有価証券報告書

【提出】
2017/06/23 16:04
【資料】
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【項目】
119項目
文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものである。
(1)経営環境
グローバル化する自動車産業においては、成熟国地域における燃費と排ガス浄化の両立、ハイレベルのIT技術を要する予防安全技術の高度化、コネクティッド・カーのような付加価値に関わる性能の向上が求められており、将来において更なる研究開発の高度化、長期化、開発競争の激化が予想される。
具体的に、環境規制については、成熟国市場・新興国市場を問わず規制の強化が進む流れにあり、当社においても、これら環境規制を充たすための内燃機関車の研究開発や、電気自動車・プラグインハイブリッド車の商品力強化に向けた研究開発費及び設備投資の増加が見込まれる。
また、高度化した予防安全技術やコネクティッド・カーといった領域では、大規模な自動車部品・電機メーカーから高付加価値な部品を購入するために、これまで以上に長い開発期間と大規模購入が必要となる。
(2)経営方針及び対処すべき課題等
① 信頼回復への取組み
過去の品質問題に加え、燃費試験における不正行為を行ったことを重く受け止め、内部統制・ガバナンスの抜本的改革・強化に着手した。
まず、コミュニケーションの円滑化や意思決定の迅速化を図るため、旧来のピラミッド型組織を機能軸で再編し、組織のフラット化と階層の簡素化を実施した。また、意思決定の効率化と責任の明確化を目的に、取締役会の権限委譲先を経営会議からCEO に変更し、経営会議をCEO の諮問機関に位置付け、また各階層に対する詳細な権限委譲規定を制定した。さらに、コンプライアンスとオペレーションのリスクを管理し、ガバナンス向上策について定期的に取締役会へ報告を行うグローバルリスクコントロール担当役員を任命した。法令に基づく内部統制の対応を各々強化・効率化するべく、金融商品取引法に基づく財務報告に係る内部統制はCFO直下のJ-SOX推進会議にて対応し、会社法に基づく内部統制はCEOを委員長とする新たな体制の内部統制委員会にて推進する体制とした。また、平成28年7月1日付で設置した事業構造改革室にて、開発プロセスの見直し等、31項目の再発防止策を着実に実施している。また、不正行為が判明した開発部門を中心に社内の組織・仕組み・文化・技術の改革を柱に据えた抜本的な構造改革「Performance Revolution (PRev)活動」を推進しており、この活動を開発部門以外に広げていく考えである。
今後もコンプライアンスを最優先に考え、一層のガバナンス強化を図り、法令の遵守、業務執行の適正性・効率性の確保等に向けた改善、充実により、お客様や社会からの早期の信頼回復に不断の努力を続けていく所存である。
② V字回復に向けて
平成29年度はV字回復を目指し、次期中期経営計画の初年度を迎える、当社にとっては正念場となる。会社の成長を遂げるためには大きく2つの経営課題がある。
まずは、売上高の増大である。成長は、会社に必要な推進力であり、事業の効率化とともに継続的に取り組んでいく。適切な価格設定とグレード構成による販売や、マーケティング戦略強化によるブランド向上、明快な評価基準による分析を基にした販売会社の業績強化が求められている。また、新型車の立ち上がり品質を開発及び生産の両面で担保することも重要である。これらを当事業年度に構築したトップマネジメントによる徹底した月次損益の管理により、利益の出せる損益体質への改善を進めていく。
最後に、日産自動車株式会社とともに、コストの節減と設備や開発等に関わるリソースの共用を中心として、短・中期的なシナジー効果の創出を加速化していく。当社は、ルノー・日産自動車株式会社とともに年間販売台数1,000万台規模を有する世界第3位のアライアンスに加わることで、大きなシナジー効果の享受の可能性を手に入れた。これまで、当社では選択と集中を推進してきたが、限られたリソースの中で、自力で他社と競っていける分野に投資をしてきた。今後はアライアンスの力により、製品開発、購買、技術、生産、市場拡大及びサービス等の分野における機会の拡大が可能となる。自動運転やコネクティッド・カー、更なる電動化といった新技術の資産を活用し、より魅力的な商品や技術をお客様に提供していくことが当社にとって最大限にポテンシャルを発揮するチャンスとなる。