融市場の急激な変化、又は保有する預金や債券の信用リスクの増大等に伴い、当社グループが保有する金融資産に損失が発生する可能性があります。
(9) 品質問題について
当社グループは、各種エレクトロニクス製品を生産する電子機器メーカーに対して電子部品を供給しておりますが、顧客において当社グループの製品の品質に起因する事故、市場回収、生産停止等が生じた場合、顧客の損失に対する賠償責任を問われる可能性があります。
当社グループは、製品の生産にあたり、設計審査・内部品質監査・工程管理・各種評価試験・仕入先など協力者への監査や指導・M&A先や業務提携先とのしくみの融合等を通じ、開発段階から出荷に至る全ての段階で品質の作り込みを行う品質保証体制整備に努めております。
しかし、現時点での技術、管理レベルを超える事故が発生する可能性は皆無ではなく、品質に関わる重大な問題が起こった場合には、多額の損害賠償金の支払や売上の減少等により、当社グループの業績及び財務状況に重大な影響を及ぼす可能性があります。
(10) 知的財産権について
当社グループは、技術革新の著しい電子部品業界に属していることから、知的財産権は重要な経営資源の一つであり、知的財産権の保護、知的財産権にからむ紛争の回避は重要な経営課題であります。
当社グループでは、戦略的知財活動として事業に役立つ強い特許網を構築する全社的な活動をしております。
しかし、当社グループの知的財産権が、第三者により無効とされる可能性、特定の地域では十分な保護が得られない可能性や知的財産権の対象が模倣される可能性もあります。このように知的財産権によって完全に保護されない場合、もしくは、知的財産に関わるノウハウが漏洩した場合は、当社グループの事業活動に重大な影響を及ぼす可能性があります。
また、結果として第三者の特許を侵害するに至った場合や、その他知的財産権に係る紛争が発生した場合には、当社グループ製品の生産・販売が制約されたり、損害賠償金等の支払が発生し、当社グループの業績及び財務状況に重大な影響を及ぼす可能性があります。
(11) 退職給付債務について
当社グループの従業員に係る退職給付費用及び退職給付債務は、割引率等の数理計算における前提条件や年金資産の長期運用利回りに基づいて算出されておりますが、実際の結果が前提条件と異なることによって発生する数理計算上の差異は、一定の年数による定額法により均等償却されることになるため、一般的に将来において処理される費用及び計上される債務に影響を及ぼします。
当社グループは、市場金利に連動して一定の範囲で給付水準が変動する確定給付企業年金制度を設けており、金利変動による当社グループの退職給付費用及び退職給付債務への影響の低減を図っております。
しかし、今後の市場金利や年金資産の利回りの変動によっては、退職給付債務及び積立不足額の増加が予想され、当社グループの業績及び財務状況に重大な影響を及ぼす可能性があります。
(12) 人材の採用・確保について
当社グループは、材料から商品までの一貫生産を行うとともに、主要な生産設備を内作するなど技術の独自性を追求しておりますが、技術の高度化、技術革新が加速する今日、多様な技術分野において優れた専門性を有した人材の必要性がますます高まっております。
一方、各産業分野における技術革新の進展、とりわけエレクトロニクス分野の広がりにより、当社グループが必要とする多様な技術領域の人材ニーズが産業界全体で増大しており、優秀な人材の獲得は競争状態となっております。
これに対して当社グループでは、計画的な新卒採用に加え、ニーズに基づいた過年度卒の通年採用を実施し人材を確保するとともに、実力主義による評価・昇進・昇格制度、能力開発を支援する教育制度の拡充、適性を重視した配置など社員のモチベーションを高める諸施策により、社員の定着・育成に努めております。
しかし、雇用環境の変化などにより当社が求める人材の確保やその定着・育成が計画通りに進まなかった場合には、当社グループの将来の成長に重大な影響を及ぼす可能性があります。
(13) 公的規制とコンプライアンスについて
当社グループは、国内及び諸外国・地域において、法規制や政府の許認可など、様々な公的規制の適用を受けて事業を行っております。これらの公的規制に違反した場合、監督官庁による処分、訴訟の提起、さらには事業活動の停止に至るリスクや企業ブランド価値の毀損、社会的信用の失墜等のリスクがあります。
当社グループでは、公的規制の対象領域ごとに主管する部門を決め、公的規制に対応した社内ルールを定めるなど、未然に違反を防止するための方策を講じ、適時にモニタリングを実施しております。
さらに、これらの取組みに加え、当社ではコンプライアンス推進委員会を設け、法令遵守のみならず、役員・従業員が共有すべき倫理観、遵守すべき倫理規範等を「企業倫理規範・行動指針」として制定し、当社グループにおける行動指針の遵守並びに法令違反等の問題発生を全社的に予防するとともに、コンプライアンスの実効性を担保するため、コンプライアンス上の問題を報告する通報窓口を社内・社外に設けております。
しかし、グローバルに事業を展開するなかで、国や地域において、公的規制の新設・強化や想定外の適用等により、結果として当社グループが公的規制に抵触することになった場合には、事業活動に制約が生じたり、公的規制を遵守するための費用が増加するなど、当社グループの業績及び財務状況に重大な影響を及ぼす可能性があります。
(14) 情報セキュリティについて
当社グループでは、社内情報処理の多くをIT化しており、入手した取引情報や個人情報の大半を電子データとして蓄積しております。電子データは瞬時にコピーしたり改ざんすることが技術的に可能であり、蓄積した電子データが不正アクセスや不正使用により外部へ流出したり、検知できないまま改ざんされる恐れがあります。
当社グループでは、このような不正アクセスや不正使用に対処するため、情報セキュリティ統括責任者を定め、社内情報システムへの外部からの侵入防止策、データ携帯時の暗号化、インターネットメールの全件保管等の対策を講じるとともに、従業員への啓蒙教育を実施しております。また、パソコンの操作ログ記録や文書の暗号化、ホームページ等の社外向けWebサイトの情報漏えい防止・改ざん防止等の施策を展開しセキュリティ強化に努めています。
しかし、想定した防御レベルを超える技術による不正アクセスや、予期せぬ不正使用があった場合には、電子データが外部へ流出したり検知できないまま改ざんされるリスクが残り、当社グループの社会的信用に影響を及ぼすのみならず、その対応のために多額の費用負担が発生し、当社グループの業績及び財務状況に重大な影響を及ぼす可能性があります。
(15) 災害・感染症等による事業活動の停止について
当社グループは、事業所所在地における災害の発生、感染症の流行等により、操業を停止する可能性があります。
当社グループでは、地震災害による主要製品の操業停止の影響を最小限にするため、事業継続計画(BCP)を策定しており、生産拠点を国内外に分散するとともに、国内全拠点において一定規模の地震災害を想定して建物・生産機器等の耐震性・安全性確保、情報システムのバックアップ体制、在庫による供給維持などの施策を講じております。
また、新型インフルエンザのパンデミックに備えて、グループ全体の基本計画を定め、WHO(世界保健機関)の警戒フェーズに対応した行動計画を策定しております。
しかし、想定を超える大規模災害の発生や感染症の流行、原子力発電所の事故等による、長期にわたる製造ラインや情報システムの機能低下、世界レベルでの経済活動の停滞に伴う大幅な事業活動の縮小や停止が、当社グループの業績及び財務状況に重大な影響を及ぼす可能性があります。
(16) 環境規制について
当社グループは、国内外において地球温暖化防止、水質汚濁、大気汚染、土壌・地下水汚染、廃棄物処理、製品に含有する化学物質などに関する様々な環境法令の規制を受けております。
当社グループでは、これら法令を遵守し、事業活動を進めておりますが、地球環境保全の観点から、今後ますます規制が強化され、これに適応するための費用の増大が予想されます。
特に地球温暖化防止に関して、当事業年度の当社グループにおける温室効果ガス排出量は143万t-CO2を見込んでおりますが、パリ協定により国際的な枠組みが強化される中でさらなる温室効果ガス排出量の抑制が求められています。このため当社グループではサプライチェーンとの協働や、SBT(Science Based Targets)に沿った温室効果ガス排出量の削減を推進するため、取締役を委員長とする温暖化防止委員会を組織し、当社グループ全体で対策を進めています。
ただし、環境規制への適応が極めて困難な場合、想定を超える費用の発生や事業からの部分撤退、当社グループへの社会的信頼が損なわれる可能性も想定され、当社グループの業績及び財務状況に重大な影響を及ぼす可能性があります。