有価証券報告書-第203期(2025/04/01-2026/03/31)

【提出】
2026/06/19 13:21
【資料】
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【項目】
162項目
(4) 戦略並びに指標及び目標
《重要課題(マテリアリティ)》
当社グループでは、多様化するステークホルダーからの期待・要望と事業環境の変化を踏まえ、当社グループの企業活動が社会に与える影響を認識・整理し、2018年に重要課題(マテリアリティ)を特定しました。
更に2021年には、前年に発表した「グループビジョン2030」を受け、重要課題(マテリアリティ)の見直しを行いました。2018年と同様、重要課題(マテリアリティ)は「事業を通じて創出する社会・環境価値」と「事業活動を支える基盤」に大別し、事業を通じた取組を「当社グループが長期で達成すべき最重要課題」と定義し、その事業活動を支える課題を、最重要課題の達成に向けた「基盤項目」と位置づけています。今後も、事業環境や社会からの期待の変化に即し、定期的に重要課題(マテリアリティ)の見直しを行っていきます。
重要課題(マテリアリティ)の特定プロセスのほか、外部有識者のコメントやそれを受けた対応など、詳細は当社Webサイト(https://www.khi.co.jp/sustainability/materiality/task.html)をご参照下さい。
抽出した重要課題(マテリアリティ)のマッピング

特定した重要課題(マテリアリティ)の主な事項に関する戦略並びに指標及び目標は以下のとおりです。
《事業を通じて創出する社会・環境価値~3つの注力フィールド~》
3つの注力フィールドである「安全安心リモート社会」「近未来モビリティ」「エネルギー・環境ソリューション」は、「事業を通じて創出する社会・環境価値」として、直面する社会課題に対し当社グループが長期で取り組むべき最重要課題と位置づけたものです。詳細は、統合報告書「Kawasaki Report」(次回2026年9月発行予定)(https://www.khi.co.jp/sustainability/library/kawasaki_report/index.html)をご参照下さい。
a) 安全安心リモート社会
医療・ヘルスケア、介護、ものづくり、産業インフラ等様々な分野で、当社グループが有するAI・遠隔操作・情報技術、ロボティクス技術等を活用することで、働き方の変革に加え、防災・防衛などあらゆる場面を想定し、すべての人々が安全・安心に暮らせる社会の実現に向けて取り組んでいます。
・病院経営効率化に向けた取組
高齢化や労働力不足等の世界共通の課題を抱える医療分野に対するソリューションとして、当社グループが保有する手術支援ロボット「hinotori™」、自律走行サービスロボット「Nyokkey(ニョッキー)」、屋内配送ロボット「FORRO(フォーロ)」、屋内外位置情報ソリューション「mapxus Driven by Kawasaki™」等といった製品・サービスとAI・遠隔技術の融合により来院から診察、治療、手術、術後ケアまでを一貫して支援する「病院ワンストップソリューション」の創出を進めています。
2025年6月に欧州と日本間で初となる遠隔手術の実証実験に成功した手術支援ロボット「hinotori™」は、グローバル展開を進めており、2026年3月末時点で国内外に累計110台を設置、累計17,300症例と着実に実績を積んでいます。屋内配送ロボット「FORRO」は2026年3月末までに13病院で22台の実運用が開始され、24時間体制で稼働することで医療従事者の業務負担の軽減に貢献しています。
これらのソリューションのグローバル展開として、ヘルスケア分野における事業ビジョン「未来のヘルスケアを共創する」のもと、2026年3月にフランス・ストラスブールに海外初となるR&Dイノベーションセンターである新会社「Kawasaki Innovation Centre Europe SAS」を設立しました。また、フィジカルAIの社会実装を推進する拠点として2026年5月に米国・シリコンバレーに「Kawasaki Physical AI Center San Jose」を開設しました。国内を含むこれらの共創拠点を連携させることで「病院ワンストップソリューション」の確立を加速します。
更に、AI開発を行う世界のトッププレイヤーであるNVIDIA、Analog Devices、Microsoft、富士通等との協業を推進し、医療等だけでなく半導体・自動車など幅広い産業やニューモビリティにおいても、人の置き換えではなく人の判断と行動を安全・効率的に支援するフィジカルAIの社会実装を目指します。
・介護現場に対するソリューション事業
2024年度より、介護施設における介護テクノロジーの導入・活用・定着を促進することで、介護人材不足の社会課題を解決する“介護業務支援サービス”に参入しました。当事業年度は、19回に及ぶ介護現場オペレーション計測を行い、様々な介護テクノロジーの改善効果及び投資効果を定量的に提示するサービスを提供しました。更に、国立研究開発法人 日本医療研究開発機構の「介護DXを利用した抜本的現場改善事業」に対して、デジタル技術を活用した「介護テクノロジーの定量的改善及び投資効果を提示する機能を有する介護DXパッケージモデルの開発」の提案を行い、採択されたほか、厚生労働省、経済産業省、自治体等の補助金制度も活用し、その取組を地域のモデル施設へ展開する活動も推進しています。並行して、介護領域向けソーシャルロボットの社会実装の実現に向けた開発にも着手しており、介護施設の協力を得て認知症の方との会話などの実証試験を行っています。
b) 近未来モビリティ
物流量の増加や少子高齢化に伴う労働力不足の中で、新しい輸送・移動手段を提案し、豊かでスマートかつシームレスな移動が可能な社会を創造します。
2025年1月、無人ヘリコプター「K-RACER」を用いて送電鉄塔への物資輸送を想定した実証試験に成功しました。既に取り組んでいる災害時の物資輸送等と合わせて、民需に限らず様々なケースに対応したソリューションの一つとして日本の安全保障や社会インフラ強化に貢献していきます。また、ロボット事業とモーターサイクル事業を持つ当社グループだからこそ実現できる、新感覚オフロードパーソナルモビリティ「CORLEO(コルレオ)」の製品化に向けた開発にも着手しています。シミュレーターの開発に加え、まずは2030年開催予定の「サウジアラビア・リヤド万博」の会場内モビリティとして採用されることを目指します。当社グループは新たなモビリティを通じて、引き続き心弾む新たな価値や喜びの提供にも挑戦し、人とモノの移動を一層変革していきます。
・無人ヘリコプター「K-RACER」
2025年12月、送電鉄塔への物資輸送を想定した実証試験を、関西電力送配電株式会社の甲賀訓練場(滋賀県甲賀市)で実施し、荷揚げから送電鉄塔近傍での荷降ろしまでの一連の飛行に成功しました。今後も各ステークホルダーとの連携を強化し、平時と災害時の両面で安全で新しい物流網を構築することで、激甚化する自然災害への対処能力の向上にも貢献していきます。
また、同月、BladeRobots A/S(以下、「BladeRobots」)と、風力発電ブレード前縁補修分野において当社の「K-RACER」とBladeRobotsが開発するブレード前縁補修ロボットを連携させた新しいソリューションの開発に向けた戦略的パートナーシップを締結しました。この締結に先立ち、BladeRobotsと風力発電分野の世界的企業Vestas Wind Systems A/Sの支援のもと、デンマーク国内の風力発電所において実証試験を実施し、本ソリューションが技術的に成立することを確認しています。
・Robotic Multi-legged Vehicle「CORLEO(コルレオ)」
大阪・関西万博を通じて大きな反響を呼び、2025年12月に国際ロボット展にてCORLEOの製品化に向けた開発に着手することを発表しました。Robotic Multi-legged Vehicle(RMV)という新カテゴリーを創出し、これまでにない乗車体験価値をつくりこむべく機体の開発に着手しています。
更には、ゲーム・eスポーツ市場への参入も視野に入れて事業開発を推進しており、2030年に開催されるサウジアラビア・リヤド万博での導入をマイルストーンに設定し、誰もが安全に安心して冒険を楽しめる「SAFE ADVENTURE」事業構想を展開していきます。
AIの進化により、製造、医療、モビリティ等幅広い分野でフィジカルAIの活用が期待されており、2026年5月に米国カリフォルニア州サンノゼにフィジカルAIセンターを開設しました。世界的なテック企業や最先端の技術が集まるこの地で社会実装を加速させていきます。
c) エネルギー・環境ソリューション
中東情勢悪化の影響を受けて、当社グループが進めている水素事業はカーボンニュートラル需要に加え、エネルギー安全保障としての重要性が益々高まっています。
2025年11月、日本水素エネルギー株式会社(以下「JSE」)と、川崎市扇島に建設する液化水素基地「川崎 LH₂ターミナル」を起工しました。更には世界最大となる40,000㎥型液化水素運搬船の造船契約の締結や、世界初の大型商船向けの水素燃料エンジンや、水素液化プラント向け遠心式水素圧縮機の実証運転を開始する等、水素社会の実現に向けたプロジェクトが本格的に加速しています。
水素社会実現までの移行期間においては、天然ガスと親和性の高いブルー水素がグリーン水素の普及を支える形で水素導入が進む可能性が高まっています。当社は天然ガスだけでなく水素も燃料として利用できるガスタービンやガスエンジンを保有しており、更にブルー水素に必要不可欠なCO2分離・回収・貯蔵に加え、CO2と水素から高品質なガソリンを製造する技術等も保有していることから、カーボンニュートラルのみならずエネルギー安全保障の観点からも多くのビジネスチャンスがあると考えています。
・液化水素サプライチェーン構築に向けて
2026年1月、当社はJSEとの、世界最大となる40,000㎥型液化水素運搬船の造船に関する契約の締結を発表しました。2030年代の世界の水素需要に応えるべく、当社の坂出工場(香川県坂出市)にて本船を建造し、将来の液化水素サプライチェーンの本格運用に向けた基盤を形成します。
JSEは「液化水素サプライチェーンの商用化実証」※の事業主体として、本船と川崎市扇島に建設中の液化水素基地「川崎 LH₂ターミナル」により、基地と船間での液化水素の荷役実証、並びに国際間海上輸送を模した外洋条件下での輸送実証を2030年度までに実施します。性能、安全性、耐久性、信頼性、経済性等、国際水素サプライチェーンの商用化に求められる要件を確認する商用化実証を通じて、水素の社会実装への歩みを着実に進めていきます。
2026年1月より、当社播磨工場に建設した水素液化プラント向け遠心式水素圧縮機「KM Comp-H2」において実証運転を開始しました。本装置での実証を通して、液化プロセスを効率化し水素の供給コスト低減を目指します。
※国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)のグリーンイノベーション基金事業により実施
・日本とドイツにおける水素の社会実装に向けて
2025年9月、当社はトヨタ自動車株式会社、関西電力株式会社、ダイムラートラック社、ハンブルク自由港倉庫建築組合と「日独連携水素サプライチェーン構築に向けた覚書」を締結しました。本覚書は、国や産業の壁を越えて、水素の国際的な利活用推進を目指すと共に、日本とドイツの需要を合わせることにより、高い経済性を持つ水素サプライチェーンの構築を目標とするもので、経済産業省主催の水素閣僚会議において署名されたものです。本覚書の締結により、港湾・物流や、商用車をはじめとするモビリティ、発電といった各産業セクターにおける、国際的な水素輸送の実用化と事業化に向けた歩みを更に進めていきます。
・水素燃料の利活用に向けて
2026年3月には当社とジャパンエンジン社は、水素燃料多目的船の実船実証に向け大型商船向け水素燃料エンジンの水素燃料運転を開始しました。造船各社や日本海事協会と連携し、水素燃料による商船運航の実用化を進めます。
・CO2分離・回収事業の推進
2025年11月、当社は独自のCO2分離回収技術Kawasaki CO2 Capture(KCC)を適用した実証設備を神戸工場に完成させました。本設備は、排ガスからCO2を回収するPCC(Post-Combustion Capture)設備と大気中からCO2を直接回収するDAC(Direct Air Capture)設備から構成されます。排ガスからのCO2回収技術は、既存インフラを活用した即効性のある排出削減技術として、DACは残余排出への対応やネガティブエミッションの実現に不可欠な技術として、それぞれ重要な役割を担うと位置づけられており、本設備を活用した技術検証を通じてCO2回収量の拡大を目指すとともに、KCCの社会実装を通じて地域や産業界の脱炭素化を推進します。
《事業活動を支える基盤項目》
「事業を通じて創出する社会・環境価値」の達成に向け、ビジネスと人権、人財活躍推進、コンプライアンス、技術開発・DXなど、特に重要となる課題を「事業活動を支える基盤項目」と位置づけています。これらの重要課題については、定量的な目標とKPIを設定しており、毎年、取締役会において主なKPIの進捗状況のモニタリングを実施しています。
各項目の定量的な目標及びKPI、その進捗状況など、詳細は統合報告書「Kawasaki Report」(次回2026年9月発行予定)(https://www.khi.co.jp/sustainability/library/kawasaki_report/index.html)をご参照下さい。

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