有価証券報告書-第78期(平成31年4月1日-令和2年3月31日)

【提出】
2020/06/26 14:58
【資料】
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【項目】
82項目

対処すべき課題

文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社が判断したものであります。
※本中長期経営方針において当社の将来の業績指標の予想に用いた数値の為替前提は、1米ドル=110円,1ユーロ=135円です。
(1)会社の経営の基本方針
当社は、「先端技術を先端で支える」を経営理念とし、最先端の技術開発を通して社会の発展に貢献していくことを使命(ミッション)としています。社会課題の解決に、今後ますます半導体の役割が増していくと考えられる中、進化する半導体バリューチェーンで顧客価値を追求してまいります。そのミッションの遂行に当たっては、全役職員が「The Advantest Way」を理解し、あらゆるステークホルダーの尊重と持続可能な社会の実現を目指すと同時に、当社の持続的な発展と中長期的な企業価値の向上に努めます。
(2)経営戦略等
当社は、経営理念である「先端技術を先端で支える」を体現する会社であり続けるため、これからの10年で当社がどうありたいか、何をなすべきかを定めた、2018年度を起点とする「グランドデザイン(10年)」ならびに「中期経営計画(3年)」を策定しました。
これらを指針とし、顧客価値の創造と更なる企業価値の向上に取り組んでまいります。
1.グランドデザイン(10年)[2018年度~2027年度]
⦅ビジョン・ステートメント⦆
「進化する半導体バリューチェーンで顧客価値を追求」
⦅戦略⦆
当社は現在、半導体の量産テスト用システムの開発・販売を中心に事業展開しています。今後は、半導体量産工程の前後にある、半導体設計・評価工程や製品・システムレベル試験工程といった近縁市場へ事業領域を広げることで、業容の拡大と企業価値向上を目指します。
この長期ビジョン達成に向け、「コア・ビジネスの強化、重点投資」、「オペレーショナル・エクセレンスの追求」、「さらなる飛躍への価値探求」、「新事業領域の開拓」の4つの戦略課題に取り組みます。
⦅長期経営目標⦆
「売上高3,000億円~4,000億円の達成」
⦅コスト、利益構造⦆
売上成長を目指すにあたり、コスト構造のバランスにも配慮します。将来のコスト構造のイメージは、売上高3,000億円レベルで、売上原価率46%、販管費率32%、営業利益率22%を目安とします。
2.中期経営計画(3年)[2018年度~2020年度]
⦅経営指標⦆
当社では、期間損益の改善と資本の効率的活用の双方を意識しつつ、企業価値の向上に取り組みます。この考えに基づき、中期経営計画期間における当社の重要な経営指標を売上高、営業利益率、親会社所有者帰属持分当期利益率(ROE)、1株当たり当期利益(EPS)とし、これらの改善に努めます。
2018年度から2020年度までにおける、各経営指標の3カ年平均の目標は以下のとおりです。
2018~2020年度(平均)
保守的シナリオ
2018~2020年度(平均)
ベース・シナリオ
半導体試験装置市場 成長率年0%年4%
売上高2,300億円2,500億円
営業利益率15%17%
親会社所有者帰属持分当期利益率(ROE)15%18%
基本的1株当たり当期利益(EPS)135円170円

⦅主な施策⦆
・半導体・部品テストシステム事業部門
- HPC(High-Performance Computing)や5G通信向けなど、複雑化・高度化する次世代のテスト需要の波を先駆的に捕捉
- DRAM、NVM(Non-volatile Memory)での強固なビジネス基盤を堅持
・メカトロニクス関連事業部門
- テスタとの統合ソリューションの提供や高度な環境試験需要への対応による販売機会の拡大
・サービス他部門
- 工場自動化要求対応などによるポストセールス増収、SSDテスタの拡販、M&Aによる近縁市場への展開
・事業マネジメントの強化
- 社内での事業業績評価にROIC(投下資本利益率)ベースの事業管理・評価ツールを導入し、事業マネジメントを強化
⦅財務方針と株主還元⦆
当社は、事業成長基盤の強化と健全な財務状態の維持のため、中期経営計画期間累計で850~1,000億円を目安としたフリー・キャッシュ・フローの創出を目指します。安定した事業活動を担保する現金保有レベルは、500~600億円が適正と考えます。超過資金の使途については、M&A、研究開発、設備増強等の成長に向けた事業投資を優先します。具体的には、中期経営計画期間累計のM&A投資枠として1,000億円を設定します。
株主還元については、半期連結配当性向30%を基本とし、1株当たり利益の成長を通じて配当水準を向上するという方針を継続します。ただし、長期にわたって余剰資金が留保される場合は、成長投資見込みを勘案しつつ、配当性向の見直しや自己株式取得等の総株主還元を機動的に検討します。
⦅ESG(環境・社会・ガバナンス)課題への取り組み⦆
グローバルな社会的課題の解決のために、今後半導体の役割はますます重要になります。当社は半導体のテストを通じて、社会の「安心・安全・心地よい」と持続可能な未来へ貢献してまいります。
また、グローバル人財・フロンティア人財の育成やワークスタイルの改革を通じ、長期戦略達成および事業伸長のための基盤を強化します。さらにその人的資本を効果的に活用するため、事業環境および経営戦略に常に則した組織の運営や整備を図ります。
ガバナンスの面では、2020年6月25日時点において、当社の取締役会は11名のうち5名が社外取締役で構成されております。また取締役11名のうち、2名は外国人取締役、1名は女性取締役がおり、多様性の確保にも努めております。
当社は2019年5月に「国連グローバル・コンパクト」に署名しました。また2020年4月に「気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)」の提言への賛同を表明しました。これらを通じて気候変動、人権、労働、環境、腐敗防止等への取り組みを強化し、より高いレベルのESG経営を推進していきます。
(3)2020年度の経営環境および重点施策
2020年度は、5G通信やHPC(High-Performance Computing)などによるデジタル・トランスフォーメーションの加速やデータ通信量増大を背景に、当初は堅調な半導体市場の推移を期待していました。しかし新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の世界的な感染拡大に伴い、今後の世界経済先行きへの懸念が高まっています。また米中貿易摩擦の激化を受け、当社事業と関係性の深いエレクトロニクス業界や半導体製造装置市場の先行きについても、予断を許さない状況の中、当社は、外部環境の変化に機動的に対応することを2020年度の最優先課題とし、事業の継続性担保を図るとともに、当年度を最終年度とする中期経営計画の達成を目指します。
一方で中長期的な事業環境を展望しますと、足元は不透明な環境にありますが、半導体試験装置市場は短期需要変動を繰り返しつつも半導体市場の拡大とともに中長期的に成長するという、当社の長期市場予測を変更するものではありません。社会にデジタル・トランスフォーメーションが広がるほど半導体には一層の高性能化と高信頼性が求められ、この社会的要求の拡大が半導体試験の重要性を高めます。この半導体試験装置市場の需要構造に、現時点では変調は見受けられません。この構造を基底として、半導体試験装置市場では、5G通信の商用サービス拡大とともに2020年以降も一定の市場拡大を生む環境が継続されると予測しています。このような長期展望のもと、当社は、2018年度を起点とする長期経営方針「グランドデザイン」および中期経営計画で掲げた目標を堅持するとともに、それらの達成に向けて成長基盤の整備、期間損益の改善、資本の効率的活用を追求してまいります。
<2020年度重点施策>・ 外部環境変化に機動的に対応しつつ、中長期的な成長に向けた投資を引き続き推進
・ 半導体の高性能化やテストの重要度増進など、当社の中長期的成長を支える市場トレンドに変化がない中、重要顧客とのエンゲージメント強化/市場シェアの維持拡大策を展開
- 5Gのミリ波領域やハイエンド・メモリでのシェア維持・拡大
- 工場自動化対応など、総合的な生産性と品質向上提案によるパートナーシップの強化
・ 気候変動への対応などESG経営の高度化