有価証券報告書-第48期(平成31年4月1日-令和2年3月31日)

【提出】
2020/06/23 10:22
【資料】
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【項目】
161項目

対処すべき課題

(1) 会社の経営の基本方針
当社グループは、患者様のQOL向上に資する経営を行うべく、「最先端の優れた医療機器の開発と販売を通じて医療に貢献する」という経営理念のもと、日米共同開発を基軸に、整形外科分野の医療機器の開発・製造・輸入・販売を通じて日本だけでなく世界の医療マーケットに真に価値ある医療機器を提供していくことで、医療に貢献することを経営方針としております。
(2) 目標とする経営指標
2021年3月期の連結業績予想
売上高 178億円
営業利益 22億円
売上高営業利益率 12.4%
自己資本利益率(ROE) 9.5%
(3) 経営環境及び対処すべき課題
国内における医療機器業界を取り巻く環境は、国民医療費が過去10年間において年平均2.4%のペースで増加し、2020年度の診療報酬改定においても償還価格が一定程度のマイナス改定になるなど、厳しい市場環境が継続するものと想定しております。また2025年には団塊の世代が全て後期高齢者となり、2040年頃にはいわゆる団塊ジュニア世代が65歳以上となって高齢者人口がピークを迎えるとともに生産年齢人口が急激に減少していくなど少子高齢化社会が到来し、社会保障関係費の増加が避けられない状況にあります。国が国民皆保険を維持し、国民が安全・安心で質の高い医療を受けられることがますます重要になるなかで、当社に求められる役割も変化していくものと考えております。
米国は世界最大の人工関節市場であり、また、人工関節置換術を必要とする65歳以上の高齢者人口は、ベビーブーマー世代最後期の人口が65歳を迎える2030年に7千万人規模になります。また、肥満による変形性関節疾患の患者数も継続的に増加する見込みであることから、人工関節市場は成長が見込まれ、当社のビジネスも継続的に拡大することが可能と考えております。
なお、現状、対処すべき最大の課題は、新型コロナウイルス感染症(以下“COVID-19”)問題への対応であります。米国においては、2020年3月以降COVID-19患者数が急激に増えるなか、COVID-19患者用の病床を確保するために、緊急性の低い手術治療を遅らせる施策がとられ、既に多くの人工関節置換術が延期され手術件数は急減しております。また日本においてもCOVID-19の感染者数の急激な増加により、日本整形外科学会は、一般的な感染対策、手術が制限される状況になった時の整形外科手術のトリアージ(患者の重症度に基づいた、治療の優先度の決定と選別)を行う際の注意点として、早期治療を必要とする手術(脊髄・神経麻痺、外傷、開放骨折、悪性腫瘍など)、手術の延期を検討するもの(人工関節置換術、待機できる脊椎手術など)、手術を延期すべきもの(生命を脅かすことがない関節鏡手術など)との指針を出しており、今後、一定期間、当社の製品が治療に使われる手術の延期等による手術件数の減少が見込まれます。
このように、日米ともに、慢性疾患である人工関節置換や脊椎固定の手術件数は一時的に減る見通しですが、治療を必要としている患者数が減ることはないと思われることから、COVID-19がピークアウトし、人工関節置換や脊椎固定による治療が再開されれば、日米ともに手術件数が急回復するものと考えております。
なお、現時点において、COVID-19の当社グループビジネスへの影響については、感染入院患者数の推移やピークアウトのタイミングなど様々な不確定要因があることから、人工関節置換術及び脊椎固定術の実施が回復するタイミングを正確に見通すことは困難ですが、次期の連結業績予想を策定する際には、日米ともに、次期の第2四半期末まではCOVID-19による人工関節置換術及び脊椎固定術の延期等により手術件数が著しく減少することを想定しています。
さて、当社は、2019年3月期(第47期)から2021年3月期(第49期)の3か年を実施期間とする中期経営計画「MODE2020」を策定しております。「MODE2020」は、中期経営方針として「オーガニック成長領域における収益力の強化と、戦略成長領域における基盤を確立するとともに、戦略実行体制の強化を図り、中長期的に利益の伴った持続的成長を実現する」を掲げ、その実現に向けた重点施策である「製品開発力・製造力の強化」、「海外ビジネスの拡大」、「日本市場における注力販売製品分野のシェア拡大」、「更なる効率化とSCM強化」を実行しております。
一方、日本国内で実施された償還価格引下げの影響や、「MODE2020」の連結業績予想の前提としている対ドル為替レート(1ドル106円)から1ドル108円レベル(2020年3月末時点)へと円安水準になったことによる収益性低下の影響を極小化するために、売上原価(製造原価)の更なる低減に向け、欧州を中心としたコスト競争力のあるベンダーからの調達拡大や、米国子会社の自社製造能力拡大などによる売上原価低減を進め収益性の維持・改善に努めております。
(4) 中長期的な会社の経営戦略
① 製品開発力・製造力の強化
製品開発力の強化について、適用症例拡大を目的とした製品ラインアップの拡充に加え、他社製品との差別化を図るため、米国子会社Ortho Development Corporation(以下「ODEV社」)との日米共同開発による付加価値の高い製品の開発に注力すると共に、自社製品の付加価値を高めシナジー効果が期待できる商品や手術支援器具の調達などにより、市場ニーズを反映した製商品を導入することによるビジネス拡大を目指しております。また、ODEV社の製造施設・設備を拡大・強化することにより製造力の強化に注力しております。
② 海外ビジネスの拡大
米国市場においては、リージョナルセールスマネージャーの増員などによる販売体制強化に加え、人工関節分野における新製品の本格導入、大腿骨頸部転子部骨折治療分野への新規参入などによりビジネスの拡大を目指しております。
中国市場においては、既に薬事承認を取得している人工膝関節分野に注力する方針であり、2018年度にODEV社の上海子会社を設立し、継続的に市場情報の収集を行っております。米中貿易戦争の影響を受け、進捗が止まっておりますが、現地パートナー候補と、様々な取り組みの可能性を検討しております。
オーストラリアへの市場参入については、2019年5月にブリスベンに現地法人を設立し、現在、薬事承認について申請を済ませ、承認取得待ちとなっております。2021年3月期中には薬事承認を取得し販売を開始する予定です。
③ 日本市場における注力販売製品分野のシェア拡大
MODE2017に引き続き、当中計期間中も大腿骨頸部転子部骨接合材料分野、脊椎固定器具分野、人工股関節分野を注力販売製品分野と定めました。特に大腿骨頸部転子部骨接合材料分野は2017年4月より特販部を新設し、大腿骨頸部転子部骨接合材料の拡販に注力する体制を構築しております。なお、注力販売製品分野における付加価値の高い新製品導入などにより、更なるシェア拡大を目指しております。また、自社製品の付加価値を高めるために、引き続き手術支援システムなど周辺機器の調達も強化していきます。
④ 更なる効率化とSCM強化
国内の物流拠点は2015年度上半期に耐震性能に優れた新物流センターへ移転し、災害発生を踏まえた物流体制を構築しましたが、国内事業規模の拡大に伴う倉庫スペースの拡充に加え、物流関連業務効率化や、労働環境改善のためのレイアウト変更などに努めてまいりました。また、受注時間の延長などサービスレベルを改善しながら、物流関連業務の効率化を更に進めるために、2018年4月1日付で組織改編を行い、新たにSCM本部を設け需給管理機能を一本化すること等により、医療工具の出荷効率やインプラント在庫の回転率を向上させるなど、効率的な物流オペレーションを追求しております。また、業務改善については、組織横断的な業務改善活動にも継続的に取り組み、様々な業務の効率化を実現してまいります。
文中において将来について記載した事項は、当連結会計年度末日現在において当社が判断したものであります。