有価証券報告書-第72期(平成29年4月1日-平成30年3月31日)

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2018/06/26 15:40
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(1) 経営成績等の状況の概要
当連結会計年度における当社グループ(当社、当連結子会社及び持分法適用会社)の経営成績等の状況の概要は次のとおりであります。
① 経営成績の状況
当連結会計年度のグローバル経済は、先進国、新興国ともに成長基調を維持しました。米国では安定した雇用環境に支えられ個人消費が堅調で、企業の景況感も法人減税の実施もあり良好に推移しました。欧州では政治・金融面の不安定要素を抱えつつも、成長基調が続きました。また新興国では、中国経済の減速傾向が見られるものの、全体では成長基調が続きました。日本でも良好な海外経済を背景として輸出も増加傾向に向かう等、企業業績、個人消費ともに堅調で、緩やかながらも長期にわたる経済成長が続きました。しかしながら北朝鮮や中東情勢といった地政学的リスクの存在に加え、米国による保護主義的な通商政策の台頭もあり、為替変動や原材料の調達への影響、消費マインドの低下など、今後の経済環境への影響が懸念される状況となりました。
このような状況のもと当連結会計年度の売上高は、エステ家電及びその他コンシューマー向け製品全般の販売が低調に推移したことに加え、磁気テープの販売を縮小させた影響がありましたが、リチウムイオン電池が大幅な増収となったことに加え、自動車市場向けの光学部品やマイクロ電池、粘着テープの販売が堅調に推移しました。また平成29年5月より新たに加わった半導体関連受託開発・製造事業による増収もあり、前年同期比9.7%(13,082百万円)増(以下の比較はこれに同じ)の148,198百万円となりました。利益面では、プロジェクターの減益とエステ家電の販売不振などによる減益がありましたが、リチウムイオン電池の売上拡大による増益と新規事業の効果により、営業利益は16.9%(1,281百万円)増の8,848百万円、経常利益は16.0%(1,180百万円)増の8,567百万円、親会社株主に帰属する当期純利益は24.5%(1,403百万円)増の7,127百万円となりました。
当連結会計年度の対米ドルの平均円レートは111円となりました。
セグメント別の経営成績は、次のとおりです。
(エネルギー)
民生用リチウムイオン電池の増収が大きく寄与したことに加え、自動車市場向けコイン形リチウム電池、スマートメーター向け筒形リチウム電池も増収となるなど、エネルギー全体の売上高は28.5%(9,978百万円)増の44,970百万円となりました。営業利益は、リチウムイオン電池の販売をスマートフォン向けから他用途向けに転換したことによる収益改善が奏功し、173.7%(3,528百万円)増の5,559百万円となりました。
(産業用部材料)
新規事業である半導体関連受託開発・製造事業による純増、自動車市場向け光学部品と粘着テープによる増収により、磁気テープの販売を縮小させたことによる減収をカバーし、産業用部材料全体の売上高は16.7%(7,148百万円)増の49,940百万円となりました。営業利益は、新規事業による増益がありましたが、粘着テープにおいて原材料価格の上昇により減益となったことなどにより2.6%(76百万円)減の2,889百万円となりました。
(電器・コンシューマー)
エステ家電及びその他コンシューマー向け製品全般で減収となり、電器・コンシューマー全体の売上高は7.1%(4,044百万円)減の53,288百万円となりました。営業利益は、エステ家電の減収に伴う減益と、プロジェクターの市場価格下落による減益により、84.4%(2,171百万円)減の400百万円となりました。
地域ごとの売上高は、次のとおりであります。
(日本)
エステ家電及びその他コンシューマー製品全般、磁気テープが減収となったものの、リチウムイオン電池の増収、半導体関連受託開発・製造事業が純増となったことから、売上高は29.5%増の79,901百万円となりました。
(米国)
スマートメーター向け筒形リチウム電池、自動車市場向け光学部品が増収となったものの、プロジェクターやコンシューマー製品全般で減収となり、売上高は8.5%減の12,844百万円となりました。
(欧州)
自動車市場向けコイン型リチウム電池やプロジェクターが増収となったものの、磁気テープ及びコンシューマー向け製品全般で減収となり、売上高は1.4%減の12,498百万円となりました。
(アジア他)
自動車向け光学部品やコイン形リチウム電池、プロジェクターが増収となったものの、スマートフォン向けの民生用リチウム電池が減収となり、売上高は8.1%減の42,955百万円となりました。
② 生産、受注及び販売の状況
a 生産実績
当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称生産高(百万円)前年同期比(%)
エネルギー47,887+34.9
産業用部材料51,123+20.3
電器・コンシューマー54,098△4.2
合計153,108+13.9

(注) 1.金額は、販売価格によっております。
2.上記の金額には、消費税等は含まれておりません。
3.生産実績には、完成品仕入にかかわる生産実績も含めており、仕入実績は次のとおりであります。
セグメントの名称仕入高(百万円)前年同期比(%)
エネルギー592+75.1
産業用部材料3,730△9.8
電器・コンシューマー15,497△3.6
合計19,819△3.6

(注) 1.金額は、仕入価格によっております。
2.上記の金額には、消費税等は含まれておりません。
b 受注実績
需要予測に基づく見込生産を行っているため、該当事項はありません。
c 販売実績
当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称販売高(百万円)前年同期比(%)
エネルギー44,970+28.5
産業用部材料49,940+16.7
電器・コンシューマー53,288△7.1
合計148,198+9.7

(注) 1.上記の金額には、消費税等は含まれておりません。
2.主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合
相手先前連結会計年度当連結会計年度
金額(百万円)割合(%)金額(百万円)割合(%)
任天堂㈱18,34212.4

(注) 前連結会計年度において、連結損益計算書の売上高の10%以上を占める相手先はありません。
(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。なお、文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
① 重要な会計方針及び見積り
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。この連結財務諸表の作成にあたって、以下の重要な会計方針が、当社グループの重要な判断と見積りに大きな影響を及ぼすと考えております。
a 貸倒引当金
当社グループは、売上債権、貸付金等の貸倒損失に備えるため、一般債権については貸倒実績率により、貸倒懸念債権等特定の債権については個別に回収可能性を検討し、回収不能見込額を計上しております。
b たな卸資産
当社グループは、たな卸資産の市場状況に基づく時価の見積額が原価を下回った場合に評価損を計上しております。
c 繰延税金資産
当社グループは、繰延税金資産について、回収可能性が高いと考えられる金額へ減額するために評価性引当額を計上しております。評価性引当額の必要性を評価するにあたっては、将来の課税所得を合理的に見積って検討しております。
当社及び国内連結子会社は、翌連結会計年度から連結納税制度を適用することとなったため、当連結会計年度末から連結納税制度の適用を前提とした会計処理を行っており、繰延税金資産の回収可能性の判断については、連結納税グループ全体の課税所得の見積りにより判断しております。
d 退職給付に係る負債
退職給付費用及び債務は、数理計算上で設定される前提条件に基づいて算出しております。これらの前提条件には、割引率、将来の報酬水準、退職率、直近の統計数値に基づいて算出される死亡率及び年金資産の長期期待運用収益率などが含まれます。当社の年金制度においては、割引率は優良社債の市場利回りを退職給付の平均支給年数で調整して算出しております。
長期期待運用収益率は、年金資産の現在及び予想される年金資産の配分と、年金資産を構成する多様な資産からの現在及び将来期待される長期の収益率を考慮しております。実際の結果が前提条件と異なる場合、または前提条件が変更された場合、その影響は累積され、将来にわたって規則的に退職給付費用の一部として計上されます。
e 減損損失
当社グループは、主に管理会計上の区分を考慮して資産グループを決定し、将来キャッシュ・フローの回収額を見積った結果、十分な将来キャッシュ・フローが見込めない事業用資産、将来の使用が見込まれていない遊休資産等について回収可能価額まで減額し、特別損失に計上しております。
② 当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
a 財政状態の分析
(a) 資産
総資産は、前連結会計年度末比6.9%増(以下の比較はこれに同じ)の170,523百万円となりました。このうち流動資産は、主に現金及び預金が減少した一方、売上高増加に伴う受取手形及び売掛金並びにたな卸資産の増加により、3.2%増の100,300百万円になり、総資産に占める割合は前連結会計年度の61.0%から58.8%となりました。一方、固定資産は、投資有価証券の増加及びマクセルシステムテック株式会社の株式取得によるのれんが発生したことにより12.8%増の70,223百万円で、総資産に占める割合は前連結会計年度の39.0%から41.2%となりました。
セグメントごとの資産は、次のとおりであります。
(エネルギー)
エネルギーの資産は、11.1%増の35,226百万円となりました。このうち流動資産は、主に売上高増加に伴うたな卸資産の増加により、6.5%増の18,898百万円になり、総資産に占める割合は前連結会計年度の56.0%から53.6%となりました。一方、固定資産は、リチウムイオン電池及びマイクロ電池の増産対応による設備投資を実施したことにより17.0%増の16,328百万円になり、総資産に占める割合は前連結会計年度の44.0%から46.4%となりました。
(産業用部材料)
産業用部材料の資産は、22.7%増の48,760百万円となりました。このうち流動資産は、主にマクセルシステムテック株式会社の株式取得による増加により23.4%増の22,390百万円になり、総資産に占める割合は前連結会計年度の45.7%から45.9%となりました。一方、固定資産は、主にマクセルシステムテック株式会社の株式取得による増加により22.2%増の26,370百万円になり、総資産に占める割合は前連結会計年度の54.3%から54.1%となりました。
(電池・コンシューマー)
電器・コンシューマーの資産は、0.5%増の33,346百万円となりました。このうち流動資産は、主に売上高減少に伴う受取手形及び売掛金の減少により0.5%減の20,334百万円になり、総資産に占める割合は前連結会計年度の61.6%から61.0%となりました。一方、固定資産は、既存設備の更新及び合理化投資により2.1%増の13,012百万円になり、総資産に占める割合は前連結会計年度の38.4%から39.0%となりました。
(その他)
当社グループの事業拡大のための成長投資を進めた結果、総資産は3.0%減の53,191百万円となりました。
(b) 負債
負債は、15.5%増の47,729百万円となりました。このうち流動負債は、主に売上高増加に伴う支払手形及び買掛金の増加により20.8%増の36,351百万円となりました。これによって流動比率は2.8倍に、また流動資産との差額である手持ち資金は63,949百万円となりました。一方、固定負債は、1.4%増の11,378百万円となりました。
(c) 純資産
純資産は、3.9%増の122,794百万円となりました。主に配当金の支払いが1,902百万円あったものの、親会社株主に帰属する当期純利益を7,127百万円計上したことによるものです。また、自己資本比率は73.0%から71.0%となりました。
b 資本の財源及び資金の流動性に係る情報
営業活動によるキャッシュ・フローは、前連結会計年度より4,174百万円減少の7,797百万円の収入となりました。これは、税金等調整前当期純利益が前連結会計年度より1,338百万円増加となったこと、および、売上債権の増減額が前連結会計年度は3,617百万円の減少であったのに対し、当連結会計年度は3,519百万円増加したこと、たな卸資産の増減額が前連結会計年度は501百万円の減少に対し、当連結会計年度は3,599百万円増加したことによる資金の減少と、仕入債務の増減額が前連結会計年度は719百万円の減少であったのに対し、当連結会計年度は5,349百万円増加したことによる資金の増加によるものです。
投資活動によるキャッシュ・フローは前連結会計年度より6,578百万円減少の8,920百万円の支出となりました。これは、有形固定資産の売却による収入が前連結会計年度より5,222百万円減少したこと、連結の範囲の変更を伴う子会社株式の取得による支出が4,940百万円となったことにより資金が減少したこと、定期預金の払戻による収入が3,008百万円増加したことによる資金の増加によるものです。
財務活動によるキャッシュ・フローは前連結会計年度より96百万円減少の2,127百万円の支出となりました。これは、主にリース債務の返済による支出が前連結会計年度に対し101百万円増加したことによります。
これらのキャッシュ・フローに現金及び現金同等物に係る換算差額と、現金及び現金同等物の期首残高を合わせた当連結会計年度末の現金及び現金同等物は、前連結会計年度末よりも3,362百万円減少し45,539百万円となりました。
営業活動によるキャッシュ・フローと投資活動によるキャッシュ・フローを合計したフリーキャッシュ・フローは、前連結会計年度の9,629百万円から、当連結会計年度は△1,123百万円へと減少しました。
当社グループは、資金の流動性を考慮して、資金運用については短期的な預金等とし、一時的な余資は安全性の高い金融資産で運用する方針であります。
当社グループの運転資金需要は、製品製造のための材料及び部品の購入のほか、加工費、販売費及び一般管理費等の営業費用によるものです。
当社グループの設備投資等の需要は成長が期待できる製品分野及び研究開発分野のほか、省力化、合理化及び製品の信頼性向上のための投資によるものです。
当社グループは、事業拡大のための成長投資を進めております。
これらの資金需要に対しては基本的に自己資金にて賄っております。
c 経営成績の分析
(a) 売上高
売上高は、民生用リチウムイオン電池の大幅な増収及び新規事業である半導体関連受託開発・製造事業による増収、また円安による為替の影響などにより前連結会計年度に対し、9.7%増の148,198百万円となりました。なお、為替レートは、前連結会計年度1ドル=108円、当連結会計年度1ドル=111円であります。
(b) 売上原価、販売費及び一般管理費
売上原価は、売上高の増加が影響し、8.6%増の113,870百万円となりました。売上高に対する原価率は、前連結会計年度の77.6%から76.8%となりました。その結果、売上総利益は13.5%増の34,328百万円となり、売上高総利益率は、前連結会計年度の22.4%から23.2%となりました。また、販売費及び一般管理費は、主にのれん償却額及び顧客関連資産の減価償却費の計上により、12.4%増の25,480百万円となりました。
売上原価と販売費及び一般管理費に含まれる研究開発費は、主に半導体関連事業の研究開発が増加したことにより7.5%増の10,592百万円となりました。なお、売上高に対する研究開発費の比率は前連結会計年度の7.3%から7.1%となりました。
(c) 営業利益
営業利益は、製品構成の改善及び固定費削減などの原価低減に努めた結果、16.9%増の8,848百万円となりました。
(d) 営業外収益(費用)
営業外収益(費用)は、持分法による投資損失が投資利益に転じたものの為替差損が増加したことから、前連結会計年度の180百万円の費用(純額)から、281百万円の費用(純額)となりました。受取利息から支払利息を減じた純額は、前連結会計年度の148百万円の収益(純額)に対し、181百万円の収益(純額)へと増加しました。
(e) 経常利益
経常利益は、為替の影響があったものの製品構成の改善及び固定費削減などの原価低減に努めた結果、16.0%増の8,567百万円となりました。
(f) 特別利益(損失)
特別利益(損失)は、減損損失の計上や、大阪事業所の土地売却などの固定資産売却益の計上が影響した前連結会計年度の684百万円の損失(純額)から、当連結会計年度は当社グループの社名変更による404百万円の損失があったものの、特許関連収入950百万円の利益があったことから、526百万円の損失(純額)となりました。
(g) 税金等調整前当期純利益
税金等調整前当期純利益は、20.0%増の8,041百万円となりました。
(h) 法人税等
法人税等は、課税所得が増加し、0.1%増の868百万円となりました。非支配株主に帰属する当期純利益は58.9%減の46百万円となりました。
(i) 親会社株主に帰属する当期純利益
親会社株主に帰属する当期純利益は、24.5%増の7,127百万円となりました。1株当たり当期純利益は、前連結会計年度の108.32円に対し134.88円となりました。
d 経営戦略の現状と見通し
当社グループは、経営ビジョンである「スマートライフをサポート 人のまわりにやすらぎと潤い」の下、当社グループの強みである「グローバル展開」、「モノづくり力」、「アナログコア技術」を融合させることにより、成長3分野と位置付ける自動車、住生活・インフラ、健康・理美容の各分野のグローバルな成長に向けた諸施策を進めるとともに、事業ポートフォリオの改革による収益改善と新市場開拓に向けた諸施策を実行してまいりました。さらに、今後の情勢変化に機敏に対応できる経営体質を構築するため、平成29年10月1日を効力発生日として、持株会社体制へ移行しております。また、平成30年度(2018年度)から平成32年度(2020年度)までの3年間の新中期経営計画を策定し、当連結会計年度までの前中期経営計画期間で達成が不十分であった事業規模の拡大を加速するとともに、収益力と資本効率性の向上に努め、平成32年度(2020年度)で売上高2,000億円、ROE8%以上の達成をめざします。