有価証券報告書-第104期(2022/04/01-2023/03/31)

【提出】
2023/06/21 13:20
【資料】
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【項目】
153項目
②戦略
当社グループは、「挑戦と創造」のDNAを継承し、常に時代の潮流を先取りして様々な分野や国で新たな事業を創出してきました。多様なバックグラウンドを持つ人材が、多様な現場でグローバルに活躍する姿を後押しすることが当社グループの人材戦略の根幹です。人材戦略は、中期経営計画2026*1の重点施策の1つとして位置づけられています。自律的なキャリア形成(挑戦・経験・学び)を支援し、従業員一人ひとりの活躍を支える諸施策・環境整備のために更なる投資を推進します。
*1 中期経営計画の詳細は、1.経営方針、経営環境及び対処すべき課題等 (3)新中期経営計画をご参照ください。
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(a) 強い「個」の育成
当社グループの「世界中の未来をつくる」というMissionの達成に向けては、従業員一人ひとりが変革をリードし、自らの強みを活かして世界標準で成果を積み上げることが重要です。当社グループは人材育成を最重要に考える組織であり、各現場でのOJT(On the job training:業務を通じて知識などを身に着ける教育方法)を軸としつつ、それを補完する体系的な人材育成プログラムや、従業員の志向を起点にしたグローバルなキャリア開発のための各種制度や基盤を提供し、強い「個」を育成します。
(i) グローバル・グループでの人材育成
当社グループは新入社員からリーダー層に至るまで、役割期待別研修、選択型研修、選抜型研修等、豊富な人材育成プログラムを実施しています。
当社(単体)では、若手社員を対象とした各地域のエキスパートを育成する海外修業生や専門性を高める部門研修員制度、中堅層社員対象のビジネススクールへの派遣制度を実施すると共に、国内グループ社員を対象とした節目研修や「物産アカデミー」等の選択研修の実施等を通じて、人材の育成・人的ネットワークの構築を支援しています。
また海外現地法人等の社員に対しても、現地事情に合わせたリーダーシッププログラムやスキル系研修を実施しているほか、日本への派遣プログラムとして、短期でのJapan Trainee Programや、1~2年間の長期に亘るJapanese Language & Business Program及びJapan Business Integration Programを設けています。
その他、重要パートナー企業までに対象を広げ、社会課題を解決するビジネスを創出し、事業において困難な局面を乗り越えるためのリーダーシップを発揮するグローバルリーダーの育成を目的とするHarvard Business Schoolの協力を得て開発した当社独自のGlobal Management Academy Programを設けています。2022年は日本を含む計18か国から合計41名が参加し、過去10回の開催で累計355名が参加しました。
(ii)多様なキャリアプラン
前中期経営計画期間にて人事制度の一部を改定し、①所定の任用・昇格要件や年齢に関わらず、適任者が上位ポジションでより大きな役割・職務にチャレンジできるキャリアチャレンジ制度、②従来のラインマネージャーを前提とした職群に加えて、高度な専門性を蓄えた人材のための複線型キャリアパスであるExpertバンド、③従業員向け株式報酬制度を導入しました。また、人材ニーズの社内マッチングの仕組みである人事ブリテンボード制度の実施回数を増やし、社員の自律的なキャリア開発と適材適所での人材配置をより機動的に実現できるよう拡充しました。
(b) インクルージョン
当社グループは、多様な個性を有する従業員が、自分らしく社会や組織に属し、最大限に力を活かすことができる会社を目指します。当社はインクルージョンの推進を加速させる環境を整えると共に、無意識のうちに暗黙的な排他や区別を行うことがないよう、従業員一人ひとりのインクルージョンに対する意識醸成を支援し、グローバル・グループでのインクルージョンを実現します。採用地や性別によらず、社員一人ひとりがお互いを認め合い、恒常的に異なる考えや新しい考え方が入ることで刺激を受け合いながら能力を最大限に発揮し、イノベーションを生み出すことでビジネスに新たな価値をもたらし、当社グループの価値向上に繋げます。
(i) 当社(単体)採用人員数
多様性を重視し、当社(単体)は国内でのキャリア採用をいち早く導入しました。2023年3月期に当社(単体)へ入社した総合職社員203名(新卒・キャリア採用合計)の内、女性は75名(36.9%)となります。
男性(名)女性(名)女性比率
新卒入社674439.6%
キャリア入社612226.5%
配偶者転勤による再雇用入社09100%
1287536.9%

(ii) 女性の活躍推進
女性社員の活躍推進をさらに加速させるため、さまざまな取組みを行っています。当社(単体)では、2020年3月期から管理職の女性を対象にしたWomen Leadership Initiativeプログラムを実施し、ライン長候補の育成を強化しています。加えて、2022年3月期からは経営会議メンバーがスポンサーとなり、シニアリーダー候補の女性社員に対しキャリアに関する助言や指導を行い、ストレッチアサインメント(一段目線の高いチャレンジとなる業務機会の提供)に繋げるSponsorship Programを実施しています。これら取組みにより女性管理職におけるラインマネージャーやシニアマネージャーへの登用を着実に進めています。
(iii) 海外採用職員の管理職登用
各国や地域に根を深く張ったビジネスを展開するため、当社グループの海外拠点(現地法人・海外事務所)において人材の活躍推進に力を入れています。世界各国から選抜された社員を対象に、2019年3月期から変革を積極的に推し進める先導者を育成するChange Leader Programを実施しています。2023年3月期は4回目として、オンラインセッションと日本での経営会議メンバーを交えた対面型セッションを組み合わせて開催しました。また、三井物産人材開発(株)では、当社グループの海外拠点だけではなく、グループ各社で働く世界中の社員を対象とした教育・研修の企画運営の提供も行っています。
(iv) 社員エンゲージメント
社員一人ひとりの意欲を高め、組織としての力につなげていくことを企図し、2018年からMitsui Engagement Survey (MES)を実施しています。4回目となる2022年には当社(単体)・海外現地法人に加え国内外の主要な連結子会社20社が参加し、総勢約12,000名の社員による調査を実行しました。調査結果はより良い組織づくりに向けた各現場での組織開発に活用すると共に、「多様性を力に」する為の重要な経営データとして経営会議や取締役会にも報告し、人事戦略の策定に活用しています。また、「社員エンゲージメント」肯定的回答率の前期対比での増減は、取締役(除く社外取締役)を対象とした報酬制度の一要素にもなっています。取締役の報酬の詳細は、「第4 提出会社の状況 4. コーポレート・ガバナンスの状況等 (4) 役員の報酬等」をご参照ください。
(Mitsui Engagement Surveyの結果)
202020212022
社員エンゲージメント*170%71%72%
社員を活かす環境*269%69%69%

*1 「会社に対して貢献意欲やロイヤルティがあり、自発的努力をしようという気持ち」についての複数の関連設問における肯定的回答率
*2 「自分のスキルや能力を活かす機会があり、働きやすい環境が整備されているか」についての複数の関連設問における肯定的回答率
(c) 戦略的適材配置
当社は16事業本部を中心としてグローバル展開をしていますが、国や地域毎に強みを発揮していく為に、事業と地域を2軸としたグローバルマトリクス制を採用しています。事業戦略に連動した活躍の場を用意し、従業員は新しい仕事への挑戦を通じてスキルや専門性を身に付け、会社と共に成長します。このような戦略的適材配置と自律的なキャリア形成をグローバル規模で推進します。
(i) Global People Data Platform(Bloom)導入
採用地を問わず、社員一人ひとりの経験・能力・知識やキャリアの志向といった人材データを活用し、適所で適材が活躍するフィールドの醸成と、社員の自律的なキャリア形成を支えるグローバルデータプラットフォームとして、Bloomを2022年10月にアジア・大洋州本部、東アジアブロック、韓国物産で導入しました。2025年3月期までに全世界で導入される予定です。
(ii) 海外拠点における人材の活躍
事業を牽引する人材を戦略的に配置するため、海外採用職員の転勤プロセスを標準化すべくグローバルモビリティプログラムを2022年10月に策定し、2023年4月の転勤者から全世界で導入しました。導入以前は転勤時の諸条件が転勤者ごとに個別決定となっておりプロセスが煩雑且つ調整に時間を要していましたが、統一ルールを導入することで海外採用職員の国を超える異動の難易度を低減し、グローバルベースでの戦略的配置を実践します。