有価証券報告書-第66期(平成27年4月1日-平成28年3月31日)

【提出】
2016/06/24 16:33
【資料】
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【項目】
130項目

研究開発活動

当社企業グループは、独自のエレクトロニクス技術とシステム技術をもとに、新しい価値を創造することを目指し、先端技術分野での基礎研究、応用研究をはじめとして、事業運営に直結した新技術、新製品の開発を行っております。
現在の研究開発活動は主に情報システム、電子機器及びプリント配線板の技術部門により進めております。
なお、当連結会計年度における研究開発費の総額は、3億54百万円であり、主な研究内容は以下のとおりであります。
(1)低帯域通信へのネットワーク監視に関する研究
主に移動体との間で使用される防衛用通信インフラでは、低帯域かつ切断と再接続が多発する過酷な通信環境下にあっても高度なセキュリティレベルが求められます。しかし、セキュリティレベル確保のためにネットワーク監視の頻度を高めると、通信帯域やネットワーク機器への負担が増加し、通信能力が低下してしまいます。防衛用通信インフラにおいて高度なセキュリティレベルを確保するためには、通信帯域を圧迫することのない効率のよいネットワーク監視技術を確立する必要があります。
本研究では、ネットワーク監視技術領域で実用化されているオープン技術をもとに、過酷な通信環境下で高度なセキュリティレベルを確保するための最適な候補技術の比較と適用方法を検討し、プロトタイプモデルの構築と評価を行いました。その結果、効率のよいネットワーク監視技術の実現に向けて各候補技術の基礎データ等を習得いたしました。
(2)インバータ式抵抗溶接機「NRW-IN8400A」、水平加圧ヘッド「NA-184」の開発
自動車市場においては、EV、PHVに代表されるエコカーの需要増加に伴い、自動車の軽量化、エレクトロニクス化、更には安全性・快適性の向上が求められております。それに伴い自動車に搭載されるモータやソレノイド、ECU、センサなどの部品数が年々増加し小型化や性能向上が進んでいることから、接合が難しくなり、より一層、接合品質の安定が求められ、信頼性向上が重要なテーマの一つとなっております。特にモータの端末処理に代表されるヒュージング溶接においては、接合の難易度が上がり、信頼性向上の要求が高まってまいりました。
このような市場環境の中、モータのヒュージングに最適なインバータ式抵抗溶接機「NRW-IN8400A」と水平加圧ヘッド「NA-184」を開発いたしました。
本製品は、インバータ式抵抗溶接機と水平加圧ヘッドを組み合わせることにより、被接合物の繰り返し精度の高い安定した潰れ量を実現するとともに、モニタリング機能による各種監視と接合ヘッドに加圧追従方式を採用したことで、接続部の信頼性の高い接合品質を実現いたしました。
(3)赤外線サーモグラフィカメラ「R500EXシリーズ」の開発
赤外線サーモグラフィは、安価な低画素カメラから、高機能の高画素カメラまで幅広いラインアップを取り揃えておりますが、このたび1台で計測現場から研究開発(R&D)分野まで用途を選ばずに温度測定できる高機能・高画素タイプのR500EXシリーズを開発いたしました。
R500EXシリーズは、電子機器の負荷応答試験や燃焼試験などで要求される熱画像収録速度を当社従来品より2倍に高速化いたしました。1つの事象を一方向から測定するだけでは情報が不足する場合に、複数台を違う角度に配し、同時にパソコンでデータ収録できる機能を搭載しました。この機能により、開始信号に同期してデータ収録する際に必要であったI/Oボードが不要になり、個々のカメラにトリガー信号を入力するだけで同時測定が実現できるため、安価なシステム構築が可能となりました。
更に、従来では画像ノイズを除去すると、測定上有効な画素のデータまで見えにくくなる課題がありましたが、新開発のノイズ除去フィルタ(デノイズ)を搭載することで、必要な画素情報は残したままノイズ成分のみを除去することができました。これにより画質が改善され、通常では見えてこない微小な温度を判別できるようになり、問題点の可視化が容易となりました。
なお、本製品の用途を拡大させるため、従来では2種類のみであったオプションレンズを、R&Dで要求の高い近接拡大レンズや狭い現場でより広く画像を取得できる広角レンズのラインアップを増やしました。
(4)宇宙航空研究開発機構(JAXA)認定、高周波対応プリント配線板の開発
プリント配線板事業では、衛星やロケットなど宇宙開発向けに各種の宇宙航空研究開発機構(JAXA)認定を取得した高信頼性プリント配線板を提供しております。
近年は、宇宙向けLSIの高機能化が進み、それらが実装されるプリント配線板には高速信号配線に対する設計要求が高まっています。この要求に答えるため、プリント配線板の材料として「低誘電率材料」の適用が必須となります。低誘電率材料は、産業用途向けでは既に採用されているもので、信号の伝播を早くするための材料特性を有しています。また、同時に回路(電気)抵抗を低く設計できるためメリットも有しています。
低温・高温、真空、振動、放射線曝露等の厳しい宇宙環境下で長期間使用されるプリント配線板は、一般産業向けとは異なった、長期信頼性も含めた特殊な信頼性保証が要求されます。それらの要求を満足するために実施した製品開発の結果、真空中での揮発成分測定や、一般基板の要求される10倍の冷熱サイクル試験、更に放射線曝露試験等に合格し、「JAXA-QTS-2140E 付則H(高速信号対応プリント配線板)」のプリント配線板認定を平成27年7月に取得いたしました。