有価証券報告書-第158期(2025/04/01-2026/03/31)
(a) 取り巻く事業環境と当社グループの経営戦略
当社グループを取り巻く事業環境は、地政学的緊張の高まりやインフレ等による経済の不透明感に加え、気候変動問題の深刻化や労働力不足、さらにはAI等のデジタル技術による産業構造の非連続な変化等、著しく不確実性が高まっております。
こうした環境下において、当社グループは中期経営計画2026のテーマとして「No.1事業群」を掲げ、「強みを核とした成長」及び「成長の原動力の強化」に重点的に取り組み、「事業ポートフォリオ変革」を加速させることで、社会課題解決を通じた飛躍的な成長の実現を目指しております。
(b) 人財戦略
「No.1事業群」という経営戦略を遂行する最大の原動力は「人財」です。当社グループは「グローバル人材マネジメントポリシー」を制定し、経営戦略の実現に向けた人財マネジメントを推進しております。
本ポリシーでは、会社が個人を一方的に管理するのではなく、「個」と「組織」が相互に選び合い、ともに成長する関係性の構築を目指しており、以下の2つのありたい姿を掲げております。この実現に向けて、国籍・性別・年齢等の属性にとらわれず、職務と成果に報いる報酬体系と、グローバルベースでの最適な人財配置を追求しております。
● 目指す個の姿(Top Tier Professionalism): グループの理念に共感し、高い志を持ち、自律的な成長を続け、グローバルフィールドで新たな価値創造に挑戦する人財。
● 目指す組織の姿(Great Place to Work): 個々人がイキイキと新たな価値を生み出し続け、世界に人財を輩出する「挑戦の場」として選ばれる組織。
(c) 人的資本に関するリスク及び機会
当社グループが事業を展開する地域・産業及びビジネスモデルは多様化しており、外部環境は非連続かつ急速に変化しております。こうした中、当社グループでは、人的資本(人財のケイパビリティ)の価値を高めることを通じて、経営戦略の実行力を強化する人的資本経営を推進しております。人的資本への投資領域を「5つの基盤(事業精神、インクルージョン、人材育成、ウェルビーイング、トータル・リワード)」として定め、継続的な投資をしております。これらの基盤への投資を通じ、エンゲージメントを高め、「社員の成長がビジネスの成長を牽引し、その成果が新たな成長機会として社員に還元される」という好循環を実現しております。

(※)施策事例は当社の取り組みであり、後述の「(d) リスク及び機会への当社の対応」を参照ください。
そして、当社グループの経営戦略である「No.1事業群」の実現に向け、以下の3つ(a~c)のテーマをグループ共通の最重要課題(リスク及び機会)として位置づけております。これらは、対応が遅れれば事業への悪影響を招く「リスク」であると同時に、的確に対応することで競争優位性を飛躍的に高める「機会」となる、表裏一体の関係にあります。「リスク」を最小限に抑え、「機会」を最大化することにより、当社グループの事業成長と中長期的な企業価値向上につなげていきます。なお、この3つのテーマは、当社グループが取り組むべき社会課題とその中長期のコミットメントであるマテリアリティに掲げる“人材育成とDE&Iを推進する”にもつながっております。
a プロフェッショナル人財の確保・育成
<リスク>ビジネスモデルの急激な変化(特にデジタル・AI技術の発展やGXの進展)に伴い、高度な専門性・経験や事業環境の変化に対応できる能力を持った人財への需要が急増しております。しかし、労働市場における人財獲得競争が激化する中で、当社グループの採用・育成の取り組みが想定通りに進まず、必要なプロフェッショナル人財をタイムリーに確保・育成できなかった場合、戦略の実行が停滞し、当社グループの競争力の低下や新規事業の機会逸失等のリスクがあります。
<機会>一方で、採用力の強化やグループ間の人財交流を通じて、社内外からプロフェッショナル人財を確保するとともに、各ビジネスで必要とされる専門知識・スキルの育成プログラムの充実や、デジタル・AIリテラシー研修等のリスキリングを強力に推進できれば、大きな成長のエンジンとなり得ます。特に社員一人ひとりがデジタルスキルを獲得し向上させ、業務を効率化し、創出された時間をクリエイティブな「事業構想」に振り向けることで、新たなビジネスモデルの創出、事業変革を促す機会となります。また、研修や挑戦機会の提供等の人材育成に継続的な投資を行うことで、社員にとって当社グループが各々の能力を伸ばしスキルを獲得することのできる魅力的な場となり、人財の定着にもつながります。
b 経営人財とキーポジションのサクセッション
<リスク>当社グループは幅広い産業においてグローバルに事業を展開しており、その戦略立案と実行を担うのは現場のリーダーたちです。特に日本において、仮に旧来の年功や属性にとらわれた配置から脱却できず、グローバルベースでの「適所適材」が進まない場合は、多様な事業を牽引する次世代・次々世代の経営人財のパイプラインが枯渇するおそれがあります。その場合、環境変化への対応の遅れや意思決定の誤りを招き、足元の業績悪化とともに、中長期的な企業価値の向上を阻害するリスクとなります。
<機会>この課題に対し、国籍・性別・年齢等の属性にとらわれず、早い段階からポテンシャルのある人財を特定し、組織の枠組みを超えた異動や、より大きな機会に挑戦させるアサインメントを計画的に提供できれば、多様な事業を牽引する人財のパイプラインを充実させることができます。タレントレビュー等を通じて、必要なスキルと経験を備えた人財を着実に育成・輩出するサイクルを回すことで、成長事業における強み・競争優位の磨き上げや事業の再構築等、中期経営計画で掲げる事業ポートフォリオ変革を着実に遂行する組織推進力(「リーダーシップ」と「スピード」)を獲得する最大の機会となります。
c 多様な人財の活躍
<リスク>複雑化する社会課題を解決していくためには、従来と同じ発想や均質的な価値観だけでは対応できません。属性や心理的な壁によって、多様な人財が能力を十分に発揮できない環境のままでは、組織の同質化や意思決定における質の低下を招き、新たな発想やイノベーションが生まれず、結果として市場の変化に取り残されるリスクがあります。
<機会>当社グループはDiversity, Equity and Inclusion(DE&I)を「価値創造、イノベーション、競争力の源泉」と明確に位置づけております。人財の採用・登用においても、各国の雇用関連法規を遵守し、いかなる属性(人種、国籍、性別、年齢、性的指向、性自認、性表現等)に基づく不当な優遇・差別も行わず、適性と能力に基づく機会の提供を重視することを基本としております。こうした方針のもと、キャリア採用者が持ち込む多様な視点や、グローバル拠点で活躍する海外採用社員、女性リーダー等、多様な知識・経験を持つ人財が案件創出や意思決定に主体的に関与する「知のミックス」を実現することで、イノベーティブな議論と質の高い意思決定が可能となり、組織力の向上につながります。一人ひとりが「WILL(意欲)」を起点に自分らしく力を発揮できるインクルーシブな環境を築くことこそが、これまでにない付加価値を生み出し、「No.1事業群」の実現につながる最大の機会となります。
(d) リスク及び機会への当社の対応
当社グループの中核企業である住友商事では、上記の最重要リスク及び機会(a~c)に対し、以下の対応を行っております。今後、これらの取り組みを日本のみならず、海外地域組織に拡げていきます。
a プロフェッショナル人財の確保・育成:
当社のプロフェッショナル人財には、住友の事業精神やグループの経営理念に深く共感しこれを体現しながら、多様なステークホルダーとともに社会課題を解決し、新たな価値創造に挑戦していくことが求められます。その挑戦のフィールドは様々な国・地域及び産業にわたるため、社員一人ひとりが自律的に成長し続け、グローバルで通用する高い市場価値を備えたプロフェッショナル人財を目指していくことが不可欠です。そのため、特定の分野における高度な専門知識・スキルだけではなく、新たな事業を構想する発想力やリーダーシップ、既存事業の継続的な改善・高度化(オペレーティングエクセレンス)を推進する力など、多岐にわたる能力をそれぞれの担当業務や事業ステージに応じて獲得・発揮することが求められます。
こうしたプロフェッショナル人財の育成に向けては、まず土台として、住友の事業精神やグループの経営理念に触れる機会を、各階層別研修や別子銅山訪問研修など継続的に設けるとともに、日々の実務における実践を通じて、社員のマインドセットとして醸成しております。その土台の上に、ガバナンス・財務会計・マーケティング等の基礎知識から、個々人がそれぞれのフィールドで必要とされる「世界で通用する力(=専門性)」を身につける人材育成プログラムを提供しております。加えて、自律的な学習を促すe-learningプラットフォームを整備しております。また、デジタル・AI戦略の実行力強化のため、これまで全社員必須のものから各営業グループのビジネスに特化したものまで、多層的にデジタル研修を実施してまいりました。その上で、全社的なデジタルスキルの可視化と社員のスキル向上のさらなる加速を目的に、2026年度よりデジタルスキルに関する社内認定制度「Dグレード」を導入しております。上記の全社的な取り組みに加えて、ビジネスごとに求められる専門知識・スキルを踏まえて、営業グループごとに独自の研修や、海外へのトレイニー派遣や事業会社への出向等による現場経験も含めた人材育成を行っております。
また、当社の職務等級制度においては、組織マネジメントを担うマネジメント職群と、高度な創造性や専門性の発揮を通じてプロジェクトを牽引するエキスパート職群による複線型のキャリアパスを設けており、多様なプロフェッショナル人財がそれぞれの強みを活かしながら成長できる環境を整備しております。キャリア採用により外部から高度な専門性を有する人財を獲得するのみならず、こうした育成施策とキャリアパスを通じて、社内においてもプロフェッショナル人財を計画的に育成し、継続的に確保することに努めております。
b 経営人財とキーポジションのサクセッション:
当社では、現在のキーポジションに対する個別のサクセッションレビューに加え、中長期の戦略実現を担う次世代の経営人財の計画的な育成にも注力しております。具体的には、社長・グループCEO・地域組織長等によるタレントレビューを実施しております。次世代経営人財候補に対しては、グループを超えた異動、セグメント(業界)の異なる組織での経験、またはより大きなアサインメントに挑戦させる機会の付与といった戦略的配置を行っております。あわせて、経営人財育成プログラムやメンタリング・コーチングを通じた育成のサイクルを回しております。
また、グローバルベースで経営人財の育成を推進していくため、グローバルで職務の大きさを比較可能にする「Job Grading」の導入や人財データベースの構築を進めております。

c 多様な人財の活躍:
当社では、多様な人財一人ひとりが各々の力を最大限に発揮できるよう多面的な取り組みを推進しております。まず、日本においては、2030年度までの数値目標を掲げ、女性活躍推進に取り組んでおります。単体の人事制度において、採用時の職掌区分を廃止・一本化し、職掌による制約をなくしたことで、個々人のスキル・能力・意欲等に応じたキャリア形成が可能な制度を整備しております。また、従来整備しているライフイベントと就業の両立支援に加え、女性リーダーの登用・育成を一層加速させていくための強化策を、シニアマネジメントの議論を経て実行に移しております。具体的には、配偶者の転勤等のライフイベントに応じたアサインメントの柔軟な個別対応や女性のコミュニティ形成、メンター制度等、活躍の阻害要因を極力排除し、真に力を発揮し成長できる機会を提供しております。
また、事業戦略に基づき高度な専門性を有する人財を外部から獲得するキャリア採用を積極的に推進しております。当社におけるキャリア採用者のバックグラウンドは多岐にわたり、各々の専門性や他社での経験に基づく異なる視点が、組織全体に新たな気づきや発想をもたらしております。
加えて、社内公募制の拡大にも取り組んでおります。社内公募制は、各組織にとっては、社内においても多様なスキル・経験を持つ人財を組織の枠を超えて機動的に獲得できる仕組みであるとともに、社員一人ひとりにとっては、「WILL(意欲)」を起点に自律的なキャリアを切り拓く機会にもなっております。
インクルーシブな職場環境の構築に向けては、インクルージョン啓発イベント「Inclusion & Connection Weeks(I&C Weeks)」を毎年開催し、多様な人財が自分らしく力を発揮できる組織文化の醸成に取り組んでおります。
なお、上記最重要のリスク及び機会(a~c)に注力するための土台となる職場環境整備については、上述の人的資本への5つの投資領域(事業精神、インクルージョン、人材育成、ウェルビーイング、トータル・リワード)ともアラインする形で、以下のとおり継続的に各種施策に取り組んでおります。
● 健康経営
当社では、社員一人ひとりが最大限にパフォーマンスを発揮するためには、心身の「健康」が最重要であり、これを基盤としてこそ、新たな価値創造を続けていくことができるという考えのもと、「イキイキワクワク健康経営宣言」を策定しております。人材・総務・法務グループ長を最高責任者とする推進体制のもと、「ヘルスリテラシー向上」、「もしもに備える安心体制」、「グローバル医療サポート」の3つを主軸として、健康経営に取り組んでおります。また、高い付加価値を生み出すアウトプット志向の働き方を実現するため、テレワーク制度やコアタイムのないスーパーフレックス制度等を整備しており、社員の自律的かつ柔軟な働き方を促進しております。
● 人事制度
当社では、Pay for Job, Pay for Performanceを追求しながら、専門性やスキルを重視したベストタレントの最適配置を実現し、組織パフォーマンスの最大化を図っております。
こうした人材マネジメントを実現するため、管理職において年次管理を撤廃し、職務の大きさに応じて等級を決定する職務等級制度を導入しております。あわせて、採用時の職掌区分を廃止し一本化した上で、入社後のキャリア形成の選択肢として、管理職においては高い創造性や専門性を発揮するエキスパート職群と、組織マネジメントを担うマネジメント職群の複線型のキャリアパスを整備しております。
自律的なキャリア形成に向けては、360度評価や絶対評価を導入しており、評価の公平性を向上させるとともに、個と真摯に向き合い、そのポテンシャルを引き出しております。また、キャリアアセスメントを通じて、上司・部下間の対話により、社員一人ひとりのキャリア志向・経験・適性・課題に関する相互理解を深め、適所適材の実現とキャリア形成につなげております。
当社グループを取り巻く事業環境は、地政学的緊張の高まりやインフレ等による経済の不透明感に加え、気候変動問題の深刻化や労働力不足、さらにはAI等のデジタル技術による産業構造の非連続な変化等、著しく不確実性が高まっております。
こうした環境下において、当社グループは中期経営計画2026のテーマとして「No.1事業群」を掲げ、「強みを核とした成長」及び「成長の原動力の強化」に重点的に取り組み、「事業ポートフォリオ変革」を加速させることで、社会課題解決を通じた飛躍的な成長の実現を目指しております。
(b) 人財戦略
「No.1事業群」という経営戦略を遂行する最大の原動力は「人財」です。当社グループは「グローバル人材マネジメントポリシー」を制定し、経営戦略の実現に向けた人財マネジメントを推進しております。
本ポリシーでは、会社が個人を一方的に管理するのではなく、「個」と「組織」が相互に選び合い、ともに成長する関係性の構築を目指しており、以下の2つのありたい姿を掲げております。この実現に向けて、国籍・性別・年齢等の属性にとらわれず、職務と成果に報いる報酬体系と、グローバルベースでの最適な人財配置を追求しております。
● 目指す個の姿(Top Tier Professionalism): グループの理念に共感し、高い志を持ち、自律的な成長を続け、グローバルフィールドで新たな価値創造に挑戦する人財。
● 目指す組織の姿(Great Place to Work): 個々人がイキイキと新たな価値を生み出し続け、世界に人財を輩出する「挑戦の場」として選ばれる組織。
(c) 人的資本に関するリスク及び機会
当社グループが事業を展開する地域・産業及びビジネスモデルは多様化しており、外部環境は非連続かつ急速に変化しております。こうした中、当社グループでは、人的資本(人財のケイパビリティ)の価値を高めることを通じて、経営戦略の実行力を強化する人的資本経営を推進しております。人的資本への投資領域を「5つの基盤(事業精神、インクルージョン、人材育成、ウェルビーイング、トータル・リワード)」として定め、継続的な投資をしております。これらの基盤への投資を通じ、エンゲージメントを高め、「社員の成長がビジネスの成長を牽引し、その成果が新たな成長機会として社員に還元される」という好循環を実現しております。

(※)施策事例は当社の取り組みであり、後述の「(d) リスク及び機会への当社の対応」を参照ください。
そして、当社グループの経営戦略である「No.1事業群」の実現に向け、以下の3つ(a~c)のテーマをグループ共通の最重要課題(リスク及び機会)として位置づけております。これらは、対応が遅れれば事業への悪影響を招く「リスク」であると同時に、的確に対応することで競争優位性を飛躍的に高める「機会」となる、表裏一体の関係にあります。「リスク」を最小限に抑え、「機会」を最大化することにより、当社グループの事業成長と中長期的な企業価値向上につなげていきます。なお、この3つのテーマは、当社グループが取り組むべき社会課題とその中長期のコミットメントであるマテリアリティに掲げる“人材育成とDE&Iを推進する”にもつながっております。
a プロフェッショナル人財の確保・育成
<リスク>ビジネスモデルの急激な変化(特にデジタル・AI技術の発展やGXの進展)に伴い、高度な専門性・経験や事業環境の変化に対応できる能力を持った人財への需要が急増しております。しかし、労働市場における人財獲得競争が激化する中で、当社グループの採用・育成の取り組みが想定通りに進まず、必要なプロフェッショナル人財をタイムリーに確保・育成できなかった場合、戦略の実行が停滞し、当社グループの競争力の低下や新規事業の機会逸失等のリスクがあります。
<機会>一方で、採用力の強化やグループ間の人財交流を通じて、社内外からプロフェッショナル人財を確保するとともに、各ビジネスで必要とされる専門知識・スキルの育成プログラムの充実や、デジタル・AIリテラシー研修等のリスキリングを強力に推進できれば、大きな成長のエンジンとなり得ます。特に社員一人ひとりがデジタルスキルを獲得し向上させ、業務を効率化し、創出された時間をクリエイティブな「事業構想」に振り向けることで、新たなビジネスモデルの創出、事業変革を促す機会となります。また、研修や挑戦機会の提供等の人材育成に継続的な投資を行うことで、社員にとって当社グループが各々の能力を伸ばしスキルを獲得することのできる魅力的な場となり、人財の定着にもつながります。
b 経営人財とキーポジションのサクセッション
<リスク>当社グループは幅広い産業においてグローバルに事業を展開しており、その戦略立案と実行を担うのは現場のリーダーたちです。特に日本において、仮に旧来の年功や属性にとらわれた配置から脱却できず、グローバルベースでの「適所適材」が進まない場合は、多様な事業を牽引する次世代・次々世代の経営人財のパイプラインが枯渇するおそれがあります。その場合、環境変化への対応の遅れや意思決定の誤りを招き、足元の業績悪化とともに、中長期的な企業価値の向上を阻害するリスクとなります。
<機会>この課題に対し、国籍・性別・年齢等の属性にとらわれず、早い段階からポテンシャルのある人財を特定し、組織の枠組みを超えた異動や、より大きな機会に挑戦させるアサインメントを計画的に提供できれば、多様な事業を牽引する人財のパイプラインを充実させることができます。タレントレビュー等を通じて、必要なスキルと経験を備えた人財を着実に育成・輩出するサイクルを回すことで、成長事業における強み・競争優位の磨き上げや事業の再構築等、中期経営計画で掲げる事業ポートフォリオ変革を着実に遂行する組織推進力(「リーダーシップ」と「スピード」)を獲得する最大の機会となります。
c 多様な人財の活躍
<リスク>複雑化する社会課題を解決していくためには、従来と同じ発想や均質的な価値観だけでは対応できません。属性や心理的な壁によって、多様な人財が能力を十分に発揮できない環境のままでは、組織の同質化や意思決定における質の低下を招き、新たな発想やイノベーションが生まれず、結果として市場の変化に取り残されるリスクがあります。
<機会>当社グループはDiversity, Equity and Inclusion(DE&I)を「価値創造、イノベーション、競争力の源泉」と明確に位置づけております。人財の採用・登用においても、各国の雇用関連法規を遵守し、いかなる属性(人種、国籍、性別、年齢、性的指向、性自認、性表現等)に基づく不当な優遇・差別も行わず、適性と能力に基づく機会の提供を重視することを基本としております。こうした方針のもと、キャリア採用者が持ち込む多様な視点や、グローバル拠点で活躍する海外採用社員、女性リーダー等、多様な知識・経験を持つ人財が案件創出や意思決定に主体的に関与する「知のミックス」を実現することで、イノベーティブな議論と質の高い意思決定が可能となり、組織力の向上につながります。一人ひとりが「WILL(意欲)」を起点に自分らしく力を発揮できるインクルーシブな環境を築くことこそが、これまでにない付加価値を生み出し、「No.1事業群」の実現につながる最大の機会となります。
(d) リスク及び機会への当社の対応
当社グループの中核企業である住友商事では、上記の最重要リスク及び機会(a~c)に対し、以下の対応を行っております。今後、これらの取り組みを日本のみならず、海外地域組織に拡げていきます。
a プロフェッショナル人財の確保・育成:
当社のプロフェッショナル人財には、住友の事業精神やグループの経営理念に深く共感しこれを体現しながら、多様なステークホルダーとともに社会課題を解決し、新たな価値創造に挑戦していくことが求められます。その挑戦のフィールドは様々な国・地域及び産業にわたるため、社員一人ひとりが自律的に成長し続け、グローバルで通用する高い市場価値を備えたプロフェッショナル人財を目指していくことが不可欠です。そのため、特定の分野における高度な専門知識・スキルだけではなく、新たな事業を構想する発想力やリーダーシップ、既存事業の継続的な改善・高度化(オペレーティングエクセレンス)を推進する力など、多岐にわたる能力をそれぞれの担当業務や事業ステージに応じて獲得・発揮することが求められます。
こうしたプロフェッショナル人財の育成に向けては、まず土台として、住友の事業精神やグループの経営理念に触れる機会を、各階層別研修や別子銅山訪問研修など継続的に設けるとともに、日々の実務における実践を通じて、社員のマインドセットとして醸成しております。その土台の上に、ガバナンス・財務会計・マーケティング等の基礎知識から、個々人がそれぞれのフィールドで必要とされる「世界で通用する力(=専門性)」を身につける人材育成プログラムを提供しております。加えて、自律的な学習を促すe-learningプラットフォームを整備しております。また、デジタル・AI戦略の実行力強化のため、これまで全社員必須のものから各営業グループのビジネスに特化したものまで、多層的にデジタル研修を実施してまいりました。その上で、全社的なデジタルスキルの可視化と社員のスキル向上のさらなる加速を目的に、2026年度よりデジタルスキルに関する社内認定制度「Dグレード」を導入しております。上記の全社的な取り組みに加えて、ビジネスごとに求められる専門知識・スキルを踏まえて、営業グループごとに独自の研修や、海外へのトレイニー派遣や事業会社への出向等による現場経験も含めた人材育成を行っております。
また、当社の職務等級制度においては、組織マネジメントを担うマネジメント職群と、高度な創造性や専門性の発揮を通じてプロジェクトを牽引するエキスパート職群による複線型のキャリアパスを設けており、多様なプロフェッショナル人財がそれぞれの強みを活かしながら成長できる環境を整備しております。キャリア採用により外部から高度な専門性を有する人財を獲得するのみならず、こうした育成施策とキャリアパスを通じて、社内においてもプロフェッショナル人財を計画的に育成し、継続的に確保することに努めております。
b 経営人財とキーポジションのサクセッション:
当社では、現在のキーポジションに対する個別のサクセッションレビューに加え、中長期の戦略実現を担う次世代の経営人財の計画的な育成にも注力しております。具体的には、社長・グループCEO・地域組織長等によるタレントレビューを実施しております。次世代経営人財候補に対しては、グループを超えた異動、セグメント(業界)の異なる組織での経験、またはより大きなアサインメントに挑戦させる機会の付与といった戦略的配置を行っております。あわせて、経営人財育成プログラムやメンタリング・コーチングを通じた育成のサイクルを回しております。
また、グローバルベースで経営人財の育成を推進していくため、グローバルで職務の大きさを比較可能にする「Job Grading」の導入や人財データベースの構築を進めております。

c 多様な人財の活躍:
当社では、多様な人財一人ひとりが各々の力を最大限に発揮できるよう多面的な取り組みを推進しております。まず、日本においては、2030年度までの数値目標を掲げ、女性活躍推進に取り組んでおります。単体の人事制度において、採用時の職掌区分を廃止・一本化し、職掌による制約をなくしたことで、個々人のスキル・能力・意欲等に応じたキャリア形成が可能な制度を整備しております。また、従来整備しているライフイベントと就業の両立支援に加え、女性リーダーの登用・育成を一層加速させていくための強化策を、シニアマネジメントの議論を経て実行に移しております。具体的には、配偶者の転勤等のライフイベントに応じたアサインメントの柔軟な個別対応や女性のコミュニティ形成、メンター制度等、活躍の阻害要因を極力排除し、真に力を発揮し成長できる機会を提供しております。
また、事業戦略に基づき高度な専門性を有する人財を外部から獲得するキャリア採用を積極的に推進しております。当社におけるキャリア採用者のバックグラウンドは多岐にわたり、各々の専門性や他社での経験に基づく異なる視点が、組織全体に新たな気づきや発想をもたらしております。
加えて、社内公募制の拡大にも取り組んでおります。社内公募制は、各組織にとっては、社内においても多様なスキル・経験を持つ人財を組織の枠を超えて機動的に獲得できる仕組みであるとともに、社員一人ひとりにとっては、「WILL(意欲)」を起点に自律的なキャリアを切り拓く機会にもなっております。
インクルーシブな職場環境の構築に向けては、インクルージョン啓発イベント「Inclusion & Connection Weeks(I&C Weeks)」を毎年開催し、多様な人財が自分らしく力を発揮できる組織文化の醸成に取り組んでおります。
なお、上記最重要のリスク及び機会(a~c)に注力するための土台となる職場環境整備については、上述の人的資本への5つの投資領域(事業精神、インクルージョン、人材育成、ウェルビーイング、トータル・リワード)ともアラインする形で、以下のとおり継続的に各種施策に取り組んでおります。
● 健康経営
当社では、社員一人ひとりが最大限にパフォーマンスを発揮するためには、心身の「健康」が最重要であり、これを基盤としてこそ、新たな価値創造を続けていくことができるという考えのもと、「イキイキワクワク健康経営宣言」を策定しております。人材・総務・法務グループ長を最高責任者とする推進体制のもと、「ヘルスリテラシー向上」、「もしもに備える安心体制」、「グローバル医療サポート」の3つを主軸として、健康経営に取り組んでおります。また、高い付加価値を生み出すアウトプット志向の働き方を実現するため、テレワーク制度やコアタイムのないスーパーフレックス制度等を整備しており、社員の自律的かつ柔軟な働き方を促進しております。
● 人事制度
当社では、Pay for Job, Pay for Performanceを追求しながら、専門性やスキルを重視したベストタレントの最適配置を実現し、組織パフォーマンスの最大化を図っております。
こうした人材マネジメントを実現するため、管理職において年次管理を撤廃し、職務の大きさに応じて等級を決定する職務等級制度を導入しております。あわせて、採用時の職掌区分を廃止し一本化した上で、入社後のキャリア形成の選択肢として、管理職においては高い創造性や専門性を発揮するエキスパート職群と、組織マネジメントを担うマネジメント職群の複線型のキャリアパスを整備しております。
自律的なキャリア形成に向けては、360度評価や絶対評価を導入しており、評価の公平性を向上させるとともに、個と真摯に向き合い、そのポテンシャルを引き出しております。また、キャリアアセスメントを通じて、上司・部下間の対話により、社員一人ひとりのキャリア志向・経験・適性・課題に関する相互理解を深め、適所適材の実現とキャリア形成につなげております。