有価証券報告書-第197期(令和2年4月1日-令和3年3月31日)

【提出】
2021/06/25 15:06
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【項目】
124項目

対処すべき課題

Ⅰ. 中期経営計画「Make Waves 1.0」の概要
当社グループは、2019年4月からの3年間を対象とした中期経営計画「Make Waves 1.0」を策定しました。経営ビジョン“「なくてはならない、個性輝く企業」になる”の実現に向け、この3年間を顧客・社会との繋がりを強化し、価値創造力を高めていくための期間と位置づけ、取り組んでおります。
なお、文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
1. 経営環境認識
当連結会計年度の経営環境は、世界中での新型コロナウイルス感染拡大により、小売活動の停滞、学校等の閉鎖、各種イベントの中止など、大きな影響が広がりました。未だ収束の見通しが立たない中、感染拡大防止と様々な制約の中での企業活動継続の両立が課題となっております。重ねて、年度後半は部品サプライヤーの供給問題や海上輸送コンテナの不足による商品供給遅延が発生するなど、多くの外的影響を受ける大変厳しい1年になりましたが、このような環境の中でもそれらの影響を最小限に留め、柔軟に施策を適応させながら、様々な取り組みを着実に進めております。
中長期的な経営環境は、デジタル化の加速により産業構造が急激に変化する一方、お客様とのより緊密な繋がりが可能になり、AIやIoTで利便性が格段に高まると同時により精神的な満足や本質が求められる時代が到来すると考えています。サステナビリティへの社会的な意識もより高まっています。加えて、新型コロナウイルス感染症により、人々の生活様式・働き方は急激に変化し、With/Afterコロナを見据えたデジタル時代の新たな楽しみ方を模索する動きやテレワークの拡大を背景に、より快適な遠隔コミュニケーションを求める声も高まりを見せております。
“技術×感性”を強みとする当社グループにとって、この様な急速な変化は、進化のチャンスであると捉えております。楽器事業、音響機器事業において、音・音楽を中心に、新たな時代に求められる顧客価値の創造や社会課題の解決に努めるとともに、その他の事業においても、車載向け音響ビジネス領域等、更なるビジネスの拡大を図っていきます。
2. 経営ビジョン(中長期的に目指す姿)と価値創造ストーリー
「なくてはならない、個性輝く企業」になる
~ ブランド力を一段高め、高収益な企業へ ~

社会価値の創造を通じて、企業価値を高め、ビジョンの実現を目指します。
3.「Make Waves 1.0」の位置づけと基本戦略
これまでの成果も踏まえ、本中期経営計画を“顧客・社会との繋がりを強化し、価値創造力を高める”3年間と位置づけ、これを基本戦略とします。
4.経営目標(2022年3月期)
財務目標(IFRS)
(方針)収益力の強化と成長基盤の強化を両立
事業利益率:13.8 %
ROE:11.5 %
EPS:270 円

(想定為替レート:USD 110円 / EUR 125円)
*2021年3月期決算発表時(2021年5月10日)に開示した2022年3月期業績予想は、コロナ禍での環境変化等を踏まえ、事業利益率:11.8% ROE:10.0% EPS:233円(想定為替レート:USD 105円 / EUR 125円)としております。
非財務目標
コーポレートブランド価値*:1.3 倍
新興国の器楽教育普及:100 万人(累計)
認証木材使用率:50 %

*ヤマハ株式会社とヤマハ発動機株式会社の合同ブランド価値 $1.2 billion (Interbrand社 Best Japan Brands 2019)
投資と還元
(方針)成長投資と株主還元にバランス良く配分
総還元性向:50 %(3年累計)

5.4つの重点戦略
① 顧客ともっと繋がる
広く、深く、長く、お客様と繋がるため、ブランドプロミスを通じたブランド訴求と、デジタルマーケティングを軸にしたデジタル・リアル両面の顧客接点整備、そして、ライフタイムバリュー向上への貢献に取り組みます。また中国、ASEANをはじめとした新興国では、中間所得層を取り込み、成長を加速させます。音響機器事業、部品・装置事業では成長市場へ事業領域を拡大し成長を図っていきます。
② 新たな価値を創造する
ヤマハの強みである、“技術×感性”で新たな価値を創造します。世の中の変化や、お客様からのフィードバックに基づき、感性を定量化する技術(感性評価技術)や解析・シミュレーション技術を駆使し、また、アコースティック技術、デジタル技術等、当社が保有する技術を融合させ、ユニークな製品・サービスをお客様に提供していきます。
③ 生産性を向上する
付加価値向上と商品価値の訴求強化を通じて価格適正化を進めるとともに、製造コストの持続的な低減を図ります。また経費をゼロベースで見直し、顧客価値向上に資する戦略経費にシフトさせ、収益力の強化を図っていきます。
④ 事業を通じて社会に貢献する
音楽文化・社会の持続的発展に貢献します。多種多彩な楽器の供給を通じた世界の音楽シーンへの貢献、新興国における器楽教育普及等、音楽文化のサステナビリティへの貢献を拡大する他、製品・サービスを通じた社会課題の解決に取り組みます。また、持続可能な木材利用や環境配慮製品の開発などを通じ、自然との共生を実現していきます。
6.事業別戦略
① 楽器事業
新興国を中心とした販売拡大と付加価値向上により収益力の強化を進めます。頂点戦略の推進や中高級価格帯の拡売、併せてライフタイムバリュー向上と音楽普及活動への取り組みを通じた需要創出を進めていきます。
② 音響機器事業
B2B事業では、デジタルミキサーの強みを活かしながら、トータルソリューションのさらなる強化に取り組む他、施主等、上流工程の顧客へのダイレクトアプローチを強化します。B2C事業であるAV機器では、顧客のライフスタイル変化に適合したポートフォリオへの転換を進めます。
③ その他の事業
「音響×音声×騒音制御」の技術で、車室内の多様な音の課題を解決し、市場でのポジションを確立していきます。
7.投資と株主還元
創出したキャッシュを通常投資、戦略投資(新製造拠点への追加投資、R&D拠点、M&A他)と株主還元にバランス良く配分します。
株主還元については、継続的かつ安定的な配当を基本としますが、将来の成長投資のための適正な内部留保とのバランスを考慮しながら、資本効率の向上を目的とした機動的な株主還元も適宜、実施してまいります。3年累計で総還元性向50%を目標とします。
Ⅱ. サステナビリティの取り組みを加速
今中期経営計画において、重点戦略の一つとして掲げているサステナビリティに関して、今後より一層重点的に取り組むために、代表執行役社長の諮問機関としてサステナビリティ委員会および5つの部会(気候変動部会、資源循環部会、調達部会、人権・D&I部会、社会・文化貢献部会)を2021年1月1日付で新設しました。
本質的にサステナビリティと経営を一体化させていくことで、社会への貢献=社会価値の創造と企業価値の向上を同時に実現することができると考えています。サステナビリティの取り組みを具体的に事業活動に組み込み、加速させてまいります。
また、代表執行役社長の諮問機関の一つである人材開発委員会の下部組織として「女性活躍推進部会」を2021年1月1日付で新設し、女性の活躍を一層後押しする取り組みを開始しました。性別のみならず、年齢・志向・ライフスタイルなどあらゆる多様性を価値創造の源泉ととらえダイバーシティ&インクルージョンを引き続き推進してまいります。
Ⅲ. 法令違反への対応とコンプライアンスの徹底
当社子会社のYamaha Music Europe GmbH(以下YME)は、欧州の一部の国での販売において競争法違反があったとして各国当局の調査を受けておりました。違反の対象期間は国によって異なりますが2004年以降の年から2017年の間であり、全ての国において2017年に違反行為を終結し、是正を完了しております。
YMEは是正とともに各国当局の調査に協力し、その決定に従い既に制裁金4.3百万ユーロ(527百万円)を支払っており、本制裁金は2021年3月期において「その他の費用」として計上しております。
本件に関し、再発防止策を既に実施しておりますが、当社グループ全体において、引き続き競争法を含む全ての法律を遵守すべくコンプライアンスプログラムを徹底して参ります。