有価証券報告書-第202期(2025/04/01-2026/03/31)
② 戦略
気候変動および生物多様性に関するシナリオ分析
当社は、短期・中期・長期の時間軸に基づき、グループ全体に及ぶ気候変動および生物多様性の影響を評価し、事業に重要な影響を与えるリスクと機会を特定するためのシナリオ分析を実施しました(表1)。また、特に影響が大きいと予想される木材については、気候変動による影響の有無および大小を把握するため、潜在適域(注1)の変化を文献にて調査し、推計を行いました(表2)。
シナリオ分析では、気候変動と生物多様性について下記のシナリオを想定し、事業および自然資本への影響を評価しました。
a. 気候変動
国際エネルギー機関(IEA)や気候変動に関する政府間パネル(IPCC)が公表する複数の既存シナリオを中心に、その他複数のシナリオ(APS(Announced Pledges Scenario)、STEPS(Stated Policies Scenario)他)も活用し分析しました。
b.生物多様性
自然関連リスク分析ツール「ENCORE(注2、3)」を使用して、事業プロセスに関連する自然への依存と影響の項目を抽出し、リスク・機会が大きいものに関しては、TNFDが推奨しているシナリオを参考に「生態系サービスの劣化」と「市場原動力と非市場原動力の一致」を2軸に4つのシナリオを定義し、分析しました(図1)。
(注1)特定の樹種が気象条件などから理論上、生育に適していると推定される地域を指す。実際の分布を考慮したものではなく、将来的な生育可能性に着目した概念
(注2)Exploring Natural Capital Opportunities, Risks and Exposure:事業プロセスに関連する自然関連の依存と影響、その大きさの評価ツール
(注3)当開示では2024年7月に更新されたバージョンで分析を実施
(図1)TNFDが推奨する2×2フレームワークを用いて設定した自然関連シナリオ

(表1)特に重要度の高いリスク・機会一覧とシナリオ分析
(表2)木材潜在適域の基準年に対する変化予測(%)

シナリオ分析の結果、気候変動に関しては自然災害による生産停止リスク、木材価格の上昇、炭素税導入に伴うコスト増加といったリスクが高まる一方で、屋内活動の増加による需要拡大が機会となる可能性があることが明らかとなりました。自然資本に関しては、各シナリオが進行するに伴い、森林の持続可能性に配慮した木材製品が市場競争力を高め、持続可能な調達が森林保護を促進する機会となる一方で、林産地の劣化により良質な木材の入手が困難になり、木材代替にかかるコストが増加するリスクが生じることが分かりました。
また、木材潜在適域の変化予測を行ったことにより、短期的な影響は少ないものの、長期的に見ると気温上昇に伴い潜在適域が大きく減少する樹種があることが分かりました。
特定されたリスク・機会と対応策
当社は、気候関連課題・自然関連課題が、事業、戦略、財務計画に大きな影響を与える可能性があるとの認識のもと、リスクや機会を整理し、戦略の見直しを随時実施しております。シナリオ分析により特定された重要なリスク・機会と、それに対する当社の対応策は以下の通りであります(表3)。
当社の気候変動関連課題への取り組みについては、TCFDが開示を推奨する「緩和」と「適応」の分類に基づいて、また、自然関連課題への取り組みについては、自然資本に対する行動の枠組み「AR3Tフレームワーク(注4)」を踏まえて整理しております。
(注4)SBTN(Science Based Targets Network)が提唱する、自然関連のリスクと機会への対応策を検討するフレームワーク。回避(Avoid)、軽減(Reduce)、復元・再生(Restore & Regenerate)、変革(Transform)の4項目にて整理されている
(表3)特に重要度の高いリスク・機会一覧と対応策
R:リスク(Risk) O:機会(Opportunity) 短:発現時期 短期 中:発現時期 中期 長:発現時期 長期
インターナルカーボンプライシング(ICP)制度
当社は、気候変動リスクに対処し中長期的な脱炭素経営を推進するため、2022年4月よりインターナルカーボンプライシング制度を導入しております。当社では、内部炭素価格を14,000円/t-CO2に設定し、設備投資に関する意思決定プロセスに活用しております。
自然資本に対する分析 ― LEAPアプローチ
当社では、TNFDが推奨するLEAPアプローチ(注5)に基づき、自然関連の課題について評価と分析を行いました。
(注5)企業の自然との接点、依存関係、インパクト、リスク、機会など、自然関連課題を判定するための統合的な評価方法。スコーピングを経て、Locate(発見する)、Evaluate(診断する)、Assess(評価する)、Prepare(準備する)のステップを踏むことで、企業は自社にとって重要な自然との接点を評価することができる
スコーピング
当社グループの事業の中でも、楽器事業は売上の6割以上を占める主要な事業であり、自然資本への依存と影響が大きい事業です。当社グループの使用するさまざまな資源のうち、木材は使用量・事業価値の両面で重要な位置を占める主要資源であり、とりわけ楽器事業においては不可欠な材料です。多くの楽器に使用される木材は、音色や耐久性、品質を左右する中核的な要素であり、自然資本への依存とその影響への取り組みは、当社グループの事業、さらには音楽文化の持続可能性を支える基盤です。このため、これまでも木材の持続可能な調達に関する目標を設定し、取り組んできました。
当開示にあたり、当社はENCOREを用いて自然関連の依存と影響を評価しました。この分析は、従来の自社の認識を再確認し、さらに客観的なデータに基づいた評価を行うために実施したものです。評価対象は、
・バリューチェーン上流における木材調達プロセス
・直接操業としての楽器・音響機器の製造プロセス
の2つです。
この評価の結果、木材調達過程と自然資本との関連が特に大きいことが改めて確認されました。一方で、楽器・音響機器の製造過程においては、ENCOREの分析上、自然資本への依存や影響が相対的に大きい項目は限定的であることが示されました。これらの結果は、木材と自然資本の関わりが大きいという当社の認識を裏付けるものとなりました。
こうした結果に加え、TNFDでは直接操業における分析が求められていることから、直接操業拠点における自然関連リスクおよび生物多様性との関係について評価を実施しました。
a. 水関連分析(直接操業拠点)
Locate
2025年に、当社グループの直接操業拠点(本社・生産・リゾート計23拠点)を対象として、自然にとって重要な場所(要注意地域)および水資源への依存の観点から分析を行いました。
要注意地域の判定にあたっては、TNFDガイダンスを踏まえ、「生物多様性の重要性」「生態系の十全性」「生態系の十全性の急速な減少」「水リスク」の観点から評価項目を設定し、国際的に広く利用されている外部ツール・データを用いて定量的に評価しました。各評価項目について5段階でスコアリングを行い、これらの平均スコアが4以上となる拠点を要注意地域の目安として設定しました。
一方、本分析では、水供給制約が生じた場合の拠点への影響を把握する観点から、当社グループ全体の総取水量に占める各拠点の取水量割合を指標として用いました。取水量割合が高い拠点は、水資源への依存度が相対的に高く、水制約時の影響を受けやすい拠点として整理しております。なお本指標は水資源への依存度を示す一側面を捉えたものであり、企業にとっての重要性を包括的に示すものではありません。
これらの観点を踏まえ、本分析では「自然にとって重要な場所(要注意地域)」と「水資源への依存度が高い拠点」を整理し、重点的に確認すべき拠点の抽出を試みました。
Evaluate
Locateの結果を踏まえ、直接操業拠点における自然への依存および影響の程度を評価しました。
上記の指標を総合的に評価した結果、スコアの平均値は最大でも3.25にとどまり、平均スコアが4以上となる要注意地域は特定されませんでした。この結果から、生物多様性の重要性、生態系の十全性、水リスクなどの各観点において、当社グループの直接操業拠点が自然に対して顕著な依存または影響を有する状況は限定的であると認識しております。
また、水リスクの観点では、水ストレスが高い(スコア4:Highまたは5:Extremely High)地域からの取水は当社グループの総取水量の約1割程度であり、水ストレスの高い地域に所在する拠点は当社グループの直接操業拠点の一部に限定されていることを確認しております(図2)。該当する拠点は、中国、インドネシア、インドおよび米国に所在する5拠点です。従って、短期的に全社的な操業へ重大な影響を及ぼす可能性は限定的であると評価しております。
一方で、水資源は将来的に不確実性が高まる可能性がある自然資本であることから、水ストレスが高い地域に立地する拠点については、依存および影響の双方に留意する必要があると考えております。
(図2)直接操業拠点の水リスク(水ストレス)および当社グループ全体の総取水量に占める各拠点の取水量割合

Assess
Evaluateの結果を踏まえ、自然に関連するリスクおよび機会の特定を行いました。
リスクの観点では、水ストレスが高いと評価された拠点(中国、インドネシア、インド、米国に所在する5拠点)において、将来的な水利用制約、取水コストの上昇、操業条件の変化といった物理的リスクが想定されます。ただし、これらの拠点の取水量規模および全社に占める取水量割合を踏まえると、水関連リスクが顕在化する可能性は相対的に限定的であると考えております。一方で、リスク顕在化時の影響の大きさは拠点の事業上の重要性や代替可能性にも依存することから、影響度の評価については今後、これらの観点も含めた検討が必要であると認識しております。
その上で、各拠点の地域特性を踏まえ、水ストレスの水準に加え、生物多様性保全地域への近接性を確認しました。
中国、インドネシアおよびインドの高水ストレス拠点については、保全上重要な地域への近接は認められず、かつ取水量割合も低区分に位置付けられていることから、周辺の自然資本に与える影響は相対的に小さいと評価しております。一方、米国の拠点は生物多様性保全地域に近接しておりますが、年間取水量は0.337千m³と限定的であることから、当該拠点の水利用が周辺の水資源および自然資本に与える影響も限定的と判断しております。
機会の観点では、水使用量の削減や水効率の向上、地域の水資源管理への貢献を通じて、操業の安定性向上やステークホルダーからの信頼向上につながる可能性があると考えております。
これらを踏まえ、当社グループの直接操業拠点における自然関連リスクおよび機会は、現時点では管理可能な範囲にあるものの、中長期的な視点での継続的なモニタリングが重要であると判断しました。
なお本評価は、当社グループの事業活動が生物多様性に与える影響を直接的に示すものではなく、地域特性を踏まえたリスクの顕在化可能性を把握することを目的としております。
Prepare
分析結果を踏まえ、現時点において、当社グループの直接操業拠点が立地する地域における自然関連リスクは全社的には限定的であると評価しております。しかしながら、気候変動などに伴う水ストレスの将来的な悪化可能性を踏まえ、水ストレスの高い地域に立地する拠点を中心に、将来的なリスク低減を目的に、取水量および排水量の継続的なモニタリングならびに節水設備の導入やプロセス改善による水使用効率の向上など、水保全に関する取り組みを進めております。
これらの取り組みを通じて、自然資本への依存および影響の低減を図るとともに、将来的な環境変化に対するレジリエンスの強化を進めていきます。また状況の変化に応じて、評価および対応内容の見直しを行っていきます。
b. 木材関連分析(バリューチェーン上流)
Locate
木材は一般的に環境への負荷が小さく持続可能な素材とされていますが、楽器用の木材には、その特性や風合いにより代替が難しいものもあり、持続性の確保が求められています。加えて、SBTN(The Science Based Targets Network)のHigh Impact Commodity List(注6)では、木材が「High Impact Commodity」として分類されており、科学的にも自然への影響が大きいとされています。これらの要素を踏まえ、木材についての評価を行うことが重要であると再認識し、今回の分析を実施しました。
(注6)自然への影響が大きいとされるコモディティ(原材料)をリスト化したもの
「木材調達」優先地域の特定
当社グループが調達する代替困難な木材の原産エリアを世界地図にプロットし、その中でも特に重要な樹種の原産地を優先地域として特定しました(図3)。
(図3)木材調達に関する優先地域

Evaluate/Assess
Locateで特定した優先地域の依存と影響に関する評価は、ENCOREを使用して2025年に再実施しました。これに事業を通じた自社の知見を加え、ENCOREの分析を補完する形で依存度と影響度を再評価し、特に重要なリスクと機会をダブルマテリアリティの視点で整理しました(表4)。なお、ENCOREにおいて依存または影響ありと分類された項目のうち、当社グループの事業実態に照らして影響が限定的または認められないと判断した項目については、本表では記載を省略しております。
(表4)依存と影響に関わるリスク、機会およびヤマハの活動
※生態系への直接的な依存が限定的である「文化的サービス」については、寄与が少ないため一覧表から除外しております。
Prepare
LEAPアプローチのL、E、Aの分析により特定された依存、影響、リスク、機会に対応するため、これらを評価し管理するための戦略や開示指標を設定しました。(「④指標及び目標」をご参照ください)
その他、今回の分析で特定された優先地域における、持続的な木材調達に関する具体的な取り組みについては、おとの森活動(注7)のウェブサイトをご参照ください。
(注7)https://www.yamaha.com/ja/stories/environment/otonomori/
気候変動および生物多様性に関するシナリオ分析
当社は、短期・中期・長期の時間軸に基づき、グループ全体に及ぶ気候変動および生物多様性の影響を評価し、事業に重要な影響を与えるリスクと機会を特定するためのシナリオ分析を実施しました(表1)。また、特に影響が大きいと予想される木材については、気候変動による影響の有無および大小を把握するため、潜在適域(注1)の変化を文献にて調査し、推計を行いました(表2)。
シナリオ分析では、気候変動と生物多様性について下記のシナリオを想定し、事業および自然資本への影響を評価しました。
a. 気候変動
国際エネルギー機関(IEA)や気候変動に関する政府間パネル(IPCC)が公表する複数の既存シナリオを中心に、その他複数のシナリオ(APS(Announced Pledges Scenario)、STEPS(Stated Policies Scenario)他)も活用し分析しました。
| シナリオ | 概要 | 出所 |
| 1.5~2℃シナリオ | 気候変動への緩和策を取り、世界の気温上昇を産業革命前と比べて1.5~2℃に抑えたシナリオ | NZE、RCP2.6、SSP1-2.6 |
| 4℃シナリオ | 気候変動への緩和策を取らず、世界の気温が産業革命前と比べて4℃上昇したシナリオ | RCP8.5、SSP5-8.5 |
b.生物多様性
自然関連リスク分析ツール「ENCORE(注2、3)」を使用して、事業プロセスに関連する自然への依存と影響の項目を抽出し、リスク・機会が大きいものに関しては、TNFDが推奨しているシナリオを参考に「生態系サービスの劣化」と「市場原動力と非市場原動力の一致」を2軸に4つのシナリオを定義し、分析しました(図1)。
(注1)特定の樹種が気象条件などから理論上、生育に適していると推定される地域を指す。実際の分布を考慮したものではなく、将来的な生育可能性に着目した概念
(注2)Exploring Natural Capital Opportunities, Risks and Exposure:事業プロセスに関連する自然関連の依存と影響、その大きさの評価ツール
(注3)当開示では2024年7月に更新されたバージョンで分析を実施
(図1)TNFDが推奨する2×2フレームワークを用いて設定した自然関連シナリオ

(表1)特に重要度の高いリスク・機会一覧とシナリオ分析
| 分類説明 | ![]() | :気候変動関連 | ![]() | :生物多様性関連 | ![]() | :気候変動・生物多様性双方関連 |
![]() | :影響は現在の延長線上 | ![]() | :影響は拡大 | ―:関連なし R:リスク(Risk) O:機会(Opportunity) |
| 分類 | 項目 | 気候変動 | 自然資本 | 依存影響 | R:リスク O:機会 | リスク・機会のタイプ | |||||
| 1.5~2.0℃ シナリオ | 4℃シナリオ | シナリオ#1 | シナリオ#2 | シナリオ#3 | シナリオ#4 | ||||||
| 気候変動への対応 | ![]() | 自然災害 | ![]() | ![]() | ― | ― | ― | ― | ― | R | 物理(急性) |
![]() | 木材生育適域変化 | ![]() | ![]() | ― | ― | ― | ― | ― | R | 物理(慢性) | |
![]() | カーボンプライシング | ![]() | ![]() | ― | ― | ― | ― | ― | R | 移行(政策・法的) | |
![]() | インドア活動化 | ![]() | ![]() | ― | ― | ― | ― | ― | O | 製品・サービス | |
| 持続可能な木材の利用 | ![]() | 木材の代替、 有効活用 | ![]() | ![]() | ![]() | ![]() | ![]() | ![]() | 影響 | O | 効率・リソース 製品・サービス 評判 |
![]() | 林産地劣化 | ![]() | ![]() | ![]() | ![]() | ![]() | ![]() | 依存 影響 | R | 物理(慢性) | |
![]() | 林産業の撤退 | ![]() | ![]() | ![]() | ![]() | ![]() | ![]() | 依存 | R | 移行(政策・法的) 移行(市場) | |
![]() | 木材の輸入規制 | ― | ― | ![]() | ![]() | ![]() | ![]() | 依存 | R | 移行(政策・法的) | |
![]() | 認証材の安定調達 | ― | ― | ![]() | ![]() | ![]() | ![]() | 影響 | O | 生態系保全 持続可能な利用 | |
| 有害物質削減 | ![]() | 事業プロセスで使用する化学物質(VOC・毒劇物)や油による汚染 | ― | ― | ![]() | ![]() | ![]() | ![]() | 影響 | R | 物理(急性) 移行(技術) 移行(評判) |
![]() | 有害廃棄物による汚染 | ― | ― | ![]() | ![]() | ![]() | ![]() | 影響 | R | 物理(慢性) 移行(政策・法的) 移行(評判) | |
| 水の保全 | ![]() | 事業プロセスや 生活で使用する 水の不足 | ![]() | ![]() | ![]() | ![]() | ![]() | ![]() | 依存 | R | 物理(慢性) |
(表2)木材潜在適域の基準年に対する変化予測(%)

| ※本変化予測に関する補足事項1. 調査の目的:対象樹種に対する気候変動の影響の有無およびその大小を把握すること 2. 調査方法: ・2021年に、各調達樹種×対象国について将来影響を既存文献(例:Dyderski et al. (2018) How much does climate change threaten European forest tree species distributions? Glob. change biol. 24(3): 1150-1163)にて調査 ・この調査結果を基に、世界平均の気温上昇に対する潜在適域の変化を推計 3. 推計の限界:予測は既存文献の手法および結果に基づいたものであり、推計手法には限界があるため、将来の気温上昇における影響量を断定するものではない 4. 樹木の生育条件:将来の気候条件が不適であると予測された地域であっても、樹木が即座に死滅するわけではない |
シナリオ分析の結果、気候変動に関しては自然災害による生産停止リスク、木材価格の上昇、炭素税導入に伴うコスト増加といったリスクが高まる一方で、屋内活動の増加による需要拡大が機会となる可能性があることが明らかとなりました。自然資本に関しては、各シナリオが進行するに伴い、森林の持続可能性に配慮した木材製品が市場競争力を高め、持続可能な調達が森林保護を促進する機会となる一方で、林産地の劣化により良質な木材の入手が困難になり、木材代替にかかるコストが増加するリスクが生じることが分かりました。
また、木材潜在適域の変化予測を行ったことにより、短期的な影響は少ないものの、長期的に見ると気温上昇に伴い潜在適域が大きく減少する樹種があることが分かりました。
特定されたリスク・機会と対応策
当社は、気候関連課題・自然関連課題が、事業、戦略、財務計画に大きな影響を与える可能性があるとの認識のもと、リスクや機会を整理し、戦略の見直しを随時実施しております。シナリオ分析により特定された重要なリスク・機会と、それに対する当社の対応策は以下の通りであります(表3)。
当社の気候変動関連課題への取り組みについては、TCFDが開示を推奨する「緩和」と「適応」の分類に基づいて、また、自然関連課題への取り組みについては、自然資本に対する行動の枠組み「AR3Tフレームワーク(注4)」を踏まえて整理しております。
(注4)SBTN(Science Based Targets Network)が提唱する、自然関連のリスクと機会への対応策を検討するフレームワーク。回避(Avoid)、軽減(Reduce)、復元・再生(Restore & Regenerate)、変革(Transform)の4項目にて整理されている
(表3)特に重要度の高いリスク・機会一覧と対応策
| 分類説明 | ![]() | :気候変動関連 | ![]() | :生物多様性関連 | ![]() | :気候変動・生物多様性双方関連 |
R:リスク(Risk) O:機会(Opportunity) 短:発現時期 短期 中:発現時期 中期 長:発現時期 長期
| 分類 | 項目 | 事業、戦略、財務計画への潜在的な影響/自然資本への影響 | ヤマハの対応策 | 対応策の 分類 | |
| 気候変動への対応 | ![]() | 自然災害 | ・自然災害による施設の損傷、人的被害およびこの影響による生産の停止 ・サプライチェーンの被災による生産停止および仕入値高騰に伴うコストの増加 ・損害保険料の増大 | ・当社グループ拠点(製造・営業・物流)を対象に洪水リスクと損害の再評価を行い、想定される自然災害に対して事前対策や保険付保内容の見直しを実施 | 適応 |
| R | |||||
| 短 | |||||
![]() | 木材生育 適域変化 | ・木材の価格上昇、品質低下 ・木材代替に要する技術的、仕様変更コスト ・気温上昇、降水・気象状況の変化に伴う木材生育状況悪化による調達コストの増加 | ・温暖化による潜在適域変化予測調査実施(表2) ・希少材料を代替する新素材や木材加工技術開発(木材技術、木材調達スキルの社内保持・強化) | 適応 | |
| R | |||||
| 長 | |||||
![]() | カーボンプライシング | ・炭素税などの導入による生産・調達コストの増加 ・2031年3月期におけるグループ内エネルギーコストは成り行きで10億円から20億円程度増加する予測 | ・徹底したエネルギー削減、再生可能エネルギーの利用推進による排出削減計画実施(削減目標達成によりエネルギーコスト増加分を4.5億円から9億円程度に抑制できる見込み) ・ICP(インターナルカーボンプライシング)を設定し、低炭素設備投資を促進 ・サプライヤーと連携した排出削減の推進 | 緩和 | |
| R | |||||
| 中 | |||||
![]() | インドア 活動化 | ・屋内での活動機会増加に伴う楽器需要の増加 ・リモートワーク、オンラインイベント・ゲームの拡大による通信機器の需要拡大 ・動画配信の拡大に伴う音響機器の需要拡大、ライブと配信のハイブリッドイベントがデファクトスタンダード化 | ・音響、信号処理、通信技術の融合によるリモート、オンラインイベント用ソリューションの提供 ・遠隔でのライブ、レッスン、合奏の実現による新たな顧客体験の創出 | 適応 | |
| O | |||||
| 長 | |||||
| 分類 | 項目 | 事業、戦略、財務計画への潜在的な影響/自然資本への影響 | ヤマハの対応策 | 対応策の 分類 | |
| 持続可能な木材の利用 | ![]() | 木材の代替、有効 活用 | ・森林の持続可能性に配慮した製品が顧客や投資家からの評価を高め、市場競争力を向上させる ・代替材料の確保による希少樹種の保護 | ・持続可能性に配慮した木材使用率増加 ・既存の希少資源を代替する新素材や木材加工技術開発(木材技術、木材調達スキルの社内保持・強化) ・適正な品質基準の設定、端材の有効利用等による歩留まり向上 ・楽器適材の調達を持続可能にするおとの森活動 | 回避 軽減 復元・再生 変革 |
| O | |||||
| 長 | |||||
![]() | 林産地劣化 | ・木材の過剰伐採や林産地の水不足・水質汚染・土壌劣化により良質な楽器適材が入手困難となる ・木材の価格上昇、品質低下 ・生態系の劣化を招いたと見做され、評判が低下する | |||
| R | |||||
| 中 | |||||
![]() | 林産業の 撤退 | ・木材の入手が困難になり、木材代替に要する技術的、仕様変更コストが発生 ・環境に配慮した企業の増加により森林クレジット市場が拡大し、木材の安定調達に影響 | ・持続可能性に配慮した木材使用率増加 ・楽器適材の調達を持続可能にするおとの森活動 | 軽減 復元・再生 | |
| R | |||||
| 短 | |||||
![]() | 木材の 輸入規制 | ・規制対象木材を使用する製品の生産停止による損失 ・規制対象木材代替に要する技術的、仕様変更コストが発生 | ・持続可能性の低い木材使用の削減、代替 | 軽減 | |
| R | |||||
| 中 | |||||
![]() | 認証材の 安定調達 | ・環境意識の高い顧客、サプライチェーンからの支持 ・持続可能性の低い木材を使用し続けることに対する評判リスクの回避 ・持続可能な木材調達による森林保護 | ・持続可能な森林から産出される認証材の利用拡大 | 軽減 | |
| O | |||||
| 長 | |||||
| 有害物質削減 | ![]() | 事業プロセスで使用する化学物質(VOC、毒劇物)や油による汚染 | ・生産現場からの排出もしくは漏えい事故により、生態系に悪影響を与える ・評判の低下、汚染の回復費用、損害賠償費用、漏えい対策設備改善、管理強化コスト発生 | ・環境設備に関する構造の基準を定め、漏えい事故の防止に努める ・漏えいリスクを抽出し、想定緊急事態について対応訓練を実施 ・VOC削減プロジェクトにより全社の排出量モニタリングや削減施策を推進 ・排出先の水域の水質や生物への影響についての調査を実施 | 回避 軽減 |
| R | |||||
| 短 | |||||
![]() | 有害廃棄物による汚染 | ・土壌や地下水の汚染による評判の低下、損害賠償費用、汚染の回復費用発生および生態系劣化 ・法規制が厳格化され、コスト増加 | ・有害廃棄物の排出削減、適正処分 ・有害物質の使用制限 | 軽減 | |
| R | |||||
| 中 | |||||
| 水の保全 | ![]() | 事業プロセスや生活で使用する水の不足 | ・水不足による事業活動の停止・遅延 ・水不足地域での多量の水利用による評判の低下 | ・水使用の削減計画に沿った水リサイクル、節水活動の実施 | 軽減 |
| R | |||||
| 長 | |||||
インターナルカーボンプライシング(ICP)制度
当社は、気候変動リスクに対処し中長期的な脱炭素経営を推進するため、2022年4月よりインターナルカーボンプライシング制度を導入しております。当社では、内部炭素価格を14,000円/t-CO2に設定し、設備投資に関する意思決定プロセスに活用しております。
自然資本に対する分析 ― LEAPアプローチ
当社では、TNFDが推奨するLEAPアプローチ(注5)に基づき、自然関連の課題について評価と分析を行いました。
(注5)企業の自然との接点、依存関係、インパクト、リスク、機会など、自然関連課題を判定するための統合的な評価方法。スコーピングを経て、Locate(発見する)、Evaluate(診断する)、Assess(評価する)、Prepare(準備する)のステップを踏むことで、企業は自社にとって重要な自然との接点を評価することができる
スコーピング
当社グループの事業の中でも、楽器事業は売上の6割以上を占める主要な事業であり、自然資本への依存と影響が大きい事業です。当社グループの使用するさまざまな資源のうち、木材は使用量・事業価値の両面で重要な位置を占める主要資源であり、とりわけ楽器事業においては不可欠な材料です。多くの楽器に使用される木材は、音色や耐久性、品質を左右する中核的な要素であり、自然資本への依存とその影響への取り組みは、当社グループの事業、さらには音楽文化の持続可能性を支える基盤です。このため、これまでも木材の持続可能な調達に関する目標を設定し、取り組んできました。
当開示にあたり、当社はENCOREを用いて自然関連の依存と影響を評価しました。この分析は、従来の自社の認識を再確認し、さらに客観的なデータに基づいた評価を行うために実施したものです。評価対象は、
・バリューチェーン上流における木材調達プロセス
・直接操業としての楽器・音響機器の製造プロセス
の2つです。
この評価の結果、木材調達過程と自然資本との関連が特に大きいことが改めて確認されました。一方で、楽器・音響機器の製造過程においては、ENCOREの分析上、自然資本への依存や影響が相対的に大きい項目は限定的であることが示されました。これらの結果は、木材と自然資本の関わりが大きいという当社の認識を裏付けるものとなりました。
こうした結果に加え、TNFDでは直接操業における分析が求められていることから、直接操業拠点における自然関連リスクおよび生物多様性との関係について評価を実施しました。
a. 水関連分析(直接操業拠点)
Locate
2025年に、当社グループの直接操業拠点(本社・生産・リゾート計23拠点)を対象として、自然にとって重要な場所(要注意地域)および水資源への依存の観点から分析を行いました。
要注意地域の判定にあたっては、TNFDガイダンスを踏まえ、「生物多様性の重要性」「生態系の十全性」「生態系の十全性の急速な減少」「水リスク」の観点から評価項目を設定し、国際的に広く利用されている外部ツール・データを用いて定量的に評価しました。各評価項目について5段階でスコアリングを行い、これらの平均スコアが4以上となる拠点を要注意地域の目安として設定しました。
| 利用した外部ツール・データ IBAT、Biodiversity Intactness Index、Aqueduct Water Risk Atlas 4.0(Baseline Water Stress) |
一方、本分析では、水供給制約が生じた場合の拠点への影響を把握する観点から、当社グループ全体の総取水量に占める各拠点の取水量割合を指標として用いました。取水量割合が高い拠点は、水資源への依存度が相対的に高く、水制約時の影響を受けやすい拠点として整理しております。なお本指標は水資源への依存度を示す一側面を捉えたものであり、企業にとっての重要性を包括的に示すものではありません。
これらの観点を踏まえ、本分析では「自然にとって重要な場所(要注意地域)」と「水資源への依存度が高い拠点」を整理し、重点的に確認すべき拠点の抽出を試みました。
Evaluate
Locateの結果を踏まえ、直接操業拠点における自然への依存および影響の程度を評価しました。
上記の指標を総合的に評価した結果、スコアの平均値は最大でも3.25にとどまり、平均スコアが4以上となる要注意地域は特定されませんでした。この結果から、生物多様性の重要性、生態系の十全性、水リスクなどの各観点において、当社グループの直接操業拠点が自然に対して顕著な依存または影響を有する状況は限定的であると認識しております。
また、水リスクの観点では、水ストレスが高い(スコア4:Highまたは5:Extremely High)地域からの取水は当社グループの総取水量の約1割程度であり、水ストレスの高い地域に所在する拠点は当社グループの直接操業拠点の一部に限定されていることを確認しております(図2)。該当する拠点は、中国、インドネシア、インドおよび米国に所在する5拠点です。従って、短期的に全社的な操業へ重大な影響を及ぼす可能性は限定的であると評価しております。
一方で、水資源は将来的に不確実性が高まる可能性がある自然資本であることから、水ストレスが高い地域に立地する拠点については、依存および影響の双方に留意する必要があると考えております。
(図2)直接操業拠点の水リスク(水ストレス)および当社グループ全体の総取水量に占める各拠点の取水量割合

Assess
Evaluateの結果を踏まえ、自然に関連するリスクおよび機会の特定を行いました。
リスクの観点では、水ストレスが高いと評価された拠点(中国、インドネシア、インド、米国に所在する5拠点)において、将来的な水利用制約、取水コストの上昇、操業条件の変化といった物理的リスクが想定されます。ただし、これらの拠点の取水量規模および全社に占める取水量割合を踏まえると、水関連リスクが顕在化する可能性は相対的に限定的であると考えております。一方で、リスク顕在化時の影響の大きさは拠点の事業上の重要性や代替可能性にも依存することから、影響度の評価については今後、これらの観点も含めた検討が必要であると認識しております。
その上で、各拠点の地域特性を踏まえ、水ストレスの水準に加え、生物多様性保全地域への近接性を確認しました。
中国、インドネシアおよびインドの高水ストレス拠点については、保全上重要な地域への近接は認められず、かつ取水量割合も低区分に位置付けられていることから、周辺の自然資本に与える影響は相対的に小さいと評価しております。一方、米国の拠点は生物多様性保全地域に近接しておりますが、年間取水量は0.337千m³と限定的であることから、当該拠点の水利用が周辺の水資源および自然資本に与える影響も限定的と判断しております。
機会の観点では、水使用量の削減や水効率の向上、地域の水資源管理への貢献を通じて、操業の安定性向上やステークホルダーからの信頼向上につながる可能性があると考えております。
これらを踏まえ、当社グループの直接操業拠点における自然関連リスクおよび機会は、現時点では管理可能な範囲にあるものの、中長期的な視点での継続的なモニタリングが重要であると判断しました。
なお本評価は、当社グループの事業活動が生物多様性に与える影響を直接的に示すものではなく、地域特性を踏まえたリスクの顕在化可能性を把握することを目的としております。
Prepare
分析結果を踏まえ、現時点において、当社グループの直接操業拠点が立地する地域における自然関連リスクは全社的には限定的であると評価しております。しかしながら、気候変動などに伴う水ストレスの将来的な悪化可能性を踏まえ、水ストレスの高い地域に立地する拠点を中心に、将来的なリスク低減を目的に、取水量および排水量の継続的なモニタリングならびに節水設備の導入やプロセス改善による水使用効率の向上など、水保全に関する取り組みを進めております。
これらの取り組みを通じて、自然資本への依存および影響の低減を図るとともに、将来的な環境変化に対するレジリエンスの強化を進めていきます。また状況の変化に応じて、評価および対応内容の見直しを行っていきます。
b. 木材関連分析(バリューチェーン上流)
Locate
木材は一般的に環境への負荷が小さく持続可能な素材とされていますが、楽器用の木材には、その特性や風合いにより代替が難しいものもあり、持続性の確保が求められています。加えて、SBTN(The Science Based Targets Network)のHigh Impact Commodity List(注6)では、木材が「High Impact Commodity」として分類されており、科学的にも自然への影響が大きいとされています。これらの要素を踏まえ、木材についての評価を行うことが重要であると再認識し、今回の分析を実施しました。
(注6)自然への影響が大きいとされるコモディティ(原材料)をリスト化したもの
「木材調達」優先地域の特定
当社グループが調達する代替困難な木材の原産エリアを世界地図にプロットし、その中でも特に重要な樹種の原産地を優先地域として特定しました(図3)。
(図3)木材調達に関する優先地域

Evaluate/Assess
Locateで特定した優先地域の依存と影響に関する評価は、ENCOREを使用して2025年に再実施しました。これに事業を通じた自社の知見を加え、ENCOREの分析を補完する形で依存度と影響度を再評価し、特に重要なリスクと機会をダブルマテリアリティの視点で整理しました(表4)。なお、ENCOREにおいて依存または影響ありと分類された項目のうち、当社グループの事業実態に照らして影響が限定的または認められないと判断した項目については、本表では記載を省略しております。
(表4)依存と影響に関わるリスク、機会およびヤマハの活動
| 依存 | |||||
| 分類・項目 | 依存度 | リスク | 機会 | ヤマハの活動 | |
| 供給サ|ビス | 生物資源の 供給 | 高 | 木材の枯渇・規制の強化により調達コストが増加、または調達不能となる恐れ | 森林資源保全の推進 ・安定した使用量の確保 ・資源使用量に対する資源成長量の維持・促進 新技術の開発(代替素材・技術開発) ・過剰伐採の抑制 ・環境に配慮した製品による評価向上 | おとの森活動による持続的育成 ・住民参加型森林経営の推進 希少木材の効率的利活用 ・木材加工・再生技術の開発 ・希少木材を代替する新素材の開発 |
| 遺伝資源 | 低 | 遺伝子多様性の損失による病虫害発生により、森林の生産性が低下し調達が困難になる | 森林保全活動による生態系の維持・機能回復 遺伝子多様性の担保 | おとの森活動による森林生態機能の維持回復 ・希少種の天然更新動態の改善による地域個体群の保全 ・林内植栽による個体保全と生物多様性維持の両立 | |
| 水 | 高 | 水の枯渇により木の生育・原産地コミュニティーの住民生活に悪影響 | 原産地森林機能の維持・回復(水源涵養) コミュニティーにおける生活用水インフラの整備 | おとの森活動で森林を健全に保つことによる水源保持 おとの森活動による地域開発支援 | |
| 依存 | |||||
| 分類・項目 | 依存度 | リスク | 機会 | ヤマハの活動 | |
| 調整サ|ビス | 気候調整 (地球規模・局所的) | 高 | 木質原材料産地の気候変動により木の生育適域が変遷し、個体数が減少して調達コストが増加、または調達不能となる恐れ | 重要種の特定と生育環境の把握 重要種の保全 新技術の開発(未利用資源の利活用・技術開発) ・重要種の過剰伐採の抑制 ・原産地の賦存資源の有効活用 | おとの森活動で森林を健全に保つことによる森林生態機能の維持 ・重要な希少木材樹種の特定 ・林内植栽による適地での種の保全 ・希少種の天然更新動態の調査観測 希少木材の効率的利活用 希少木材原産地や、生産工場立地国内での未利用資源の効率的利用 |
| 水質の浄化・水流の調整 | 中 | 木質原材料産地の洪水・水供給不足・水質汚染により木の生育・原産地コミュニティーの住民生活に悪影響 | 原産地森林機能の維持・回復(水源涵養) コミュニティーにおける生活用水インフラの整備 | おとの森活動で森林を健全に保つことによる水源保持 おとの森活動による地域開発支援 ・育苗用水の貯水タンクや井戸の共用 | |
| 空気のろ過・土質調整・土砂保持・固形廃棄物の分解 | 中 | 木質原材料産地の土壌劣化により木の更新・生育が阻害され個体数が減少し調達コストが増加、または調達不能となる恐れ | 森林被覆面積の維持・回復 原産地森林の植生の維持・回復 | おとの森活動による森林回復に向けた取り組み ・林内植栽による森林の更新サイクルの促進 ・農業跡地への現地有用種の植栽 | |
| 生態系保全 (受粉・生物学的防除・生息環境維持) | 中 | 木質原材料産地の生態系劣化により木の生育が阻害され、個体数減少、材質劣化により調達コストが増加、または調達不能となる恐れ | 森林保全活動による生態系の維持・機能回復 遺伝子多様性の担保 | おとの森活動での持続的育成・機能保全 ・林内植栽による希少種の保全 ・希少種の天然更新動態の改善による地域個体群の保全 | |
| 自然災害緩和 (降雨パターンの調整、洪水・暴風雨の緩和) | 中 | 洪水や暴風雨による生育阻害や木材輸送ラインの停止、地域コミュニティーの住民生活への悪影響 干ばつ期間の長期化による住民生活への悪影響 木質原材料産地の森林火災、延焼による個体群の減少、調達コスト増 | 原産地森林機能の維持・回復(水源涵養) コミュニティーにおける生活用水インフラの整備 森林火災の抑制、森林機能回復 | おとの森活動で森林を健全に保つことによる水源保持 おとの森活動による地域開発支援 ・育苗用水の貯水タンクや井戸の共用 おとの森活動での森林火災抑制への取り組み ・植林地周辺での防火帯の設置 ・早期火入れによる乾季延焼の抑制、植生維持 | |
※生態系への直接的な依存が限定的である「文化的サービス」については、寄与が少ないため一覧表から除外しております。
| 影響 | |||||
| 分類・項目 | 影響度 | リスク | 機会 | ヤマハの活動 | |
| 生態系 利用 | 陸域 | 高 | 圧縮、露出、機械的損傷によった土壌劣化・浸食増加による土壌の性質悪化と植生変化 →木質原材料産地の劣化により種の個体数が減少 →地滑り・森林火災のリスク増加 →人口増加、農畜産用地への森林の転換による資源減少 | 森林被覆面積の維持・回復 原産地森林の植生の維持・回復 コミュニティーにおける土地利用の改善 | おとの森活動による森林回復に向けた取り組み ・林内植栽による森林の更新サイクルの促進 ・天然更新の改善による地域個体群の保全 ・農業跡地への現地有用種の植栽 ・コミュニティーでの森林管理技術の導入、支援 |
| 資源 利用 | 多種多様な木材の供給 | 高 | 原産国別の規制強化による調達性低下 資源減少による木材の材質低下、調達性の低下 | 持続可能性に配慮した木材の優先的利用 新技術の開発による利用可能な木材の最適化(集約と多様化) | 持続可能性に配慮した木材利用の推進 ・自社基準の設定 ・木材デューディリジェンスの実施 おとの森活動による持続的資源育成 ・重要な希少木材種の特定、保全 木材の効率的利活用 ・木材加工・再生技術の開発 ・希少木材原産地や、生産工場立地国内での未利用資源の効率的利用 |
| 気候 変動 | 温室効果ガス | 高 | 現場での重機の使用、製炭、木材・製品の輸送、生産活動、製材・製品・梱包材の廃棄焼却により発生 →気候変動による種の植生変化・生息地減少 →気候変動による災害の頻発 | 森林資源保全の推進 →森林機能による炭素固定 →資源使用量に対する資源成長量の維持・促進 新技術の開発(代替材・技術開発) →過剰伐採の抑制 →木材利用効率の改善・向上 →原産地の賦存資源の地産地消 資源の再利用 | おとの森活動による資源保全 ・森林モニタリングによる炭素固定評価機能の開発 ・植林、環境保全による資源の持続的育成 木材の効率的利活用 ・木材加工・再生技術の開発 ・希少木材原産地や、生産工場立地国内での未利用資源の効率的利用 |
| 外来種 その他 | 外来種 侵入 | 低 | 原産地域への外来種導入により生態系サービスが低下し、個体群が減少し調達が困難になる | 原産地森林の植生の維持・回復 原産地域の生物多様性の維持・向上 | おとの森活動による地域在来種資源の育成保全 ・原産地域在来種の林内植栽、天然更新改善 ・在来種、帰化種の農業跡地や裸地への植栽 |
Prepare
LEAPアプローチのL、E、Aの分析により特定された依存、影響、リスク、機会に対応するため、これらを評価し管理するための戦略や開示指標を設定しました。(「④指標及び目標」をご参照ください)
その他、今回の分析で特定された優先地域における、持続的な木材調達に関する具体的な取り組みについては、おとの森活動(注7)のウェブサイトをご参照ください。
(注7)https://www.yamaha.com/ja/stories/environment/otonomori/







