有価証券報告書-第76期(平成29年4月1日-平成30年3月31日)

【提出】
2018/06/28 15:36
【資料】
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【項目】
57項目

対処すべき課題

文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社が判断したものであります。
(1)会社の経営の基本方針
当社は、「先端技術を先端で支える」ことを経営理念とし、「本質を究める」ことを行動指針としております。これらの経営理念と行動指針の下で、持続的な発展と企業価値の向上を目指すとともに、ステークホルダーを尊重し、社会との調和を図り、持続可能な社会の実現に向けて貢献してまいります。
(2)経営戦略等
以下は、当社が2018年4月26日に公表した中長期経営方針であります。
当社は、経営理念である「先端技術を先端で支える」を体現する会社であり続けるため、これからの10年で当社がどうありたいか、何をなすべきかを定めた、2018年度を起点とする「グランドデザイン(10年)」ならびに「中期経営計画(3年)」を策定しました。
これらを指針とし、顧客価値の創造と更なる企業価値の向上に取り組んでまいります。
1.グランドデザイン(10年)[2018年度~2027年度]
⦅ビジョン・ステートメント⦆
「進化する半導体バリューチェーンで顧客価値を追求」
⦅戦略⦆
当社は現在、半導体の量産テスト用システムの開発・販売を中心に事業展開しています。今後は、半導体量産工程の前後にある、半導体設計・評価工程や製品・システムレベル試験工程といった近縁市場へ事業領域を広げることで、業容の拡大と企業価値向上を目指します。
この長期ビジョン達成に向け、「コア・ビジネスの強化、重点投資」、「オペレーショナル・エクセレンスの追求」、「さらなる飛躍への価値探求」、「新事業領域の開拓」の4つの戦略課題に取り組みます。
⦅長期経営目標⦆
「売上高3,000億円~4,000億円の達成」
⦅コスト、利益構造⦆
売上成長を目指すにあたり、コスト構造のバランスにも配慮します。将来のコスト構造のイメージは、売上高3,000億円レベルで、売上原価率46%、販管費率32%、営業利益率22%を目安とします。
2.中期経営計画(3年)[2018年度~2020年度]
⦅経営指標⦆
当社では、期間損益の改善と資本の効率的活用の双方を意識しつつ、企業価値の向上に取り組みます。この考えに基づき、中期経営計画期間における当社の重要な経営指標を売上高、営業利益率、親会社所有者帰属持分当期利益率(ROE)、1株当たり当期利益(EPS)とし、これらの改善に努めます。
2018年度から2020年度までにおける、各経営指標の3カ年平均の目標は以下のとおりです。
2018~2020年度(平均)
保守的シナリオ
2018~2020年度(平均)
ベース・シナリオ
半導体試験装置市場 成長率年0%年4%
売上高2,300億円2,500億円
営業利益率15%17%
親会社所有者帰属持分当期利益率(ROE)15%18%
基本的1株当たり当期利益(EPS)135円170円

⦅主な施策⦆
・半導体・部品テストシステム事業部門
-HPC(High-Performance Computing)や5G通信向けなど、複雑化・高度化する次世代のテスト需要の波を先駆的に捕捉
-DRAM、NVM(Non-volatile Memory)での強固なビジネス基盤を堅持
・メカトロニクス関連事業部門
-テスタとの統合ソリューションの提供や高度な環境試験需要への対応による販売機会の拡大
・サービス他部門
-工場自動化要求対応などによるポストセールス増収、SSDテスタの拡販、M&Aによる近縁市場への展開
・事業マネジメントの強化
-社内での事業業績評価にROIC(投下資本利益率)ベースの事業管理・評価ツールを導入し、事業マネジメントを強化
⦅財務方針と株主還元⦆
当社は、事業成長基盤の強化と健全な財務状態の維持のため、中期経営計画期間累計で850~1,000億円を目安としたフリー・キャッシュ・フローの創出を目指します。安定した事業活動を担保する現金保有レベルは、500~600億円が適正と考えます。超過資金の使途については、M&A、研究開発、設備増強等の成長に向けた事業投資を優先します。具体的には、中期経営計画期間累計のM&A投資枠として1,000億円を設定します。
株主還元については、半期連結配当性向30%を基本とし、1株当たり利益の成長を通じて配当水準を向上するという方針を継続します。ただし、長期にわたって余剰資金が留保される場合は、成長投資見込みを勘案しつつ、配当性向の見直しや自己株式取得等の総株主還元を機動的に検討します。
⦅ESG(環境・社会・ガバナンス)課題への取り組み⦆
グローバルな社会的課題の解決のために、今後半導体の役割はますます重要になります。当社は半導体のテストを通じて、社会の「安心・安全・心地よい」と持続可能な未来へ貢献してまいります。
また、グローバル人財・フロンティア人財の育成やワークスタイルの改革を通じ、長期戦略達成および事業伸長のための基盤を強化します。さらにその人的資本を効果的に活用するため、事業環境および経営戦略に常に則した組織の運営や整備を図ります。
ガバナンスの面では、2018年6月27日時点において、当社の取締役会は9名のうち4名が社外取締役で構成されております。また、取締役9名のうち、2名は外国人取締役、1名は女性取締役を選任し、取締役の多様性の確保にも努めております。
※本中長期経営方針において当社の将来の業績指標の予想に用いた数値の為替前提は、1米ドル=110円,1ユーロ=135円です。また親会社所有者帰属持分当期利益率(ROE)、1株当たり当期利益(EPS)の目標値は、2019年満期ユーロ円建転換社債型新株予約権付社債(300億円)全額が株式に転換された場合の数値となります。
(3)経営環境
当連結会計年度における世界経済は、全体として回復基調が維持されました。先進国では、米国経済が堅調に推移したことに加え、欧州や日本でも景気回復が加速する動きが見られました。中国などの新興諸国においても成長が続きました。
半導体関連市場においては、中国スマートフォンの在庫調整が長引いたことで、スマートフォンに使用される半導体への設備投資は全般的に盛り上がりに欠けました。一方で、自動車電装化の進展を背景に、車載半導体やセンサーの需要が堅調でした。またデータセンター関連の半導体に対する旺盛な需要が維持され、とりわけ3次元NAND型フラッシュメモリやDRAMに対する需要が拡大したことで、各メモリ半導体メーカーで生産能力増強のための投資が積極的に行われました。
2018年度の事業環境を展望しますと、非メモリ半導体用テストシステム市場では、AIやブロックチェーンなどの新たなテクノロジーの広がりを背景として、高速ロジックIC向けの投資が増加する見通しです。また車載向けやディスプレイドライバ向けでも、2017年度に引き続き堅調な需要が維持されると見込んでいます。メモリ半導体用テストシステム市場でも、データセンター向けのより高速・大容量なメモリ半導体の一層の生産拡大を背景に、高水準な新規試験装置需要が継続すると予想しています。