有価証券報告書

【提出】
2025/06/18 16:05
【資料】
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【項目】
204項目

足許の環境変化を踏まえた経営課題の認識と、今後の経営戦略の考え方は次のとおりです。なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであり、不確実性を内包しているため、将来生じうる実際の結果と異なる可能性がありますので、ご留意ください。
自動車業界は、地球温暖化対策としての電動化に加え、AI技術等の進化を取り込み知能化が進むなど、人の移動とモノを運ぶための手段であった自動車の概念が大きく変わり、「100年に一度」の大変革の時代を迎えています。
当社グループは2023年3月に、2023年度から2025年度までの中期経営計画「Challenge 2025」を発表しました。「Challenge 2025」では、これまで行ってきた構造改革による強靭かつ機動的な経営体質を基盤とし、地域や国の独自性に適した事業の拡充を図り、全社的な「手取り改善活動」の継続により、安定的な収益基盤の確立に取り組みました。そのうえで、更なる成長と次の時代へのチャレンジを実現するため、研究開発費や設備投資を安定的に増加させることを計画いたしました。
一方、中期経営計画「Challenge 2025」の発表から2年が経過し、一部に当初想定していた事業環境からの変化が生じ、主要施策の進捗にも差異が出ています。
まず、電動車開発に関しては、昨年来、全世界的に電気自動車(バッテリーEV)の成長が踊り場に差し掛かり、より現実的な環境技術としてプラグインハイブリッド車(PHEV)やハイブリッド車(HEV)が再評価されています。この環境変化を踏まえ、当面、自社製バッテリーEVの開発は見送り、バッテリーEVが必要な市場への対応については、主にパートナーとの協業による商品を活用、当社グループは優位性を持つプラグインハイブリッド車とハイブリッド車の開発に専念することにいたしました。
次に、アセアン地域での新商品連続投入による収益基盤の強化です。アセアン地域は中長期的には成長が期待できる当社グループの重点市場ですが、タイやインドネシアでは景気の冷え込みが継続、想定した市場成長からは大きく乖離した状況となっています。市場が好調なフィリピンや、力強い回復を見せるベトナムでは台数・シェアを大きく伸ばすことができましたが、アセアン全体としては中期経営計画で目論んだ台数・収益目標の達成に遅れが生じています。依然、本格的な景気回復には時間を要する状況と想定されますが、中期経営計画で準備してきた新商品の市場投入が2025年度も続くことから、これら新商品を梃に、アセアン地域の販売伸長を目指していきます。
「三菱自動車らしい」クルマの投入によるブランド力強化に関しては、近年、アセアンなどの新興市場を中心に、中国勢を含む多くの新規ブランドが参入し、競争が激化しています。そのため、従来以上にブランド力の強化が求められています。当社グループは、「三菱自動車らしさ」を具現化したモデルの投入を通じてブランド力を強化してきました。特にホームマーケットである日本では、『デリカミニ』や『トライトン』の投入を契機に、ブランド力が大きく向上し、マーケットシェアも着実に伸ばすことができました。この日本での成功事例を他国にも展開し、グローバルにブランド力を磨いていきます。
今後の商品投入については、クルマの知能化を含めクルマに対する要望が高度化することで、開発工数が増加し、中期経営計画で予定していた新型車の投入に一部遅れが生じましたが、引き続きアセアン戦略車の強化を継続いたします。そして、これら新型車をアセアンだけでなく、中南米・中東やオセアニア、日本へも展開拡大し、これら地域でも収益力向上を図ります。一方、欧米等のグローバルモデルについては、自社開発モデルに加え、様々なパートナーとの協業により、地域に応じたラインナップの強化・拡充を図ります。これにより、経済変動にも柔軟に対応できる強靭なグローバルポートフォリオを築いてまいります。
新事業形態へのチャレンジとしては、フィリピンにおいて新たに販売金融会社「ミツビシ・モーターズ・ファイナンス・フィリピンズ・インク」を設立いたしました。オーストラリアでは、自動車関連金融サービス会社大手の「FLEETPARTNERS GROUP LTD」に出資し、法人向け事業の拡大等、更なる販売台数及び収益拡大を目指します。日本でもスマート充電サービス事業など、新たな取組みを進めています。
資本コストや資本収益性を意識した経営への取組みについては、2024年11月に、資本効率の向上と株主還元の拡充を図ることを目的とし、自己株式の取得及びその一部の消却を実施しております。今後も、資本構造の最適化や株主還元の拡充を図り、企業価値の向上を目指します。
2025年度業績見通しにおいては、中期経営計画で目標とした一部指標を下回る見通しとなっておりますが、環境変化には柔軟に対応しつつも、これらの主要施策を着実に実行し、経営体質の更なる強化と将来に向けた成長の礎を築いてまいります。
今後も、「モビリティの可能性を追求し、活力ある社会をつくります」という当社グループビジョンのもと、お客様や株主様をはじめとしたすべてのステークホルダーの皆様のご期待を超える価値を創造し続けることで、企業価値の向上に取り組んでまいります。