有価証券報告書-第15期(平成31年4月1日-令和2年3月31日)

【提出】
2020/06/22 11:23
【資料】
PDFをみる
【項目】
161項目

対処すべき課題

文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(1)経営方針
当社グループは、「世界で最も期待されるエンターテインメント企業グループ」をビジョンとして、IP(Intellectual Property:キャラクター等の知的財産)を活用した商品・サービスを通じて「夢・遊び・感動」を世界中の人々へ提供し続けることをミッションとしています。また、当社グループの存在意義は、世界中の人々がIPを通じ国境や言語を超えてコミュニケーションできる世界の創出に貢献することにあると考えています。中長期の将来においても、この考えのもと、事業規模だけでなく商品・サービスのクオリティや面白さ等で期待される個性あふれる会社と社員の集合体として、世界中のファンから最も期待されるエンターテインメント企業グループとなることを目指したいと考えております。また、環境やユーザー嗜好の変化が激しい業界において安定的に収益をあげることができる基盤を強固なものとするとともに、グローバル市場において持続的な成長を続ける企業グループとなることを目指してまいります。
(2)経営戦略等
2018年4月~2021年3月の中期計画では、IPの世界観や特性を活かし、最適なタイミングで、最適な商品・サービスとして提供することでIP価値の最大化をはかる「IP軸戦略」をさらに進化させ、グローバル市場での浸透・拡大を目指すとともに、今後成長の可能性が高い地域や事業での展開を強化します。IP軸戦略においては新規IP創出にドライブをかけるとともに、各地域でALL BANDAI NAMCOで一体となり戦略を推進します。また、世界のエンターテインメント市場における環境や顧客志向の変化、新たな競合の登場等を踏まえ、具体的な戦略推進にあたっては、従来のビジネスモデルや常識にこだわることなく、次のステージに向けあらゆる面でCHANGEするグループとなることを目指します。
0102010_001.png①中期ビジョン CHANGE for the NEXT 挑戦・成長・進化
中期ビジョン「CHANGE for the NEXT 挑戦・成長・進化」には、従来のビジネスモデルや常識にこだわることなく 挑戦・成長・進化し続け、次のステージに向けCHANGEをはかるという思いをこめています。CHANGEには、IP創出企業へのCHANGE、新たなビジネスモデルへのCHANGE、ALL BANDAI NAMCO体制へのCHANGE、人を核とする企業グループへのCHANGE等の意味を込めています。
②重点戦略
IP軸戦略:IP軸戦略のさらなる進化
バンダイナムコグループ最大の強みであるIP軸戦略をより強固なものとするため、新規IP創出にドライブをかけるとともに、定番IPのイノベーションを継続します。新規IP創出にあたっては、グループのあらゆる事業において取り組むとともに、国内外のあらゆるパートナーとオープンに協業します。
・IP創出機能(体制)強化
・IP創出への積極投資
事業戦略:新たなエンターテインメントへの挑戦
新たなエンターテインメントへの挑戦に向け、事業インフラの整備・拡充と事業領域の拡大・強化、インキュベーションの推進に取り組みます。
・事業インフラの整備・拡充
・事業領域の拡大・強化
・インキュベーションの推進
エリア戦略:ALL BANDAI NAMCOでの成長
IP軸戦略のグローバル展開拡大にあたっては、各地域の持株会社と各ユニットの事業会社がALL BANDAI NAMCOで一体となり、各地域の市場や顧客の特性にあわせた戦略推進を行います。日本においては各市場におけるNo.1を追求し続けるとともに、海外においてはトイホビー事業におけるハイターゲット層に向けた展開の強化、ネットワークコンテンツや家庭用ゲームの拡大等を行います。また重点地域として中国市場での本格展開を行います。
・中国市場本格展開
・ALL BANDAI NAMCOに向けた体制整備
人材戦略:「人」を核とした企業グループへ
当社グループは「夢・遊び・感動」を提供する企業グループとして、様々な個性を持つ企業や社員が安心して生き生きと働くことができる「面白さで勝つ人材経営の企業グループ」でありたいと考えます。従来よりグローバル人材の育成、積極的な人材交流、多様な人材が活躍できる制度、社員が心身とも健康で働くための各種制度の整備等に取り組んできました。中期計画においては、これらの制度に加え、より社員が新しいことに挑戦するための提案制度、チャレンジを支援する仕組み、グループの生産性向上に向けた取組み等を推進します。
・社員が「個」の力を最大限発揮しチャレンジを後押しする環境整備
なお、ステークホルダーの皆様に対し経営戦略や事業方針について、明確に伝える透明性の高い企業でありたいという考えのもと、当社グループでは、中期計画の重点戦略の進捗状況等につきましては、会社説明会や決算説明会、統合レポート等の様々な機会を通じ、経営者自身がご説明させていただいております。また、中期計画の各戦略の成果と課題については、成果における可能性をさらに広げるとともに課題を解決し、中長期で持続的な成長に向けた基盤を強固なものとすべく、2021年4月よりスタート予定の次期中期計画の戦略策定を行っております。
※参考資料(各ユニットの中期ビジョン・重点戦略)
トイホビーユニット
・中期ビジョン
突き破り創り出せ!そして世界を“あっ”と言わせよう!
Break Out of the Box. Wow the World!
・重点戦略
IPの創出・育成・獲得の強化、各事業ポジションの成長実現、中国市場への本格展開、新規事業領域の拡大、事業最大化に向けた機能の再/最強化
ネットワークエンターテインメントユニット
・中期ビジョン
存在感のある「世界企業」へ
・重点戦略
「顧客起点」の新ビジネススタイル構築、「世界企業」化
リアルエンターテインメントユニット
・中期ビジョン
いま、ここにしかないエンターテインメント体験を世界中に生み出す
~リアルエンターテインメントのコンテンツプロバイダー~
・重点戦略
リアルプラットフォームの構築、バンダイナムコならではの差別化の実現
映像音楽プロデュースユニット
・中期ビジョン
映像・音楽・ライブ No.1企業グループへ
・重点戦略
ヒットIPの創出力強化、映像・音楽・ライブを中心としたIP総合プロデュースへの挑戦、世界を見据えたIP活用の推進
IPクリエイションユニット
・中期ビジョン
アニメ制作会社からIPプロデュース集団への進化
・重点戦略
IP創出力UP、IP発信力UP、既存ブランド力UP
(3)経営環境
世界経済全体において、新型コロナウイルス感染拡大が、社会や経済全体、個人の生活や消費に影響を与え、先行きが不透明な状況が継続すると予測しています。このような不透明な状況が継続することで、当社グループが事業展開するエンターテインメント市場においても、市場環境、エンターテインメントに対する人々の価値観や嗜好の変化がさらに激しくなることが想定されます。また、デジタル化をはじめとする技術の進化によりエンターテインメントに関する選択肢が多様化し、顧客の嗜好やライフスタイルの変化のスピードがますます速くなるとともに、グローバル市場における競争が激化することが予想されます。
(4)優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題
当社グループでは、新型コロナウイルス感染拡大を防ぐための取り組みを継続するとともに、社会の一員として商品・サービスを通じ世界中の人々に「夢・遊び・感動」を提供するという企業理念にのっとり、社会や顧客からの要請に応えていきたいと考えております。世界各国における新型コロナウイルス感染拡大が継続した場合、販売店休業等による消費への影響に加えて、国内外においてイベントの延期や自粛及びそれに伴うプロモーション等への影響、商品・サービスの開発スケジュールや運営体制への影響、自社工場及び協力工場における生産スケジュール等への影響、アミューズメント施設等の休業、映像制作スケジュールや作品公開への影響等が発生する可能性があります。当社グループは、従業員や家族、顧客をはじめとする様々なステークホルダーの安全を最優先に考え、新型コロナウイルス感染拡大を防ぐため、衛生管理の徹底や各国・地域の政府・自治体からの要請に基づいた勤務体制導入や事業の運営等の取り組みを継続してまいります。また、事業面においては、影響を最小限のものとすべく、情報収集と臨機応変な対応を継続してまいります。
さらには、中長期での持続的な成長に向け、取り組むべき課題に対しては、2018年4月~2021年3月の中期計画の重点戦略により、ALL BANDAI NAMCOで一体となり取り組んでまいります。また、中期計画の各戦略の成果と課題については、成果における可能性をさらに広げるとともに課題を解決し、中長期で持続的な成長に向けた基盤を強固なものとすべく、2021年4月よりスタート予定の次期中期計画の戦略策定を行っております。
①グループ横断で取り組むべき課題
企業の社会的責任を果たすために
当社グループは、「世界で最も期待されるエンターテインメント企業グループ」をビジョンとして、多彩なIPを活用した商品・サービス等を通じて「夢・遊び・感動」を世界中の人々へ提供し続けることをミッションとしています。また、当社グループの存在意義は、世界中の人々がIPを通じ国境や言語を超えてコミュニケーションできる世界の創出に貢献することにあると考えています。
当社グループではエンターテインメントを通じた「夢・遊び・感動」を世界中の人々へ提供し続けるため、「環境・社会貢献的責任」、「経済的責任」、「法的・倫理的責任(コンプライアンス)」の3つの責任を果たすことを盛り込んだ、グループを横断する「CSRへの取り組み」を定め、グループ社員が遵守すべき行動規範となるグループコンプライアンス憲章を制定しております。これらのもと、「グループCSR委員会」とその推進組織である「グループCSR部会」、さらには「グループリスクコンプライアンス委員会」、「グループ情報セキュリティ委員会」、「内部統制委員会」を開催するとともに、社内への啓発活動等の各種施策に取り組むことで社内意識の向上に継続的に取り組んでまいります。これらに加え、当社グループの企業理念やエンターテインメントに携わる責任と誇りについて様々な機会を通じ経営者自身が発信を行うことで、社内における理解の深化に努めております。
IP軸戦略のさらなる強化に向けて
当社グループでは、流通・メディアの寡占化やネットワークの普及、プラットフォームの多様化や技術進化等の環境変化に対応するため、IP軸戦略のさらなる進化に取り組みます。具体的には、商品・サービス発や映像作品発の取り組み、中長期的かつ全体最適の視点で投資を行う「バンダイナムココンテンツファンド」の活用、「バンダイナムコアクセラレータープログラム」や次世代クリエイターを応援する「夢応援団」等によるパートナー企業やクリエイターとの連携等、あらゆる方法で新規IP創出を強化します。また、IP価値最大化に向け、グループの事業間連動や横断プロジェクトの推進、新規事業の創出育成や展開地域の拡大、新たなプラットフォームへのスピーディーな対応をはかります。これらのIP創出及びIP価値最大化に向けた取り組みを推進するにあたっては、通常投資に加え中長期を見据えたIP等への戦略投資を実施してまいります。さらに当社組織「IP戦略本部」が中心となり、中長期的にIP軸戦略を強化すべく、「機動戦士ガンダム」シリーズや「DRAGON BALL」シリーズ等の定番IPのワールドワイド展開、新規IP創出プロジェクト等のグループを横断した戦略的な取り組みを行ってまいります。これらの取り組みに加え、IP軸戦略の推進にあたっては、IPそのものやその世界観を尊重した事業活動を行うため、パートナー企業や行政と連携し、模倣品の排除等の知的財産保護のための活動を行ってまいります。
グローバル市場での事業拡大に向けて
当社グループが、ビジョンである「世界で最も期待されるエンターテインメント企業グループ」となるためには、グローバル市場での事業拡大が不可欠と考えております。欧米及びアジア地域において、各地域の特性にあわせた展開を行うため、地域統括会社と各地域の事業会社がALL BANDAI NAMCOで一体となり取り組む体制を構築しています。これにより、日本発IPの商品・サービスの海外展開に加え、各地域発のIP展開に取り組む等IPポートフォリオの強化をはかっているほか、事業カテゴリーの拡充にも取り組んでいます。
また、中期計画において重点地域と位置付ける中国市場においては、ALL BANDAI NAMCOで一体となり取り組むための基盤づくりを行うとともに、グループだけでなく現地のパートナー企業等と密接な連携をはかり、事業の本格展開に着手しております。
②各ユニットにおける課題
トイホビーユニット
当業界においては、「少子化による国内市場の縮小」、「顧客ニーズの多様化」、「商品生産地域の集中」等の課題があります。これらの課題に対応するため、国内において圧倒的No.1の地位確立を目指し、ターゲット層の拡大や新規事業の創出に取り組んでおります。海外においては、各地域でニーズの高いハイターゲット層向け商品の事業拡大や、中国市場での本格展開に向けた取り組みを行い、中長期的な成長を目指してまいります。また、開発生産面においては、バリューチェーンの改革により、スピードやクオリティ、価格面でも競争力のある商品展開を進めてまいります。このほか、該当する法規制や業界が定める品質・安全基準を踏まえ、より厳しい自社品質基準の設定や第三者機関による生産委託先の定期的なC.O.C.(Code of Conduct:行動規範)監査の実施等により品質・安全の徹底をはかっております。商品の生産においては、自社の生産拠点を日本、タイ、フィリピン、ベトナムに設けているほか、取引先工場においても品質基準の担保を大前提に生産拠点の分散をはかっております。
ネットワークエンターテインメントユニット
当業界においては、「プラットフォームの多様化」、「ネットワーク等の技術進化」、「顧客ニーズの多様化」、「開発投資額の高騰」等の課題があります。これらの課題に対応するため、商品・サービスの開発にあたってはクオリティを重視し絞り込んだタイトルの開発を行うとともに、リリース後においてもアップデートや追加コンテンツの提供、イベントの開催等の顧客に向けた継続的な施策により、商品・サービスの長期展開をはかっております。また、新たなプラットフォームの登場は顧客獲得の機会ととらえ、各プラットフォームの特性にあわせたタイトル提供を行っています。このほか、既存の事業や商品・サービスの枠を超え、ネットワーク等の技術進化に対応した新たなエンターテインメントやビジネスモデルの創出に取り組んでまいります。さらには、技術進歩や環境変化、新たなプラットフォームに迅速に対応するため、技術研究をさらに強化してまいります。
リアルエンターテインメントユニット
当業界においては、「顧客ニーズの多様化」、「環境変化の激化」等の課題があります。これらの課題に対応するため、業務用ゲームの企画開発力、最先端の技術力、IPの世界観を活かすノウハウ等を活用した当社グループならではの施設運営を行ってまいります。また、機器開発から顧客への提供までのバリューチェーンを保有する強みを生かすほか、多様化や環境変化に迅速に対応してまいります。リアルエンターテインメントユニットはグループにおける顧客接点として、IPの訴求や顧客ニーズを収集する役割も果たしてまいります。
映像音楽プロデュースユニット
当業界においては、「顧客ニーズの多様化」、「IP創出における競争激化」等の課題があります。これらの課題に対応するため、外部パートナー企業等との積極的な連携によりIP創出体制の強化をはかっているほか、映像・音楽・ライブイベントを融合させた新しいエンターテインメントやIPの創出・プロデュースに取り組んでまいります。
IPクリエイションユニット
当業界においては、「IP創出における競争激化」、「優秀な人材の育成」等の課題があります。これらの課題に対応するため、グループの各事業と密接に連携したIPのプロデュースを行うことでIP創出を強化してまいります。また、映像制作や制作技術向上のための投資を積極的に行うほか、様々な才能を持つ外部パートナーとの協業を強化するとともに、クリエイターの正社員化や育成に取り組んでまいります。
(5)経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等
当社グループは、収益性と資本効率の向上を目指しており、経営指標として営業利益率及びROE(自己資本当期純利益率)を重視しております。2018年4月よりスタートした3ヵ年の中期計画においては、重点戦略の推進により収益の成長と資本効率の向上に継続的に取り組み、環境変化に左右されず安定的に達成できる事業基盤をさらに強固なものとするとともに、ROE10%以上を目指してまいります。
また、株主の皆様への利益還元を経営の重要施策と位置付けており、当社グループの競争力を一層強化し、財務面での健全性を維持しながら、継続した配当の実施と企業価値の向上を実現していくことを目指しております。具体的には、長期的に安定した配当を維持するとともに、資本コストを意識し、安定的な配当額としてDOE(純資産配当率)2%をベースに、総還元性向50%以上を目標に株主還元を実施することを基本方針としております。