有価証券報告書-第33期(平成27年4月1日-平成28年3月31日)

【提出】
2016/06/23 14:13
【資料】
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【項目】
124項目

対処すべき課題

(1)会社の経営の基本方針
当社グループは、「a world alive with creativity」(創造性にあふれる活き活きとした世界)をビジョンとし、より豊かで創造的な暮らしを実現したいと願っております。そのために、自然で直感的な技術により人間のクリエイティビティを広げ、世界に貢献するグローバルリーダーを目指しております。
当社グループは、今後のユーザーインターフェイス技術の世界的な進化と拡大を見据えて、更なる技術力・開発力の強化、優秀な人材の確保とともに、今日までに築き上げたグローバルな事業組織、企業文化やブランド、そしてオープンパートナーシップポリシーの下、幅広い顧客との関係に基づいた競争力の高いグローバルな事業モデルの更なる強化により、長期的かつ安定的な事業成長と企業価値の向上を図れるものと考えております。
また、グローバルに事業を展開するに際して、企業の果たすべき社会的責任を真摯に受け止め、コンプライアンスの徹底とコーポレート・ガバナンスの継続的な強化に努めてまいります。
(2)目標とする経営指標
当社グループは、平成27年4月に「ワコム戦略経営計画 SBP-2019」を策定し、市場と経営環境の著しい変化に当社の事業モデルを柔軟に対応させた成長戦略を定めて新たな経営目標を設定しました。ビジネスモデルのモバイル、クラウドベースへの進化を軸とする基本戦略を引き続き維持しつつ、新たなグローバル事業組織の下で、グローバル新規市場の開拓と既存事業の更なる強化に取り組んでいます。平成31年3月期に連結売上高1,200億円、連結売上高営業利益率12%、連結株主資本利益率20%以上の達成を財務目標としてまいります。
(3)中長期的な会社の経営戦略及び会社の対処すべき課題
当社グループは、上記「ワコム戦略経営計画 SBP-2019」の実現に向けた成長戦略を、次の7つの項目にまとめ、それらを着実に実行し成果につなげることを対処すべき課題と捉え取り組んでおります。
(対処すべき課題)
① ビジネスモデルをモバイル、クラウドへと進化させる
② 新グローバル事業体制によって統合を強化し成長を加速する
③ モバイル製品ラインの強化、3D市場の拡大、新興市場への投資によってクリエイティブビジネスを加速する
④ デジタル文房具とクラウド統合で新たなコンシューマーユーザーを獲得する
⑤ アクティブES技術と「WILL(Wacom Ink Layer Language)」により、テクノロジーソリューション事業を拡大する
⑥ 「WILL」と電子サインソリューションで、ワークフローとセキュリティビジネスを強化する
⑦ グローバルビジネスシステムの活用により効率とスピードと収益性を向上させる
(具体的な対処方針等)
当社の成長戦略は、近年のビジネスプラットフォームの急速な変化に対応するとともに、ブランド製品事業とテクノロジーソリューション事業の両事業の成長を加速させることを軸としています。そのために事業組織体制を従来の地域別から顧客カテゴリー別のグローバル組織に組み換え、さらにITインフラをグローバルベースで活用することにより両事業の成長を支えてまいります。
① ビジネスモデルをモバイル、クラウドへと進化させる
普及が進んでいるスマートフォン、タブレット等のモバイル情報機器とクラウドコンピューティングによる新しいITプラットフォームに対応するため、当社製品ラインを従来のPC向けからモバイル情報機器分野及びクラウドをベースとしたアプリケーションとサービスを統合したエコシステムへと拡大してまいります。
② 新グローバル事業体制によって統合を強化し成長を加速する
グローバルな事業統合による成長を実現するため、平成27年4月に、従来の地域販社を中心とする販売体制から顧客カテゴリー別のグローバルビジネスユニット(事業部)への再編を行いました。これにより、地域に関わりなく各事業単位で顧客カテゴリーごとの戦略をグローバルに推進する体制を整え、事業成長を加速させてまいります。
③ モバイル製品ラインの強化、3D市場の拡大、新興市場への投資によってクリエイティブビジネスを加速する
従来のPC向けが中心であった当社の製品ラインに加えて、平成26年3月期より発売を開始したモバイル製品ラインは、今後も高い成長が見込まれています。これらのモバイル製品ラインに引き続き新製品を開発・投入し、市場の拡大を図ってまいります。また、デジタルデザインの最先端では3Dモデリングや3Dデザイン、3Dプリンティングといった分野の更なる進化と拡大が見込まれています。さらに、中国、インド、南米といった新興地域においてもデザイン産業の拡大が見込まれております。当社はユーザーのニーズに応える新製品を投入し、グローバルな市場における事業基盤を強化していくことで、クリエイティブビジネスの積極的な拡大を図ってまいります。
④ デジタル文房具とクラウド統合で新たなコンシューマーユーザーを獲得する
近年のモバイル情報機器とソーシャルネットワークの急速な普及と発展によって、コンシューマーのオリジナリティと発信力が大きく拡大しつつあります。また、スマートフォンやタブレットに加えて、アイデアを従来の紙とペンと同様に直感的に書きとめて共有できる新たなデジタル文房具へのニーズも高まってきています。当社は、新たなデジタル文房具の開発・投入とクラウドと統合された独自のエコシステムを構築し、新たなコンシューマー市場を創出してまいります。また、グローバルなWebコミュニケーションの活用により、コンシューマーとモバイルユーザーに対するブランド認知を高め、ユーザーコミュニティーの形成を行ってまいります。
⑤ アクティブES技術と「WILL(Wacom Ink Layer Language)」により、テクノロジーソリューション事業を拡大する
テクノロジーソリューション事業においては、平成27年4月期に量産を開始したアクティブES方式のデジタルペンに顧客の注目が集まっており、採用機種が大幅に増加しています。従来からのEMR方式のデジタルペンに加えて技術の複線化を図ることで、顧客にデジタルペン採用の選択肢を増やし、市場の創出・拡大を図ってまいります。また当社が開発した「WILL」は、デジタルインクデータを標準化し、OSの違いを越えた交換や共有を可能とするもので、これによりデジタルインクの利用拡大とデジタルペンの更なる普及を促進し、テクノロジーソリューション事業の拡大に寄与することを目指しています。
⑥ 「WILL」と電子サインソリューションで、ワークフローとセキュリティビジネスを強化する
ビジネスソリューション分野では、電子サインの利用によるワークフローの効率向上と高いセキュリティが注目され、今後の拡大が見込まれています。これらの市場に対して、当社は液晶サインタブレット製品だけでなく、「WILL」やサイン認証等のセキュリティ技術を活かしたサインソリューションを強化し、より迅速で効率的かつ安全な業務フローソリューションを提供してまいります。ハードウェア、ソフトウェアが統合したソリューションを顧客に提供することで金融・流通分野での浸透を図り、ビジネスソリューションの事業拡大につなげてまいります。
⑦ グローバルビジネスシステムの活用により効率とスピードと収益性を向上させる
現在構築中であるグローバルサプライチェーンやグローバルe-コマース(電子商取引)をはじめとした統合ITインフラの活用により、生産から販売・顧客サポートに至るまでの効率とスピードを大幅に改善し、収益性の向上につなげてまいります。
上記戦略の実行に注力する一方で、テクノロジーソリューション事業においては、市場環境と顧客動向の変化が激しいため不確実性が高く、業績が不安定に推移すると予想されます。そのため、ユーザー層の更なる拡大を図り、今後の事業の安定性向上に取り組んでまいります。
なお、当社の財務及び事業の方針の決定を支配する者の在り方に関する基本方針は、以下のとおりであります。
(株式会社の支配に関する基本方針)
① 当社の財務及び事業の方針の決定を支配する者の在り方に関する基本方針の内容の概要
当社グループが株主の皆様に還元する適正な利潤を獲得し、企業価値・株主共同の利益の持続的かつ中長期的な向上を実現するためには、株主の皆様はもちろん、ステークホルダーにも十分配慮した経営を行う必要があります。
当社取締役会は、当社の企業価値・株主共同の利益の確保、向上に資さない当社株券等の大量買付行為や買付提案を行う者は、当社の財務及び事業の方針の決定を支配する者として適当でないと考えています。
② 当社の財産の有効な活用、適切な企業集団の形成その他の基本方針の実現に資する特別な取組みの概要
当社グループは、平成27年4月に中期経営計画「ワコム戦略経営計画 SBP-2019」を策定し、平成31年3月期に連結売上高1,200億円、連結売上高営業利益率12%、連結株主資本利益率20%以上の達成を財務目標としております。
③ 基本方針に照らして不適切な者によって当社の財務及び事業の方針の決定が支配されることを防止するための取組みの概要(買収防衛策)
当社は、当社の企業価値・株主共同の利益を確保し、向上させることを目的として、平成28年6月22日開催の第33回定時株主総会において株主の皆様にご承認いただき、「当社株式の大量取得行為に関する対応策(買収防衛策)」(以下「本プラン」といいます。)を更新しました。
本プランは、当社株式の大量買付が行われる場合の手続を明確にし、株主の皆様が適切な判断をするために必要かつ十分な情報と時間を確保するとともに、買付者との交渉の機会を確保することにより、当社の企業価値・株主共同の利益を確保し、向上させることを目的としています。
具体的には、当社の発行済株式総数の20%以上となる株式の買付又は公開買付けを実施しようとする買付者には、必要な情報を事前に当社取締役会に提出していただきます。一方、当社は、独立性の高い(ⅰ)当社社外取締役又は(ⅱ)社外の有識者のいずれかに該当する委員3名以上で構成される独立委員会の委員を選任し、独立委員会は外部専門家等の助言を独自に得た上、買付内容の検討、株主の皆様への情報開示と当社取締役会による代替案の提示、買付者との交渉等を行います。買付者が本プランの手続を遵守しない場合や、当社の企業価値・株主共同の利益を侵害する買付であると独立委員会が判断した場合は、対抗措置の発動(買付者等による権利行使は認められないとの行使条件を付した新株予約権の無償割当ての実施)を取締役会に勧告します。
④ 当社の財産の有効な活用、適切な企業集団の形成その他の基本方針の実現に資する特別な取組み及び本プランがいずれも基本方針に沿うものであり、当社の株主共同の利益を損なうものではなく、当社の会社役員の地位の維持を目的とするものでないことについて
当社取締役会は、「当社の財産の有効な活用、適切な企業集団の形成その他の基本方針の実現に資する特別な取組み」についての各施策はいずれも当社の企業価値及び株主共同の利益を確保し、向上させることを目的とするものであることから、基本方針に沿うものであり、当社の株主共同の利益を損なうものではなく、当社の会社役員の地位の維持を目的とするものでないと判断しております。
また、当社取締役会は、本プランは基本方針に沿うものであり、当社の株主共同の利益を損なうものではなく、当社の会社役員の地位の維持を目的とするものでないと判断しております。その理由は以下の(イ)ないし(チ)に記載のとおりです。
(イ) 買収防衛策に関する指針の要件を完全に充足していること
本プランは、経済産業省及び法務省が平成17年5月27日に発表した「企業価値・株主共同の利益の確保又は向上のための買収防衛策に関する指針」の定める三原則(企業価値・株主共同の利益の確保・向上の原則、事前開示・株主意思の原則、必要性・相当性の原則)を全て充足しています。
(ロ) 株主共同の利益の確保・向上の目的をもって導入されていること
本プランは、当社株券等に対する買付等がなされた際に、当該買付等に応じるべきか否かを株主の皆様が判断し、あるいは当社取締役会が代替案を提示するために必要な情報や時間を確保したり、株主の皆様のために買付者等と交渉を行ったりすること等を可能とすることを目的として導入されました。
(ハ) 株主意思を重視するものであること
本プランは、当社株主総会において本プランに係る委任に関する議案が承認されることにより導入されました。
また、当社取締役会は、一定の場合に、本プランの発動の是非について、株主意思確認総会において株主の皆様の意思を確認することとしています。さらに、本プランには、有効期間を約3年間とするいわゆるサンセット条項が付されており、かつ、その有効期間の満了前であっても、当社株主総会において上記の委任決議を撤回する旨の決議が行われた場合には、本プランはその時点で廃止されることになります。
(ニ)独立性の高い社外者の判断の重視と情報開示
本プランの発動に際しては、独立性の高い社外取締役等から構成される独立委員会による勧告を必ず経ることとしています。さらに、独立委員会は、当社の費用で、独立した第三者専門家等の助言を受けることができるものとされており、独立委員会による判断の公正さ・客観性がより強く担保される仕組みとなっております。
(ホ)当社取締役の任期は1年であること
当社の監査等委員である取締役を除く取締役の任期は1年であります。従って、毎年の株主総会での選任を通じても、本プランにつき、株主の皆様のご意向を反映させることが可能となります。
(ヘ)合理的な客観的要件の設定
本プランは、合理的な客観的要件が充足されなければ発動されないように設定されており、当社取締役会による恣意的な発動を防止するための仕組みを確保しております。
(ト)第三者専門家の意見の取得
買付者等が出現すると、独立委員会は、当社の費用で、独立した第三者(ファイナンシャル・アドバイザー、公認会計士、弁護士、税理士、コンサルタントその他の専門家を含みます。)の助言を受けることができるものとしています。
(チ)デッドハンド型やスローハンド型買収防衛策ではないこと
本プランは、当社の株券等を大量に買い付けた者の指名に基づき株主総会で選任された取締役で構成される取締役会により廃止することが可能であるため、いわゆるデッドハンド型買収防衛策ではありません。また、当社は、取締役の期差任期制を採用していないため、いわゆるスローハンド型買収防衛策でもありません。