有価証券報告書
足許の環境変化を踏まえた経営課題の認識と、次期中期経営計画の考え方は次のとおりです。なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
現在の当社を取り巻く事業環境は厳しさを増しています。為替のマイナス影響に加えて、厳しい環境規制やCASE(Connected(つながる)、Autonomous(自動運転)、 Shared(共有)、 Electric(電動化))と呼ばれる技術革新に対応する次世代車の研究開発のための投資が膨らんできているためです。先行投資による固定費負担の増加に、世界的な景気減速の逆風も重なり、自動車産業全体の収益が圧迫される状況に直面しています。
一つ一つの車種の開発にかかるコストが増えていく状況下では、自ずと開発する車種を絞り込まざるを得ません。また、商品力強化には、研究開発に加え生産設備投資も必要ですが、当面はできる限り既存設備を活用し、規模拡大を見越した能力増強に走らないよう投資を厳選することで、固定費の増大を抑制していく必要もあります。言い換えれば、当社の規模で全方位の拡大戦略を取ることは現実的ではないということです。
この厳しい事業環境のなかで収益力を伴った健全で持続可能な成長軌道を確保するため、限られた経営資源を、当社が強みを持つ地域と、お客様から高い評価をいただくことができる競争力のあるセグメントに集中的に投下することを当社の基本戦略とします。「拡大」や「成長」を追求するのではなく、「競争力強化」や「刷新」を優先し、規模は小さくとも収益力の光る存在になることを目指します。
規模の拡大を急ぎ過ぎず、投資とのバランスがとれた健全な成長軌道を目指していくことが、現時点で最良の選択であると確信しています。この考え方を表す「Small but Beautiful」を2020年度から始まる次期中期経営計画のコンセプトとして、収益力強化と持続的な成長の両立に向けた具体的な戦略の検討を進めています。2019年度は、この次期中期経営計画を見据えた早めの戦略修正を含めた「助走期間」として重要な役割を果たす年になると考えています。
本年3月に、当社は、アライアンス・パートナーであるルノー・日産自動車とともに、新たに「Alliance Operating Board」という会議体を設置しました。規模の小さい当社にとって、アライアンスの力を有効に活用することが重要な意味を持つことは明らかです。今後は、この「Alliance Operating Board」における3社協議を通じて、「WIN-WINの精神」に則り、相互の関係性を維持、発展させていくことになります。
当社が掲げる企業ミッション「信頼される企業として誠実に活動します」を実践し、健全で持続可能な成長軌道を目指していく次期中期経営計画が株主の皆様及びお客様をはじめとしたステークホルダーから「信頼」をもって受け入れられるためには、その「信頼」の裏付けとなる充実したガバナンスの仕組みが不可欠です。
当事業年度においては、当社の前代表取締役会長のカルロス・ゴーン氏が、金融商品取引法違反及び会社法違反の容疑で逮捕され、この事態を受けてその後実施した内部調査の結果、当社と日産自動車が折半出資で設立したオランダ法人Nissan-Mitsubishi B.V.(“NMBV社”)からゴーン氏がManaging Director報酬名目で不正に金銭の支払いを受けていたことが判明しました。当社及びNMBV社以外の当社が関係する会社においては不正の疑いのある行為は発見されませんでしたが、当社としてはこのようなことが発生したことを重く受け止めております。
株主の皆様及びお客様をはじめとしたステークホルダーからの「信頼」をあらためて得るため、そして、健全で持続可能な成長のために、当社は、本年6月の定時株主総会での承認を得て、指名委員会等設置会社へ移行することといたしました。これにより、監督と執行の分離を明確にし、経営の健全性及び透明性確保に向けて一層の監督強化及び危機管理の徹底を図ってまいります。