有価証券報告書-第14期(平成30年4月1日-平成31年3月31日)

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2019/06/24 14:46
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【項目】
163項目

対処すべき課題

文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(1)経営方針
当社グループは、「世界で最も期待されるエンターテインメント企業グループ」をビジョンとして、エンターテインメントを通じた「夢・遊び・感動」を世界中の人々へ提供し続けることをミッションとしております。
中長期の将来においても、このミッション・ビジョンのもと、事業規模だけでなく商品・サービスのクオリティや面白さなどで期待される個性あふれる会社と社員の集合体として、世界中のファンから最も期待されるエンターテインメント企業グループとなることを目指したいと考えております。また、環境やユーザー嗜好の変化が激しい業界において安定的に収益をあげることができる基盤を強固なものとするとともに、グローバル市場において持続的な成長を続ける企業グループとなることを目指してまいります。
(2)経営戦略等
2018年4月~2021年3月の中期計画では、IP(Intellectual Property:キャラクターなどの知的財産)の世界観や特性を活かし、最適なタイミングで、最適な商品・サービスとして提供することでIP価値の最大化をはかる「IP軸戦略」をさらに進化させ、グローバル市場での浸透・拡大を目指すとともに、今後成長の可能性が高い地域や事業での展開を強化します。IP軸戦略においては新規IP創出にドライブをかけるとともに、各地域でALL BANDAI NAMCOで一体となり戦略を推進します。また、世界のエンターテインメント市場における環境や顧客志向の変化、新たな競合の登場などを踏まえ、具体的な戦略推進にあたっては、従来のビジネスモデルや常識にこだわることなく、次のステージに向けあらゆる面でCHANGEするグループとなることを目指します。
(中期ビジョン CHANGE for the NEXT 挑戦・成長・進化)
バンダイナムコグループが商品・サービスを通じ「夢・遊び・感動」を提供し、世界で最も期待されるエンターテインメント企業グループを目指すという企業理念に変更はありません。中期計画においては、従来のビジネスモデルや常識にこだわることなく、挑戦・成長・進化し続け、次のステージに向けCHANGEをはかります。CHANGEには、IP創出企業へのCHANGE、新たなビジネスモデルへのCHANGE、ALL BANDAI NAMCO体制へのCHANGE、人を核とする企業グループへのCHANGEなどの意味を込めています。
(当社グループの組織体制)
当社グループでは、持株会社のもと、事業会社の集合体ごとに事業戦略の実行を行っています。
2018年4月よりスタートした中期計画より、事業会社の集合体の単位名称をSBU(Strategic Business Unit:戦略ビジネスユニット)からユニットに改めました。また、IP軸戦略のさらなる進化、新たなエンターテインメントへの挑戦などのミッションごとに、よりスピーディに重点戦略を推進するため、従来の3SBU体制から5ユニット体制としました。
具体的には、ネットワークエンターテインメントSBUを、ネットワークコンテンツや家庭用ゲームなどの分野で事業展開を行うネットワークエンターテインメントユニットと、リアルな場を活用しバンダイナムコならではの施設やサービス、機器などのコンテンツの提供を行うリアルエンターテインメントユニットに分割しました。また、新規IP創出に注力するIPクリエイションユニットが映像音楽プロデュースSBUから独立し新ユニットとなりました。
(重点戦略)
IP軸戦略:IP軸戦略のさらなる進化
バンダイナムコグループ最大の強みであるIP軸戦略をより強固なものとするため、新規IP創出にドライブをかけるとともに、定番IPのイノベーションを継続します。新規IP創出にあたっては、グループのあらゆる事業において取り組むとともに、国内外のあらゆるパートナーとオープンに協業します。
・IP創出機能(体制)強化
・IP創出への積極投資
事業戦略:新たなエンターテインメントへの挑戦
新たなエンターテインメントへの挑戦に向け、事業インフラの整備・拡充と事業領域の拡大・強化、インキュベーションの推進に取り組みます。
・事業インフラの整備・拡充
・事業領域の拡大・強化
・インキュベーションの推進
エリア戦略:ALL BANDAI NAMCOでの成長
IP軸戦略のグローバル展開拡大にあたっては、各地域の持株会社と各ユニットの事業会社がALL BANDAI NAMCOで一体となり、各地域の市場や顧客の特性にあわせた戦略推進を行います。日本においては各市場におけるNo.1を追求し続けるとともに、海外においてはトイホビー事業におけるハイターゲット層に向けた展開の強化、ネットワークコンテンツや家庭用ゲームの拡大等を行います。また重点地域として中国市場での本格展開を行います。
・中国市場本格展開
・ALL BANDAI NAMCOに向けた体制整備
人材戦略:「人」を核とした企業グループへ
当社グループは「夢・遊び・感動」を提供する企業グループとして、様々な個性を持つ企業や社員が安心して生き生きと働くことができる「面白さで勝つ人材経営の企業グループ」でありたいと考えます。従来よりグローバル人材の育成、積極的な人材交流、多様な人材が活躍できる制度、社員が心身とも健康で働くための各種制度の整備などに取り組んできました。中期計画においては、これらの制度に加え、より社員が新しいことに挑戦するための提案制度、チャレンジを支援する仕組み、グループの生産性向上に向けた取組みなどを推進します。
※参考資料(各ユニットの中期ビジョン・重点戦略)
トイホビーユニット
・中期ビジョン
突き破り創り出せ!そして世界を“あっ”と言わせよう!
Break Out of the Box. Wow the World!
・重点戦略
IPの創出・育成・獲得の強化、各事業ポジションの成長実現、中国市場への本格展開、新規事業領域の拡大、事業最大化に向けた機能の再/最強化
ネットワークエンターテインメントユニット
・中期ビジョン
存在感のある「世界企業」へ
・重点戦略
「顧客起点」の新ビジネススタイル構築、「世界企業」化
リアルエンターテインメントユニット
・中期ビジョン
いま、ここにしかないエンターテインメント体験を世界中に生み出す
~リアルエンターテインメントのコンテンツプロバイダー~
・重点戦略
リアルプラットフォームの構築、バンダイナムコならではの差別化の実現
映像音楽プロデュースユニット
・中期ビジョン
映像・音楽・ライブ No.1企業グループへ
・重点戦略
ヒットIPの創出力強化、映像・音楽・ライブを中心としたIP総合プロデュースへの挑戦、世界を見据えたIP活用の推進
IPクリエイションユニット
・中期ビジョン
アニメ制作会社からIPプロデュース集団への進化
・重点戦略
IP創出力UP、IP発信力UP、既存ブランド力UP
(3)経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等
当社グループは、収益性と資本効率の向上を目指しており、経営指標として営業利益率及びROE(自己資本当期純利益率)を重視しております。2018年4月よりスタートした3ヵ年の中期計画においては、重点戦略の推進により収益の成長と資本効率の向上に継続的に取り組み、環境変化に左右されず安定的に達成できる事業基盤をさらに強固なものとするとともに、ROE10%以上を目指してまいります。
(4)経営環境
当社グループが事業展開するエンターテインメント市場においては、技術の進化や顧客嗜好の変化のスピードがますます速くなるとともに、グローバル市場における競争が激化することが予想されます。このような環境を踏まえ、当社グループでは中長期的な成長を目指し、ALL BANDAI NAMCOで一体となり様々な課題や施策に取り組んでまいります。
(5)事業上及び財務上の対処すべき課題
当社グループ及び当業界においては、「IP創出における競争激化」、「顧客ニーズの多様化」、「環境変化の激化」、「グローバル規模での競争激化」など、対処すべき重要かつ長期にわたる課題が数多くあります。当社グループでは、中期計画に掲げた重点戦略により、これらの課題に迅速に対応してまいります。
① 各ユニットを横断する課題
IP軸戦略のさらなる強化に向けて
当社グループでは、流通・メディアの寡占化やネットワークの普及、技術進化などの環境変化に対応するため、IP軸戦略のさらなる進化に取り組みます。具体的には、商品・サービス発や映像作品発の取組み、社内外公募システムの活用、パートナー企業との連携や戦略投資など、あらゆる方法で新規IP創出を強化します。また、IP価値最大化に向け、グループの事業間連動や横断プロジェクトの推進、新規事業の創出育成や展開地域の拡大、新たなプラットフォームへのスピーディーな対応をはかります。さらに当社組織「IP戦略本部」が中心となり、中長期的にIP軸戦略を強化すべく、グループを横断した戦略的な取組みを行ってまいります。
グローバル市場での事業拡大に向けて
当社グループが、ビジョンである「世界で最も期待されるエンターテインメント企業グループ」となるためには、グローバル市場での事業拡大が不可欠と考えております。欧米及びアジア地域において、各地域の特性にあわせ、既存事業の拡大をはかるとともに、商品・サービス展開するIPラインナップや事業カテゴリーの拡充に取り組みます。これに加え、中国市場における事業の本格展開に着手し、ユニットを横断した取組みにより基盤整備を行います。これらグローバル市場での事業拡大を推進するため、各地域においてグループが一体となり、ALL BANDAI NAMCO体制で取組みを行ってまいります。
企業の社会的責任を果たすために
当社グループがエンターテインメントを通じた「夢・遊び・感動」を世界中の人々へ提供し続けるため、「環境・社会貢献的責任」、「経済的責任」、「法的・倫理的責任(コンプライアンス)」の3つの責任を果たすことを盛り込んだ、グループを横断する「CSRへの取組み」を定め、グループ社員が遵守すべき行動規範となるグループコンプライアンス憲章を制定しております。これらのもと、「グループCSR委員会」とその推進組織である「グループCSR部会」、さらには「グループリスクコンプライアンス委員会」、「グループ情報セキュリティ委員会」、「内部統制委員会」を開催するとともに、各種施策に取り組むことで社内意識の向上に継続的に取り組んでまいります。
② 各ユニットにおける課題
トイホビーユニット
当業界においては、「少子化による国内市場の縮小」、「顧客ニーズの多様化」などの課題があります。これらの課題に対応するため、国内において圧倒的No.1の地位確立を目指し、ターゲット層の拡大や新規事業の創出に取り組んでおります。海外においては、各地域でニーズの高いハイターゲット向け商品事業の拡大や、中国市場での本格展開に向けた取組みを行い、中長期的な成長を目指してまいります。また、開発生産面においては、バリューチェーンの改革により、スピードやクオリティ、価格面でも競争力のある商品展開を進めてまいります。
ネットワークエンターテインメントユニット
当業界においては、「プラットフォームの多様化」、「ネットワークなどの技術進化」、「顧客ニーズの多様化」などの課題があります。これらの課題に対応するため、顧客に向けた継続的な施策により、商品・サービスの長期展開をはかっているほか、既存の事業や商品・サービスの枠を超え、ネットワークなどの技術進化に対応した新たなエンターテインメントやビジネスモデルの創出に取り組んでまいります。このほか、技術進歩や環境変化、新たなプラットフォームに迅速に対応するため、技術研究をさらに強化してまいります。
リアルエンターテインメントユニット
当業界においては、「顧客ニーズの多様化」、「環境変化の激化」などの課題があります。これらの課題に対応するため、業務用ゲームの企画開発力、最先端の技術力、IPの世界観を活かす商品化ノウハウなどを活用した当社グループならではの施設やサービス、コンテンツの提供を行ってまいります。また、機器開発から顧客への提供までのバリューチェーンを保有する強みを生かし、効率的な運営をはかるほか、顧客ニーズの多様化や環境変化に迅速に対応してまいります。
映像音楽プロデュースユニット
当業界においては、「顧客ニーズの多様化」、「IP創出における競争激化」などの課題があります。これらの課題に対応するため、IP創出体制の強化をはかっているほか、映像・音楽・ライブイベントを融合させた新しいエンターテインメントやIPの創出・プロデュースに取り組んでまいります。また、ライブイベント事業の強化のため、映像・音楽・ライブが一体となったライブイベント展開を国内外で強化するほか、グループとしての複合施設を建設・プロデュースし、バンダイナムコグループならではの場として活用してまいります。
IPクリエイションユニット
当業界においては、「IP創出における競争激化」、「優秀な人材の育成」などの課題があります。これらの課題に対応するため、グループの各事業と密接に連携したIPのプロデュースを行うことでグループ間の連携によるIP創出を目指してまいります。また、映像制作や制作技術向上のための投資を積極的に行うほか、様々な才能を持つ外部パートナーとの協業も強化するとともに、グループ内においても、クリエイターなどの人材の育成・確保をはかってまいります。
(6)会社の支配に関する基本方針
① 基本方針の内容
当社グループの企業価値
当社グループは、「世界で最も期待されるエンターテインメント企業グループ」をビジョンとして、エンターテインメントを通じた「夢・遊び・感動」を世界中の人々へ提供し続けることをミッションとしております。
一方、変化の速いエンターテインメント業界でグローバル規模の競争を勝ち抜くためには、強固な経営基盤を築くだけでなく、常に時代や環境の変化を先取りしたエンターテインメントを創造することが不可欠であり、ひいてはこれが当社の企業価値の向上に繋がるものと考えております。
したがって、当社の財務及び事業の方針の決定を支配する者のあり方を巡っても、当社の企業価値の向上に繋がるものであるか否かが考慮されなければなりません。
当社の財務及び事業の方針の決定を支配する者のあり方
当社の財務及び事業の方針の決定を支配する者は、以上のような当社グループの経営ビジョンやミッション及びその遂行を支えるコンテンツ等の経営資源、さらには当社に関わる様々なステークホルダーの重要性を十分理解し、当社の企業価値ひいては株主共同の利益を中長期的に最大化させる者でなければならないと考えます。
したがって、当社の株式の大量取得を行おうとしている者が、おおむね次のような者として当社の企業価値を害する者である場合には、当社の財務及び事業の方針の決定を支配する者としては不適切であると考えます。
・企業価値を毀損することが明白な者
・買収提案に応じなければ不利益な状況を作り出し、株主に売り急がせる者
・会社側に判断のための情報や、判断するための時間を与えない者
② 取組みの具体的内容
当社取締役会は、株主の皆様から経営を負託された者として、基本方針を実現するため、次のとおり取り組んでおります。
企業価値向上策
・中期計画の推進
当社グループは、2018年4月にスタートした中期計画のもと、IP軸戦略をさらに進化させグローバル市場での浸透・拡大を目指すとともに、今後成長の可能性が高い地域や事業での展開を強化するための様々な戦略を推進しております。これらの戦略を推進することにより、エンターテインメント企業グループとして次のステージを目指すとともに企業価値の向上をはかってまいります。
・コーポレート・ガバナンス体制の強化
当社は、ユニットの主幹会社代表取締役社長が当社の取締役を兼任することにより、持株会社と事業会社、さらには事業会社間の連携を強化するとともに、グループとして迅速な意思決定を行っております。また、当社定款において取締役のうち2名以上を社外取締役とすることを規定するとともに、いずれの社外取締役も独立社外取締役とすることで経営監督機能の強化をはかっております。これに加え、取締役会が適切に機能しているかを、客観的な視点から評価することを目的に、独立役員会を組成しております。独立役員会は、独立社外取締役及び独立社外監査役の独立役員全員をもって構成され、事務局機能も第三者専門機関に設置しております。これにより、取締役会における、より実効性の高い監督機能の保持を行っております。
・経営効率化の推進
当社グループにおける事業再建基準を整備し、より迅速に事業動向を見極めるため、継続的なモニタリングの仕組みを強化するとともに、社内で定めた指標に基づき、事業の再生・撤退を迅速に判断しております。このほか、グループ全体の業務プロセスの標準化によりコスト削減をはかり、経営の効率化を推進しております。
・人材戦略の強化
当社グループは「夢・遊び・感動」を提供する企業グループとして、様々な個性を持つ企業や社員が安心して生き生きと働くことができる「面白さで勝つ人材経営の企業グループ」でありたいと考えます。従来よりグローバル人材の育成、積極的な人材交流、多様な人材が活躍できる制度、社員が心身ともに健康で働くための各種制度の整備などに取り組んできました。中期計画においては、これらの制度に加え、より社員が新しいことに挑戦するための提案制度、チャレンジを支援する仕組み、グループの生産性向上に向けた取組みなどを推進しております。
・CSR(企業の社会的責任)活動の強化
当社グループは、「夢・遊び・感動」を提供する企業グループとして、「環境・社会貢献的責任」、「経済的責任」、「法的・倫理的責任(コンプライアンス)」の3つの責任を果たすことを盛り込んだ、グループを横断する「CSRへの取組み」を定め、各種CSR活動を推進しております。
・積極的なIR活動
当社は、金融商品取引法及び東京証券取引所の定める適時開示規則に沿って、情報開示を適時・的確に行っております。そして、株主をはじめとするステークホルダーの皆様に対し経営戦略や事業方針について、明確に伝える透明性の高い企業でありたいと考えております。そのため、会社説明会や決算説明会など、代表取締役社長をはじめとした経営者自身が、国内外の個人投資家・機関投資家及び証券アナリストなどに対し、直接語りかけていく場を充実すべく努力しております。
・積極的な株主還元策
当社は、株主の皆様への利益還元を経営の重要施策と位置付けており、当社グループの競争力を一層強化し、財務面での健全性を維持しながら、継続した配当の実施と企業価値の向上を実現していくことを目指しております。具体的には、長期的に安定した配当を維持するとともに、より資本コストを意識し、安定的な配当額としてDOE(純資産配当率)2%をベースに、総還元性向50%以上を目標に株主還元を実施することを基本方針としております。
買収防衛策
当社は、現在のところ具体的な買収防衛策を導入しておりません。企業価値向上策に従って、経営戦略・事業戦略を遂行し、グループ企業価値を向上させることが、不適切な買収への本質的な対抗策であると考えるからです。もっとも、株主の皆様から経営を負託された者として、今後、当社の財務及び事業の方針の決定を支配する者として不適切な者が出現する場合に備え、法令や社会の動向を注視しつつ買収防衛の体制整備にも努めてまいります。具体的には、万一不適切な買収者が現れた場合に、当該買収者による提案に対し、経営陣が保身をはかることなく、企業価値の向上を最優先した判断を下すため、独立役員会において客観的な視点での検討を諮った後、取締役会における十分な審議を行います。さらには、株主の皆様の適切なご判断に資するために、十分な情報収集と必要な時間の確保に努めてまいります。