有価証券報告書-第206期(2022/04/01-2023/03/31)

【提出】
2023/06/23 14:57
【資料】
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【項目】
154項目
当社グループの経営方針,経営環境及び対処すべき課題等は,以下のとおりです。
なお,文中の将来に関する事項は,当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものです。
(1)会社の経営の基本方針
当社グループは,社会とともに発展するよき企業市民であることを第一義とし「技術をもって社会の発展に貢献する」,「人材こそが最大かつ唯一の財産である」との経営理念のもと,21世紀の環境,エネルギー,産業・社会基盤における諸問題を,「ものづくり技術」を中核とするエンジニアリング力によって解決し,地球と人類に豊かさと安全・安心を提供するグローバルな企業グループを目指しています。
この基本方針を実現するため,当社グループ社員には,「グローバル」,「ものづくり技術・エンジニアリング力」,「世界に通用する業務品質」の観点から卓越した能力を持つプロフェッショナル集団となることを求めています。また,製品・サービスの高度化による社会の発展への貢献を通じて収益性を高め,資本市場から求められる資本効率や株主還元を実現し,持続的な企業価値の創造を図ることで,信頼される企業グループを目指しています。
このような中で当社グループは,ESGを経営の中心に据えています。人権を尊重し,多様な人財が活躍する企業風土を原動力として,事業活動を通じて気候変動問題を解決し,自然と技術が調和するサステナブルな社会の実現を目指しています。
(2)中長期的な会社の経営戦略及び経営指標
当社グループは,2023年5月に,2023年度を初年度とする3か年の中期経営計画「グループ経営方針2023」を公表しました。これまで2020年度から実行した中期経営計画「プロジェクトChange」期間を通じて,ライフサイクルでの価値提供事業(ライフサイクルビジネス)やアンモニアバリューチェーン事業などへの取り組みを進めてきましたが,今回の経営方針では,持続的な高成長を実現する事業変革をより具体的かつ本格的に進めると同時に,劇的な環境変化へ対応可能な企業体質への変革を加速していきます。
「グループ経営方針2023」の取り組み,経営目標
① 持続的な高成長を実現する事業の変革
事業を通じて社会課題を解決し,社会と当社グループの持続的な高成長を両立するためには,お客さま事業のライフサイクルを通じた価値の提供と,バリューチェーン全体を構築することによる価値の向上が重要となります。「グループ経営方針2023」では,事業を次の3つに区分し,いずれについてもライフサイクルとバリューチェーンを強く意識しながら取り組んでいきます。
a.成長事業:航空エンジン・ロケット分野
航空エンジン・ロケット分野は,当社グループの成長を牽引する事業と位置付けました。
民間分野のみならず防衛分野でも強化・拡大を図る航空エンジン・ロケット事業や,環境にやさしく経済効率も高い航空機を実現するため,装備品及び機体の軽量化や電動化,SAF(持続可能な航空燃料)の開発,ロケットの打上げサービス及び打上げに付随して取得される宇宙・地上・海中データの利活用など,ライフサイクルとバリューチェーン全体を意識して事業を拡大していきます。
b.育成事業:クリーンエネルギー分野
クリーンエネルギー分野は,航空エンジン・ロケット分野と双璧をなし,当社グループの成長を牽引する事業に育成すべく取り組んでいきます。
当社グループはアンモニアの燃焼技術において世界をリードする位置にありますが,今後は,貯蔵や輸送も含めたアンモニアバリューチェーン全体を構築し価値向上を図ることで,社会やお客さまに貢献できるように努めます。また,燃料製造プロジェクトへの投資など,新たなビジネスモデルの構築にも取り組んでいきます。
c.中核事業
資源・エネルギー・環境,社会基盤,産業システム・汎用機械分野は,引き続き当社グループの中核を担う事業と位置付けました。
これらの事業は,これまでのビジネスの延長ではなく,お客さまのライフサイクルにより深く入り込み,そこから得られた知見をフィードバックすることで,さらに進化した製品・サービスをお客さまに提供していきます。また,成長事業及び育成事業に対して投下するキャッシュや人財などの経営資源を捻出するために,業務プロセスの改革やデジタル基盤の活用による業務効率化とともに,事業の見直しも進めていきます。
② 環境変化への対応,変革を実現しうる企業体質への変革
当社グループは,ESGを軸とする経営を徹底するとともに,事業変革のために不可欠な情報デジタル基盤の高度化,そして企業体質の変革を成し遂げる上で最も重要である変革人財の育成・獲得を積極的に進めていきます。
③ 資源配分と経営目標
営業キャッシュ・フロー1,000億円以上の継続的な創出により,成長・育成事業を中心に3年間で5,000億円以上の投資を実施します。また,安定配当を基本方針として連結配当性向30%を目指します。
財務目標2025年度
ROIC(税引後)8%以上
営業利益率7.5%
CCC100日
(参考) 売上収益17,000億円

(注)各指標の算出方法は次のとおりです。
・ROIC :(1-法定実効税率)×(営業利益+受取利息+受取配当金)
÷(親会社の所有者に帰属する持分+有利子負債の金額)
・CCC :運転資本÷売上収益×365日
・運転資本:営業債権+契約資産+棚卸資産+前払金-契約負債-営業債務-返金負債
(3)会社の対処すべき課題
会社の対処すべき課題につきましては,前項「(2)中長期的な会社の経営戦略及び経営指標」における中期経営計画「グループ経営方針2023」での取り組みに記載のとおりです。
<長期的な課題>ESG経営
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当社グループは,自然と技術が調和する社会を創るために,取り組むべき社会課題を「脱CO₂の実現」,「防災・減災の実現」,「暮らしの豊かさの実現」としています。地球規模で問題となっている気候変動への対策として,温室効果ガスの排出量を減らす「緩和」と,その影響に備えて被害を軽減する「適応」に取り組み,暮らしの豊かさを実現していきます。
・社会課題の解決
当社グループは,2050年までに,バリューチェーン全体で,カーボンニュートラルを実現することを宣言しました。自社の事業活動によって直接・間接に排出される温室効果ガス(Scope1・2)だけでなく,私たちの上流及び下流のプロセスで排出される温室効果ガス(Scope3)の削減に取り組み,カーボンニュートラルを目指します。具体的には,既存技術を活用した「トランジション」と,新しい技術による「トランスフォーメーション」の2段階で取り組んでいきます。
また,自然災害に強く経済的なインフラ整備と,人的被害ゼロを実現する災害・被害予測とインフラを統合するシステムを構築し,安心・安全で暮らしやすいコミュニティの実現を目指します。橋梁を中心とした高度保全の知見を強みとして,センシング技術・モニタリング技術を活用し,予防診断技術の高度化を進め,適時適切なインフラの保全事業を拡大展開し,非常時には強く,平時には快適な,デュアルユースとなるインフラを備えたコミュニティの実現に取り組んでいきます。
・人権の尊重
当社グループは,「IHIグループ基本行動指針」において,地球的課題を意識し,あらゆるステークホルダーの期待に応えるために私たちがなすべきことを定めています。この指針に基づき,2020年12月に「IHIグループ人権方針」を定めました。国際規範に基づく人権啓発活動を通じて,人権を尊重する企業文化の醸成と事業活動全般にわたる人権尊重の取組みを推進することで,あらゆる人びとに対する人権尊重の責任を積極的に果たしていきます。また,サプライチェーンにおいても,取引先と協働して社会的責任を果たしていくCSR調達に取り組むことを,「IHIグループ調達基本方針」に定めました。
バリューチェーンを通じて,事業活動によるステークホルダー・ライツホルダーに対する負の影響を予防・低減し,すべての人の豊かな生活を実現するために取り組みます。
・多様な人材の活躍
持続可能な社会を実現するには,多様性を受け入れ,環境の変化を的確に把握し対応することが必要です。
社会の発展に貢献するという経営理念や,自然と調和した社会を創るという目指す姿を,社員一人ひとりが理解し,企業としての使命を自覚することが必要です。会社と社員が,お互いの成長に貢献し合う関係性を保ちながら,個人と組織のベクトルを合わせていくことが重要であると考えています。
また,当社グループは,人材の多様性を尊重し受け入れる「ダイバーシティ&インクルージョン」を重要な価値観とし,多様なバックグラウンド・多様な経験・異なる視点を持った多様な人材が活躍できる環境を整備していきます。また,社員一人ひとりがより幅広い視野・経験を身に着けるための制度の拡充や,さまざまな機会提供を行なっていきます。
・ステークホルダーからの信頼の獲得
事業を通じて社会課題を解決し,企業価値を高めるためには,グループが本来有する力を最大限に発揮できるよう基盤を築くこと,また,あらゆるステークホルダーとの積極的な対話を行なうことが重要であると考えています。