有価証券報告書-第127期(2025/04/01-2026/03/31)

【提出】
2026/06/22 16:25
【資料】
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【項目】
179項目
b. 戦略
2010年に日産は、国連大学とともに自社の活動がバリューチェーン全体の生態系に与える影響と依存を評価し、その研究成果を報告書「Ecosystem Services and the Automotive Sector」として発表した。これは2001~2005年に国連が主導した「ミレニアム生態系評価」に基づく「企業のための生態系サービス評価」の手法を用いたものである。この評価を通じて、自動車メーカーが優先的に対応すべき3つの重点領域「エネルギーの調達」「材料資源の調達」「水資源の利用」を特定した。さらに2013年には水に関するインパクト評価を実施し、資源調達段階での水資源の利用が、日産の事業活動での水使用量の20倍以上に上ることが試算された。これらの評価結果はマテリアリティの判断にも反映されており、「ニッサン・グリーンプログラム(NGP)」の方針や戦略、具体的なアクションに落とし込まれている。
気候変動
NGPは中期目標の達成を通じて成果を収めてきたが、気候変動による異常気象の脅威は一段と高まっている。2030年度でのありたい姿を具体化し、投資家をはじめとするステークホルダーにより分かりやすく的確に伝えることが重要だと考え、日産はTCFD(*)の提言を支持し、その推奨枠組みに沿った情報開示に努めていく。また、シナリオ分析手法の精度向上とリスク量の正確な把握についても継続して取り組む。
* TCFD:Task Force on Climate-related Financial Disclosures
気候変動シナリオ分析を用いた2050年社会への戦略強化
国際エネルギー機関(IEA:International Energy Agency)の4℃と2℃シナリオ、及び気候変動に関する政府間パネル(IPCC:Intergovernmental Panel on Climate Change)の1.5℃特別報告書に基づき、2050年までの気候変動がもたらすさまざまな機会とリスクを検討した。特に自動車セクターにおけるリスク要因を定義し、シナリオごとのリスク振れ幅を確認した。また、世界170以上に及ぶ市場を前提とした。さらにお客さまや市場の受容性変化、自動車に関わる規制の強化、クリーンエネルギーへの移行を因子として考慮し、日産の事業活動や商品、サービスについて、気候変動がもたらす機会とリスクに対する戦略のレジリエンス性を以下の4つのステップで検討した。
検討のステップ
・過去のマテリアリティの評価や、文献調査などで気候変動によって自動車セクターに決定的な影響を与え得るリスク要因を調査し、人口・経済・地政学、気候変動政策、技術などの区分でメインドライバーを定義
・メインドライバーは物理的リスクと移行リスクに分類され、それぞれがトレードオフの関係にあることを考慮し、地球の平均気温の上昇を1.5℃、2℃、4℃と3種類のシナリオで検討し、2℃シナリオを基準とした場合のリスク振れ幅を確認
・自動車セクターへの影響度合いとその時間軸をもとに、メインドライバーから影響力の高い項目をスクリーニング
・シナリオごとの変化、状態、影響を整理し、戦略強化に必要な要素を定性評価に基づいて導出
想定した気候変動シナリオ
・1.5℃シナリオ:急激な緩和策が要求されるが、長期的には持続可能な社会に移行する。
参照:IEA NZEシナリオ(*)、IPCC 1.5℃特別報告書
・4℃シナリオ:気候変動被害が深刻かつ大規模化し、適応に追われながら緩和策が強制される。
参照:IPCC RCP 8.5(**)、IPCC SSP 3(***)
* 2050年までにネットゼロ排出を達成するための道筋を示したシナリオ (NZE: Net Zero Emissions Scenario)
** 代表的濃度経路(RCP: Representative Concentration Pathways)
*** 共通社会経済経路(SSP: Shared Socio-Economic Pathways)
想定したシナリオと関連するリスクと機会

* 発生の時間軸:短期(~5年以内)、中期(~2030年)、長期(~2050年以上)
** 当社の収益及び費用に与える影響度
検証の結果、日産の電動化技術は、2℃以外のシナリオにおいてもリスクに対応可能で、さらに機会を創出するポテンシャルがあり、企業としてのレジリエンス性があると認識した。これらの技術の具現化に向けた取り組みのさらなる加速と、リスク対応のためにはサプライチェーンとの連携が重要である。特にゼロ・エミッション車の拡大は、脱炭素社会への移行だけでなく、電力や減災・防災における社会のレジリエンス性に貢献する。電気自動車の性能向上と、環境の持続可能性を確保するにはさらなる開発を伴うが、最終的には社会価値創造とビジネスの両立を可能にすると捉えている。
財務インパクトの一例
二酸化炭素排出に対する価格付けが進み、炭素税を導入する国・地域が拡大している。国・地域により、課税の水準や対象となる業種も異なるが、企業に対する影響が大きいため、一例として炭素税の拡大による移行リスクの財務インパクトを試算する。2030年時点の財務影響評価を試みたところ、Scope 1&2におけるGHG排出量削減により、炭素税の影響を約250億円抑えることができると試算された。
算定式と試算額の評価、前提条件
試算では、シナリオ分析と同様にIEA NZEシナリオにおけるCO2 priceを参照している。2030年時点のGHG排出量の炭素税を、次の条件で算出した。
①2018年時点の企業活動が継続された場合
②NGPによる環境課題への取り組みが促進され、単年度での炭素税の影響を抑えた場合
自然関連課題
日産はTNFD(*)の提言に賛同し、TNFDフォーラムに参画している。2024年度からは、TNFDの提言に基づいた開示の準備を進めており、TNFDに基づいた開示とその拡大計画について取締役を含む役員の了承を得て、2025年1月にはTNFDアダプターに登録を行った。そして、TNFDが推奨するLEAP(**)分析に基づき、バリューチェーンにおける包括的な自然関連課題を認識、評価するための分析を実施した。その結果、自然への依存や影響の大きい領域はNGPで重要課題として網羅していることが確認された。また、LEAPの手法に沿っての詳細な分析を2024年度に直接操業を、2025年度にはバリューチェーン上流を中心に行った結果、事業と関連の高いリスクや機会への対策はNGPの資源や水に関する活動や目標が網羅していることが確認された。日産は事業に関連の深い分野(気候変動、資源、大気品質と水)から気候変動や生物多様性を含む自然関連課題に取り組み、NGPの目標の達成に向け活動を推進していくとともに社会的要求への高まりに合わせて対策の強化を検討していく。
* TNFD:Taskforce on Nature-related Financial Disclosures
** LEAP: TNFDが推奨する自然課題へのプロセス、自然との接点、自然との依存関係、インパクト、リスク、機会など、自然関連課題の評価のための統合的なアプローチ。スコーピングを経て、Locate(発見する)、Evaluate(診断する)、Assess(評価する)、Prepare(準備する)のステップを踏む。
中期環境行動計画「ニッサン・グリーンプログラム(NGP)2030」
日産は、環境理念である「人とクルマと自然の共生」を実現するため、中期環境行動計画「ニッサン・グリーンプログラム(NGP)」を2002年に発表し、環境への依存と影響を自然が吸収できる範囲に抑えるという究極のゴール達成に向けて取り組みを続けてきた。2023年度には第五世代に当たる2030年度を見据えた「NGP2030」をスタートした。将来に向けた技術の進化と社会連携の方向性を明確にし、サプライチェーン、パートナーと目標を共有し、ともに環境対応と社会的価値の創出を目指していく。
「NGP2030」の取り組むべき重要課題とチャレンジ
日産は環境マテリアリティ評価に基づき、「気候変動」「資源への依存」「大気品質と水」を重要課題に設定した。また、ステークホルダーエンゲージメントを通じてそのニーズを把握し、環境課題に関わる「事業基盤の強化」と新たな価値創出に努めている。「気候変動」の脱炭素の推進にあたっては、バリューチェーンへの影響を把握し、負の影響を極力抑えた公平な移行(just transition)を考慮した活動を意識している。
取り組みの指標や進捗は、クルマづくりに携わる開発・生産部門のほか、セールス・サービス部門を含む企業全体での、ビジネス基盤強化と社会価値の創出に取り組んだ成果としてサステナビリティデータブック等を通じて毎年開示している。また、後述の「d.指標と目標」においても主要項目について開示している。

CO2排出量の削減に向けた日産の取り組み
日産は、CO2排出量の削減や電動化技術の実用化の実績に加え、2050年までに事業活動を含むクルマのライフサイクル全体(*)におけるカーボンニュートラルを実現する新たな目標を2021年1月に発表した。企業活動では、自社及びクルマの原材料の調達、輸送に関わるサプライヤーとともに省エネ活動やクリーンなエネルギーへの転換を進め、CO2削減に取り組む。製品については、顧客ニーズと各市場における電動化のスピードに対応した多様な電動車ポートフォリオの構築を進め、電動車の拡充とイノベーションを推進する。また、ライフサイクルのあらゆる段階におけるCO2を削減するため、グリーン材やリサイクル材の採用、使用済み車両のリサイクルや再利用にも取り組む。
* クルマのライフサイクルには、原材料の採掘から、生産、クルマの使用、使用済み自動車のリサイクルや再利用までを含む
カーボンニュートラルロードマップ(生産工場での事例)
日産では生産工場においてもカーボンニュートラルを目標とした活動を推進している。
達成に向けた取り組みを着実に推進するため、2021年10月、生産工場において2050年までにカーボンニュートラルを実現するロードマップを発表した。

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