有価証券報告書
有報資料
1. 中期経営戦略2021 ~事業経営モデルによる成長の実現~
三菱商事は、2018年11月に2019年度から始まる3ヵ年の新しい経営の指針として、「中期経営戦略2021」を策定しました。
米国と中国の覇権を巡る対立等による地政学的力学の変化に加え、デジタル技術の進化やプラットフォーマーの台頭による“第4次産業革命”ともいえるビジネスモデル変革の潮流を踏まえて、持続的な事業成長を目指すための、経営方針となります。
「事業ポートフォリオ」「成長メカニズム」「人事制度改革」「定量目標・資本政策」の4項目から構成される新たな中期経営計画により、事業経営モデルによる三価値同時実現※を前提とした成長を実現します。
※事業を通じた「経済価値」・「社会価値」・「環境価値」の同時実現
■事業ポートフォリオ
全産業を俯瞰し、外部環境の変化も踏まえ、次に攻めるべき分野や入替えを進める分野を全社で検討するため、事業ポートフォリオの枠組みを導入します。
事業ポートフォリオの最適化に向けては、三菱商事独自の多次元の軸で考察します。定量面からは勿論のこと、地域の観点、業界におけるプレゼンスの観点、事業経営レベルの観点から、常にあるべき形を検討していく仕組みを整えます。
■成長メカニズム
「成長の芽」を発掘し、これを「成長の柱」へ育て、事業価値を向上し「収益の柱」へと成長させていく。そして三菱商事による事業価値向上にどうしても限界が生じる場合は、入替えも含め抜本的に見直す。
三菱商事に内在するこの一連のサイクルを、事業ポートフォリオの観点も加えながら、従来以上に徹底して運用していきます。
そのためにも、経営企画部に「事業構想室」を、各営業グループに「グループ事業構想担当」を設置し「成長の芽の発掘」「成長の柱の構築」を積極的に進める体制を執ります。また、新たにチーフ・デジタル・オフィサー(CDO)を任命し、その管下に「デジタル戦略部」を組成、各営業グループにも「グループデジタル戦略担当」を設置することで、急激に進む産業のデジタル化の動きに対応していくこととします。
■人事制度改革
「多様な経験を通じた早期育成」「実力主義と適材適所の徹底」「経営人材の全社的活用」を軸とした人事制度改革を実施します。具体的には、柔軟な人材の配置・活用、成果主義の徹底、株式報酬の導入、複眼的な評価の仕組みの強化を通して、分野を超えて活躍できる経営力の高い人材を継続的に輩出し、社員の成長と会社の発展が一体となることを目指します。
■定量目標・資本政策
事業系の持続的な成長と市況系の競争力強化により、2021年度に連結純利益9,000億円を目指すと共に、二桁ROEの更なる向上を目指します。
投資・売却計画は、リスクアセットベースで事業系7割以上を維持し、事業系・市況系の最適バランスを堅持する様に投資配分を決定していきます。
配当は、持続的な利益成長に合わせて増配していく「累進配当」を継続し、配当性向を現在の30%から将来的に35%程度に引き上げていくことを目指します。
2. 中期経営戦略2021の進捗
2020年度は新型コロナウイルス感染の影響を大きく受けた一方で、デジタル化、低・脱炭素社会に向けた潮流が加速する中、重要課題であるデジタルトランスフォーメーション(DX)、エネルギートランスフォーメーション(EX)を一体で推進しました。なお、2021年度の連結純利益の見通しは3,800億円としています。

(新型コロナウイルス感染症による当社事業への影響)
各連結対象会社の所在国や事業内容に応じて影響は様々であるものの、新型コロナウイルスのワクチン接種が世界的に開始され、経済環境は緩やかな回復基調にあり、当社事業への影響は2021年度を通じて逓減していくことを想定しています。なお、各営業グループの各事業に対する主な影響は、「3.当連結会計年度のセグメント別の事業環境と翌連結会計年度以降の見通し」をご参照ください。
3. 当連結会計年度のセグメント別の事業環境と翌連結会計年度以降の見通し
① 天然ガスグループ
当連結会計年度は、LNG関連事業における持分利益の減少などにより、前連結会計年度と比較して減益となりました。
2020年の世界のLNG需要は前年比11百万トン増の約3.7億トンと堅調に推移しました。新型コロナウイルスの影響があったものの、主に中国・インドなどアジア各国においてLNG需要が増加したものです。アジアのスポット価格は、当連結会計年度初めには新型コロナウイルスの影響により一時的に百万Btu(英国熱量単位)当たり過去最低水準の1米ドル台まで下落したものの、LNGの底堅い需要拡大に伴って回復し、当連結会計年度末時点では7米ドル台で推移しています。
原油価格(Dubai)は新型コロナウイルスの感染拡大による需要減に伴い、LNG価格と同様に一時急落する場面もあったものの、OPECプラスの協調減産や新型コロナウイルスのワクチン開発などにより、当連結会計年度末時点では60米ドル/バレル台にて推移しています。原油需要の本格的な回復には時間がかかる見込みですが、今後も産油国の生産調整や経済活動の正常化などを背景として、中長期的には原油価格は緩やかに回復、上昇していくものと思われます。
LNGは、エネルギー需要増や環境面での優位性などを背景に中長期的にも需要増が見込まれており、成長が見込まれる事業領域と考えています。なお、当グループの業績には原油価格が少なからぬ影響を与えますが、原油価格の変動が当グループの業績に影響を及ぼすまでにはタイムラグがあるため、価格変動が直ちに業績に反映されるとは限りません。
② 総合素材グループ
当連結会計年度は、前連結会計年度に計上した鉄鋼製品事業における事業再編益の一過性利益の反動に加え、新型コロナウイルスの影響による国内外での自動車メーカーの操業停止・減産や、建設・インフラ・エネルギー分野における素材需要の減少・市況の大幅な下落を受け、主に鉄鋼製品事業における持分利益の減少や炭素事業における事業利益の減少などにより、前連結会計年度と比較して減益となりました。
当グループを取り巻く事業環境としては、足元では各地域・国によっては新型コロナウイルスの感染再拡大も見られるなど先行き不透明な状況ではあるものの、新興国の経済成長が世界経済を牽引し、産業の基礎素材を中心に需要・市況は底堅く推移していく見通しです。中長期的には、環境対応に向けた軽量化など、素材ニーズの多様化により見込まれる事業機会がある一方、競争が厳しさを増す業界環境において、当社が対面業界の課題解決において貢献できる役割を再確認し、強みや機能を発揮できる事業への集中を進めていきます。
③ 石油・化学グループ
当連結会計年度は、前連結会計年度に計上したシンガポールの原油・石油製品トレーディング会社における原油デリバティブ取引関連損失の反動や、石油事業における取引利益、持分利益増加などにより前連結会計年度と比較して大幅な増益となりました。
原油価格(Dubai)は、世界的な新型コロナウイルス感染拡大による需要低迷を受け、当連結会計年度初は低水準での推移となっておりましたが、OPECプラスの協調減産継続による下支えやワクチン開発・普及の期待などから、当連結会計年度末には新型コロナウイルス感染拡大前の水準にまで回復しました。
化学品市況についても、年度初は新型コロナウイルスの影響を受けましたが、いち早く回復した中国経済や巣ごもり需要の影響も受け、年度末には主要な化学品については新型コロナウイルス感染拡大前の水準にまで回復しました。
新型コロナウイルスの感染再拡大に起因する需要の増減や米中の対立、産油国を取り巻く環境の変化といった、不確実性の高い状況が当面続くものと予想されます。低炭素社会への移行や循環型社会の実現の重要性がますます増大する中、新型コロナウイルス感染拡大を背景とした生活様式の変化による市場構造の変化も見据え、中核事業の強化とともに、石油・化学の総合力を活かした新規事業の創出に取り組んでまいります。
(翌連結会計年度より石油・化学ソリューショングループへ改称)
④ 金属資源グループ
当連結会計年度は、豪州原料炭事業における市況下落による影響や、前連結会計年度に計上したチリ銅事業再編に伴う一過性利益の反動などにより前連結会計年度と比較して減益となりました。
当グループが保有する資産においては、新型コロナウイルス感染防止策を講じながら操業を継続した結果、一部で生産性は低下したものの、生産量への直接的な影響は出ていません。当グループの中核事業を取り巻く事業環境は、鉄鋼の原料となる原料炭については、コロナ禍より早期回復した中国での好調な国内粗鋼生産により需要は旺盛であった一方、豪中関係悪化に伴い中国による豪州産の原料炭への輸入規制が行われたことで豪州原料炭が供給過剰となり、前連結会計年度に比べ市況が下落しました。また、もう1つの主力事業である銅においては、各国中央銀行の量的緩和政策によって供給された資金が市場流動性の高い銅市場へ流入したことにより、前連結会計年度に比べ高水準で推移しました。
翌連結会計年度以降は、原料炭事業において、中国に続き欧州やインド、日本における粗鋼生産量が新型コロナウイルス感染拡大前を超える水準に回復している一方、中国による豪州原料炭の輸入規制により供給過剰な状況が今後も継続することが見込まれます。
また、堅調に推移している銅価格は期待先行による投機的要因もあり、今後の経済回復状況次第では金融引締めなどが銅価格への影響を及ぼす可能性も予想されます。
中長期的には、新興国を中心とする世界経済の成長により金属資源・非鉄製品の需要は底堅く推移する見通しです。
⑤ 産業インフラグループ
当連結会計年度は、前連結会計年度に計上した千代田化工建設株式会社の子会社化に伴う一過性評価益の反動や船舶事業における一過性損失、レンタル事業の減益などにより前連結会計年度と比較し減益となりました。
当グループの事業領域であるプラントエンジニアリング事業、産業機械事業、船舶・宇宙航空事業においても、少なからず新型コロナウイルスの影響は発生しており、建機レンタル国内事業では、建設工事の着工遅れやイベント中止による売上減の影響がありました。
翌連結会計年度以降は、短期的には新型コロナウイルスの経済活動への影響を受ける可能性があるものの、中長期的には、プラントエンジニアリング事業における脱炭素社会への移行に伴う新たな産業インフラ分野での需要増加や、産業機械事業における建機レンタル、工作機械、エレベーター、国内農機など各事業分野でのコロナ禍からの需要回復が期待されます。船舶事業においては、環境規制の強化に伴う老齢船撤退による一般商船の需給バランス改善が見込めるほか、LNG需要の増加に伴いガス船の需要は底堅い見通しです。各事業分野においてデジタル技術の活用が加速しており、既存事業の強化とともに、ソリューション提供型新規事業の展開を進めます。
⑥ 自動車・モビリティグループ
当連結会計年度は、三菱自動車工業株式会社の固定資産減損や構造改革費用、海外事業投資先における固定資産減損や引当といった一過性損失の発生などを受け、前連結会計年度と比較して減益となりました。
新型コロナウイルスの影響により世界的に自動車市場の低迷は続いており、当社取扱いの主力であるタイ・インドネシアを始め、多くの国で販売台数が前連結会計年度比で減少となる中、従来実施しているオフラインに加え、オンラインでの施策を上手く取り入れることで販売台数やシェアの確保に努めました。
翌連結会計年度に向けては、既存のタイ・インドネシア事業を更に強化・拡張するとともに、アセアン・新興国を中心に更なる事業展開と一層の拡販に努めます。加えて、「CASE」(Connected(つながる)、Autonomous(自動運転)、Shared/Service(共有/サービス)、Electric(電動化))と呼ばれる技術革新への対応などによる業界構造変化を捉え、長年培ってきた事業基盤や地域密着型の強みを活かしてモビリティ・サービス事業を推進します。
翌連結会計年度も新型コロナウイルスの影響により世界的な自動車市場の低迷が暫く続くと想定されますが、オンラインを活用した販売施策などにより販売台数の回復を目指します。
⑦ 食品産業グループ
当連結会計年度の消費市場は、新型コロナウイルス感染拡大に伴い、世界の主要都市でのロックダウンによる行動制限などにより消費者の行動様式やニーズが大きく変化しました。当連結会計年度の当グループの当期純利益は、前連結会計年度に計上した海外食品事業における一過性利益の反動や海外食品原料事業における一過性損失などにより、前連結会計年度と比較して減益となりました。
翌連結会計年度は、新型コロナウイルス感染拡大が沈静化しておらず、先行きが見通しづらく厳しい状況が続くと見込まれますが、DX(デジタル・トランスフォーメーション)の積極的活用によるサプライチェーン全体の効率化や高度化を推進するとともに、消費者ニーズに合った商品・サービスの提供に努めることで収益の安定化に取り組んでまいります。
⑧ コンシューマー産業グループ
当連結会計年度は、新型コロナウイルス感染拡大によって生活者のライフスタイルが大きく変化し、当グループを取り巻く消費市場にも大きな影響を与えました。海外では都市のロックダウンによる小売店舗閉鎖、国内では外出自粛やテレワークの導入に伴う巣ごもり需要が拡大する一方、オフィス・繁華街立地のコンビニエンスストアへの来客数が大幅に減少しました。当グループの当期純利益は、ローソン宛てのれん及び無形資産の減損などにより、前連結会計年度と比較して大幅な減益となりました。
人口減少に伴う消費市場飽和や、人手不足に起因する人件費・物流費の上昇、異業種間の競争激化など国内の事業環境は厳しさが増す環境下、当社は日本電信電話株式会社(NTT)と共に、DXサービスを提供する株式会社Industry Oneの設立を発表、小売・流通産業における効率化・無駄削減といった社会課題の解決に取り組んでまいります。また、当グループではリアルとネットでの幅広い接点を活かし、データを通じて地域毎の生活者理解を深め、新たな需要創造と地域経済圏の活性化に取り組んでまいります。
⑨ 電力ソリューショングループ
当連結会計年度は、発電や送電の上流事業は長期買取保証に基づく安定収益モデルのため新型コロナウイルスによる影響は軽微であり、欧州や国内でのB to Cを中心とした電力小売事業などについても影響は限定的となりましたが、前連結会計年度に計上したEneco社の子会社化に伴う再評価益などの反動並びに当連結会計年度に予定されていた蘭法人税率引下げ中止などの影響により、前連結会計年度と比較して減益となりました。
脱炭素社会への移行が急速に進む市場環境下、再生可能エネルギー開発の事業機会は大幅に拡大方向にあります。Eneco社をプラットフォームに持つ欧州に限らず、日本や米州でも再生可能エネルギー事業の更なる拡大を図り、川上(供給側)から川下(需要側)までのエネルギーバリューチェーン全体での価値極大化に向けた取組みを推進してまいります。電力DXにおいては、地域に深く根差した顧客基盤とデジタル技術を活用したマーケティングにより、暮らしやライフイベントに最適なサービスの提供を開始します。
⑩ 複合都市開発グループ
当連結会計年度は、航空機リース事業における機体の減損や債権評価減、空港運営事業における持分利益の減少などにより、前連結会計年度と比較して減益となりました。
航空機リース関連では、新型コロナウイルスの影響により与信先の業績不振によるリース料延滞、リース料減額要請や、景気後退や移動制限によるリース資産価値再評価などにより減益となりました。
空港運営関連では、2020年の旅客需要は前年比で70%減となるなど、国際線を中心に旅客数が大幅に減少、航空系収入・非航空系収入ともに大きな影響を受けました。
翌連結会計年度は、新型コロナウイルスの影響を引き続き注視してまいりますが、不動産関連では売買市場は正常化してきており、また、電子商取引の拡大などを背景に物流施設やデータセンターなどは需要が増加しており、持続的な市場拡大が見込まれます。
企業投資関連では、投資先である北米のデジタル関連企業などでサービス需要が高まり、好調な資本・株式市場の追い風を受ける一方で、一部地域・業種では依然として新型コロナウイルスの影響が大きく、状況を注視してまいります。
4. 個別重要案件
当連結会計年度における重要な個別案件については、「2. 事業等のリスク ⑤事業投資リスク」内の(重要な投資案件)「a. 豪州原料炭及びその他の金属資源権益への投資」、「b. チリ銅資産権益への投資及びその他の資源権益への投資」 、「c. ペルー銅資産権益への投資及びその他の資源権益への投資」、「d. モントニー・シェールガス開発プロジェクト/LNGカナダプロジェクト」、「e. ローソンへの出資」及び「f. Enecoへの投資」をご参照ください。
三菱商事は、2018年11月に2019年度から始まる3ヵ年の新しい経営の指針として、「中期経営戦略2021」を策定しました。
米国と中国の覇権を巡る対立等による地政学的力学の変化に加え、デジタル技術の進化やプラットフォーマーの台頭による“第4次産業革命”ともいえるビジネスモデル変革の潮流を踏まえて、持続的な事業成長を目指すための、経営方針となります。
「事業ポートフォリオ」「成長メカニズム」「人事制度改革」「定量目標・資本政策」の4項目から構成される新たな中期経営計画により、事業経営モデルによる三価値同時実現※を前提とした成長を実現します。
※事業を通じた「経済価値」・「社会価値」・「環境価値」の同時実現
■事業ポートフォリオ
全産業を俯瞰し、外部環境の変化も踏まえ、次に攻めるべき分野や入替えを進める分野を全社で検討するため、事業ポートフォリオの枠組みを導入します。
事業ポートフォリオの最適化に向けては、三菱商事独自の多次元の軸で考察します。定量面からは勿論のこと、地域の観点、業界におけるプレゼンスの観点、事業経営レベルの観点から、常にあるべき形を検討していく仕組みを整えます。
■成長メカニズム
「成長の芽」を発掘し、これを「成長の柱」へ育て、事業価値を向上し「収益の柱」へと成長させていく。そして三菱商事による事業価値向上にどうしても限界が生じる場合は、入替えも含め抜本的に見直す。
三菱商事に内在するこの一連のサイクルを、事業ポートフォリオの観点も加えながら、従来以上に徹底して運用していきます。
そのためにも、経営企画部に「事業構想室」を、各営業グループに「グループ事業構想担当」を設置し「成長の芽の発掘」「成長の柱の構築」を積極的に進める体制を執ります。また、新たにチーフ・デジタル・オフィサー(CDO)を任命し、その管下に「デジタル戦略部」を組成、各営業グループにも「グループデジタル戦略担当」を設置することで、急激に進む産業のデジタル化の動きに対応していくこととします。
■人事制度改革
「多様な経験を通じた早期育成」「実力主義と適材適所の徹底」「経営人材の全社的活用」を軸とした人事制度改革を実施します。具体的には、柔軟な人材の配置・活用、成果主義の徹底、株式報酬の導入、複眼的な評価の仕組みの強化を通して、分野を超えて活躍できる経営力の高い人材を継続的に輩出し、社員の成長と会社の発展が一体となることを目指します。
■定量目標・資本政策
事業系の持続的な成長と市況系の競争力強化により、2021年度に連結純利益9,000億円を目指すと共に、二桁ROEの更なる向上を目指します。
投資・売却計画は、リスクアセットベースで事業系7割以上を維持し、事業系・市況系の最適バランスを堅持する様に投資配分を決定していきます。
配当は、持続的な利益成長に合わせて増配していく「累進配当」を継続し、配当性向を現在の30%から将来的に35%程度に引き上げていくことを目指します。
2. 中期経営戦略2021の進捗
2020年度は新型コロナウイルス感染の影響を大きく受けた一方で、デジタル化、低・脱炭素社会に向けた潮流が加速する中、重要課題であるデジタルトランスフォーメーション(DX)、エネルギートランスフォーメーション(EX)を一体で推進しました。なお、2021年度の連結純利益の見通しは3,800億円としています。

(新型コロナウイルス感染症による当社事業への影響)
各連結対象会社の所在国や事業内容に応じて影響は様々であるものの、新型コロナウイルスのワクチン接種が世界的に開始され、経済環境は緩やかな回復基調にあり、当社事業への影響は2021年度を通じて逓減していくことを想定しています。なお、各営業グループの各事業に対する主な影響は、「3.当連結会計年度のセグメント別の事業環境と翌連結会計年度以降の見通し」をご参照ください。
3. 当連結会計年度のセグメント別の事業環境と翌連結会計年度以降の見通し
① 天然ガスグループ
当連結会計年度は、LNG関連事業における持分利益の減少などにより、前連結会計年度と比較して減益となりました。
2020年の世界のLNG需要は前年比11百万トン増の約3.7億トンと堅調に推移しました。新型コロナウイルスの影響があったものの、主に中国・インドなどアジア各国においてLNG需要が増加したものです。アジアのスポット価格は、当連結会計年度初めには新型コロナウイルスの影響により一時的に百万Btu(英国熱量単位)当たり過去最低水準の1米ドル台まで下落したものの、LNGの底堅い需要拡大に伴って回復し、当連結会計年度末時点では7米ドル台で推移しています。
原油価格(Dubai)は新型コロナウイルスの感染拡大による需要減に伴い、LNG価格と同様に一時急落する場面もあったものの、OPECプラスの協調減産や新型コロナウイルスのワクチン開発などにより、当連結会計年度末時点では60米ドル/バレル台にて推移しています。原油需要の本格的な回復には時間がかかる見込みですが、今後も産油国の生産調整や経済活動の正常化などを背景として、中長期的には原油価格は緩やかに回復、上昇していくものと思われます。
LNGは、エネルギー需要増や環境面での優位性などを背景に中長期的にも需要増が見込まれており、成長が見込まれる事業領域と考えています。なお、当グループの業績には原油価格が少なからぬ影響を与えますが、原油価格の変動が当グループの業績に影響を及ぼすまでにはタイムラグがあるため、価格変動が直ちに業績に反映されるとは限りません。
② 総合素材グループ
当連結会計年度は、前連結会計年度に計上した鉄鋼製品事業における事業再編益の一過性利益の反動に加え、新型コロナウイルスの影響による国内外での自動車メーカーの操業停止・減産や、建設・インフラ・エネルギー分野における素材需要の減少・市況の大幅な下落を受け、主に鉄鋼製品事業における持分利益の減少や炭素事業における事業利益の減少などにより、前連結会計年度と比較して減益となりました。
当グループを取り巻く事業環境としては、足元では各地域・国によっては新型コロナウイルスの感染再拡大も見られるなど先行き不透明な状況ではあるものの、新興国の経済成長が世界経済を牽引し、産業の基礎素材を中心に需要・市況は底堅く推移していく見通しです。中長期的には、環境対応に向けた軽量化など、素材ニーズの多様化により見込まれる事業機会がある一方、競争が厳しさを増す業界環境において、当社が対面業界の課題解決において貢献できる役割を再確認し、強みや機能を発揮できる事業への集中を進めていきます。
③ 石油・化学グループ
当連結会計年度は、前連結会計年度に計上したシンガポールの原油・石油製品トレーディング会社における原油デリバティブ取引関連損失の反動や、石油事業における取引利益、持分利益増加などにより前連結会計年度と比較して大幅な増益となりました。
原油価格(Dubai)は、世界的な新型コロナウイルス感染拡大による需要低迷を受け、当連結会計年度初は低水準での推移となっておりましたが、OPECプラスの協調減産継続による下支えやワクチン開発・普及の期待などから、当連結会計年度末には新型コロナウイルス感染拡大前の水準にまで回復しました。
化学品市況についても、年度初は新型コロナウイルスの影響を受けましたが、いち早く回復した中国経済や巣ごもり需要の影響も受け、年度末には主要な化学品については新型コロナウイルス感染拡大前の水準にまで回復しました。
新型コロナウイルスの感染再拡大に起因する需要の増減や米中の対立、産油国を取り巻く環境の変化といった、不確実性の高い状況が当面続くものと予想されます。低炭素社会への移行や循環型社会の実現の重要性がますます増大する中、新型コロナウイルス感染拡大を背景とした生活様式の変化による市場構造の変化も見据え、中核事業の強化とともに、石油・化学の総合力を活かした新規事業の創出に取り組んでまいります。
(翌連結会計年度より石油・化学ソリューショングループへ改称)
④ 金属資源グループ
当連結会計年度は、豪州原料炭事業における市況下落による影響や、前連結会計年度に計上したチリ銅事業再編に伴う一過性利益の反動などにより前連結会計年度と比較して減益となりました。
当グループが保有する資産においては、新型コロナウイルス感染防止策を講じながら操業を継続した結果、一部で生産性は低下したものの、生産量への直接的な影響は出ていません。当グループの中核事業を取り巻く事業環境は、鉄鋼の原料となる原料炭については、コロナ禍より早期回復した中国での好調な国内粗鋼生産により需要は旺盛であった一方、豪中関係悪化に伴い中国による豪州産の原料炭への輸入規制が行われたことで豪州原料炭が供給過剰となり、前連結会計年度に比べ市況が下落しました。また、もう1つの主力事業である銅においては、各国中央銀行の量的緩和政策によって供給された資金が市場流動性の高い銅市場へ流入したことにより、前連結会計年度に比べ高水準で推移しました。
翌連結会計年度以降は、原料炭事業において、中国に続き欧州やインド、日本における粗鋼生産量が新型コロナウイルス感染拡大前を超える水準に回復している一方、中国による豪州原料炭の輸入規制により供給過剰な状況が今後も継続することが見込まれます。
また、堅調に推移している銅価格は期待先行による投機的要因もあり、今後の経済回復状況次第では金融引締めなどが銅価格への影響を及ぼす可能性も予想されます。
中長期的には、新興国を中心とする世界経済の成長により金属資源・非鉄製品の需要は底堅く推移する見通しです。
⑤ 産業インフラグループ
当連結会計年度は、前連結会計年度に計上した千代田化工建設株式会社の子会社化に伴う一過性評価益の反動や船舶事業における一過性損失、レンタル事業の減益などにより前連結会計年度と比較し減益となりました。
当グループの事業領域であるプラントエンジニアリング事業、産業機械事業、船舶・宇宙航空事業においても、少なからず新型コロナウイルスの影響は発生しており、建機レンタル国内事業では、建設工事の着工遅れやイベント中止による売上減の影響がありました。
翌連結会計年度以降は、短期的には新型コロナウイルスの経済活動への影響を受ける可能性があるものの、中長期的には、プラントエンジニアリング事業における脱炭素社会への移行に伴う新たな産業インフラ分野での需要増加や、産業機械事業における建機レンタル、工作機械、エレベーター、国内農機など各事業分野でのコロナ禍からの需要回復が期待されます。船舶事業においては、環境規制の強化に伴う老齢船撤退による一般商船の需給バランス改善が見込めるほか、LNG需要の増加に伴いガス船の需要は底堅い見通しです。各事業分野においてデジタル技術の活用が加速しており、既存事業の強化とともに、ソリューション提供型新規事業の展開を進めます。
⑥ 自動車・モビリティグループ
当連結会計年度は、三菱自動車工業株式会社の固定資産減損や構造改革費用、海外事業投資先における固定資産減損や引当といった一過性損失の発生などを受け、前連結会計年度と比較して減益となりました。
新型コロナウイルスの影響により世界的に自動車市場の低迷は続いており、当社取扱いの主力であるタイ・インドネシアを始め、多くの国で販売台数が前連結会計年度比で減少となる中、従来実施しているオフラインに加え、オンラインでの施策を上手く取り入れることで販売台数やシェアの確保に努めました。
翌連結会計年度に向けては、既存のタイ・インドネシア事業を更に強化・拡張するとともに、アセアン・新興国を中心に更なる事業展開と一層の拡販に努めます。加えて、「CASE」(Connected(つながる)、Autonomous(自動運転)、Shared/Service(共有/サービス)、Electric(電動化))と呼ばれる技術革新への対応などによる業界構造変化を捉え、長年培ってきた事業基盤や地域密着型の強みを活かしてモビリティ・サービス事業を推進します。
翌連結会計年度も新型コロナウイルスの影響により世界的な自動車市場の低迷が暫く続くと想定されますが、オンラインを活用した販売施策などにより販売台数の回復を目指します。
⑦ 食品産業グループ
当連結会計年度の消費市場は、新型コロナウイルス感染拡大に伴い、世界の主要都市でのロックダウンによる行動制限などにより消費者の行動様式やニーズが大きく変化しました。当連結会計年度の当グループの当期純利益は、前連結会計年度に計上した海外食品事業における一過性利益の反動や海外食品原料事業における一過性損失などにより、前連結会計年度と比較して減益となりました。
翌連結会計年度は、新型コロナウイルス感染拡大が沈静化しておらず、先行きが見通しづらく厳しい状況が続くと見込まれますが、DX(デジタル・トランスフォーメーション)の積極的活用によるサプライチェーン全体の効率化や高度化を推進するとともに、消費者ニーズに合った商品・サービスの提供に努めることで収益の安定化に取り組んでまいります。
⑧ コンシューマー産業グループ
当連結会計年度は、新型コロナウイルス感染拡大によって生活者のライフスタイルが大きく変化し、当グループを取り巻く消費市場にも大きな影響を与えました。海外では都市のロックダウンによる小売店舗閉鎖、国内では外出自粛やテレワークの導入に伴う巣ごもり需要が拡大する一方、オフィス・繁華街立地のコンビニエンスストアへの来客数が大幅に減少しました。当グループの当期純利益は、ローソン宛てのれん及び無形資産の減損などにより、前連結会計年度と比較して大幅な減益となりました。
人口減少に伴う消費市場飽和や、人手不足に起因する人件費・物流費の上昇、異業種間の競争激化など国内の事業環境は厳しさが増す環境下、当社は日本電信電話株式会社(NTT)と共に、DXサービスを提供する株式会社Industry Oneの設立を発表、小売・流通産業における効率化・無駄削減といった社会課題の解決に取り組んでまいります。また、当グループではリアルとネットでの幅広い接点を活かし、データを通じて地域毎の生活者理解を深め、新たな需要創造と地域経済圏の活性化に取り組んでまいります。
⑨ 電力ソリューショングループ
当連結会計年度は、発電や送電の上流事業は長期買取保証に基づく安定収益モデルのため新型コロナウイルスによる影響は軽微であり、欧州や国内でのB to Cを中心とした電力小売事業などについても影響は限定的となりましたが、前連結会計年度に計上したEneco社の子会社化に伴う再評価益などの反動並びに当連結会計年度に予定されていた蘭法人税率引下げ中止などの影響により、前連結会計年度と比較して減益となりました。
脱炭素社会への移行が急速に進む市場環境下、再生可能エネルギー開発の事業機会は大幅に拡大方向にあります。Eneco社をプラットフォームに持つ欧州に限らず、日本や米州でも再生可能エネルギー事業の更なる拡大を図り、川上(供給側)から川下(需要側)までのエネルギーバリューチェーン全体での価値極大化に向けた取組みを推進してまいります。電力DXにおいては、地域に深く根差した顧客基盤とデジタル技術を活用したマーケティングにより、暮らしやライフイベントに最適なサービスの提供を開始します。
⑩ 複合都市開発グループ
当連結会計年度は、航空機リース事業における機体の減損や債権評価減、空港運営事業における持分利益の減少などにより、前連結会計年度と比較して減益となりました。
航空機リース関連では、新型コロナウイルスの影響により与信先の業績不振によるリース料延滞、リース料減額要請や、景気後退や移動制限によるリース資産価値再評価などにより減益となりました。
空港運営関連では、2020年の旅客需要は前年比で70%減となるなど、国際線を中心に旅客数が大幅に減少、航空系収入・非航空系収入ともに大きな影響を受けました。
翌連結会計年度は、新型コロナウイルスの影響を引き続き注視してまいりますが、不動産関連では売買市場は正常化してきており、また、電子商取引の拡大などを背景に物流施設やデータセンターなどは需要が増加しており、持続的な市場拡大が見込まれます。
企業投資関連では、投資先である北米のデジタル関連企業などでサービス需要が高まり、好調な資本・株式市場の追い風を受ける一方で、一部地域・業種では依然として新型コロナウイルスの影響が大きく、状況を注視してまいります。
4. 個別重要案件
当連結会計年度における重要な個別案件については、「2. 事業等のリスク ⑤事業投資リスク」内の(重要な投資案件)「a. 豪州原料炭及びその他の金属資源権益への投資」、「b. チリ銅資産権益への投資及びその他の資源権益への投資」 、「c. ペルー銅資産権益への投資及びその他の資源権益への投資」、「d. モントニー・シェールガス開発プロジェクト/LNGカナダプロジェクト」、「e. ローソンへの出資」及び「f. Enecoへの投資」をご参照ください。