有価証券報告書-第121期(2024/04/01-2025/03/31)
リスクと機会の特定および評価
将来の社会像を想定した気候変動関連のリスクと機会の主要な変動要因(リスクドライバー)を、移行リスク(政策・法規制、市場、技術、評判)、物理的リスク(急性・慢性)のそれぞれの観点で特定します。特定したリスクドライバーを起点とし、リスクと機会に至るまでの要因解析を実施することにより、リスクと機会を網羅的に洗い出します。要因解析により特定したリスクと機会に、TGRSで特定されたリスクを取り込み、リスクドライバーをカバーする各シナリオにおいて、リスクと機会の発現と影響度がどのように変化するかを検証・評価(4℃シナリオでは、トヨタのグローバル生産拠点の地理情報に基づいた物理的リスクの影響を評価)しています。
シナリオの選定
参照シナリオとして、以下の公表シナリオを選択しています。
・1.5℃シナリオ(IEA*1 IPCC*2 AR6 WG 3など複数の公表シナリオ)
・4℃シナリオ(IPCC AR6 WG1 SSP5-8.5)
*1 International Energy Agency:国際エネルギー機関
*2 Intergovernmental Panel on Climate Change:気候変動に関する政府間パネル
シナリオ選定における考え方
トヨタはエネルギーの未来について、将来的には再生可能エネルギーの普及を通じて、社会を支えるエネルギーは電気と水素に収れんしていくと考察していますが、その一方で、足元では国・地域ごとに様々なエネルギー事情があり、トランジションのペースが異なることを認識しています。近年の世界情勢からも、環境問題と経済安全保障との両立が議論され始めるなか、国際的なインフレによる再生可能エネルギー投資の鈍化や、欧米などでのBEVの販売低迷といった事象も見受けられます。
こうした背景認識のもと、中長期的には電気と水素の未来を見据えながら、短期的にはエネルギーの実情と多様なお客様ニーズに応える選択肢を提供し、現実に即したトランジションを進めていくことがトヨタのマルチパスウェイ戦略の考え方です。
気候変動枠組条約締約国会議(COP)をはじめとする国際的な対応議論の場においても、将来に至るまでの過渡期の対応、各国・各地域の事情に応じた緩和策や多様な脱炭素手段の導入について議論が進行しています。
上記を踏まえ、1.5℃シナリオにおける分析では、乗用車について、BEV・PHEVの導入を主要な施策として脱炭素策を論じたIEAのNZEシナリオに加え、地域性や緩和策の多様化(炭素吸収技術(CDR)/炭素回収・貯留技術(CCS)/カーボンニュートラル燃料など)を反映したその他の1.5℃シナリオも考慮し、戦略のレジリエンスを検証しています。
また、各シナリオの前提・世界観を整理し、各シナリオの実現に向けた課題を以下のとおり考察しています。
IEA NZEシナリオに関しては、グローバル全体で再生可能エネルギー利用が促進され、自動車分野ではBEVが推進し、急速にGHGが削減する前提だが、実際には地域のエネルギー事情と政策展開により、これらの施策は取り組みの進度が異なることが想定されます。
その他の1.5℃シナリオに関しては、バイオ燃料では食料競合や土地利用制約による供給量の差異などで、地域による燃料種や導入量の差が生じ得ることや、脱炭素技術の市場導入では初期段階に多大な投資が必要で、投資状況により進展に差が生じ得る(将来的には市場に広く浸透することによりコストが適正化されると考察)ことが想定されます。
財務影響評価
特定したリスクと機会の財務指標との紐づきについて、因果関係の検証を実施しています。特定したリスクと機会におけるモビリティコンセプトなどの経営上のテーマやサステナビリティの重点取り組みテーマとの関連性を評価し重要性を確認し、それぞれのシナリオにおける前提を考慮し、特定したリスクと機会の潜在的な財務影響を評価しています。

レジリエンス分析の概要
カーボンニュートラル(CN)の実現に向け、エネルギーの未来を見据えて、燃料やインフラなど地域ごとに異なるニーズに応える多様な選択肢を提供することにより、プラクティカルにトランジションを進めていくことがトヨタのマルチパスウェイ戦略の考え方です。シナリオ分析では、TCFDフレームワークを参考に、移行リスクは1.5℃シナリオ、物理的リスクは4℃シナリオを用いて、リスクと機会を特定し、財務影響評価を実施しています。近年の世界情勢や国際的な気候変動対応議論の状況を踏まえ、IEAのNZEシナリオに加え、その他の1.5℃シナリオについても比較検討しています。いずれのシナリオの前提条件にも制約がともなう場合があるため、それらの状況についても考慮しつつ、特定したリスクの最小化および機会の獲得に向けたトヨタの取り組みを整理するとともに、シナリオの実現に向けた社会的課題に貢献しうるトヨタの取り組みを整理することにより、トヨタの事業活動におけるレジリエンスを検証しています。
1.5℃シナリオ分析
IEAのNZEシナリオの検討
IEAはNZEシナリオ実現に向け、以下課題への対応が必要と報告しています。
再生可能エネルギーの積極的な導入により電力の脱炭素化が進むなか、運輸部門中の乗用車はBEV化が進み、2030年以降、急速にGHG排出が削減され、2050年にネットゼロを達成すること、また、その実現に向けて、各国政府が、カーボンプライシング/燃費規制の厳格化/内燃機関車の販売禁止など、野心的な気候政策を実施すると同時に、BEVを普及するためのインセンティブ策を拡大すること、そして、政策と消費者の環境意識の向上により、市場はBEVを受容する一方、技術面では、車両電動化/革新的な電池開発/再生可能エネルギー電力を活用したエネルギーマネジメントシステムなどが進展し、社会全体で電化と再生可能エネルギーへの転換が進み、エネルギー効率の改善によりエネルギー消費量が削減することがあげられています。
本シナリオにおける移行リスクには、以下があります。
・燃費/GHG/ZEV規制不適合による罰金など
・規制対応にともなう急な商品変更による減産や販売台数の低下
・パワートレーン技術開発にともなう研究開発費用の増加
・車両の電動化が急速に進むことにより、BEV関連の原材料需要増加にともなう供給不足と調達コストの増加
・再生可能エネルギー拡大にともなう再生可能エネルギー価格(IREC含む)の高止まりによる製造コスト増加

IEAのNZEシナリオ実現に向けては、以下のような社会的課題があります。
・再生可能エネルギー導入を促進する政策
・投資の実行、電池材料確保のための社会システム構築とリサイクル技術開発
・電気や水素利用の脱炭素技術革新と低コスト化
・電動車普及にともなう充電インフラの整備など
これらの社会的課題に対し、トヨタは以下の取り組みに貢献するとともに、自社のリスクも最小化しています。

その他の1.5℃シナリオの比較検討
2024年、IEAのNZEシナリオに加え、地域ごとの値や差異をより詳細に分析するため、IPCCや各研究機関が公表している複数の1.5℃シナリオ群を比較検討しました。パリ協定1.5℃実現に向けた道筋として、エネルギー部門では、再生可能エネルギー利用のほか、炭素回収貯留技術(CCS)などの多様な技術導入など比較検討し、運輸セクターでは、車両の電動化のほか、省燃費車の活用やバイオ燃料や合成燃料などの低炭素燃料・カーボンニュートラル(CN)燃料の普及などを比較検討しました。また、新興国では、各地域のバイオマスなどの低炭素エネルギー源を活用し、過渡期にはCCUSと組み合わせた化石燃料利用の検討も行い、経済発展とCNの両立を目指ことや、低炭素燃料・CN燃料などの多様なエネルギーインフラ整備が進むことで消費者は生活利便性に基づき、多様なエネルギーとパワートレーンを選択することが想定されます。
シナリオ群実現に向けた社会的課題は、IEAのNZEシナリオに比べより多様化しています。例えば、水素/バイオ/合成燃料など各国・地域に適合した低炭素燃料・CN燃料の技術開発、ならびに普及初期段階での導入支援や、バイオ燃料に関わる食料競合などの問題解決や低コスト化があります。その他には、CN燃料の他セクターとの配分や、安定したエネルギー供給に向けた技術開発や政策支援などがあります。
本シナリオ群における移行リスクとして、BEV推進に係る移行リスクはIEAのNZEシナリオと同様ですが、現時点での各国・各地域のBEV導入の実績、施策の見直しを踏まえると、トヨタの戦略・財務への影響は比較的小さいこと、自動車燃料多様化にともなう研究開発費用が増加すること、そして、電力以外にも、ガス燃料や液体燃料などエネルギーの低炭素化にともなうエネルギー調達コストが増加することがあげられます。


シナリオ分析を通じて、パリ協定に整合する1.5℃実現に向けた経路は様々に存在し、それぞれに実現のための条件と社会的な課題が存在することが判明しました。また、世界にマーケットを持つトヨタは、単一の施策・技術に特化し限定されることなく、各国・各地域で異なる市場とステークホルダーの要請に応えるため、様々な経路や、不確実性に対応可能な多様な施策・技術(マルチパスウェイ戦略)が有効と再認識しました。

4℃シナリオ分析
IPCC SSP5-8.5は、化石燃料依存型の経済発展を続けて気候政策が導入されない場合の最大排出量シナリオであり、物理的リスクを評価しています。
本シナリオ下における主な物理的リスクには、自然災害の頻発化や激甚化の結果、サプライチェーンが分断することによる生産・販売の停止や水不足や水コスト増加による、工場操業への影響があります。また、昨今の自然災害の実態を踏まえたリスクの高い拠点のスクリーニングとして、洪水による河川氾濫/内水氾濫/高潮による浸水ハザードについて、国内外の事業拠点(国内137拠点・海外73拠点)の地理的座標を用いて、リスクの高い拠点のスクリーニングを実施しました。スクリーニングの結果、気候変動による将来変化が見られ、リスクに留意すべき(グレードB以上)と評価された国内外の拠点についてリスク評価を実施しました。


シナリオ分析を通じて、国内外の事業拠点の一部において河川氾濫リスク・内水氾濫リスク・高潮リスクが特定されましたが、地域の事業体への影響は軽微であることが判明しました。また、災害訓練などによりPDCAを回して改善を行うことでBCPの実効性が高まり、災害発生時の復旧速度は上がっていることを確認しました。この活動を「事業継続マネジメント(BCP*1)」と位置づけ、従業員・家族・トヨタグループ・サプライヤー・販売・トヨタが三位一体となった活動として推進し、今後も継続していきます。
*1 Business Continuity Management:BCPで定めた各対策計画が実行可能なものとして機能するよう定める運用管理の仕組み
レジリエンス分析結果として、トヨタは町いちばんの会社を目指すとの理念に基づいて各国・各地域発展の助成につながるべく、さまざまな経済・エネルギー事情に即しつつ、お客様に受け入れていただけるラインアップを計画しています。このマルチパスウェイ戦略は、あらゆるシナリオが描く世界観においてレジリエンスが高いことが判明しました。IPCC報告書でも記載されているとおり、パリ協定で掲げられている1.5℃実現には様々な経路があり、地域のエネルギー事情や政策によっても変動する可能性がありますが、その実現には様々な産業が関わっているため、カーボンニュートラル(CN)燃料普及も含んだパートナー連携が不可欠です。トヨタはパリ協定を支持し、それに沿って行動しています。パリ協定との整合は重要であり、パートナーと共に、モビリティコンセプトに基づく車両開発や社会インフラ作りを推進し、2050年CN達成に向けて全力でチャレンジしていきます。今後もシナリオ分析を継続することで、内外の状況の変化に応じてリスクと機会を見直し、その対応を戦略に織り込むことでさらなるレジリエンス向上に注力していきます。
移行計画
前述したリスクと機会へ対応するために、トヨタでは移行計画として温室効果ガス(GHG)削減目標を設定しています。移行計画の妥当性確認には、複数のシナリオを参照しています。
マルチパスウェイ戦略の下、プロジェクト関連の財務計画に落とし込み、移行計画を具体化してまいります。なお、一定額以上のプロジェクト投資にあたっては、取締役会で承認します。


将来の社会像を想定した気候変動関連のリスクと機会の主要な変動要因(リスクドライバー)を、移行リスク(政策・法規制、市場、技術、評判)、物理的リスク(急性・慢性)のそれぞれの観点で特定します。特定したリスクドライバーを起点とし、リスクと機会に至るまでの要因解析を実施することにより、リスクと機会を網羅的に洗い出します。要因解析により特定したリスクと機会に、TGRSで特定されたリスクを取り込み、リスクドライバーをカバーする各シナリオにおいて、リスクと機会の発現と影響度がどのように変化するかを検証・評価(4℃シナリオでは、トヨタのグローバル生産拠点の地理情報に基づいた物理的リスクの影響を評価)しています。
シナリオの選定
参照シナリオとして、以下の公表シナリオを選択しています。
・1.5℃シナリオ(IEA*1 IPCC*2 AR6 WG 3など複数の公表シナリオ)
・4℃シナリオ(IPCC AR6 WG1 SSP5-8.5)
*1 International Energy Agency:国際エネルギー機関
*2 Intergovernmental Panel on Climate Change:気候変動に関する政府間パネル
シナリオ選定における考え方
トヨタはエネルギーの未来について、将来的には再生可能エネルギーの普及を通じて、社会を支えるエネルギーは電気と水素に収れんしていくと考察していますが、その一方で、足元では国・地域ごとに様々なエネルギー事情があり、トランジションのペースが異なることを認識しています。近年の世界情勢からも、環境問題と経済安全保障との両立が議論され始めるなか、国際的なインフレによる再生可能エネルギー投資の鈍化や、欧米などでのBEVの販売低迷といった事象も見受けられます。
こうした背景認識のもと、中長期的には電気と水素の未来を見据えながら、短期的にはエネルギーの実情と多様なお客様ニーズに応える選択肢を提供し、現実に即したトランジションを進めていくことがトヨタのマルチパスウェイ戦略の考え方です。
気候変動枠組条約締約国会議(COP)をはじめとする国際的な対応議論の場においても、将来に至るまでの過渡期の対応、各国・各地域の事情に応じた緩和策や多様な脱炭素手段の導入について議論が進行しています。
上記を踏まえ、1.5℃シナリオにおける分析では、乗用車について、BEV・PHEVの導入を主要な施策として脱炭素策を論じたIEAのNZEシナリオに加え、地域性や緩和策の多様化(炭素吸収技術(CDR)/炭素回収・貯留技術(CCS)/カーボンニュートラル燃料など)を反映したその他の1.5℃シナリオも考慮し、戦略のレジリエンスを検証しています。
また、各シナリオの前提・世界観を整理し、各シナリオの実現に向けた課題を以下のとおり考察しています。
IEA NZEシナリオに関しては、グローバル全体で再生可能エネルギー利用が促進され、自動車分野ではBEVが推進し、急速にGHGが削減する前提だが、実際には地域のエネルギー事情と政策展開により、これらの施策は取り組みの進度が異なることが想定されます。
その他の1.5℃シナリオに関しては、バイオ燃料では食料競合や土地利用制約による供給量の差異などで、地域による燃料種や導入量の差が生じ得ることや、脱炭素技術の市場導入では初期段階に多大な投資が必要で、投資状況により進展に差が生じ得る(将来的には市場に広く浸透することによりコストが適正化されると考察)ことが想定されます。
財務影響評価
特定したリスクと機会の財務指標との紐づきについて、因果関係の検証を実施しています。特定したリスクと機会におけるモビリティコンセプトなどの経営上のテーマやサステナビリティの重点取り組みテーマとの関連性を評価し重要性を確認し、それぞれのシナリオにおける前提を考慮し、特定したリスクと機会の潜在的な財務影響を評価しています。

レジリエンス分析の概要
カーボンニュートラル(CN)の実現に向け、エネルギーの未来を見据えて、燃料やインフラなど地域ごとに異なるニーズに応える多様な選択肢を提供することにより、プラクティカルにトランジションを進めていくことがトヨタのマルチパスウェイ戦略の考え方です。シナリオ分析では、TCFDフレームワークを参考に、移行リスクは1.5℃シナリオ、物理的リスクは4℃シナリオを用いて、リスクと機会を特定し、財務影響評価を実施しています。近年の世界情勢や国際的な気候変動対応議論の状況を踏まえ、IEAのNZEシナリオに加え、その他の1.5℃シナリオについても比較検討しています。いずれのシナリオの前提条件にも制約がともなう場合があるため、それらの状況についても考慮しつつ、特定したリスクの最小化および機会の獲得に向けたトヨタの取り組みを整理するとともに、シナリオの実現に向けた社会的課題に貢献しうるトヨタの取り組みを整理することにより、トヨタの事業活動におけるレジリエンスを検証しています。
1.5℃シナリオ分析
IEAのNZEシナリオの検討
IEAはNZEシナリオ実現に向け、以下課題への対応が必要と報告しています。
再生可能エネルギーの積極的な導入により電力の脱炭素化が進むなか、運輸部門中の乗用車はBEV化が進み、2030年以降、急速にGHG排出が削減され、2050年にネットゼロを達成すること、また、その実現に向けて、各国政府が、カーボンプライシング/燃費規制の厳格化/内燃機関車の販売禁止など、野心的な気候政策を実施すると同時に、BEVを普及するためのインセンティブ策を拡大すること、そして、政策と消費者の環境意識の向上により、市場はBEVを受容する一方、技術面では、車両電動化/革新的な電池開発/再生可能エネルギー電力を活用したエネルギーマネジメントシステムなどが進展し、社会全体で電化と再生可能エネルギーへの転換が進み、エネルギー効率の改善によりエネルギー消費量が削減することがあげられています。
本シナリオにおける移行リスクには、以下があります。
・燃費/GHG/ZEV規制不適合による罰金など
・規制対応にともなう急な商品変更による減産や販売台数の低下
・パワートレーン技術開発にともなう研究開発費用の増加
・車両の電動化が急速に進むことにより、BEV関連の原材料需要増加にともなう供給不足と調達コストの増加
・再生可能エネルギー拡大にともなう再生可能エネルギー価格(IREC含む)の高止まりによる製造コスト増加

IEAのNZEシナリオ実現に向けては、以下のような社会的課題があります。
・再生可能エネルギー導入を促進する政策
・投資の実行、電池材料確保のための社会システム構築とリサイクル技術開発
・電気や水素利用の脱炭素技術革新と低コスト化
・電動車普及にともなう充電インフラの整備など
これらの社会的課題に対し、トヨタは以下の取り組みに貢献するとともに、自社のリスクも最小化しています。

その他の1.5℃シナリオの比較検討
2024年、IEAのNZEシナリオに加え、地域ごとの値や差異をより詳細に分析するため、IPCCや各研究機関が公表している複数の1.5℃シナリオ群を比較検討しました。パリ協定1.5℃実現に向けた道筋として、エネルギー部門では、再生可能エネルギー利用のほか、炭素回収貯留技術(CCS)などの多様な技術導入など比較検討し、運輸セクターでは、車両の電動化のほか、省燃費車の活用やバイオ燃料や合成燃料などの低炭素燃料・カーボンニュートラル(CN)燃料の普及などを比較検討しました。また、新興国では、各地域のバイオマスなどの低炭素エネルギー源を活用し、過渡期にはCCUSと組み合わせた化石燃料利用の検討も行い、経済発展とCNの両立を目指ことや、低炭素燃料・CN燃料などの多様なエネルギーインフラ整備が進むことで消費者は生活利便性に基づき、多様なエネルギーとパワートレーンを選択することが想定されます。
シナリオ群実現に向けた社会的課題は、IEAのNZEシナリオに比べより多様化しています。例えば、水素/バイオ/合成燃料など各国・地域に適合した低炭素燃料・CN燃料の技術開発、ならびに普及初期段階での導入支援や、バイオ燃料に関わる食料競合などの問題解決や低コスト化があります。その他には、CN燃料の他セクターとの配分や、安定したエネルギー供給に向けた技術開発や政策支援などがあります。
本シナリオ群における移行リスクとして、BEV推進に係る移行リスクはIEAのNZEシナリオと同様ですが、現時点での各国・各地域のBEV導入の実績、施策の見直しを踏まえると、トヨタの戦略・財務への影響は比較的小さいこと、自動車燃料多様化にともなう研究開発費用が増加すること、そして、電力以外にも、ガス燃料や液体燃料などエネルギーの低炭素化にともなうエネルギー調達コストが増加することがあげられます。


シナリオ分析を通じて、パリ協定に整合する1.5℃実現に向けた経路は様々に存在し、それぞれに実現のための条件と社会的な課題が存在することが判明しました。また、世界にマーケットを持つトヨタは、単一の施策・技術に特化し限定されることなく、各国・各地域で異なる市場とステークホルダーの要請に応えるため、様々な経路や、不確実性に対応可能な多様な施策・技術(マルチパスウェイ戦略)が有効と再認識しました。

4℃シナリオ分析
IPCC SSP5-8.5は、化石燃料依存型の経済発展を続けて気候政策が導入されない場合の最大排出量シナリオであり、物理的リスクを評価しています。
本シナリオ下における主な物理的リスクには、自然災害の頻発化や激甚化の結果、サプライチェーンが分断することによる生産・販売の停止や水不足や水コスト増加による、工場操業への影響があります。また、昨今の自然災害の実態を踏まえたリスクの高い拠点のスクリーニングとして、洪水による河川氾濫/内水氾濫/高潮による浸水ハザードについて、国内外の事業拠点(国内137拠点・海外73拠点)の地理的座標を用いて、リスクの高い拠点のスクリーニングを実施しました。スクリーニングの結果、気候変動による将来変化が見られ、リスクに留意すべき(グレードB以上)と評価された国内外の拠点についてリスク評価を実施しました。


シナリオ分析を通じて、国内外の事業拠点の一部において河川氾濫リスク・内水氾濫リスク・高潮リスクが特定されましたが、地域の事業体への影響は軽微であることが判明しました。また、災害訓練などによりPDCAを回して改善を行うことでBCPの実効性が高まり、災害発生時の復旧速度は上がっていることを確認しました。この活動を「事業継続マネジメント(BCP*1)」と位置づけ、従業員・家族・トヨタグループ・サプライヤー・販売・トヨタが三位一体となった活動として推進し、今後も継続していきます。
*1 Business Continuity Management:BCPで定めた各対策計画が実行可能なものとして機能するよう定める運用管理の仕組み
レジリエンス分析結果として、トヨタは町いちばんの会社を目指すとの理念に基づいて各国・各地域発展の助成につながるべく、さまざまな経済・エネルギー事情に即しつつ、お客様に受け入れていただけるラインアップを計画しています。このマルチパスウェイ戦略は、あらゆるシナリオが描く世界観においてレジリエンスが高いことが判明しました。IPCC報告書でも記載されているとおり、パリ協定で掲げられている1.5℃実現には様々な経路があり、地域のエネルギー事情や政策によっても変動する可能性がありますが、その実現には様々な産業が関わっているため、カーボンニュートラル(CN)燃料普及も含んだパートナー連携が不可欠です。トヨタはパリ協定を支持し、それに沿って行動しています。パリ協定との整合は重要であり、パートナーと共に、モビリティコンセプトに基づく車両開発や社会インフラ作りを推進し、2050年CN達成に向けて全力でチャレンジしていきます。今後もシナリオ分析を継続することで、内外の状況の変化に応じてリスクと機会を見直し、その対応を戦略に織り込むことでさらなるレジリエンス向上に注力していきます。
移行計画
前述したリスクと機会へ対応するために、トヨタでは移行計画として温室効果ガス(GHG)削減目標を設定しています。移行計画の妥当性確認には、複数のシナリオを参照しています。
マルチパスウェイ戦略の下、プロジェクト関連の財務計画に落とし込み、移行計画を具体化してまいります。なお、一定額以上のプロジェクト投資にあたっては、取締役会で承認します。

