有価証券報告書-第111期(平成31年4月1日-令和2年3月31日)

【提出】
2020/06/25 13:05
【資料】
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【項目】
156項目

対処すべき課題

(1)経営方針
文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
経営理念 「流通価値の創造を通じて人々の健康と社会の発展に貢献します。」
経営方針
1.社会から信頼される活力ある企業文化の創造
2.株主価値を高める経営とコンプライアンスの徹底
3.誠実で自由闊達な社風の醸成と創造性に富む人材の育成
(2)経営戦略等
当社グループの各事業が取り扱う商品は、国民の安全・安心な暮らしに欠かすことのできないものであり、平時・有事を問わず、常に安定的な供給が求められております。新型コロナウイルス感染症の終息が見通せない状況にありますが、引き続き社会インフラとしての役割を果たしてまいります。
同時に、0102010_001.pngに沿った取組みを、各事

業において継続し、収益基盤の拡大と持続的な成長を実現してまいります。
<「2022メディパル中期ビジョン」の基本方針>『社会と顧客に貢献する新たな枠組みを構築し、
収益基盤の拡大と持続的な成長を実現します。』
当社グループは、事業活動そのものが持続可能な経済社会の実現に貢献するものであると考えております。流通の効率化による環境負荷の軽減や、平時・有事を問わず安全・安心な商品供給、希少疾病用医薬品の開発投資、多様な人材の活用など、引き続き社会的な課題の解決に取り組んでまいります。さらに、効率的かつ有効なガバナンス体制のもと、経営の透明性と健全性を確保しながら、企業価値の最大化に努めてまいります。
(3)経営環境
少子高齢化が進むわが国において、高齢者の増加や生産年齢人口の減少が社会や経済に影響を与え、当社グループの各事業を取り巻く環境においても変化が起きてくると想定しております。セグメントごとの事業環境は以下のとおりです。
医療用医薬品等卸売事業
わが国では増大する医療・介護・福祉の社会保障費を抑制することが重要な課題となっております。その一環として、医療提供体制の見直しによる量から質への転換が求められており、予防医療やセルフメディケーションの推進、地域包括ケアシステムの構築など、さまざまな動きが起きてくるものと考えております。
医薬品業界においては、薬価基準制度の改革や後発医薬品の普及拡大などが進められています。現行は原則として2年に1度実施されている薬価改定が2021年度からは中間年の実施も予定されており、今後一段と厳しい事業環境になっていくことが予想されます。
製薬企業の開発はがんや希少疾病を対象とした医薬品、再生医療等製品にシフトしてきており、流通面においても厳格な温度管理を必要とするなど、高度な流通体制が求められております。一方、生活習慣病などのプライマリー分野では、後発医薬品の普及が進み、より一層効率的な流通が必要となってきております。
さらには、新型コロナウイルス感染症の拡大により、医療業界においても、オンライン診療をはじめとしたデジタル技術の普及が加速していくものと考えております。
これら著しい変化がある中で、本事業では、必要とされる商品を、必要な時に、必要な量だけ確実にお届けする仕組みを構築し、人々の安全・安心な医療を支える社会インフラとして、有事の際も止まらない盤石な流通の実現に努めております。加えて、製薬企業から患者さんに至るまでのサプライチェーン全体の最適化・効率化を図るべく、卸機能を最大限に発揮するためのさまざまな取組みを行っております。

化粧品・日用品、一般用医薬品等卸売事業
人手不足による人件費や物流費の上昇が続く中で、台風や大雨などの度重なる自然災害、消費税率の引上げに伴う消費者マインドの変化、そして第4四半期以降は、新型コロナウイルス感染症の拡大などの影響を受けることとなりました。足下の動向としては、インバウンド需要が大幅に減少する一方で、感染防止に関連した商品の需要が急激に増加しております。また、紙製品などにおいては一時的かつ急激な需要増加があり、需給や配送において、調整の取りづらい状況が続いております。当社の連結子会社である株式会社PALTAC(大阪市中央区)は、日々の生活に欠かせない必需品を取り扱っており、かかる環境下における商品の安定供給などサプライチェーンの維持・継続に向けた事業の重要性はさらに高まるものと考えております。
動物用医薬品・食品加工原材料等卸売事業
動物用医薬品等
畜産向け市場では、2018年9月に国内で26年ぶりに発生し2019年10月からワクチン接種が開始された豚熱を始め、近隣国で発生拡大中の口蹄疫やアフリカ豚熱など、家畜伝染病の脅威が予断を許さない状況であります。
また、コンパニオンアニマル※向け市場では、犬猫の飼育頭数は減少しているものの、治療薬の進歩等による長寿化もあって堅調に推移しております。
食品加工原材料等
食品事業を取り巻く環境は、国内人口の減少、少子高齢化により、食品市場規模の拡大が見込めない一方、食の安全や健康に対する意識の高まり、消費者ニーズの多様化が進んでおります。
また、原材料の高騰や人手不足による労務・物流費の上昇などにより、今後も厳しい環境が続くことが予想されます。
さらに、新型コロナウイルスの感染拡大によって、外食・観光産業への影響は深刻さを増す一方、外出自粛による内食需要が増加するなど、消費動向の変化がおきております。
[用語解説]
※コンパニオンアニマルとは、伴侶動物とも表現され、日常生活の中で人とより密接な関係を保つような動物を 指しております。
(4)経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等
<主な連結経営目標(2022年3月期 目標または方針)>経常利益 720億円
新規事業利益※ 100億円
配当性向 30%を目安に安定配当
成長投資 3年間で1,000億円規模
※当社グループの持つ全国のインフラ及び人材を活用した新たな事業による売上総利益。関連商品の販売による利益を含んでおります。
(5)優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題
「医療用医薬品等卸売事業」につきましては、新型コロナウイルス感染症が拡大する中においても、社会や顧客の期待にお応えできる、安全で安定した価値ある医薬品等の流通を提供してまいります。また、引き続き流通改善ガイドラインに沿った価格交渉に努めるとともに、ALC※1を核とした高度な物流機能の活用により、顧客と当社グループ双方の生産性向上と社会への貢献をめざしてまいります。あわせて、AR※2による情報提供活動や製造販売後調査(PMS)の拡充、デジタルヘルスケア分野での新たな取組み等により、収益基盤の強化に努めてまいります。さらに、販売情報提供活動ガイドラインや医薬品の適正流通(GDP)ガイドラインの遵守を通じ、適正使用の推進並びに、高い品質管理に基づく流通の実現に取り組んでまいります。
なお、当社連結対象の完全子会社である株式会社メディセオ(東京都中央区)は、独立行政法人地域医療機能推進機構(JCHO)を発注者とする医療用医薬品の入札に関し、独占禁止法違反の疑いがあるとして、2019年11月、公正取引委員会による立ち入り検査を受けました。
当社といたしましては、株式会社メディセオとともに、この度の事態を厳粛かつ真摯に受け止め、公正取引委員会の検査に全面的に協力しております。また、今後は、当社グループのさらなる法令遵守の徹底、内部統制の充実に努めてまいります。
「化粧品・日用品、一般用医薬品卸売事業」につきましては、新型コロナウイルス感染症による消費者マインドの変化や外出自粛をはじめとした生活スタイル変容の動向及びその終息時期について、見通しが極めて困難な状況にあります。しかしながら、生活必需品の中間流通を担う事業として、どのような状況であっても、消費者の皆さまの豊かで快適な生活の実現に貢献するために、お取引先及び従業員の安全に細心の注意を払いつつ、安定的かつ効率的に商品をお届けすることに取り組んでまいります。あわせて、サプライチェーンにおける企業同士の連携をより強固にする取組みや、新物流モデルの安定稼働に向けた取組みなどを進め、人手不足をはじめとした流通における課題の解決に継続して取り組み、持続的成長に向けた事業基盤の強化に努めてまいります。
「動物用医薬品・食品加工原材料等卸売事業」につきましては、全国展開の強みを生かした営業を推進するとともに、今後の市場環境の変化を見据え、経営基盤の強化と顧客サービスの充実に努めてまいります。
[用語解説]
※1 ALC(Area Logistics Center)とは、医療用医薬品や医療材料などを扱う高機能物流センターで、主に調剤薬局、病院、診療所に商品を供給しております。
※2 AR(Assist Representatives)とは、MR認定試験に合格したMS(医薬品卸売業の営業担当者)や薬剤師などに付与した社内呼称であります。