有価証券報告書-第30期(平成31年4月1日-令和2年3月31日)

【提出】
2020/06/26 11:54
【資料】
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【項目】
149項目

対処すべき課題

(1) 経営方針、経営戦略等
当社グループは、「革新」により社業の発展を図り、「信頼」により顧客とパートナーとの共存を維持し、「創造」により社会に貢献し続ける存在でありたいという経営理念のもと、日本初のシステムLSIのファブレスメーカーとして1990年に創業いたしました。
これまで、ファブレスメーカーとしての利点を活かし、経営資源を研究開発に集中することで独自技術を磨くとともに、顧客の最終製品やサービスなどのアプリケーションに関する知識とLSIの知識を融合させることで、顧客の課題解決と競争力向上に貢献するシステムLSIを企画・開発してまいりました。
また、国内外の最適な設備や生産技術を柔軟に選択し、厳格な品質保証体制で信頼性の高いシステムLSIを供給できる生産体制を構築し、システムLSIの企画・開発から供給まで、一貫してサポートができる体制づくりに注力し、顧客と共に成長してまいりました。
今後も当社グループは、これまでにない新しい価値の創造と高い技術力により、独創性のある幅広いソリューションを顧客に提供し、豊かな未来社会作りに貢献するために、「LSIによるシステム(機器)のソリューションを提供することによって顧客と共に発展・成長すること」、「果たすべき責任は、会社を取りまく利害関係者から良い会社であるとの評価を獲得すること」をミッションとして掲げ、自主独立で発展し、持続的な成長と新たな価値創造に挑戦していく考えであります。
これを実現するために、主力事業であるアミューズメント分野向けの事業基盤を強化しつつ、成長機器市場である「車載分野」、「産業機器分野」、「インフラ分野」を中心に、競争力に優れた独自技術であるアナログ/デジタル/MEMS技術を駆使した製品を積極的に投入し、国内外において事業の拡大を図っていく考えであります。
あわせて、経営効率の改善と財務体質の強化を図り、株主の皆様への積極的な利益還元に努めてまいります。
(2) 経営環境及び優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題
次期の社会環境においては、2020年代の社会を支える超高速通信ネットワークが急速に拡大し、ますます豊かな情報化社会の実現が目前に迫り、産業と暮らしは大きく変化し続けるものと思われます。さらには、地球環境維持を目的とした自然共生社会、低炭素社会、循環型社会の実現へ向けた取り組みが、継続されていくものと思われます。
当社グループを取り巻くエレクトロニクス産業においては、産業用電子機器分野、電子部品・デバイスを中心に電子工業全体の生産実績が鈍化している状況がある一方で、今後の産業発展を支えるものとして一部の分野においてはその重要性が増してまいりました。
車載分野では、安全性の向上や環境負荷低減に向けて、通信機能を搭載したコネクテッドカーや自動運転車、電気自動車など、自動車のエレクトロニクス化が進展しております。通信インフラ分野では、「5G」の導入により通信速度の向上、タイムラグの減少、多くの機器が同時に接続できる多接続が実現するなど、IoT時代に対応する通信インフラとしての開発が進展しております。また、産業分野向けのIoTは、物流、製造オートメーションや電力スマートグリッドなど産業界の変革に貢献するものと期待されている状況です。
このように、今後の成長が見込まれる車載分野、産業機器分野、通信などのインフラ分野の発展に伴い、我々を取り巻く機器に使用される電子部品の高性能化や多機能化などのニーズが高まるとともに、キーデバイスである半導体製品においても、高精度・多機能・小型・低消費電力などに貢献する製品を中心に需要の拡大が期待される状況となってまいりました。
このような状況の下、当社グループは次の基本方針を掲げ、ASIC事業を再成長路線に乗せ収益基盤を強化し、車載分野、産業機器分野、インフラ分野へ経営資源を集中し、中長期の成長を加速させる考えです。
① 主力分野であるアミューズメント向け事業においては、新規技術の開発と品質向上に取り組み、事業基盤の強化を図ります。
② 今後の成長が見込める車載分野、産業機器分野、インフラ(有線ネットワーク、サーバー機器、5G基地局等)分野へ経営資源を集中し、高速有線通信分野における当社独自のコア技術を用いて新たな事業の育成を目指します。あわせて営業力を強化し、有力顧客の開拓に取り組み、ビジネス展開を図ります。
③ 子会社のSiTime Corporationにおいては、MEMSタイミングデバイスの製品ラインナップの拡大により、グローバル有力顧客とのビジネス拡大と新規分野の顧客開拓に取り組み、事業拡大を図ります。
④ 自己資本比率の改善に取り組み健全な財務体質の確立を図ること、固定費圧縮、管理費削減、原価低減活動を積極的に推進し業務効率の改善を図ること、成果や才能に重点を置いた人事制度への改革、豊かな知識と経験を持つ人材の積極的な登用などの施策を推進し、経営環境の変化に柔軟かつ迅速に適応できるよう経営基盤の強化を図ります。
(新型コロナウイルス感染拡大による影響について)
新型コロナウイルス感染拡大による次期業績への影響については、2020年度中に収束に向かうことを前提として、限定的な範囲に留まると考えております。しかしながら、当社グループの製品が使用される最終製品の需要に対する影響について予測することは極めて困難であり、今後の動向によって業績に与える影響は変動する可能性がございます。引き続き、今後の影響について情報収集と分析を進めてまいります。
(3) 経営指標
具体的な目標数値は設定しておりませんが、収益力・資本効率に関する経営指標として自己資本当期純利益率、売上高営業利益率を向上させていくことが重要であると考えております。また、のれん等償却前営業利益と連結キャッシュ・フローを重視しております。
(注) 連結決算において、企業買収によるのれん及び無形固定資産の償却費を除外して算出した営業利益を「のれん等償却前営業利益」としております。