有価証券報告書-第132期(2025/04/01-2026/03/31)
(1) 経営方針
常に時代を先取りし、果敢に新たな事業へと挑戦し続ける創業以来の開拓者精神と積極的な創意工夫を行う姿勢は、当社グループの行動指針となっております。お取引先との信頼関係を深め、事業を創造し、社会に価値ある企業となるため、当社グループの企業理念として掲げる、当社創業者である兼松房治郎による創業主意ならびに「われらの信条」(1967年制定)を経営の基本理念としております。
創業主意 「わが国の福利を増進するの分子を播種栽培す」
「われらの信条」
・伝統的開拓者精神と積極的創意工夫をもって業務にあたり、適正利潤を確保し、企業の発展を図る。
・会社の健全なる繁栄を通じて、企業の社会的責任を果し、従業員の福祉を増進する。
・組織とルールに基づいて行動するとともに、会社を愛する精神と、社内相互の人間理解を基本として、業務を遂行する。
(2) 経営環境および対処すべき課題
当社グループは、2024年4月より3ヵ年の中期経営計画「integration 1.0」を開始しました。計画2年目の当連結会計年度は、事業活動を推進する指針としてMission、Vision、Values(MVV)を策定し、「integration 1.1」へとアップデートしました。本アップデートは、「integration 1.1」で掲げるVisionである「効率的かつ持続可能なサプライチェーンの変革をリードするソリューションプロバイダー」の実現に向けた取組みを、より力強く推進するものです。本アップデートにより、当社グループの成長の加速とともに、経営環境における課題解決を一層推進して参ります。
「integration 1.1」では、少子高齢化などに起因した「労働力不足」、ESG・SDGsなどの倫理・環境に対する社会的な要請による「持続可能性への対応」、目まぐるしく変化する時代において変化を機微に捉え迅速に対応するための「経営のスピード化」、以上の3つを対処すべき課題として認識しております。これらの課題へ取り組むことで、「integration 1.1」で掲げるVisionの「効率的かつ持続可能なサプライチェーンの変革をリードするソリューションプロバイダー」を目指します。
(基本方針および当連結会計年度末における進捗状況)
「integration 1.1」では、対処すべき課題への取組みを加速させるため、基本方針の連動性を再設計し、価値創造サイクルを確立することに注力しております。具体的には、「提供価値の拡充」を基本方針の中核に据え、その推進力として「グループ一体経営の推進」と、基盤となる「組織能力の強化」を連動させて進めて参ります。
① 提供価値の拡充
「提供価値の拡充」では、「DX(デジタル・トランスフォーメーション)」「GX(グリーン・トランスフォーメーション)」「イノベーション」の提供価値を重点的に強化しております。3つの提供価値を通して、労働力不足の解消や持続可能性への対応に取り組んで参ります。当連結会計年度における主な実績は、次のとおりであります。
・DX(デジタル・トランスフォーメーション)
日本国内におけるサイバーセキュリティ分野の技術革新と産業基盤の強化を目的として立ち上げた「日本サイバーセキュリティファンド1号(NCSF)」を通じ、セキュリティ関連企業2社への投資を実行しました。また、当社グループ会社である兼松エレクトロニクス㈱を通じて、ICT分野における高度な専門性を備えたエンジニアが多数在籍するルートリフ㈱の株式を取得し、子会社化しました。さらに、当社グループのDX推進および基幹システム刷新を担う戦略的なIT子会社として兼松シードポート㈱を立ち上げ、ビジネスとテクノロジーを融合した高付加価値なソリューション提供の体制強化を図っております。
・GX(グリーン・トランスフォーメーション)
土壌改良とCO₂削減を同時に実現する次世代のバイオ炭「宙炭(そらたん)」を開発する企業へ出資しました。また、国産米に温室効果ガスの排出削減量を定量化・認証した環境価値(クレジット)を付与して提供するGXモデルを開始しました。このような取組みを通じて、これまで掲げていた2025年のカーボンニュートラルおよび2030年・2050年におけるカーボンネガティブ100万t-CO₂の目標を前倒しで達成し、削減貢献量の目標を100万t-CO₂から150万t-CO₂へと引き上げております。なお、当該GXに関する取組みのほか、当社のサステナビリティに関する施策については、「2 サステナビリティに関する考え方及び取組」に記載しております。
・イノベーション
宇宙やモビリティなどに関する先進技術を軸とした新規事業を推進しております。宇宙分野においては、米国の宇宙開発企業や国内企業、地方自治体との連携を通じ、次世代宇宙インフラ領域での事業機会の創出に取り組んでおります。モビリティ分野では、空飛ぶクルマの社会実装を見据えた取組みを推進しており、都道府県と連携した離発着場の運用実証実験など、新たな移動手段の実現に向けた検討を進めております。
② グループ一体経営の推進
「グループ一体経営の推進」では、各部門・グループの知識や顧客基盤などの経営資源を共有し、シナジーを創出することで、ステークホルダーの皆さまに新たな提供価値・ソリューションを創出するとともに、経営のスピード化を目指しております。
当連結会計年度においては、グループ一体経営を推進する社長直轄の組織「グループ成長戦略推進室」が中心となり、当社グループの取引先ネットワークに対して、グループ各社の強みのある事業を横断的に展開しました。同室へ各営業部門および主要グループ会社から人材を集約し、シナジー創出に向けた検討体制を強化するとともに、実際の営業現場との継続的な対話や定期的な会議体の運営を通じて、部門間・グループ会社間の連携は着実に進展しました。また、新規事業創出の面では、シリコンバレーのKanematsu Ventures Inc.との協業を通じて、将来の成長領域における投資案件を推進するとともに、議論を深化させました。
③ 組織能力の強化
「組織能力の強化」では、人材を育成するとともに、共通の組織文化・価値観および行動指針の浸透を図ることで、組織能力を高めております。加えて、最大の資産でありながら個人の経験の中に埋もれがちであった従業員一人ひとりの経験やノウハウを、組織全体で共有できる資産として活用できる仕組みを構築しております。これにより、組織における判断基準や優先順位を明確化することで、意思決定や業務推進のスピード化とソリューション提供力の向上を図っております。
当連結会計年度においては、組織全体が同じ目標を目指し、将来にわたり大きな提供価値を創出するための羅針盤として、「MVV」を策定しました。「MVV」は、当社の企業理念(創業主意・われらの信条)のもと、未来志向で当社グループを一つの方向にまとめる象徴であり、ステークホルダーの皆さまや社会の期待に応える事業活動を推進する指針と価値観を明文化したものです。当社の存在意義(Mission/ミッション)、将来の目指す姿(Vision/ビジョン)、社員が共有する価値観・行動指針(Values/バリュー)、これらに基づく取組みを通じて、持続的な企業価値の向上を目指します。
④ 人的資本の強化・経営機能の強化
「人的資本の強化」「経営機能の強化」では、人材戦略と経営戦略を連携させ、経営目標を人材の力で確実に達成するための体制整備を進めております。「人的資本の強化」では、当社グループの社員が保有する知識・スキル・経験など、付加価値を生み出す人的リソース(人的資本)の向上に取り組んでおります。「経営機能の強化」では経営の意思決定の迅速化・高度化、ガバナンスの強化に加え、グループの経営資源の最適配分などを推進しております。
当連結会計年度においては、社員の会社への共感・意欲(エンゲージメント)の可視化を目的にエンゲージメントサーベイを実施し、現状把握と改善策の検討を行いました。サーベイ結果を基に、個人の意見を会社の更なる成長や改善に繋げるべく、対話型のAIが社員の潜在的な課題を引き出して組織の強みや課題を可視化して打ち手を導き出す「コンストラクティブフィードバック」を導入し、社員とマネジメントの間での建設的な議論を促進させております。また、経営の重点施策であるDX推進を目的としたDX研修やITパスポート取得推奨制度、キャリアマッチング制度などを通じた人材の強化と最適配置に加え、健康経営優良法人2026(大規模法人部門「ホワイト500」)に2年連続で認定されるなど、社員の能力向上と働きやすい環境づくりを進めております。さらに、取締役会における建設的な議論の促進などを通じ、効率的な組織運営にも取り組んでおります。
これら一連の取組みとともに、中長期的な「株主価値の向上」に向けた取組みの一環として、株式分割を実施しました。本施策は、投資単位の引下げにより投資しやすい環境を整え、株式の流動性向上および投資家層の拡大を図ることを目的としております。このような資本政策を通じて、資本市場における評価の向上を図り、今後も中長期的な株主価値の向上を目指して参ります。
以上のような取組みや施策を進め、当連結会計年度の親会社の所有者に帰属する当期利益は325億23百万円となりました。また、親会社の所有者に帰属する持分(自己資本)に対する親会社の所有者に帰属する当期利益率(ROE)は17.0%となり、投下資本利益率(ROIC)は9.1%となりました。
(定量目標)
中期経営計画「integration 1.1」における定量目標は次のとおりであり、中長期的な株主価値向上の実現へ取り組んでおります。
(注)連結当期利益は、親会社の所有者に帰属する当期利益を億円未満切り捨てで表示しております。
(資本配分方針)
安定的な基盤事業と成長事業からの営業キャッシュ・フローを基に、更なる株主還元と成長投資を実行して参ります。
キャッシュ・インは、中期経営計画「integration 1.1」の3年間においては、(調整後)営業キャッシュ・フロー(会計上の営業キャッシュ・フロー ± 運転資本増減 - リース負債の返済)および資産入替えによる調達により得られる資金を、累進配当による株主還元、ICTソリューションを中心とするDX関連投資、強みを有する事業分野(GXを含む。)などへの投資、基盤事業の持続的運営と発展へ配分する方針としております。
(今後の見通し)
翌連結会計年度においては、米国の通商政策やそれを受けた各国・地域の対応に加え、地政学的リスクの継続、各国の金融政策運営を巡る不確実性などにより、先行き不透明な情勢が続くと見込まれます。日本経済は、賃上げの継続や雇用環境の改善を背景に個人消費を中心とした内需は底堅く推移することが期待される一方で、海外経済の減速や為替動向、利上げの動向、資源・エネルギー価格の変動などが下押し圧力となる可能性があり、景気の回復は緩やかなものにとどまる見込みです。
2027年3月期の業績見通しについては、収益1兆1,000億円、営業活動に係る利益540億円、税引前利益500億円、親会社の所有者に帰属する当期利益350億円を見込んでおります。
(注)連結当期利益は、親会社の所有者に帰属する当期利益を億円未満切り捨てで表示しております。
セグメントの業績見通しおよび成長戦略は、次のとおりであります。
ICTソリューション
事業拡大や競争力強化を目的としたDXや重要性の高まるサイバーセキュリティ強化など、防衛・半導体関連を中心とした企業のデジタル投資需要は旺盛で、引き続き好調な推移が予想されることから、収益は1,150億円、営業活動に係る利益は163億円、親会社の所有者に帰属する当期利益は110億円を見込んでおります。
技術革新とビジネスニーズの変化が速いビジネス環境の中で、兼松エレクトロニクス㈱を中心に、成長市場の動向を把握するとともに適切なソリューションを導入することで事業を拡大させて参ります。具体的な戦略は、次のとおりであります。
・強固な顧客基盤と技術力に裏打ちされたマルチベンダーとしての強みを活かした、ITインフラ基盤の設計、構築から保守、運用まで一貫したサービスをワンストップで提供。
・「セキュリティ」を中心とした当社グループ独自の「as a Service」を提供するサービスビジネスの更なる拡販。
・当社グループの幅広い業種・業態の顧客基盤に対するクロスセルと顧客課題に応じたソリューションの提供。
電子・デバイス
モバイル事業は、販売網の拡大などによる販売台数の増加といった成長要因は一巡したものの、直営店舗の拡大や法人向け事業の拡大などを背景に底堅い推移を見込んでおります。加えて、半導体部品・製造装置事業および電子機器・電子材料事業は、半導体関連分野における需要拡大も見込まれることから、セグメント全体では、収益は3,100億円、営業活動に係る利益は169億円、親会社の所有者に帰属する当期利益は114億円を見込んでおります。
業界再編や法改正による販売体制の変化などの影響を受けるモバイル事業や、高い性能を備えた製品とグローバルな市場展開が求められる半導体部品・製造装置事業などは、複数の要因を受けやすいビジネス環境の中で、高度な技術革新の追求に加え、製品販売のみならずソリューション提供へ発展させることにより事業を成長させて参ります。具体的な戦略は、次のとおりであります。
・全国販売ネットワークを活用し、モバイル関連商品の販売から管理、運用、回収までのトータルサービスを提供するとともに、SaaSなどのリカリングサービス、インターネットを介した各種ソリューションサービスなど、幅広いサービスの展開とソリューション提供。
・半導体装置や半導体製品、電子部品・材料、プリンター、バッテリーなどを含むエレクトロニクス・IT産業全般において、革新的なソリューションと高度な技術力を組み合わせたグローバルな事業展開。
食料
食品事業は、飲料原料などの取引が引き続き堅調なことに加え、畜産事業および食糧事業についても概ね当連結会計年度並みに推移する見通しであることから、セグメント全体では、収益は3,600億円、営業活動に係る利益は89億円、親会社の所有者に帰属する当期利益は54億円を見込んでおります。
食品事業は、消費者の人口動態やライフスタイル、健康志向などの価値観の変化、オンライン販売の拡大など、市場ニーズが多様化し、また、海外市場の成長を見込むビジネス環境にあり、マーケットインによるグローバルなアプローチで成長させて参ります。具体的な戦略は、次のとおりであります。
・「食の安全・安心」をテーマに、メーカーの視点で原料の調達から製品加工までの一貫供給体制を構築。
・農産物、水産物、コーヒー、飲料・酒類、調理食品など幅広い商品ラインナップで市場の多様なニーズに対応。
・顧客のニーズを先取りした市場性の高い原料や製品の開発推進や、市場が拡大するインドネシアなどアジア諸国におけるバリューチェーンの横展開を通じたビジネス拡大。
畜産事業は、安定供給を目的とした海外サプライヤーの確保および特にアジアを中心とした海外市場の成長を背景に、国内外のビジネスパートナーとの信頼関係の維持・深化により事業を成長させて参ります。具体的な戦略は、次のとおりであります。
・原料から畜産加工品まで幅広い商品群を取り扱い、加工・物流機能を組み合わせ、顧客ニーズに合った付加価値の高い商品とソリューションの提案。
・商品の安定確保を目的とした、国内外のパートナー企業との提携・出資によるバリューチェーン(生産・加工・物流・販売)の横展開と強化。
食糧事業は、年々、世界的な穀物需要は増大する一方、天候リスクや地政学的リスクなどにより安定供給へのリスクが高まっております。これらの課題を機会と捉え、供給においては、産地の多様化、持続的な生産体制の構築、生産性向上のためのデジタル化などを進めて参ります。需要においては、日本市場に加えて中国・アセアン市場への参入を進めて参ります。
また、持続的生産体制の構築において、魚粉・魚油などの水産養殖原料については、近年、特に資源管理や環境負荷に配慮した原料の供給が求められており、各種認証プログラムへの参画を含め供給体制の強化に力を入れております。
鉄鋼・素材・プラント
鋼管事業は、原油価格の上昇を背景とした米国における石油・天然ガス採掘活動の活発化により、需要は徐々に回復に向かうものと見込んでおります。また、原油価格の変動の影響を受けたエネルギー事業についても、当連結会計年度からの回復を見込んでおり、セグメント全体では、収益は1,800億円、営業活動に係る利益は57億円、親会社の所有者に帰属する当期利益は32億円を見込んでおります。
GXに代表される世界的な環境問題への意識の高まりの影響を受けるビジネス環境にあり、顧客の「脱炭素」への様々な支援により事業を成長させて参ります。具体的な戦略は、次のとおりであります。
・社会インフラを支える部門として、幅広い分野において高い専門知識を備えた人材による、GXを中心としたバリューチェーンへのソリューションの提供。
・サーキュラーエコノミーの実現に向けた持続可能な原料・素材や環境配慮商品の取扱い。
車両・航空
航空宇宙事業は、航空業界や宇宙・防衛産業の需要の増加を見込んでおります。車両・車載部品事業は、部品などを中心に底堅い需要が見込まれ、また、工作機械・産業機械事業についても当連結会計年度並みに推移する見通しです。セグメント全体では、収益は1,300億円、営業活動に係る利益は62億円、親会社の所有者に帰属する当期利益は41億円を見込んでおります。
次世代モビリティや空飛ぶクルマ、ドローンの普及、モビリティ関連製品全般の軽量化や電動化などの技術革新による脱炭素化の動きも加速するビジネス環境にあり、新たなモビリティ事業の創造で事業を成長させて参ります。また、民間宇宙産業の勃興に伴い、地球低軌道を利用した商用宇宙ステーションの事業開発などにも取り組んで参ります。具体的な戦略は、次のとおりであります。
・「環境」「安全」「快適」をテーマにし、次世代モビリティや素材、宇宙、データビジネスなどの領域で事業創造を推進。
・幅広い製品ラインナップと様々な機械関連サービス、さらに環境ビジネスから海外進出支援までをカバーし、顧客の多様なニーズにお応えするエンジニアリング・ソリューションの提供。
(業績見通し算定にあたっての前提条件)
・為替レート : 1米ドル=150円
・金利水準 : 円金利:上昇を見込む 外貨金利:下落を見込む
(注意事項)
上記の見通しなどの将来に関する記述は、当社グループが有価証券報告書提出日現在入手している情報および合理的であると判断する一定の前提に基づいており、その達成を当社として約束する趣旨のものではありません。また、実際の業績等は様々な要因により大きく異なる可能性があります。
常に時代を先取りし、果敢に新たな事業へと挑戦し続ける創業以来の開拓者精神と積極的な創意工夫を行う姿勢は、当社グループの行動指針となっております。お取引先との信頼関係を深め、事業を創造し、社会に価値ある企業となるため、当社グループの企業理念として掲げる、当社創業者である兼松房治郎による創業主意ならびに「われらの信条」(1967年制定)を経営の基本理念としております。
創業主意 「わが国の福利を増進するの分子を播種栽培す」
「われらの信条」
・伝統的開拓者精神と積極的創意工夫をもって業務にあたり、適正利潤を確保し、企業の発展を図る。
・会社の健全なる繁栄を通じて、企業の社会的責任を果し、従業員の福祉を増進する。
・組織とルールに基づいて行動するとともに、会社を愛する精神と、社内相互の人間理解を基本として、業務を遂行する。
(2) 経営環境および対処すべき課題
当社グループは、2024年4月より3ヵ年の中期経営計画「integration 1.0」を開始しました。計画2年目の当連結会計年度は、事業活動を推進する指針としてMission、Vision、Values(MVV)を策定し、「integration 1.1」へとアップデートしました。本アップデートは、「integration 1.1」で掲げるVisionである「効率的かつ持続可能なサプライチェーンの変革をリードするソリューションプロバイダー」の実現に向けた取組みを、より力強く推進するものです。本アップデートにより、当社グループの成長の加速とともに、経営環境における課題解決を一層推進して参ります。
「integration 1.1」では、少子高齢化などに起因した「労働力不足」、ESG・SDGsなどの倫理・環境に対する社会的な要請による「持続可能性への対応」、目まぐるしく変化する時代において変化を機微に捉え迅速に対応するための「経営のスピード化」、以上の3つを対処すべき課題として認識しております。これらの課題へ取り組むことで、「integration 1.1」で掲げるVisionの「効率的かつ持続可能なサプライチェーンの変革をリードするソリューションプロバイダー」を目指します。
(基本方針および当連結会計年度末における進捗状況)
「integration 1.1」では、対処すべき課題への取組みを加速させるため、基本方針の連動性を再設計し、価値創造サイクルを確立することに注力しております。具体的には、「提供価値の拡充」を基本方針の中核に据え、その推進力として「グループ一体経営の推進」と、基盤となる「組織能力の強化」を連動させて進めて参ります。
① 提供価値の拡充
「提供価値の拡充」では、「DX(デジタル・トランスフォーメーション)」「GX(グリーン・トランスフォーメーション)」「イノベーション」の提供価値を重点的に強化しております。3つの提供価値を通して、労働力不足の解消や持続可能性への対応に取り組んで参ります。当連結会計年度における主な実績は、次のとおりであります。
・DX(デジタル・トランスフォーメーション)
日本国内におけるサイバーセキュリティ分野の技術革新と産業基盤の強化を目的として立ち上げた「日本サイバーセキュリティファンド1号(NCSF)」を通じ、セキュリティ関連企業2社への投資を実行しました。また、当社グループ会社である兼松エレクトロニクス㈱を通じて、ICT分野における高度な専門性を備えたエンジニアが多数在籍するルートリフ㈱の株式を取得し、子会社化しました。さらに、当社グループのDX推進および基幹システム刷新を担う戦略的なIT子会社として兼松シードポート㈱を立ち上げ、ビジネスとテクノロジーを融合した高付加価値なソリューション提供の体制強化を図っております。
・GX(グリーン・トランスフォーメーション)
土壌改良とCO₂削減を同時に実現する次世代のバイオ炭「宙炭(そらたん)」を開発する企業へ出資しました。また、国産米に温室効果ガスの排出削減量を定量化・認証した環境価値(クレジット)を付与して提供するGXモデルを開始しました。このような取組みを通じて、これまで掲げていた2025年のカーボンニュートラルおよび2030年・2050年におけるカーボンネガティブ100万t-CO₂の目標を前倒しで達成し、削減貢献量の目標を100万t-CO₂から150万t-CO₂へと引き上げております。なお、当該GXに関する取組みのほか、当社のサステナビリティに関する施策については、「2 サステナビリティに関する考え方及び取組」に記載しております。
・イノベーション
宇宙やモビリティなどに関する先進技術を軸とした新規事業を推進しております。宇宙分野においては、米国の宇宙開発企業や国内企業、地方自治体との連携を通じ、次世代宇宙インフラ領域での事業機会の創出に取り組んでおります。モビリティ分野では、空飛ぶクルマの社会実装を見据えた取組みを推進しており、都道府県と連携した離発着場の運用実証実験など、新たな移動手段の実現に向けた検討を進めております。
② グループ一体経営の推進
「グループ一体経営の推進」では、各部門・グループの知識や顧客基盤などの経営資源を共有し、シナジーを創出することで、ステークホルダーの皆さまに新たな提供価値・ソリューションを創出するとともに、経営のスピード化を目指しております。
当連結会計年度においては、グループ一体経営を推進する社長直轄の組織「グループ成長戦略推進室」が中心となり、当社グループの取引先ネットワークに対して、グループ各社の強みのある事業を横断的に展開しました。同室へ各営業部門および主要グループ会社から人材を集約し、シナジー創出に向けた検討体制を強化するとともに、実際の営業現場との継続的な対話や定期的な会議体の運営を通じて、部門間・グループ会社間の連携は着実に進展しました。また、新規事業創出の面では、シリコンバレーのKanematsu Ventures Inc.との協業を通じて、将来の成長領域における投資案件を推進するとともに、議論を深化させました。
③ 組織能力の強化
「組織能力の強化」では、人材を育成するとともに、共通の組織文化・価値観および行動指針の浸透を図ることで、組織能力を高めております。加えて、最大の資産でありながら個人の経験の中に埋もれがちであった従業員一人ひとりの経験やノウハウを、組織全体で共有できる資産として活用できる仕組みを構築しております。これにより、組織における判断基準や優先順位を明確化することで、意思決定や業務推進のスピード化とソリューション提供力の向上を図っております。
当連結会計年度においては、組織全体が同じ目標を目指し、将来にわたり大きな提供価値を創出するための羅針盤として、「MVV」を策定しました。「MVV」は、当社の企業理念(創業主意・われらの信条)のもと、未来志向で当社グループを一つの方向にまとめる象徴であり、ステークホルダーの皆さまや社会の期待に応える事業活動を推進する指針と価値観を明文化したものです。当社の存在意義(Mission/ミッション)、将来の目指す姿(Vision/ビジョン)、社員が共有する価値観・行動指針(Values/バリュー)、これらに基づく取組みを通じて、持続的な企業価値の向上を目指します。
④ 人的資本の強化・経営機能の強化
「人的資本の強化」「経営機能の強化」では、人材戦略と経営戦略を連携させ、経営目標を人材の力で確実に達成するための体制整備を進めております。「人的資本の強化」では、当社グループの社員が保有する知識・スキル・経験など、付加価値を生み出す人的リソース(人的資本)の向上に取り組んでおります。「経営機能の強化」では経営の意思決定の迅速化・高度化、ガバナンスの強化に加え、グループの経営資源の最適配分などを推進しております。
当連結会計年度においては、社員の会社への共感・意欲(エンゲージメント)の可視化を目的にエンゲージメントサーベイを実施し、現状把握と改善策の検討を行いました。サーベイ結果を基に、個人の意見を会社の更なる成長や改善に繋げるべく、対話型のAIが社員の潜在的な課題を引き出して組織の強みや課題を可視化して打ち手を導き出す「コンストラクティブフィードバック」を導入し、社員とマネジメントの間での建設的な議論を促進させております。また、経営の重点施策であるDX推進を目的としたDX研修やITパスポート取得推奨制度、キャリアマッチング制度などを通じた人材の強化と最適配置に加え、健康経営優良法人2026(大規模法人部門「ホワイト500」)に2年連続で認定されるなど、社員の能力向上と働きやすい環境づくりを進めております。さらに、取締役会における建設的な議論の促進などを通じ、効率的な組織運営にも取り組んでおります。
これら一連の取組みとともに、中長期的な「株主価値の向上」に向けた取組みの一環として、株式分割を実施しました。本施策は、投資単位の引下げにより投資しやすい環境を整え、株式の流動性向上および投資家層の拡大を図ることを目的としております。このような資本政策を通じて、資本市場における評価の向上を図り、今後も中長期的な株主価値の向上を目指して参ります。
以上のような取組みや施策を進め、当連結会計年度の親会社の所有者に帰属する当期利益は325億23百万円となりました。また、親会社の所有者に帰属する持分(自己資本)に対する親会社の所有者に帰属する当期利益率(ROE)は17.0%となり、投下資本利益率(ROIC)は9.1%となりました。
(定量目標)
中期経営計画「integration 1.1」における定量目標は次のとおりであり、中長期的な株主価値向上の実現へ取り組んでおります。
| 「integration 1.1」 最終年度 (2027年3月期)目標 | 2026年3月期実績 | |
| 連結当期利益(注) | 350億円 | 325億円 |
| ROE | 16%~18%程度 | 17.0% |
| ROIC | 8%以上 | 9.1% |
| ネットDER | 1.0倍程度 | 0.45倍 |
(注)連結当期利益は、親会社の所有者に帰属する当期利益を億円未満切り捨てで表示しております。
(資本配分方針)
安定的な基盤事業と成長事業からの営業キャッシュ・フローを基に、更なる株主還元と成長投資を実行して参ります。
キャッシュ・インは、中期経営計画「integration 1.1」の3年間においては、(調整後)営業キャッシュ・フロー(会計上の営業キャッシュ・フロー ± 運転資本増減 - リース負債の返済)および資産入替えによる調達により得られる資金を、累進配当による株主還元、ICTソリューションを中心とするDX関連投資、強みを有する事業分野(GXを含む。)などへの投資、基盤事業の持続的運営と発展へ配分する方針としております。
(今後の見通し)
翌連結会計年度においては、米国の通商政策やそれを受けた各国・地域の対応に加え、地政学的リスクの継続、各国の金融政策運営を巡る不確実性などにより、先行き不透明な情勢が続くと見込まれます。日本経済は、賃上げの継続や雇用環境の改善を背景に個人消費を中心とした内需は底堅く推移することが期待される一方で、海外経済の減速や為替動向、利上げの動向、資源・エネルギー価格の変動などが下押し圧力となる可能性があり、景気の回復は緩やかなものにとどまる見込みです。
2027年3月期の業績見通しについては、収益1兆1,000億円、営業活動に係る利益540億円、税引前利益500億円、親会社の所有者に帰属する当期利益350億円を見込んでおります。
| 2026年3月期実績 | 2027年3月期見通し | |
| 連結当期利益(注) | 325億円 | 350億円 |
| 配当性向(総還元性向) | 32.2% | 33.3% |
(注)連結当期利益は、親会社の所有者に帰属する当期利益を億円未満切り捨てで表示しております。
セグメントの業績見通しおよび成長戦略は、次のとおりであります。
ICTソリューション
事業拡大や競争力強化を目的としたDXや重要性の高まるサイバーセキュリティ強化など、防衛・半導体関連を中心とした企業のデジタル投資需要は旺盛で、引き続き好調な推移が予想されることから、収益は1,150億円、営業活動に係る利益は163億円、親会社の所有者に帰属する当期利益は110億円を見込んでおります。
技術革新とビジネスニーズの変化が速いビジネス環境の中で、兼松エレクトロニクス㈱を中心に、成長市場の動向を把握するとともに適切なソリューションを導入することで事業を拡大させて参ります。具体的な戦略は、次のとおりであります。
・強固な顧客基盤と技術力に裏打ちされたマルチベンダーとしての強みを活かした、ITインフラ基盤の設計、構築から保守、運用まで一貫したサービスをワンストップで提供。
・「セキュリティ」を中心とした当社グループ独自の「as a Service」を提供するサービスビジネスの更なる拡販。
・当社グループの幅広い業種・業態の顧客基盤に対するクロスセルと顧客課題に応じたソリューションの提供。
電子・デバイス
モバイル事業は、販売網の拡大などによる販売台数の増加といった成長要因は一巡したものの、直営店舗の拡大や法人向け事業の拡大などを背景に底堅い推移を見込んでおります。加えて、半導体部品・製造装置事業および電子機器・電子材料事業は、半導体関連分野における需要拡大も見込まれることから、セグメント全体では、収益は3,100億円、営業活動に係る利益は169億円、親会社の所有者に帰属する当期利益は114億円を見込んでおります。
業界再編や法改正による販売体制の変化などの影響を受けるモバイル事業や、高い性能を備えた製品とグローバルな市場展開が求められる半導体部品・製造装置事業などは、複数の要因を受けやすいビジネス環境の中で、高度な技術革新の追求に加え、製品販売のみならずソリューション提供へ発展させることにより事業を成長させて参ります。具体的な戦略は、次のとおりであります。
・全国販売ネットワークを活用し、モバイル関連商品の販売から管理、運用、回収までのトータルサービスを提供するとともに、SaaSなどのリカリングサービス、インターネットを介した各種ソリューションサービスなど、幅広いサービスの展開とソリューション提供。
・半導体装置や半導体製品、電子部品・材料、プリンター、バッテリーなどを含むエレクトロニクス・IT産業全般において、革新的なソリューションと高度な技術力を組み合わせたグローバルな事業展開。
食料
食品事業は、飲料原料などの取引が引き続き堅調なことに加え、畜産事業および食糧事業についても概ね当連結会計年度並みに推移する見通しであることから、セグメント全体では、収益は3,600億円、営業活動に係る利益は89億円、親会社の所有者に帰属する当期利益は54億円を見込んでおります。
食品事業は、消費者の人口動態やライフスタイル、健康志向などの価値観の変化、オンライン販売の拡大など、市場ニーズが多様化し、また、海外市場の成長を見込むビジネス環境にあり、マーケットインによるグローバルなアプローチで成長させて参ります。具体的な戦略は、次のとおりであります。
・「食の安全・安心」をテーマに、メーカーの視点で原料の調達から製品加工までの一貫供給体制を構築。
・農産物、水産物、コーヒー、飲料・酒類、調理食品など幅広い商品ラインナップで市場の多様なニーズに対応。
・顧客のニーズを先取りした市場性の高い原料や製品の開発推進や、市場が拡大するインドネシアなどアジア諸国におけるバリューチェーンの横展開を通じたビジネス拡大。
畜産事業は、安定供給を目的とした海外サプライヤーの確保および特にアジアを中心とした海外市場の成長を背景に、国内外のビジネスパートナーとの信頼関係の維持・深化により事業を成長させて参ります。具体的な戦略は、次のとおりであります。
・原料から畜産加工品まで幅広い商品群を取り扱い、加工・物流機能を組み合わせ、顧客ニーズに合った付加価値の高い商品とソリューションの提案。
・商品の安定確保を目的とした、国内外のパートナー企業との提携・出資によるバリューチェーン(生産・加工・物流・販売)の横展開と強化。
食糧事業は、年々、世界的な穀物需要は増大する一方、天候リスクや地政学的リスクなどにより安定供給へのリスクが高まっております。これらの課題を機会と捉え、供給においては、産地の多様化、持続的な生産体制の構築、生産性向上のためのデジタル化などを進めて参ります。需要においては、日本市場に加えて中国・アセアン市場への参入を進めて参ります。
また、持続的生産体制の構築において、魚粉・魚油などの水産養殖原料については、近年、特に資源管理や環境負荷に配慮した原料の供給が求められており、各種認証プログラムへの参画を含め供給体制の強化に力を入れております。
鉄鋼・素材・プラント
鋼管事業は、原油価格の上昇を背景とした米国における石油・天然ガス採掘活動の活発化により、需要は徐々に回復に向かうものと見込んでおります。また、原油価格の変動の影響を受けたエネルギー事業についても、当連結会計年度からの回復を見込んでおり、セグメント全体では、収益は1,800億円、営業活動に係る利益は57億円、親会社の所有者に帰属する当期利益は32億円を見込んでおります。
GXに代表される世界的な環境問題への意識の高まりの影響を受けるビジネス環境にあり、顧客の「脱炭素」への様々な支援により事業を成長させて参ります。具体的な戦略は、次のとおりであります。
・社会インフラを支える部門として、幅広い分野において高い専門知識を備えた人材による、GXを中心としたバリューチェーンへのソリューションの提供。
・サーキュラーエコノミーの実現に向けた持続可能な原料・素材や環境配慮商品の取扱い。
車両・航空
航空宇宙事業は、航空業界や宇宙・防衛産業の需要の増加を見込んでおります。車両・車載部品事業は、部品などを中心に底堅い需要が見込まれ、また、工作機械・産業機械事業についても当連結会計年度並みに推移する見通しです。セグメント全体では、収益は1,300億円、営業活動に係る利益は62億円、親会社の所有者に帰属する当期利益は41億円を見込んでおります。
次世代モビリティや空飛ぶクルマ、ドローンの普及、モビリティ関連製品全般の軽量化や電動化などの技術革新による脱炭素化の動きも加速するビジネス環境にあり、新たなモビリティ事業の創造で事業を成長させて参ります。また、民間宇宙産業の勃興に伴い、地球低軌道を利用した商用宇宙ステーションの事業開発などにも取り組んで参ります。具体的な戦略は、次のとおりであります。
・「環境」「安全」「快適」をテーマにし、次世代モビリティや素材、宇宙、データビジネスなどの領域で事業創造を推進。
・幅広い製品ラインナップと様々な機械関連サービス、さらに環境ビジネスから海外進出支援までをカバーし、顧客の多様なニーズにお応えするエンジニアリング・ソリューションの提供。
(業績見通し算定にあたっての前提条件)
・為替レート : 1米ドル=150円
・金利水準 : 円金利:上昇を見込む 外貨金利:下落を見込む
(注意事項)
上記の見通しなどの将来に関する記述は、当社グループが有価証券報告書提出日現在入手している情報および合理的であると判断する一定の前提に基づいており、その達成を当社として約束する趣旨のものではありません。また、実際の業績等は様々な要因により大きく異なる可能性があります。