有価証券報告書-第153期(令和2年4月1日-令和3年3月31日)
中期経営計画
●「中期経営計画2020」の総括
(1)業績総括
当社は、2018年度から2020年度までの3か年を対象とする「中期経営計画2020」において、「新たな価値創造への飽くなき挑戦」をスローガンに掲げ、経営基盤の強化を図りながら、成長戦略を推進すべく、取組んできました。
初年度は、期初の計画を達成し、業績も過去最高益となりましたが、2019年度は、米中貿易摩擦による世界経済の低迷の影響等により期初の目標が未達となり、最終年度は、新型コロナウイルス感染症拡大に伴う影響や低採算事業の整理等に伴う多額の一過性損失により1,531億円の赤字に転落し、収益力において課題が残りました。
また、キャッシュ・フローについては、業績の低迷に伴い、当初計画に対し、キャッシュ・インが全体的に減少したものの、2020年度の危機対応モード下における、構造改革推進に伴う資産入替えの促進や、運転資金の改善、投融資の厳選などを通じ、キャッシュ・フローをきめ細かく管理した結果、3年合計配当後フリーキャッシュ・フローは当初計画の2,000億円の黒字に対し3,100億円の黒字となりました。

なお、「中期経営計画2020」の3年累計で約9,200億円の投融資を実行しており、セグメント毎の主な案件は以下のとおりです。
主な投融資実績(18/4~21/3)
(2)危機対応モードへの切り替えと構造改革の取組み
「中期経営計画2020」では、成長戦略として、「既存事業のバリューアップ」、「次世代新規ビジネス創出」、「プラットフォーム事業の連携深化」を目指しましたが、2019年度後半に発生した新型コロナウイルス感染症の拡大という未曽有の事態により、当社は、「中期経営計画2020」の最終年を、危機対応の一年として位置づけ、投融資の厳選、政策保有株式の売却、販管費の削減などの全社キャッシュ・フロー管理の厳格化を行い、また、低採算事業の整理の徹底、事業ポートフォリオの再構築のための既存事業のバリューアップの加速などの構造改革に取組みました。さらにはサステナビリティ経営の高度化のための、重要社会課題と中長期目標の設定に取組みました。
2020年度の当社の事業ポートフォリオは、新型コロナウイルス感染症の拡大によるビジネス環境の激変により当社の弱みが顕在化したものではありますが、それ以前からも世界景気などの環境変化に大きな影響を受けるとともに、その下方耐性に課題があると考えています。まずは、不採算事業の整理、資産入替えに徹底的に取組むとともに、新たな投資の規律や管理の仕組みを作り、新規投資案件の着実な収益化を図ります。さらに、既存事業を変革し、収益力を強化すると同時に、新規コア事業の育成にも取組むこととしました。
上記の構造改革の成果として、低採算事業については、その見極めを徹底的に行い、32社の事業会社から撤退を完了しました。また、約150社の事業会社についても、今後3か年で700億円の収益改善効果を見込める具体的なプランを策定しました。事業ポートフォリオの再構築に向けた、全ての事業戦略の評価も完了しており、今後はそれらをしっかりとレビューしながら、PDCAサイクルを着実に実行していきます。
対処すべき課題
2021年度から2023年度の3か年を対象とする新中期経営計画「SHIFT 2023」においては、当社の事業ポートフォリオ固有の弱点を克服し、当社業績をV字回復させるべく、2020年度からの取組みに加え、課題の背景にある真因を取り除くため、事業戦略を遂行する組織単位(Strategic Business Unit(以下、SBU))の強化と全社最適の資源配分を実現する仕組みを導入して、徹底的な構造改革を行います。
「SHIFT 2023」は、昨年の「危機対応モード」のモメンタムを維持しており、これまで構造改革として実行してきた取組みをより具体的且つ中期的な目線で引き直した内容となっています。全社で総力をあげてこの「SHIFT 2023」を着実に実行することにより、当社の足元の状況を早急に改善させ、一日も早く株主の皆様の信頼を回復すべく、業績面で結果を示していきます。
●新中期経営計画「SHIFT 2023」
「SHIFT 2023」では、「事業ポートフォリオのシフト」を掲げて、現行の事業ポートフォリオをより高い収益性と環境変化への耐性を兼ね備えたポートフォリオに移行していきます。そして、この「ポートフォリオのシフト」の実効性を担保するために「仕組みのシフト」を導入します。また、「経営基盤のシフト」のため、「ガバナンスの強化」、「人材マネジメントの強化」、「財務健全性の維持・向上」を行います。

(1)事業ポートフォリオのシフト
①事業戦略毎の位置づけの明確化
当社のすべての事業をSBU毎に括り直したうえで、「バリュー実現」、「バリューアップ」、「注力事業」及び「シーディング」の4つのカテゴリーに分類し、各事業について位置づけを整理し、目指す方向・果たす役割を明確にします。各SBUがそれぞれの位置づけに応じた目標の達成を実現し、より市場の魅力度が高く、当社の強みが十分に発揮できる「注力事業」となることを目指すことで、より高い収益性と環境変化への耐性を兼ね備えた事業ポートフォリオの構築に繋げます。また、各事業のカテゴリー分類は、市場の変化や当社の持つ強みの変化により、随時見直しながら、事業ポートフォリオの強化を図り、当社の企業価値向上に努めていきます。
なお、かかるシフトの実現にあたっては、社会的な要請であるデジタル化とサステナビリティという2つの大きな潮流をしっかりと捉えることを意識して、取組んでいきます。

②事業戦略分類毎の定量イメージ
4つのカテゴリー別の定量イメージは、次のとおりです。3つのカテゴリーで資産入替えによる資金の回収をしっかりと行いながら、市場の成長が期待でき、かつ、既に当社の強みが実証されている「注力事業」のカテゴリーを中心に、新中期経営計画期間中に1兆1,000億円程度の投融資を行う計画です。具体的には、国内不動産事業や建機レンタル事業、再生可能エネルギー関連事業等での投資拡大を計画しています。

③次世代成長戦略テーマの設定
次世代のコアビジネスを育成すべく、6つの分野を「次世代成長戦略テーマ」として設定し、同分野における事業を全社で中長期的に強化・育成していきます。「中期経営計画2020」において取組んできた、「デジタルトランスフォーメーション(DX)」、「社会インフラ」、「ヘルスケア」の3分野に、当社の強みが発揮できる可能性の高い分野である、「次世代エネルギー」、「リテイル・コンシューマー」、「農業」の3分野を新たに加えました。当社の事業ポートフォリオを、持続可能な社会に整合した形にシフトしていくことも重要な要素と捉え、サステナビリティ経営の高度化という観点からもこれらのテーマに取組んでいきます。

(2)仕組みのシフト
事業ポートフォリオのシフトの実効性を担保するため、以下4つの新たな仕組みを導入します。
①事業戦略管理の進化
当社のすべての事業をSBU毎に括り、事業戦略上の位置づけ・方向性を明確化して、スピード感をもった資産入替えの判断や、戦略水準の向上により投資先事業のバリューアップに繋げます。その実効性を確実にすべく、各SBU単位で具体的目標を設定し、PDCA管理を徹底します。
②投資の厳選/投資後のバリューアップ強化
個別事業の選定・投資判断、投資実行後の事業管理、更にはその投資のパフォーマンスに応じた評価等、投資の各ステージにおいて、過去の失敗を繰り返さないための打ち手を実行します。具体的には、案件を厳選するための厳格な投資規律の設定、投資先に対する最適なリソースの投入、ガバナンス体制の構築、不採算事業のモニタリングの強化等により、投資案件のバリューアップを実現させていきます。
③全社最適での取組み体制強化
特定テーマに関し、事業構想から事業化まで一つの組織で推進し、将来的に当社コア事業を創出することを狙いとして、新たな営業組織であるイニシアチブの枠組みを導入しました。イニシアチブは、部門の枠を超えた全社視点で、ビジネス全体を俯瞰したうえでグランドデザインを描き、中長期目線で次世代のビジネスの創造に取組みます。2021年4月にはその第一弾となる「エネルギーイノベーション・イニシアチブ(Energy Innovation Initiative(EII))」を設立し、従来の組織の枠を超えて、グループの知見を結集し、エネルギー分野での新たな価値創造に挑みます。
④全社最適視点からの経営資源配分の強化
人材や資金といった経営資源を、全社最適の観点から部門の枠を超えて再配分していきます。また、市場の成長が期待できる分野で、既に当社が強みを発揮している事業領域に対して、経営資源を優先的に配分することにより、全社の意思で当社の新たなコア事業を育成・拡大していきます。この取組みを加速するために、全社視点での事業推進役として、グローバルイノベーション推進委員会や全社経営戦略推進サポート委員会といった全社委員会の機能を強化・拡大します。
(3)経営基盤のシフト
経営基盤の強化として、ガバナンスの強化、人材マネジメントの強化、財務健全性の維持・向上に継続的に取組んでいきます。
①ガバナンスの強化
当社のコーポレートガバナンスの更なる充実に向けて取締役会の機能の強化を図ります。このため、新中期経営計画に基づく経営資源の配分や事業ポートフォリオに関する戦略、サステナビリティ経営等の諸施策などの重要な経営方針・戦略についての実効的な監督やその更なる客観性の強化のための体制整備に取組んでいきます。
②人材マネジメントの強化
2020年度に制定したグローバル人材マネジメントポリシーを具現化するため、人材マネジメント改革を推進していきます。2021年4月には「Pay for Job, Pay for Performance」、「世界Top Tierのプロフェッショナル育成」などをキーワードに、人事制度改定を実施しました。この改訂を梃子に、「Diversity & Inclusion」をさらに推し進め、グローバルでの適所適材をより実現することを目指します。また、コロナ禍が長期化するニューノーマルの時代においても、組織と個人双方のパフォーマンスの最大化を目指し、健康経営の推進と働き方改革に継続して取組んでいきます。
③財務健全性の維持・向上
有利子負債に過度に依存しない投資規律を維持すべく、3年合計の配当後フリーキャッシュ・フローの黒字を確保します。また、リスクアセットをコア・リスクバッファーの範囲内に抑えるべく、引き続きそのバランス(注)の維持に努めます。
(注)「コア・リスクバッファー」とは、「資本金」、「剰余金」及び「在外営業活動体の換算差額」の和から「自己株式」を差し引いて得られる数値で、当社は、最大損失可能性額である「リスクアセット」を「コア・リスクバッファー」の範囲内に収めることを経営の基本としています。
(4)定量計画
①経営環境
全般
世界経済は、新型コロナウイルスのワクチン接種が普及し感染が収束に向かうにつれ、財政・金融政策の後押しもあり景気回復傾向が続く見通しです。ただし、その回復には国・地域や産業毎にばらつきが生じます。先進国のうち、米国の景気は大規模な刺激策が下支えとなり回復が見込まれます。新興国のうち、中国では景気回復の動きが続く一方、ブラジル、インドなど感染拡大が継続している国では当面、緩慢な景気回復にとどまる見込みです。リスクとして、ワクチン普及の遅延、感染再拡大とそれに伴う経済活動制限の長期化、政治・社会情勢の変化に伴う不確実性の高まり、債務拡大、地政学的リスクの高まりなどが挙げられます。
金属事業部門
当部門は、鋼材・鋼管などの鉄鋼製品を幅広く取り扱っています。
当部門を取り巻く環境としては、鋼材分野では、新型コロナウイルスによる需要減退の影響を受けましたが、足もとでは自動車や家電など各分野において回復の傾向が見られます。一方で鋼材需給の逼迫、原材料価格の高止まり、半導体・樹脂供給不足などによる今後の影響は不透明であり、注視していきます。
鋼管分野においても、2020年度前半では油価下落に加え、新型コロナウイルスによる需要減退の影響を受けました。足もとでは市況に改善の兆しが見えつつある一方、主要顧客である石油・ガス企業が、石油・ガス需要対応に加え、気候変動問題を念頭に、統合エネルギー事業会社への変容を目指していることに呼応したビジネスへの適合が求められています。
このような環境を踏まえ、今後、当部門としては中長期的視点で確実に持続的成長を果たせるビジネスモデルへの再構築を完遂します。同時に、DXを通じた新たな価値提供、再生可能エネルギー・CCUS等社会のカーボンニュートラル化に資する鉄鋼製品・サービスの供給による気候変動問題への対応をはじめ、サステナビリティ経営の高度化にも注力し取組んでいきます。
輸送機・建機事業部門
当部門は、リース・ファイナンス事業、グローバルにバリューチェーン展開する自動車・建設機械・船舶事業、高い専門性を持つ航空宇宙関連事業を中心に、各種取引及び事業投資を行っています。
当部門を取り巻く事業環境としては、新型コロナウイルスの影響による不透明感はあるものの、今後の緩やかな回復を見込んでいます。リース・ファイナンス事業では市況回復によるクレジットコストの軽減や資産積増しなどによる収益改善を見込みます。また、自動車製造・販売事業は自動車市場の緩やかな回復を見込んでいるほか、2020年度後半に需要が回復した建設機械事業では2021年度も堅調に推移する見通しです。
このような環境を踏まえ、市況回復による収益力の改善を確実なものにしつつ、更なる収益基盤の強化に向け、リース事業では優良資産の積増しにより事業を拡大するほか、建機レンタル事業では既存事業基盤拡大やアジア市場の成長を取込み、自動車製造事業では戦略再構築に基づくポートフォリオの組換えを進めます。また、社会構造変化への挑戦として、モビリティ関連事業において新たなニーズに即したモビリティサービスの開発に注力します。
インフラ事業部門
当部門は、水・鉄道等の社会インフラ事業、EPCビジネスや発電事業等の電力インフラ事業、港湾・海外工業団地、保険事業を含む物流インフラ事業を行っています。
当部門を取り巻く足元の環境としては、電力EPCビジネスでは、工事進捗に伴いピークアウトを迎える中で、新型コロナウイルスの影響等により、複数のプロジェクトで履行ペースが鈍化し、影響が生じています。また、発電事業は総じて堅調ですが、一部電力需要減などの影響が生じています。
このような環境を踏まえ、当部門は下方耐性の強い規模感を持った安定収益を構築すべく、ダウンサイドリスクのマネジメントを一層強化します。また、世界的な環境意識の高まりによる低炭素社会の到来、新興国を中心とした旺盛なインフラ需要を商機と捉え、新たな取組みを加速させます。
具体的には、地域社会全体のニーズを捉えた質の高いインフラアセットを提供すべく、衛生的な上・下水事業、スマートシティ開発、鉄道・空港・港湾事業など、社会インフラ事業に積極的に取組みます。更に2050年のカーボンニュートラルを達成すべく、再生可能エネルギー発電事業や環境価値を活かした国内電力小売事業により注力します。加えて、エネルギーイノベーション・イニシアチブとの共創により、新たな電力・エネルギーサービスの事業化を推進します。
メディア・デジタル事業部門
当部門は、ケーブルテレビ、テレビ通販、及びデジタルメディア等のメディア事業、5G関連事業、ICTプラットフォーム、デジタルソリューション等のデジタル事業、携帯電話販売、情報通信インフラサービス等のスマートプラットフォーム事業を行っています。
当部門を取り巻く環境としては、メディア事業では視聴形態の多様化や各種オンラインサービスの進展が見込まれています。5G関連事業では5Gの商用化が開始、携帯キャリアの基地局整備も進んでおり、市場拡大が見込まれています。デジタル事業ではコロナ禍の環境変化により社会のデジタル化ニーズが加速しており、企業のIT投資は2020年度期初に一旦は冷えたものの順調に回復し、DX需要は一層拡大しています。携帯電話販売事業では電気通信事業法改正に伴う端末価格上昇による販売数の減少がある一方で、在宅勤務増加に伴う法人需要が増加しています。また、海外の情報通信インフラ事業ではミャンマーにおける政変の影響により、先行きの不透明な厳しい事業環境が継続しています。
このような環境を踏まえ、メディア事業ではオンライン診療などのオンラインでの生活周辺サービスの拡充、5G関連事業では基地局シェアリングの商用化・早期拡大に取組み、デジタル事業ではSCSKとともにDX事業化・新たな価値創出への取組みを加速します。また、海外の情報通信インフラ事業ではミャンマーの動向を注視しながら慎重に取組みます。
生活・不動産事業部門
当部門は、ライフスタイル・リテイル、食料、生活資材・不動産分野において事業を展開しています。
ライフスタイル・リテイル分野のスーパーマーケット事業では、新型コロナウイルスの影響による在宅率の上昇により内食需要が増加しており、ドラッグストア事業とともに、社会インフラとしての重要性が増しています。ヘルスケア事業では、引き続き国内において高齢化の進展に伴う調剤医療費の抑制、在宅介護、オンライン診療等で事業機会の拡大が見込まれます。
食料分野の食材・食品開発輸入事業では、外出自粛の影響等により、外食産業向けの需要が減退していますが、内食需要増加による量販店向けの需要は底堅く推移しています。
不動産分野は新型コロナウイルスの影響による物流需要の高まりを受け、物流不動産の市況は好調に推移しているほか、住宅の市況も好調に推移しています。一方で、都市型の商業施設は開業の制限に伴い一部影響を受けているほか、オフィス需要などは今後のマーケットの変化により影響を受ける可能性が想定されます。
このような環境を踏まえ、当部門は、マーケットを慎重に見極めながら、事業の継続及び将来の成長のために必要な施策を引き続き実行していきます。また、DX施策についても、ライフスタイル・リテイル分野では、小売現場ならではのデータ活用や、ドラッグストアにおける全自動調剤導入など、現場での課題解決、機能の高度化を目指した取組みを推進していきます。
資源・化学品事業部門
当部門は、資源・エネルギー分野では、金属資源・エネルギー権益の開発・生産及び販売事業を、化学品・エレクトロニクス分野では、基礎化学品、農薬、肥料、医薬、化粧品、エレクトロニクス材料・製品の開発、製造、販売事業を展開しています。
当期、資源・エネルギー分野では、新型コロナウイルス感染拡大防止のため、一部の鉱山で操業を停止しましたが、2021年3月に約1年振りに生産再開したマダガスカルニッケル事業のほか、現在はすべての鉱山で生産を再開しています。また、世界経済の回復やワクチン接種の進展に伴い、市況価格は全体的に上昇傾向にあります。
化学品・エレクトロニクス分野では、一部、新型コロナウイルスにより需要が減退し、製造拠点の稼働率が低下しましたが、医薬、農薬関連事業は堅調で、全体としては底堅く推移しました。
このような環境を踏まえ、資源・エネルギー分野では、引き続き鉱山関係者の健康安全を最優先に、安定供給体制の確立を目指すとともに、2050年の住友商事グループのカーボンニュートラル化に向け、化石エネルギー権益は撤退・縮小し、中長期的に需要拡大が期待される金属資源へポートフォリオをシフトします。化学品・エレクトロニクス分野では、EMS事業の製造力強化とグローバルネットワーク拡充のほか、農業資材直販事業の更なる拡大と機能高度化に注力していきます。
②定量計画
2021年度の通期連結業績については、前期に不採算事業の整理等に伴う多額の一過性損失を計上したことの反動に加え、一過性を除く業績についても、資源ビジネス(注1)では、資源価格の上昇や、前期に新型コロナウイルス感染拡大の影響により操業を停止していたマダガスカルニッケル事業の操業再開などにより増益を見込んでおります。また、非資源ビジネス(注2)においても、新型コロナウイルス感染拡大の影響を大きく受けていた、鋼材事業や自動車製造事業の回復などにより増益が見込まれることから、2021年度の通期連結業績の見通しを2,300億円としております。
また、2022年度は2,600億円の連結純利益を計画しており、2023年度については、事業環境の変化が激しく先行きを見通すことが難しいものの、ポートフォリオの収益力と環境変化への耐性を高めることで、どのような環境であっても、3,000億円以上の連結純利益を出せるポートフォリオに強化し、過去最高益の更新を目指していきます。
キャッシュ創出力は、構造改革による収益改善効果や、新たな利益成長を着実に取込むことで、徐々に回復し3年目にはコロナ前の水準近くまで回復する計画です。引き続き徹底的に取組む低採算事業からの撤退やバリュー実現による資金回収も合わせ、3年合計で1兆4,000億円のキャッシュ・インを予定しています。このキャッシュを原資として、市場の魅力度が高く、当社の強みが十分に発揮できる分野を中心に、1兆1,000億円程度の投融資を実行し、ポートフォリオの収益性と下方耐性を高めていきます。また、株主還元として配当に2,600億円を充てる計画です。

(注1)資源ビジネスとは、「資源第一本部」「資源第二本部」「エネルギー本部」が行っているビジネスを指します。
(注2)非資源ビジネスとは、全社で行っているビジネスのうち、資源ビジネス以外のビジネスを指します。
(5)配当方針
配当方針については、「第4 提出会社の状況 3 配当政策」を参照願います。
住友商事グループのサステナビリティ経営の高度化
当社は、住友の事業精神、住友商事グループの経営理念(注)・行動指針を踏まえて、2017年にマテリアリティ(*)を特定して、当社グループの事業と社会との関わりを明確にし、一つ一つの事業が社会の抱える様々な課題の解決に貢献することを意識した経営を行ってきました。
また、当社は、社会とともに持続的に成長するためのサステナビリティ経営の高度化の一環として、自らの強みである人的リソースやビジネスノウハウ、グローバルなネットワークやビジネスリレーションを活かして、持続可能な社会の実現にどのような役割を果たすのかを、より明確にコミットするため、当社に関わりが深い6つの重要社会課題を選び、それに紐づく長期・中期の目標を定めています。
重要社会課題は、社会の発展の基礎であり、住友商事の事業活動の前提である「社会の持続可能性」と、持続可能な社会の実現に必要なソリューションを生み出す「社会の発展と進化」という、相互に関連する二つのテーマから成り立っています。
(注)住友商事グループの経営理念については、「第4 提出会社の状況 4 コーポレート・ガバナンスの状況等(1)コーポレート・ガバナンスの概要③住友商事コーポレートガバナンス原則」をご参照ください。
■住友商事グループの重要社会課題と長期目標
*『マテリアリティ』とは住友商事グループが社会とともに持続的に成長するために優先的に取り組むべき課題として特定したもの。



■住友商事グループのサステナビリティ経営
住友商事グループの目指すサステナビリティ経営の高度化は、重要社会課題や目標の設定にとどまりません。
我々の社会が直面する課題の解決に向けて、住友商事グループの果たす役割を明確にコミットすることに加え、社会課題を巡る長期的な事業環境変化を見通して、戦略的に経営資源を配分し、社会が真に必要とする価値を創り出していきます。
持続可能な社会の実現と自らの持続的な成長がしっかりと重なった姿が住友商事グループのサステナビリティ経営です。

住友商事グループのマテリアリティ(重要課題)
① 社会とともに持続的に成長するための6つのマテリアリティ(重要課題)
社会課題の解決に向けて企業の果たす役割への期待や、環境・社会・ガバナンス(ESG)の側面が企業の評価や投資行動につながる機運が高まる中、住友の事業精神、住友商事グループの経営理念を踏まえ、事業活動を通じて、自らの強みを生かして優先的に取組むべき課題を、「社会とともに持続的に成長するための6つのマテリアリティ(重要課題)」として、以下のとおり特定しました。これを、事業戦略の策定や個々のビジネスの意思決定プロセスにおける重要な要素と位置付けています。
● グローバルに広がる顧客・パートナーとの信頼関係とビジネスノウハウを活用し、健全な事業活動を通じて豊か
さと夢を実現するという企業使命を果たすことで、持続的な成長と以下の社会課題の解決を両立していきます。
● また、上記の課題を解決するための基盤として、人間尊重や信用・確実といった経営姿勢と、活力に溢れ革新を
生み出す企業風土のたゆまぬ維持向上に努めています。

② マテリアリティ(重要課題)とSDGs(注)
6つのマテリアリティ(重要課題)の特定に当たっては、まず国際的なガイドラインやSDGsを参照し、当社の事業と社会課題との関わりを整理・分析しました。そのうえで、住友の事業精神や当社グループの経営理念を踏まえて重要課題を抽出し、社内アンケートを実施したほか、社外ステークホルダーや有識者との意見交換を重ね、その結果を文章化しました。そして、CSR委員会(現サステナビリティ推進委員会)、経営会議及び取締役会での審議・決議を経て、特定しました。上記プロセスを経て特定したマテリアリティを事業において実践することが、当社グループがSDGsの達成に貢献していくことにつながると考えています。
(注)Sustainable Development Goalsの略称。2030年までの世界規模の課題が盛り込まれた17の目標。2015年に国連総会で全ての加盟国(193か国)により採択されました。
●「中期経営計画2020」の総括
(1)業績総括
当社は、2018年度から2020年度までの3か年を対象とする「中期経営計画2020」において、「新たな価値創造への飽くなき挑戦」をスローガンに掲げ、経営基盤の強化を図りながら、成長戦略を推進すべく、取組んできました。
初年度は、期初の計画を達成し、業績も過去最高益となりましたが、2019年度は、米中貿易摩擦による世界経済の低迷の影響等により期初の目標が未達となり、最終年度は、新型コロナウイルス感染症拡大に伴う影響や低採算事業の整理等に伴う多額の一過性損失により1,531億円の赤字に転落し、収益力において課題が残りました。
また、キャッシュ・フローについては、業績の低迷に伴い、当初計画に対し、キャッシュ・インが全体的に減少したものの、2020年度の危機対応モード下における、構造改革推進に伴う資産入替えの促進や、運転資金の改善、投融資の厳選などを通じ、キャッシュ・フローをきめ細かく管理した結果、3年合計配当後フリーキャッシュ・フローは当初計画の2,000億円の黒字に対し3,100億円の黒字となりました。

なお、「中期経営計画2020」の3年累計で約9,200億円の投融資を実行しており、セグメント毎の主な案件は以下のとおりです。
主な投融資実績(18/4~21/3)
| 主な投融資実績 | |
| 金属 | ・インド特殊鋼事業 ・ノルウェー 石油ガス関連ベンチャーへの出資 |
| 輸送機・建機 | ・北欧駐車場事業 ・三井住友ファイナンス&リースへの追加出資 |
| インフラ | ・海外発電事業(欧州・アジア等) ・都市旅客鉄道運営・保守事業(フィリピン) |
| メディア・デジタル | ・SCSK システム関係会社 完全子会社化、設備投資 ・テクノロジー企業へのベンチャー投資 |
| 生活・不動産 | ・国内/海外不動産取得 ・マレーシア マネージドケア事業 |
| 資源・化学品 | ・チリ銅事業ケブラダ・ブランカ権益取得 ・ウクライナ 農業資材直販事業 |
(2)危機対応モードへの切り替えと構造改革の取組み
「中期経営計画2020」では、成長戦略として、「既存事業のバリューアップ」、「次世代新規ビジネス創出」、「プラットフォーム事業の連携深化」を目指しましたが、2019年度後半に発生した新型コロナウイルス感染症の拡大という未曽有の事態により、当社は、「中期経営計画2020」の最終年を、危機対応の一年として位置づけ、投融資の厳選、政策保有株式の売却、販管費の削減などの全社キャッシュ・フロー管理の厳格化を行い、また、低採算事業の整理の徹底、事業ポートフォリオの再構築のための既存事業のバリューアップの加速などの構造改革に取組みました。さらにはサステナビリティ経営の高度化のための、重要社会課題と中長期目標の設定に取組みました。
2020年度の当社の事業ポートフォリオは、新型コロナウイルス感染症の拡大によるビジネス環境の激変により当社の弱みが顕在化したものではありますが、それ以前からも世界景気などの環境変化に大きな影響を受けるとともに、その下方耐性に課題があると考えています。まずは、不採算事業の整理、資産入替えに徹底的に取組むとともに、新たな投資の規律や管理の仕組みを作り、新規投資案件の着実な収益化を図ります。さらに、既存事業を変革し、収益力を強化すると同時に、新規コア事業の育成にも取組むこととしました。
上記の構造改革の成果として、低採算事業については、その見極めを徹底的に行い、32社の事業会社から撤退を完了しました。また、約150社の事業会社についても、今後3か年で700億円の収益改善効果を見込める具体的なプランを策定しました。事業ポートフォリオの再構築に向けた、全ての事業戦略の評価も完了しており、今後はそれらをしっかりとレビューしながら、PDCAサイクルを着実に実行していきます。
対処すべき課題
2021年度から2023年度の3か年を対象とする新中期経営計画「SHIFT 2023」においては、当社の事業ポートフォリオ固有の弱点を克服し、当社業績をV字回復させるべく、2020年度からの取組みに加え、課題の背景にある真因を取り除くため、事業戦略を遂行する組織単位(Strategic Business Unit(以下、SBU))の強化と全社最適の資源配分を実現する仕組みを導入して、徹底的な構造改革を行います。
「SHIFT 2023」は、昨年の「危機対応モード」のモメンタムを維持しており、これまで構造改革として実行してきた取組みをより具体的且つ中期的な目線で引き直した内容となっています。全社で総力をあげてこの「SHIFT 2023」を着実に実行することにより、当社の足元の状況を早急に改善させ、一日も早く株主の皆様の信頼を回復すべく、業績面で結果を示していきます。
●新中期経営計画「SHIFT 2023」
「SHIFT 2023」では、「事業ポートフォリオのシフト」を掲げて、現行の事業ポートフォリオをより高い収益性と環境変化への耐性を兼ね備えたポートフォリオに移行していきます。そして、この「ポートフォリオのシフト」の実効性を担保するために「仕組みのシフト」を導入します。また、「経営基盤のシフト」のため、「ガバナンスの強化」、「人材マネジメントの強化」、「財務健全性の維持・向上」を行います。

(1)事業ポートフォリオのシフト
①事業戦略毎の位置づけの明確化
当社のすべての事業をSBU毎に括り直したうえで、「バリュー実現」、「バリューアップ」、「注力事業」及び「シーディング」の4つのカテゴリーに分類し、各事業について位置づけを整理し、目指す方向・果たす役割を明確にします。各SBUがそれぞれの位置づけに応じた目標の達成を実現し、より市場の魅力度が高く、当社の強みが十分に発揮できる「注力事業」となることを目指すことで、より高い収益性と環境変化への耐性を兼ね備えた事業ポートフォリオの構築に繋げます。また、各事業のカテゴリー分類は、市場の変化や当社の持つ強みの変化により、随時見直しながら、事業ポートフォリオの強化を図り、当社の企業価値向上に努めていきます。
なお、かかるシフトの実現にあたっては、社会的な要請であるデジタル化とサステナビリティという2つの大きな潮流をしっかりと捉えることを意識して、取組んでいきます。

②事業戦略分類毎の定量イメージ
4つのカテゴリー別の定量イメージは、次のとおりです。3つのカテゴリーで資産入替えによる資金の回収をしっかりと行いながら、市場の成長が期待でき、かつ、既に当社の強みが実証されている「注力事業」のカテゴリーを中心に、新中期経営計画期間中に1兆1,000億円程度の投融資を行う計画です。具体的には、国内不動産事業や建機レンタル事業、再生可能エネルギー関連事業等での投資拡大を計画しています。

③次世代成長戦略テーマの設定
次世代のコアビジネスを育成すべく、6つの分野を「次世代成長戦略テーマ」として設定し、同分野における事業を全社で中長期的に強化・育成していきます。「中期経営計画2020」において取組んできた、「デジタルトランスフォーメーション(DX)」、「社会インフラ」、「ヘルスケア」の3分野に、当社の強みが発揮できる可能性の高い分野である、「次世代エネルギー」、「リテイル・コンシューマー」、「農業」の3分野を新たに加えました。当社の事業ポートフォリオを、持続可能な社会に整合した形にシフトしていくことも重要な要素と捉え、サステナビリティ経営の高度化という観点からもこれらのテーマに取組んでいきます。

(2)仕組みのシフト
事業ポートフォリオのシフトの実効性を担保するため、以下4つの新たな仕組みを導入します。
①事業戦略管理の進化
当社のすべての事業をSBU毎に括り、事業戦略上の位置づけ・方向性を明確化して、スピード感をもった資産入替えの判断や、戦略水準の向上により投資先事業のバリューアップに繋げます。その実効性を確実にすべく、各SBU単位で具体的目標を設定し、PDCA管理を徹底します。
②投資の厳選/投資後のバリューアップ強化
個別事業の選定・投資判断、投資実行後の事業管理、更にはその投資のパフォーマンスに応じた評価等、投資の各ステージにおいて、過去の失敗を繰り返さないための打ち手を実行します。具体的には、案件を厳選するための厳格な投資規律の設定、投資先に対する最適なリソースの投入、ガバナンス体制の構築、不採算事業のモニタリングの強化等により、投資案件のバリューアップを実現させていきます。
③全社最適での取組み体制強化
特定テーマに関し、事業構想から事業化まで一つの組織で推進し、将来的に当社コア事業を創出することを狙いとして、新たな営業組織であるイニシアチブの枠組みを導入しました。イニシアチブは、部門の枠を超えた全社視点で、ビジネス全体を俯瞰したうえでグランドデザインを描き、中長期目線で次世代のビジネスの創造に取組みます。2021年4月にはその第一弾となる「エネルギーイノベーション・イニシアチブ(Energy Innovation Initiative(EII))」を設立し、従来の組織の枠を超えて、グループの知見を結集し、エネルギー分野での新たな価値創造に挑みます。
④全社最適視点からの経営資源配分の強化
人材や資金といった経営資源を、全社最適の観点から部門の枠を超えて再配分していきます。また、市場の成長が期待できる分野で、既に当社が強みを発揮している事業領域に対して、経営資源を優先的に配分することにより、全社の意思で当社の新たなコア事業を育成・拡大していきます。この取組みを加速するために、全社視点での事業推進役として、グローバルイノベーション推進委員会や全社経営戦略推進サポート委員会といった全社委員会の機能を強化・拡大します。
(3)経営基盤のシフト
経営基盤の強化として、ガバナンスの強化、人材マネジメントの強化、財務健全性の維持・向上に継続的に取組んでいきます。
①ガバナンスの強化
当社のコーポレートガバナンスの更なる充実に向けて取締役会の機能の強化を図ります。このため、新中期経営計画に基づく経営資源の配分や事業ポートフォリオに関する戦略、サステナビリティ経営等の諸施策などの重要な経営方針・戦略についての実効的な監督やその更なる客観性の強化のための体制整備に取組んでいきます。
②人材マネジメントの強化
2020年度に制定したグローバル人材マネジメントポリシーを具現化するため、人材マネジメント改革を推進していきます。2021年4月には「Pay for Job, Pay for Performance」、「世界Top Tierのプロフェッショナル育成」などをキーワードに、人事制度改定を実施しました。この改訂を梃子に、「Diversity & Inclusion」をさらに推し進め、グローバルでの適所適材をより実現することを目指します。また、コロナ禍が長期化するニューノーマルの時代においても、組織と個人双方のパフォーマンスの最大化を目指し、健康経営の推進と働き方改革に継続して取組んでいきます。
③財務健全性の維持・向上
有利子負債に過度に依存しない投資規律を維持すべく、3年合計の配当後フリーキャッシュ・フローの黒字を確保します。また、リスクアセットをコア・リスクバッファーの範囲内に抑えるべく、引き続きそのバランス(注)の維持に努めます。
(注)「コア・リスクバッファー」とは、「資本金」、「剰余金」及び「在外営業活動体の換算差額」の和から「自己株式」を差し引いて得られる数値で、当社は、最大損失可能性額である「リスクアセット」を「コア・リスクバッファー」の範囲内に収めることを経営の基本としています。
(4)定量計画
①経営環境
全般
世界経済は、新型コロナウイルスのワクチン接種が普及し感染が収束に向かうにつれ、財政・金融政策の後押しもあり景気回復傾向が続く見通しです。ただし、その回復には国・地域や産業毎にばらつきが生じます。先進国のうち、米国の景気は大規模な刺激策が下支えとなり回復が見込まれます。新興国のうち、中国では景気回復の動きが続く一方、ブラジル、インドなど感染拡大が継続している国では当面、緩慢な景気回復にとどまる見込みです。リスクとして、ワクチン普及の遅延、感染再拡大とそれに伴う経済活動制限の長期化、政治・社会情勢の変化に伴う不確実性の高まり、債務拡大、地政学的リスクの高まりなどが挙げられます。
金属事業部門
当部門は、鋼材・鋼管などの鉄鋼製品を幅広く取り扱っています。
当部門を取り巻く環境としては、鋼材分野では、新型コロナウイルスによる需要減退の影響を受けましたが、足もとでは自動車や家電など各分野において回復の傾向が見られます。一方で鋼材需給の逼迫、原材料価格の高止まり、半導体・樹脂供給不足などによる今後の影響は不透明であり、注視していきます。
鋼管分野においても、2020年度前半では油価下落に加え、新型コロナウイルスによる需要減退の影響を受けました。足もとでは市況に改善の兆しが見えつつある一方、主要顧客である石油・ガス企業が、石油・ガス需要対応に加え、気候変動問題を念頭に、統合エネルギー事業会社への変容を目指していることに呼応したビジネスへの適合が求められています。
このような環境を踏まえ、今後、当部門としては中長期的視点で確実に持続的成長を果たせるビジネスモデルへの再構築を完遂します。同時に、DXを通じた新たな価値提供、再生可能エネルギー・CCUS等社会のカーボンニュートラル化に資する鉄鋼製品・サービスの供給による気候変動問題への対応をはじめ、サステナビリティ経営の高度化にも注力し取組んでいきます。
輸送機・建機事業部門
当部門は、リース・ファイナンス事業、グローバルにバリューチェーン展開する自動車・建設機械・船舶事業、高い専門性を持つ航空宇宙関連事業を中心に、各種取引及び事業投資を行っています。
当部門を取り巻く事業環境としては、新型コロナウイルスの影響による不透明感はあるものの、今後の緩やかな回復を見込んでいます。リース・ファイナンス事業では市況回復によるクレジットコストの軽減や資産積増しなどによる収益改善を見込みます。また、自動車製造・販売事業は自動車市場の緩やかな回復を見込んでいるほか、2020年度後半に需要が回復した建設機械事業では2021年度も堅調に推移する見通しです。
このような環境を踏まえ、市況回復による収益力の改善を確実なものにしつつ、更なる収益基盤の強化に向け、リース事業では優良資産の積増しにより事業を拡大するほか、建機レンタル事業では既存事業基盤拡大やアジア市場の成長を取込み、自動車製造事業では戦略再構築に基づくポートフォリオの組換えを進めます。また、社会構造変化への挑戦として、モビリティ関連事業において新たなニーズに即したモビリティサービスの開発に注力します。
インフラ事業部門
当部門は、水・鉄道等の社会インフラ事業、EPCビジネスや発電事業等の電力インフラ事業、港湾・海外工業団地、保険事業を含む物流インフラ事業を行っています。
当部門を取り巻く足元の環境としては、電力EPCビジネスでは、工事進捗に伴いピークアウトを迎える中で、新型コロナウイルスの影響等により、複数のプロジェクトで履行ペースが鈍化し、影響が生じています。また、発電事業は総じて堅調ですが、一部電力需要減などの影響が生じています。
このような環境を踏まえ、当部門は下方耐性の強い規模感を持った安定収益を構築すべく、ダウンサイドリスクのマネジメントを一層強化します。また、世界的な環境意識の高まりによる低炭素社会の到来、新興国を中心とした旺盛なインフラ需要を商機と捉え、新たな取組みを加速させます。
具体的には、地域社会全体のニーズを捉えた質の高いインフラアセットを提供すべく、衛生的な上・下水事業、スマートシティ開発、鉄道・空港・港湾事業など、社会インフラ事業に積極的に取組みます。更に2050年のカーボンニュートラルを達成すべく、再生可能エネルギー発電事業や環境価値を活かした国内電力小売事業により注力します。加えて、エネルギーイノベーション・イニシアチブとの共創により、新たな電力・エネルギーサービスの事業化を推進します。
メディア・デジタル事業部門
当部門は、ケーブルテレビ、テレビ通販、及びデジタルメディア等のメディア事業、5G関連事業、ICTプラットフォーム、デジタルソリューション等のデジタル事業、携帯電話販売、情報通信インフラサービス等のスマートプラットフォーム事業を行っています。
当部門を取り巻く環境としては、メディア事業では視聴形態の多様化や各種オンラインサービスの進展が見込まれています。5G関連事業では5Gの商用化が開始、携帯キャリアの基地局整備も進んでおり、市場拡大が見込まれています。デジタル事業ではコロナ禍の環境変化により社会のデジタル化ニーズが加速しており、企業のIT投資は2020年度期初に一旦は冷えたものの順調に回復し、DX需要は一層拡大しています。携帯電話販売事業では電気通信事業法改正に伴う端末価格上昇による販売数の減少がある一方で、在宅勤務増加に伴う法人需要が増加しています。また、海外の情報通信インフラ事業ではミャンマーにおける政変の影響により、先行きの不透明な厳しい事業環境が継続しています。
このような環境を踏まえ、メディア事業ではオンライン診療などのオンラインでの生活周辺サービスの拡充、5G関連事業では基地局シェアリングの商用化・早期拡大に取組み、デジタル事業ではSCSKとともにDX事業化・新たな価値創出への取組みを加速します。また、海外の情報通信インフラ事業ではミャンマーの動向を注視しながら慎重に取組みます。
生活・不動産事業部門
当部門は、ライフスタイル・リテイル、食料、生活資材・不動産分野において事業を展開しています。
ライフスタイル・リテイル分野のスーパーマーケット事業では、新型コロナウイルスの影響による在宅率の上昇により内食需要が増加しており、ドラッグストア事業とともに、社会インフラとしての重要性が増しています。ヘルスケア事業では、引き続き国内において高齢化の進展に伴う調剤医療費の抑制、在宅介護、オンライン診療等で事業機会の拡大が見込まれます。
食料分野の食材・食品開発輸入事業では、外出自粛の影響等により、外食産業向けの需要が減退していますが、内食需要増加による量販店向けの需要は底堅く推移しています。
不動産分野は新型コロナウイルスの影響による物流需要の高まりを受け、物流不動産の市況は好調に推移しているほか、住宅の市況も好調に推移しています。一方で、都市型の商業施設は開業の制限に伴い一部影響を受けているほか、オフィス需要などは今後のマーケットの変化により影響を受ける可能性が想定されます。
このような環境を踏まえ、当部門は、マーケットを慎重に見極めながら、事業の継続及び将来の成長のために必要な施策を引き続き実行していきます。また、DX施策についても、ライフスタイル・リテイル分野では、小売現場ならではのデータ活用や、ドラッグストアにおける全自動調剤導入など、現場での課題解決、機能の高度化を目指した取組みを推進していきます。
資源・化学品事業部門
当部門は、資源・エネルギー分野では、金属資源・エネルギー権益の開発・生産及び販売事業を、化学品・エレクトロニクス分野では、基礎化学品、農薬、肥料、医薬、化粧品、エレクトロニクス材料・製品の開発、製造、販売事業を展開しています。
当期、資源・エネルギー分野では、新型コロナウイルス感染拡大防止のため、一部の鉱山で操業を停止しましたが、2021年3月に約1年振りに生産再開したマダガスカルニッケル事業のほか、現在はすべての鉱山で生産を再開しています。また、世界経済の回復やワクチン接種の進展に伴い、市況価格は全体的に上昇傾向にあります。
化学品・エレクトロニクス分野では、一部、新型コロナウイルスにより需要が減退し、製造拠点の稼働率が低下しましたが、医薬、農薬関連事業は堅調で、全体としては底堅く推移しました。
このような環境を踏まえ、資源・エネルギー分野では、引き続き鉱山関係者の健康安全を最優先に、安定供給体制の確立を目指すとともに、2050年の住友商事グループのカーボンニュートラル化に向け、化石エネルギー権益は撤退・縮小し、中長期的に需要拡大が期待される金属資源へポートフォリオをシフトします。化学品・エレクトロニクス分野では、EMS事業の製造力強化とグローバルネットワーク拡充のほか、農業資材直販事業の更なる拡大と機能高度化に注力していきます。
②定量計画
2021年度の通期連結業績については、前期に不採算事業の整理等に伴う多額の一過性損失を計上したことの反動に加え、一過性を除く業績についても、資源ビジネス(注1)では、資源価格の上昇や、前期に新型コロナウイルス感染拡大の影響により操業を停止していたマダガスカルニッケル事業の操業再開などにより増益を見込んでおります。また、非資源ビジネス(注2)においても、新型コロナウイルス感染拡大の影響を大きく受けていた、鋼材事業や自動車製造事業の回復などにより増益が見込まれることから、2021年度の通期連結業績の見通しを2,300億円としております。
また、2022年度は2,600億円の連結純利益を計画しており、2023年度については、事業環境の変化が激しく先行きを見通すことが難しいものの、ポートフォリオの収益力と環境変化への耐性を高めることで、どのような環境であっても、3,000億円以上の連結純利益を出せるポートフォリオに強化し、過去最高益の更新を目指していきます。
キャッシュ創出力は、構造改革による収益改善効果や、新たな利益成長を着実に取込むことで、徐々に回復し3年目にはコロナ前の水準近くまで回復する計画です。引き続き徹底的に取組む低採算事業からの撤退やバリュー実現による資金回収も合わせ、3年合計で1兆4,000億円のキャッシュ・インを予定しています。このキャッシュを原資として、市場の魅力度が高く、当社の強みが十分に発揮できる分野を中心に、1兆1,000億円程度の投融資を実行し、ポートフォリオの収益性と下方耐性を高めていきます。また、株主還元として配当に2,600億円を充てる計画です。

(注1)資源ビジネスとは、「資源第一本部」「資源第二本部」「エネルギー本部」が行っているビジネスを指します。
(注2)非資源ビジネスとは、全社で行っているビジネスのうち、資源ビジネス以外のビジネスを指します。
(5)配当方針
配当方針については、「第4 提出会社の状況 3 配当政策」を参照願います。
住友商事グループのサステナビリティ経営の高度化
当社は、住友の事業精神、住友商事グループの経営理念(注)・行動指針を踏まえて、2017年にマテリアリティ(*)を特定して、当社グループの事業と社会との関わりを明確にし、一つ一つの事業が社会の抱える様々な課題の解決に貢献することを意識した経営を行ってきました。
また、当社は、社会とともに持続的に成長するためのサステナビリティ経営の高度化の一環として、自らの強みである人的リソースやビジネスノウハウ、グローバルなネットワークやビジネスリレーションを活かして、持続可能な社会の実現にどのような役割を果たすのかを、より明確にコミットするため、当社に関わりが深い6つの重要社会課題を選び、それに紐づく長期・中期の目標を定めています。
重要社会課題は、社会の発展の基礎であり、住友商事の事業活動の前提である「社会の持続可能性」と、持続可能な社会の実現に必要なソリューションを生み出す「社会の発展と進化」という、相互に関連する二つのテーマから成り立っています。
(注)住友商事グループの経営理念については、「第4 提出会社の状況 4 コーポレート・ガバナンスの状況等(1)コーポレート・ガバナンスの概要③住友商事コーポレートガバナンス原則」をご参照ください。
■住友商事グループの重要社会課題と長期目標
*『マテリアリティ』とは住友商事グループが社会とともに持続的に成長するために優先的に取り組むべき課題として特定したもの。


■住友商事グループのサステナビリティ経営
住友商事グループの目指すサステナビリティ経営の高度化は、重要社会課題や目標の設定にとどまりません。
我々の社会が直面する課題の解決に向けて、住友商事グループの果たす役割を明確にコミットすることに加え、社会課題を巡る長期的な事業環境変化を見通して、戦略的に経営資源を配分し、社会が真に必要とする価値を創り出していきます。
持続可能な社会の実現と自らの持続的な成長がしっかりと重なった姿が住友商事グループのサステナビリティ経営です。

住友商事グループのマテリアリティ(重要課題)
① 社会とともに持続的に成長するための6つのマテリアリティ(重要課題)
社会課題の解決に向けて企業の果たす役割への期待や、環境・社会・ガバナンス(ESG)の側面が企業の評価や投資行動につながる機運が高まる中、住友の事業精神、住友商事グループの経営理念を踏まえ、事業活動を通じて、自らの強みを生かして優先的に取組むべき課題を、「社会とともに持続的に成長するための6つのマテリアリティ(重要課題)」として、以下のとおり特定しました。これを、事業戦略の策定や個々のビジネスの意思決定プロセスにおける重要な要素と位置付けています。
● グローバルに広がる顧客・パートナーとの信頼関係とビジネスノウハウを活用し、健全な事業活動を通じて豊か
さと夢を実現するという企業使命を果たすことで、持続的な成長と以下の社会課題の解決を両立していきます。
● また、上記の課題を解決するための基盤として、人間尊重や信用・確実といった経営姿勢と、活力に溢れ革新を生み出す企業風土のたゆまぬ維持向上に努めています。

② マテリアリティ(重要課題)とSDGs(注)
6つのマテリアリティ(重要課題)の特定に当たっては、まず国際的なガイドラインやSDGsを参照し、当社の事業と社会課題との関わりを整理・分析しました。そのうえで、住友の事業精神や当社グループの経営理念を踏まえて重要課題を抽出し、社内アンケートを実施したほか、社外ステークホルダーや有識者との意見交換を重ね、その結果を文章化しました。そして、CSR委員会(現サステナビリティ推進委員会)、経営会議及び取締役会での審議・決議を経て、特定しました。上記プロセスを経て特定したマテリアリティを事業において実践することが、当社グループがSDGsの達成に貢献していくことにつながると考えています。
(注)Sustainable Development Goalsの略称。2030年までの世界規模の課題が盛り込まれた17の目標。2015年に国連総会で全ての加盟国(193か国)により採択されました。