有価証券報告書-第16期(令和2年4月1日-令和3年3月31日)

【提出】
2021/06/21 12:44
【資料】
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【項目】
148項目

対処すべき課題

文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(1)経営方針
当社グループは、「世界で最も期待されるエンターテインメント企業グループ」をビジョンとして、IP(Intellectual Property:キャラクター等の知的財産)を活用した商品・サービスを通じて「夢・遊び・感動」を世界中の人々へ提供し続けることをミッションとしています。また、当社グループの存在意義は、世界中の人々がIPを通じ国境や言語を超えてコミュニケーションできる世界の創出に貢献することにあると考えています。中長期の将来においても、この考えのもと、事業規模だけでなく商品・サービスのクオリティや面白さ等で期待される個性あふれる会社と社員の集合体として、世界中のファンから最も期待されるエンターテインメント企業グループとなることを目指したいと考えております。また、環境やユーザー嗜好の変化が激しい業界において安定的に収益をあげることができる基盤を強固なものとするとともに、グローバル市場において持続的な成長を続けることを目指してまいります。
(2)経営戦略等
①バンダイナムコグループの強み
IPの世界観や特性を活かし、最適なタイミングで、最適な商品・サービスとして、最適な地域に向けて提供することでIP価値の最大化をはかる「IP軸戦略」がバンダイナムコグループの強みです。このIP軸戦略のもと、多彩なIPを幅広い事業領域で商品・サービスとして展開するとともに、IP軸戦略の進化と浸透・拡大に取り組むことで、グローバル市場における成長を目指しています。
0102010_001.jpg※この概念図は、IP軸展開の一例です。
②2019年3月期(2018年4月)~2021年3月期(2021年3月)の中期計画について
2019年3月期(2018年4月)~2021年3月期(2021年3月)の中期計画では、中期ビジョン「CHANGE for the NEXT 挑戦・成長・進化」のもと、従来のビジネスモデルや常識にこだわることなく、次のステージに向けあらゆる面でCHANGEするグループとなることを目指しました。戦略面では、IP軸戦略をさらに進化させ、グローバル市場での浸透・拡大を目指すとともに、今後成長の可能性が高い地域や事業での展開を強化しました。IP軸戦略においては新規IP創出にドライブをかけるとともに、各地域でALL BANDAI NAMCOで一体となり戦略を推進しました。
具体的には、IP軸戦略においては、定番IPのイノベーション強化、新規IP創出や新規IPのスピーディな商品化に取り組みました。事業戦略においては、新たなターゲットに向けた事業展開の強化、事業間の連携による相乗効果発揮に取り組みました。エリア戦略においては重点地域である中国市場での成長をはかったほか、各地域においてALL BANDAI NAMCOで各事業が一体となり、地域特性に応じた取組みを推進しました。
重点戦略
IP軸戦略:IP軸戦略のさらなる進化
・IP創出機能(体制)強化
・IP創出への積極投資
事業戦略:新たなエンターテインメントへの挑戦
・事業インフラの整備・拡充
・事業領域の拡大・強化
・インキュベーションの推進
エリア戦略:ALL BANDAI NAMCOでの成長
・中国市場本格展開
・ALL BANDAI NAMCOに向けた体制整備
人材戦略:「人」を核とした企業グループへ
③次期中期計画のスタート時期の変更について
当社は、2022年3月期(2021年4月)のスタートを予定していた3ヵ年の次期中期計画を、2023年3月期(2022年4月)よりスタートすることとしました。これは、顧客のライフスタイルや価値観が大きく変化することが予想される中、環境変化と中期計画の成果と課題を踏まえ、新しい時代におけるバンダイナムコの新しい戦い方となる次期中期計画を策定する必要があると判断したためです。2022年3月期については、次期中期計画を策定し、戦略を推進するための事業基盤や組織体制を整備する期間と位置づけています。
④グループの組織再編について
2022年4月からの次期中期計画スタートに先駆け、2021年4月より従来の5ユニット体制から、3ユニット体制に組織再編を行いました。
<再編の内容>・「トイホビーユニット」と「ネットワークエンターテインメントユニット」を統合し、「エンターテインメントユニット」としました。「エンターテインメントユニット」は、㈱バンダイナムコエンターテインメントが「デジタル事業」(ネットワークコンテンツ、家庭用ゲーム等)を、㈱バンダイが「トイホビー事業」(玩具、プラモデル等)をそれぞれ事業統括会社として統括し、両社が連携してユニット全体を統括します。
・「映像音楽プロデュースユニット」と「IPクリエイションユニット」を統合し、「IPプロデュースユニット」としました。「IPプロデュースユニット」は、㈱バンダイナムコアーツが「映像音楽事業」(映像・音楽コンテンツ、ライブエンターテインメント等)を、㈱サンライズが「クリエイション事業」(アニメーションの制作等)をそれぞれ事業統括会社として統括し、両社が連携してユニット全体を統括します。
・「リアルエンターテインメントユニット」を「アミューズメントユニット」に名称変更しました。「アミューズメントユニット」は、㈱バンダイナムコアミューズメントが統括します。
<再編の目的>・「エンターテインメントユニット」は、「デジタル事業」と「トイホビー事業」を統合することで、IPを軸に、より一体となり幅広い出口を相互活用した連携・拡大をはかるとともに、顧客の新たな価値観に対応したエンターテインメントの創出やデジタル対応を強化します。これにより、グローバル市場における競争力向上を目指します。
・「IPプロデュースユニット」は、IP創出を行うスタジオ機能とプロデュース機能を集約し、より多彩で、ユニット内のみならずグループの各事業や外部パートナーとの協業による相乗効果を発揮できるIP創出機能の強化をはかります。
・「アミューズメントユニット」は、IPやグループのリソースを活用する等、バンダイナムコならではの強みに選択と集中を行い、グループの各事業とより一体となることで、安定して収益をあげることができる強い基盤づくりに取り組みます。
今後は、次期中期計画及び中長期での持続的な成長に向け、全世界で各事業がALL BANDAI NAMCOで一体となり、これまで以上に融合・連携を加速します。また、新規IP創出と既存IPの育成を強化し、グループの幅広い事業を活用しIP軸戦略のさらなる拡大と、グローバル市場での事業展開を推進してまいります。
(3)経営環境
世界経済全体において、新型コロナウイルス感染拡大が、社会や経済全体、個人の生活や消費に影響を与え、先行きが不透明な状況が継続すると予測しています。このような不透明な状況が継続することで、当社グループが事業展開するエンターテインメント市場においても、市場環境、エンターテインメントに対する人々の価値観や嗜好の変化がさらに激しくなることが想定されます。また、デジタル化をはじめとする技術の進化によりエンターテインメントに関する選択肢が多様化し、顧客の嗜好やライフスタイルの変化のスピードがますます速くなるとともに、グローバル市場における競争が激化することが予想されます。
(4)優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題
当社グループでは、新型コロナウイルス感染拡大を防ぐための取組みを継続するとともに、社会の一員として商品・サービスを通じ世界中の人々に「夢・遊び・感動」を提供するという企業理念にのっとり、社会や顧客からの要請や期待に応えていきたいと考えております。世界各国における新型コロナウイルス感染拡大が継続した場合、販売店休業等による消費への影響に加えて、イベントの延期や自粛及びそれに伴うプロモーション等への影響、商品・サービスや映像作品の開発・制作スケジュールへの影響、生産スケジュール等への影響、アミューズメント施設等の休業等が発生する可能性があります。当社グループは、従業員や家族、顧客をはじめとする様々なステークホルダーの安全を最優先に考え、新型コロナウイルス感染拡大を防ぐため、衛生管理の徹底や各国・地域の政府・自治体からの要請に基づいた事業の運営等の取組み、多様な働き方への対応等を継続してまいります。また、事業面においては、影響を最小限のものとすべく、情報収集と臨機応変な対応を継続するほか、デジタル技術の活用強化等により、ライフスタイルの変化に迅速に対応してまいります。さらに、中長期での持続的な成長に向け取り組むべき様々な課題に対しては、IP軸戦略のもと、各地域で各事業がALL BANDAI NAMCOでより一体となり取り組むとともに、2022年4月よりスタートする次期中期計画において、課題に対応した戦略を推進してまいります。
①グループ横断で取り組むべき課題
企業の社会的責任を果たすために
当社グループは、「世界で最も期待されるエンターテインメント企業グループ」をビジョンとして、多彩なIPを活用した商品・サービス等を通じて「夢・遊び・感動」を世界中の人々へ提供し続けることをミッションとしています。また、当社グループの存在意義は、世界中の人々がIPを通じ国境や言語を超えてコミュニケーションできる世界の創出に貢献することにあると考えています。
当社グループではエンターテインメントを通じた「夢・遊び・感動」を世界中の人々へ提供し続けるため、グループを横断して特に重点的に取り組む必要があるテーマを「CSR重要項目」として設定するとともに、「環境・社会貢献的責任」、「経済的責任」、「法的・倫理的責任(コンプライアンス)」の3つの責任を果たすことを盛り込んだ、グループを横断する「CSRへの取組み」を定め、グループ社員が遵守すべき行動規範となるグループコンプライアンス憲章を制定しております。これらのもと、「グループCSR委員会」とその推進組織である「グループCSR部会」、さらには「グループリスクコンプライアンス委員会」、「グループ情報セキュリティ委員会」、「内部統制委員会」を開催するとともに、社内への啓発活動等の各種施策に取り組むことで社内意識の向上に継続的に取り組んでまいります。これらに加え、当社グループの企業理念やエンターテインメントに携わる責任と誇りについて様々な機会を通じ経営者自身が発信を行うことで、社内における理解の深化に努めております。
<バンダイナムコグループサステナビリティ方針を策定(2021年4月)>当社グループは、社会の一員として持続可能な社会の実現に向けた責任を果たすため、IP軸戦略のもと、ファンとともに、グループが向きあうべき社会的課題に対応したサステナブル活動を推進すべく「バンダイナムコグループのサステナビリティ方針」を策定しています。そして、この方針の一環として、次期中期計画に向けて活動のマテリアリティの特定(重要項目の再選定)を推進するほか、エネルギー由来の二酸化炭素排出量削減目標の設定を行い、取組みを行ってまいります。
<バンダイナムコグループサステナビリティ方針>バンダイナムコグループは、IP軸戦略のもと、ファンとともに、バンダイナムコグループが向きあうべき社会的課題に対応したサステナブル活動を推進します。
脱炭素化に向けた目標
目標2050年まで:
自社拠点(社屋、自社工場、直営アミューズメント施設等)におけるエネルギー
由来の二酸化炭素排出量 実質ゼロ
中間目標2030年まで:
自社拠点におけるエネルギー由来の二酸化炭素排出量2019年度比35%削減
(2013年度比50%)
主な取組み省エネルギー施策のさらなる推進、再生可能エネルギーの導入等

IP軸戦略のさらなる強化に向けて
当社グループでは、流通・メディアの寡占化やネットワークの普及、プラットフォームの多様化や技術進化、グローバル市場での競争激化等の環境変化に対応するため、IP軸戦略のさらなる進化に取り組みます。新規IP創出に関しては、IP創出をミッションとする新ユニット「IPプロデュースユニット」においてグループの各事業や外部パートナーとの協業によるIP創出機能の強化をはかります。また、商品・サービス発や映像作品発の取組み、全体最適の視点で投資を行う「バンダイナムココンテンツファンド」の活用、次世代クリエイターを応援する「夢応援団」等によるパートナー企業やクリエイターとの連携等、あらゆる方法で新規IP創出を強化します。IP価値最大化に向けては、グループの事業間連動や横断プロジェクトの推進、新規事業の創出育成や展開地域の拡大、新たなプラットフォームへのスピーディな対応をはかります。
これらのIP創出及びIP価値最大化に向けた取組みを推進するにあたっては、積極的な投資を実施してまいります。さらにグループ全体最適の視点で、中長期的にIP軸戦略を強化すべく、「機動戦士ガンダム」シリーズや「DRAGON BALL」シリーズ等の定番IPのワールドワイド展開、新規IP創出プロジェクト等のグループを横断した戦略的な取組みを行ってまいります。これらの取組みに加え、IP軸戦略の推進にあたっては、IPそのものやその世界観を尊重した活動を行うため、パートナー企業や行政と連携し、模倣品の排除や啓発活動等の知的財産保護のための活動を行ってまいります。
グローバル市場での事業拡大に向けて
当社グループが、中長期で持続的な成長を続けるためには、グローバル市場での事業拡大が不可欠と考えております。欧米及びアジア地域において、各地域の特性にあわせた展開を行うため、地域統括会社と各地域の事業会社がALL BANDAI NAMCOで一体となり取り組む体制を構築しています。今後はグループの組織再編を受け、さらに事業間の連携を強化するとともに、日本発IPの商品・サービスの海外展開に加え、各地域発のIP展開に取り組む等、IPポートフォリオの強化をはかります。重点地域と位置づける中国市場においては、ALL BANDAI NAMCOで一体となり取り組むための基盤を強化するとともに、グループだけでなく現地のパートナー企業等と密接な連携をはかり、事業の本格展開に着手しております。さらに、グローバル人材の育成をはかるべく、多様な人材の採用に加え、地域や事業を横断した人事交流や研修により育成を推進します。
技術の進化と変化への対応に向けて
デジタル化をはじめとする技術の進化により、エンターテインメントにおける選択肢が多様化し、顧客の嗜好やライフスタイルの変化のスピードが速くなるとともに、グローバル規模での競争が激化しています。当社グループでは、従来のビジネスモデルにこだわることなく、顧客の嗜好やライフスタイルに対応した新たな価値創造やプラットフォームへの対応、ビジネスモデルの変革に積極的に取り組んでまいります。これらの推進にあたっては、国内外のパートナー企業やクリエイター等と密接な連携をはかってまいります。
②各ユニットにおける課題
エンターテインメントユニット
<デジタル事業>当業界においては、「プラットフォームの多様化」、「ネットワーク等の技術進化」、「顧客ニーズの多様化」、「開発投資額の上昇」等の課題があります。これらの課題に対応するため、商品・サービスの開発にあたってはクオリティを重視し絞り込んだタイトルの開発を行うとともに、リリース後においてもアップデートや追加コンテンツの提供、イベントの開催等の顧客に向けた継続的な施策により、商品・サービスの長期展開をはかっております。また、新たなプラットフォームの登場は顧客獲得の機会ととらえ、各プラットフォームの特性にあわせたタイトル提供を行っています。このほか、既存の事業や商品・サービスの枠を超え、ネットワーク等の技術進化に対応した新たなエンターテインメントやビジネスモデルの創出に取り組んでまいります。さらには、技術進歩や環境変化、新たなプラットフォームに迅速に対応するため、技術研究をさらに強化してまいります。
<トイホビー事業>当業界においては、「少子化による国内市場の縮小」、「顧客ニーズの多様化」、「商品生産地域の集中」等の課題があります。これらの課題に対応するため、国内において圧倒的No.1の地位確立を目指し、ターゲット層の拡大や新規事業の創出に取り組んでおります。海外においては、ハイターゲット層(大人層)向け商品の事業拡大や、中国市場での本格展開、EC販売強化等の取組みを行い、中長期的な成長を目指してまいります。また、開発生産面においては、バリューチェーンの改革により、スピードやクオリティ、価格面でも競争力のある商品展開を進めてまいります。このほか、該当する法規制や業界が定める品質・安全基準を踏まえ、より厳しい自社品質基準の設定や生産委託先の定期的なCOC(Code of Conduct:行動規範)監査の実施等により品質・安全の徹底をはかっております。商品の生産においては、自社の生産拠点を日本、タイ、フィリピン、ベトナムに設けているほか、取引先工場においても品質基準の担保を大前提に生産拠点の分散をはかっております。
IPプロデュースユニット
<映像音楽事業・クリエイション事業>当業界においては、「IP創出における競争激化」、「顧客ニーズの多様化」、「優秀な人材の育成」等の課題があります。これら課題に対応するため、スタジオ機能とプロデュース機能を集約し、より多彩で、ユニット内のみならずグループの各事業や外部パートナーとの協業により相乗効果を発揮できるIP創出機能の強化をはかります。また、映像制作や制作技術向上のための投資を積極的に行うほか、クリエイターの正社員化や育成に取り組んでまいります。さらには、映像・音楽・ライブイベントとデジタル技術を融合させた新しいエンターテインメント創出に取り組んでまいります。
アミューズメントユニット
当業界においては、「顧客ニーズの多様化」、「環境変化の激化」等の課題があります。これらの課題に対応するため、施設事業や業務用ゲーム機事業において、IPやグループのリソースを活用する等、バンダイナムコならではの展開を行い、グループの各事業とより一体となることで、安定して収益をあげることができる強い基盤づくりに取り組みます。同ユニットは、IP軸戦略におけるグループの重要な顧客接点として、グループの商品・サービスの販売、IPの訴求や顧客ニーズを収集する役割も果たしてまいります。
*「(4)優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題」は2021年4月1日付の新しい事業区分で記載しております。
(5)経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等
当社グループは、収益性と資本効率の向上を目指しており、経営指標として営業利益率及びROE(自己資本当期純利益率)を重視しております。IP軸戦略の推進により収益の成長と資本効率の向上に継続的に取り組み、環境変化に左右されず安定的に達成できる事業基盤をさらに強固なものとするとともに、ROEの向上を目指してまいります。
また、株主の皆様への利益還元を経営の重要施策と位置づけており、当社グループの競争力を一層強化し、財務面での健全性を維持しながら、継続した配当の実施と企業価値の向上を実現していくことを目指しております。具体的には、長期的に安定した配当を維持するとともに、資本コストを意識し、安定的な配当額としてDOE(純資産配当率)2%をベースに、総還元性向50%以上を目標に株主還元を実施することを基本方針としております。