有価証券報告書-第158期(2025/04/01-2026/03/31)
有報資料
●中期経営計画2026の進捗
2024年度から始まった中期経営計画2026では、「No.1事業群」をテーマに掲げ、競争優位を磨き、社会課題解決を通じた飛躍的な成長を実現すべく、「強みを核とした成長」及び「成長の原動力の強化」に重点的に取り組み、「事業ポートフォリオ変革」を加速させています。
2025年度は「強みを核とした成長」や「事業ポートフォリオ変革」を着実に推進した結果、過去最高となる当期利益6,003億円となりました。現中期経営計画最終年度となる2026年度については、中東情勢等の地政学的リスクの顕在化懸念もありますが、既存事業を中心とするOrganicと大型投資案件を中心とするInorganicの両面で成長を牽引することで過去最高益を更新する6,300億円を計画しています。

2025年度実績

(1) 中期経営計画2026における取組の状況
① 強みを核とした成長
・成長8分野につき、2023年度から2026年度の基礎的収益(注)の平均成長率が+11%となる見込み
・2025年度における成長8分野での利益成長は前年度比プラス150億円
・SCSKの完全子会社化を経てデジタル・AI戦略(DAIS)を策定。当社の事業現場でデジタル・AIを活用し、当社グループの収益性向上に取り組む
・2026年度は、Organic成長に加えて、SCSK、米国航空機リース会社の利益貢献により成長8分野で前年度比790億円の増益を計画
・デジタル・リース:実施した大型投資により更なる収益成長を目指す
・不動産・エネルギーソリューション:資産回転推進による収益性向上等により収益成長を図る
・鉄鋼・ヘルスケア:成長市場への経営資源投下、デジタル・AIを活用した収益性向上を図る
・建機・アグリ:足元の低パフォーマンスを分析し、経営基盤強化と収益性の抜本的な改善に取り組む
(注)「基礎的収益」は当期利益(親会社の所有者に帰属)から資産入替関連及び特殊損益を除いたものです。
② 事業ポートフォリオ変革
・2025年度はSCSKの完全子会社化や米国航空機リース会社の株式取得合意(2026年4月に買収完了)など、強みを更に強くする投資を実行
・政策保有株式、ティーガイア社、マイダス社、北米メロン生産・販売事業、Sekal ASの売却等、資産入替も着実に進捗し、事業ポートフォリオの新陳代謝を加速
・アンバトビーニッケル事業については、当社は2026年5月に譲渡契約を締結、当社保有の全出資持分を譲渡
・SBU毎にROIC・WACCをモニタリング、機動的に各ビジネスの期待役割を見直し、全体としてポートフォリオの質向上を図る


③ 成長の原動力の強化
・経営人財やラインマネージャーの育成、自律的なキャリア形成の促進、業務改革推進等の取組進捗。エンゲージメントは継続的に改善
・都市総合開発グループではインフラ事業の知見/ノウハウを活かした海外都市開発案件等の取組進捗
(2) 定量計画
① 経営環境
全般
世界経済は、緩やかな回復基調が続いてきたものの、米国・イスラエルとイランの軍事衝突を受けてホルムズ海峡の航行が困難となり、鉱物性燃料、化学品、金属等原材料の供給途絶とそれに伴う価格上昇が生じており、足元では先行き不透明感が増しております。先進国経済では、米国において総じて緩やかな持ち直しの動きが続いているものの、ガソリンやディーゼル等の石油製品価格の上昇が、個人消費や生産活動全般の重石となることが懸念されます。ユーロ圏経済は、財政による下支えや金融緩和の効果を背景に景気回復の動きが続いてきましたが、エネルギー不足やエネルギー価格高騰の悪影響が懸念されます。日本経済は、物価上昇ペースが一服しつつある中で、財政政策や賃金上昇の効果が徐々に表れてきた一方、物資不足や生活関連費の上昇が消費者マインドの改善の重石となっております。新興国経済では、中国において不動産市場の低迷や欧米向け輸出の伸び悩みが経済活動の下押し要因となっております。その他のアジア諸国では、米国の関税措置により景気の足取りが重くなったものの、AIデータセンター向け等の電気機器輸出が景気を下支えしてきました。しかしながら、ホルムズ海峡の混乱に伴う重要物資の供給障害及び価格高騰が、景気の先行き不透明感を一段と強めております。
今後のリスク要因としては、ホルムズ海峡の実質的封鎖の長期化、不安定な鉱物性燃料供給の継続及び価格上昇を通じた世界的な物価上昇、物価抑制に向けた金融引き締め、経済活動支援に伴う各国の財政悪化に加え、北東アジア、東南アジア、アフリカ等における地政学的リスクの高まりが挙げられます。
鉄鋼グループ
当グループは、鋼管・鋼材など鉄鋼製品を幅広く取り扱っております。
鋼管分野では、米国市場は足元横ばいで推移しておりますが、原油価格の動向次第では価格・需要が変動する可能性があります。その他地域は、一部プロジェクトの端境期からの回復を見込む一方、中東情勢等の変化により回復時期や需要動向が左右される可能性があります。また、世界各国でエネルギー安定供給の重要性を背景に石油・ガス開発は継続するも、脱炭素に向けたエナジートランジションの動きも続く見通しです。鋼材分野では、米国で鋼材価格は上昇基調にあるものの、物価高や景気動向により需要が下振れする可能性があります。その他地域では中国での需要低迷が続き、中国材の東南アジア等への流入により各地市況が押し下げられております。他方、欧州洋上風力発電用の基礎構造物事業への出資等を通じ、収益基盤の拡大に取り組んでおります。以上を踏まえ、既存事業を堅持しつつ、強みを有する事業・地域に経営資本を重点配分して収益力を強化してまいります。また、DX・AIによる新たな価値提供に加え、再生可能エネルギーやCCS等、カーボンニュートラルに資する製品・サービスの供給を通じて産業のGXに貢献してまいります。
自動車グループ
当グループは、自動車業界のバリューチェーンを俯瞰し、自動車、タイヤ、及びその他関連商品の製造、販売、リース並びにこれらの関連サービス・周辺事業を行っております。
当グループを取り巻く環境では、各国の経済発展、人・モノの移動の増加を支える自動車ニーズの伸長、所有から利活用(リース・レンタル・サブスクリプション等)へのシフト、カーボンニュートラル実現へ向けた環境車の普及、循環型経済の構築へ向けた再利用・リサイクル促進へのニーズが高まっております。一方で、中東情勢をはじめとする地政学リスクがもたらすサプライチェーンの混乱、原材料コスト・人件費・金利等の上昇による経済の成長鈍化懸念があり、動向を注視しております。
このような環境を踏まえ、足元の市場環境の変化への備えを確実にするとともに、自動車流通販売事業における商品や販売・サービス網の拡充による成長促進、自動車リース事業を軸とするモビリティサービス領域におけるサービス拡大、自動車エンジニアリング事業等の新たな事業機会の取り込み、部品製造事業・販売金融事業・タイヤ販売事業のバリューアップによる収益規模拡大、Beyond Mobility(移動から発生する、移動を越えた領域)の新規事業の創出・育成に取り組んでまいります。
輸送機・建機グループ
当グループは、リース・ファイナンス事業、グローバルにバリューチェーンを展開する航空機・船舶海洋・建設機械事業、高い専門性を持つ防衛宇宙・安全保障ビジネスを中心に、各種取引及び事業投資を行っております。
当グループを取り巻く事業環境については、足元では中東情勢の緊迫化に伴い、地政学的リスクが顕在化しております。現時点での当グループ事業への直接的な影響は限定的であるものの、市況の変動や資材・燃料価格の動向等については注視しております。一方、中長期的には、世界的な航空需要の拡大が見込まれるほか、海上貨物輸送やインフラの建設・更新需要も堅調に推移すると見込んでおります。同時に、脱炭素社会や循環経済の実現に向けた社会的な要請が一層高まっております。
こうした環境を踏まえ、当グループは強みを持つ事業の収益性向上に注力してまいります。リース・ファイナンス事業では優良資産の積み上げと資産効率の向上を図り、建設機械事業では米国の関税措置といった不確実性への影響を注視しつつ、コスト削減やフリートマネジメントを柱とした収益改善施策を進めてまいります。
また、航空機事業における退役機の部品販売を始めとするアフターマーケット事業、船舶海洋事業における洋上風力で使用される構造物の製造など、社会的な課題やニーズに応える事業を積極的に進め、成長を加速してまいります。
都市総合開発グループ
当グループは、不動産・工業団地・サステナブルシティ・基幹インフラ及びデジタルインフラの開発・運営・アセットマネジメント事業、建材・セメントなどの建設資材関連事業、産業用設備などの機電設備関連事業、物流・保険関連事業を展開しております。
不動産分野では国内不動産事業が堅調に推移したほか、工業団地分野においても引渡しが順調に進展し、期初予想を上回る実績となりました。当グループの主力ビジネスである国内不動産事業においては、今後も大都市圏を中心に需給バランスがタイトな状況が継続すると見込まれる一方で、中東情勢、金利動向、為替変動、インフレ等を取り巻く不確実性が、国内外事業におけるコストや工期を含む採算面に与える影響については、引き続き慎重な見極めが必要であると認識しております。当グループでは、こうした外部環境の変化を注視しつつ、事業のレジリエンス強化に努めております。このような環境認識のもと、資産入替や金融ストラクチャリングを積極的に活用し、自然環境に配慮するとともに災害に強い街づくりのグローバル展開を推し進めてまいります。
コミュニケーションサービスグループ
当グループは、通信インフラ事業、通信サービス事業、メディア・エンターテインメント事業、金融投資事業を行っております。
通信インフラ事業領域では、高速・大容量通信の需要拡大により、キャリア横断的な通信インフラの新増設とその共同利用の需要が見込まれており、当グループでは通信事業者向けの基地局シェアリング事業を拡大しております。通信サービス事業領域では、人手に依存していた公共インフラの保守・点検を通信技術とAIで置き換え、安心安全を更に向上させようという取り組みが進んでおり、異常検知AIソリューションの開発・展開を進めております。メディア・エンターテインメント事業領域では、国内最大のケーブル通信事業会社JCOM及び通販事業のジュピターショップチャンネルの企業価値最大化に加え、日本のアニメコンテンツが世界的に高い評価を受けていることを踏まえ、海外展開・二次利用事業の開発に取り組んでおります。金融投資事業領域ではスタートアップ投資やプライベートエクイティ投資を行っております。
デジタル・AIグループ
当グループはネットワーク構築からシステム開発・運用およびデジタル・AI領域におけるソリューション事業を総合的に展開しております。
事業環境は、既存のシステム・環境の刷新やクラウドの高度利用ニーズの拡大に支えられ、引き続き堅調に推移しております。加えて、DXの進展に伴い、顧客におけるシステム開発の主導権が情報システム部門から事業部門へと広がるとともに、AI技術の急速な発展により、AIを前提としたプロセス・業務そのものの変革ニーズが高まるなど、当グループにとって新たな事業機会が広がっております。こうした環境のもと、当グループは、従来の基幹・業務系システム開発・運用を中心とした事業基盤を強化しつつ、デジタル・AI領域へと事業の拡張を進めております。具体的には、AIを活用した開発高度化を通じた生産性向上とともに、顧客課題の発掘から事業・業務変革まで踏み込んだ提案型ビジネスの強化により、付加価値の高いサービス提供を推進してまいります。
ライフスタイルグループ
当グループは、食品スーパー・ブランド等のリテイル事業、食品・食品原料や青果などの食料事業、ドラッグストア・調剤薬局及びマネージドケア・クリニック・慢性疾患患者向け在宅ヘルスケア事業などのヘルスケア事業を展開しております。
リテイル及び食料分野では、消費者の価値観やライフスタイルの多様化・ニーズの細分化、食と健康に対する意識の高まりが見込まれます。一方で、地政学リスクの高まりやその一部顕在化を背景とした関連コストの上昇等により、消費マインドの抑制傾向が続く等、事業環境の不透明感が継続しております。ヘルスケア分野では、高齢化加速に伴う医療費適正化ニーズが一層高まる見通しであり、いずれも生活を支える事業として社会的重要性は引き続き高まっていくものと見ております。
このような環境を踏まえ、リテイル事業では、優良な店舗基盤と顧客へのアクセスを持つ強みを生かし、データ活用によるマーケティング及びデジタル・AI活用によるオペレーションの高度化や新規事業拡大に取り組んでまいります。食料事業では、食料・食品の調達・加工・販売のノウハウとグローバルなネットワークを通じた収益基盤の強化と成長分野への展開を図ってまいります。ヘルスケア事業では、国内外での事業基盤拡大を通じ、医療費抑制・適正化に資する取り組みを進め、持続的な成長を目指してまいります。
資源グループ
当グループは、金属資源等の開発・操業・生産、製品の製造・販売を展開し、トレード分野でも当社事業とのシナジー発揮や、商品デリバティブの活用等、多様な機能を提供しております。
資源価格は、地政学的リスク等を背景に先行きの不透明感がある中、品目ごとの強弱はあっても底堅く推移しており、中長期の市況変動サイクル、業界におけるプレイヤー・地域の偏在性、経済安全保障・技術革新を含むバリューチェーンや需給バランスの環境変化、資源案件開発の高難度化等の諸環境を踏まえ、当社ならではの経験・強みを発揮し、社会課題解決を通じた成長を図る事業ポートフォリオ、基盤の強化を進めております。
基幹産業を支えるベースメタルを中心に、既存資産の価値最大化と優良権益の拡充に取り組むとともに、市況影響を受けにくい製造業・トレード等の中下流ビジネス拡充に引き続き注力し、環境負荷低減に資する投資や機能提供の促進、気候変動緩和に寄与するバリューチェーン構築を推進しております。これら取り組みを通じて、日本及び世界の産業発展と持続可能な社会の実現に貢献し、人々の豊かな未来を創造することを目指してまいります。
化学品・エレクトロニクス・農業グループ
当グループは、基礎化学品、エレクトロニクス、グリーンケミカル、医薬、化粧品、動物薬、農業資材等の分野において、材料・製品の開発、製造、販売事業を展開しております。
基礎化学品分野における新興国企業の台頭やエレクトロニクス分野におけるデジタル・AIの進展、EV化等に伴う業界構造の変化、経済安全保障を背景としたサプライチェーン再構築に加え、農業資材分野では、穀物市況の低迷や高金利の状況が事業環境に影響を及ぼしております。さらに、中東情勢の先行き不透明感の高まり、為替変動や物流コストの上昇、地政学的要因等を背景に、近年、当グループを取り巻く事業環境の不確実性は高まっております。
このような環境下、当グループでは外部環境の変動が継続することを想定し、事業機会の着実な取り込みとリスクへの対応に取り組んでおります。今後は、各分野における事業基盤の強化や高付加価値創出を通じ、外部環境変化に対する下振れ耐性を高めつつ、持続的な収益成長を目指してまいります。
エネルギートランスフォーメーショングループ
当グループは、国内外における発電事業、国内電力小売事業、天然ガス・LNGなどのエネルギー権益開発・生産及び販売事業、海洋インフラ・船舶燃料供給事業、カーボンニュートラル社会実現に資する次世代エネルギー分野での事業開発を行っております。
ベトナム発電事業持分利益の減少、欧州ガストレードの低調など一部事業に関しては前年比減益となりましたが、電力EPC案件にかかる工事損失引当の取崩益や米国ガストレードにおける契約譲渡益等の一過性利益の計上もあり、グループ全体の利益としては堅調に推移しております。
当グループを取り巻く環境としては、生成AI普及(データセンター利用増大)に伴う電力消費量の増大、及び脱炭素・循環型社会の実現に向けた要請に加え、エネルギー安全保障に関する関心の高まりやエネルギー需要構成の変化が進んでおります。こうした環境下、ガスの重要性が増大し、経済性等の制約から脱炭素化は段階的に進展していきます。一方、昨今の地政学リスクの顕在化により、先行き不透明感が増大しております。
こうした環境を踏まえ、当グループは、戦略性に富み、成長が見込める事業・資産への入替を促進し、エネルギー・トランジション事業と脱炭素関連事業の両方をバランス良く取り組んでまいります。次世代エネルギー分野での事業開発については、外部環境の変化に対応し、時間軸・リソース配分について迅速に調整を行いながら着実に継続してまいります。加えて、上流ビジネスを補完しバリューを高めるトレード機能と中下流ビジネスを強化し、より収益性の高いポートフォリオの構築を目指してまいります。
② 定量計画
・利益計画
2026年度は、成長8分野がデジタル、リース、不動産、エネルギーソリューションを中心に着実な成長を計画しているほか、継続的な資産入替によるポートフォリオ変革の加速により、積み上げで6,600億円の利益となります。中東情勢の緊迫化等の地政学的リスクが事業及び業績に与える影響については、現時点で見積もり可能な影響を各セグメントの見通しに織り込んでおります。一方、中東情勢における更なる不確実性などに対する備えとして△300億円のバッファーを設定し、通期業績予想は6,300億円としております。

・キャッシュ・フローアロケーション
2024年度、2025年度の実績及び2026年度中の計画については以下のとおりです。

また、財務健全性改善に向けては、資産入替の加速等により2028年度末までの3年間で財務健全性を大型投資実行前(2024年度末)の水準まで戻す計画です。
一方で、現行の株主還元方針は継続、戦略的な投資も例年と同規模で実施し、更なる成長を目指します。

(3) 株主還元方針
2024年度から開始した「中期経営計画2026」以降の株主還元方針については以下のとおりです。
・総還元性向を40%以上として、配当及び柔軟かつ機動的な自己株式取得を実施する
・累進配当(注)により、配当の更なる安定性向上及び利益成長に応じた増配を目指す
(注)1株当たり年間配当金の前期実績に対して、配当維持又は増配を行うことを指します。
当社は、株式の流動性の向上と投資家層の拡大を図ることを目的として、2026年5月1日開催の取締役会において、2026年7月1日を効力発生日として、普通株式1株につき4株の割合で株式分割を行うことを決議しました。
2026年度の年間配当金は2026年度通期連結業績予想6,300億円を踏まえ、株式分割考慮後で1株当たり40円(株式分割考慮前で前期比10円増配となる160円)とする予定です。また、2026年5月1日の取締役会において、800億円(うち、2025年度の追加株主還元:100億円、2026年度の株主還元:700億円)を上限とする自己株式の取得を決定しました。

詳細については、「第4 提出会社の状況 3 配当政策」を参照願います。